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ゼロの仮面~ナイト・アフター~-04

 彼女の苛立ちが募っていく。
 最初はロクな使い魔ではないと思っていた。
 人間だし。平民だし。女ったらしだし。主人の世話も(殆ど)しないし。
 それがどうだろう。先程の決闘。彼はただの人間ではなかった。正体は定かではないが、少なくとも普通の人間の姿と亜人の姿の二面を持つ存在、それが望月綾時だった。
 そして振るう力は絶大。ドットとは言え、メイジであるギーシュを軽くあしらった。
 魔法らしき物も使ったが、杖は持っていない。それもその筈。亜人なのだから。だとすれば、あの光は先住魔法に他ならない。
 先住魔法を操る亜人。エルフにも匹敵すると見て相違無いだろう。
 それ程の物を呼び寄せ、使役しているのだ。自然と胸を張りたくもなる。
 勿論、褒めてやるつもりだった。よくやった、と。そして他にも色々と聞くつもりだった。
 なのに、それなのに。今、私は除け者にされている。
 信じられない。私の使い魔なのに。私が話に混ざれない。
「信じられない」
 消え入りそうな声で呟き、ルイズは学院長室の前で俯き、立ち尽くしていた。

「どうしたもんかのぅ」
「はい……」
 学院長室。オールド・オスマンとミスタ・コルベールが苦い顔をして唸る。
 それを傍で見るのは、問題の当人である綾時と、ある程度の事情を知っているとの理由で同席したミス・ロングビル。
 問題は至極簡単ではあるが、最高に扱いが難しいものであった。
 「王宮のボンクラ共に、ヴァリエールの末っ子と、この子をくれてやる訳にはいかない」
 先刻のオールド・オスマンの言葉である。
 つまり、事態隠蔽の策を図っているのであった。
「別に放っておいても良いんじゃないですか? 僕達が何か言わなければ、特に問題は無いと思いますけど……」
 綾時が三人の顔を見比べながら口を開く。
「確かに、先の一件はそれで良いじゃろう。しかし、これからを如何に隠すかが、の」
 重々しく頷きながら、オールド・オスマンが現在の議題を再提示する。
「生徒の何人かは、彼を天使や何かと思っている子もいるようです。この際、それで通してしまうのは?」
 広場からここに来るまで、生徒達の会話に聞き耳を立てていたミス・ロングビルが横目でオールド・オスマンを見遣る。
「それではガンダールヴである事を明かすのと同義じゃろう。どちらも伝説上、伝説的な存在に変わりはない」
 オールド・オスマンが椅子に背を投げ、指で机を叩く。
「ならば先の決闘に関しても、口止めをした方が良いのでは? やはり同じ理由で広まってしまうでしょう」
 手で口元を隠し、考えを纏めながらミスタ・コルベールが呟く。
「わしは口止めが到底無意味、且つ不可能と思われるから放っておけと言っておるんじゃよ」
 片方の瞼を吊り上げ、オールド・オスマンが低く唸る。
「……なるほど」
 最後に綾時が相槌を打つ。
 こうして、静寂が訪れた。
 だが、その静寂を早々と破るのも、また綾時。
「とりあえず、さっきの決闘に関しては全面的に無かった事にして、何かしらの……そうだな、剣士なんかを僕が装えば良いんじゃないですか?
 それだとガンダールヴとしての力を使わなきゃいけませんけど、あの姿になるよりは幾らか現実的でしょうし」
「……考えられ得るのは、それ位じゃの」
 オールド・オスマンが髭を弄り、ミスタ・コルベールとミス・ロングビルも同意の色を示す。
「後の問題は、ミス・ヴァリエールにどの程度を教えるのか、ですね」
 すっかり当事者を気取るミス・ロングビルがうん、と一人で頷く。
「ふむ。――全て丸々、教えておいた方が良かろう。力を持った以上、それには同等の責任が伴う。少々酷じゃが、その重荷を分からせる必要がある。ミス・ロングビル、彼女を」
 特に反対する者もおらず、ミス・ロングビルはルイズを呼びに行った。

 綾時の正体を知ったルイズは感激したが、その感激は自身の胸にのみ留めた。
 オールド・オスマンから他言無用と釘を刺されたからである。
 そして剣士を振舞う為に綾時は学院から剣を支給された。が、ギーシュとの決闘の次の日から現れ、後を絶たなかった他の生徒との立て続けの決闘の果てに13本の剣が大破。
 流石に金銭の問題がある。と、町でそれなりの名剣を買うように言われたのが昨日。ギーシュとの決闘から七日が立った時だった。
 ちなみに決闘が続いた理由は、綾時の正体を見極めんとする(自称)実力者が大勢居た事に起因する。
 そしてキュルケはギーシュとの決闘を経た綾時に、猛烈に恋の炎を燃やしたが、毎晩朝まで学院長室に篭っている綾時をついぞ自分の部屋に招き入れる事は出来なかった。
 痺れを切らしたキュルケは七日目の夜にルイズの部屋の前で就寝し、図らずもまんまと剣を買いに行くルイズと綾時に同行したのであった。
 しかし、今平原を駆ける馬に跨る人影は二つ。その上には巨大な――と言っても幼児なのだが――竜が影を作り、その上にも二つの人影があった。
 タバサが綾時に惚れていると勝手に解釈していたキュルケが、ライバルだけど自分だけ抜け駆けは不公平、と、親友に迷惑な思いやりをかけ、しかしながらタバサも綾時に対する興味から出動。の、図であった。

 城下町。擦れ違う人々と肩をぶつけながら、またしてもルイズは苛立っていた。
 なんでこいつの周りには女が沸くのだろうか。3:1とか可笑しくね?
 よく見たらリョージの顔立ち、凄く整ってるし、何だか私もヤヴァイんじゃね? とか思ってたけど。けどってかのに。
 キュルケはいつもの事だから良いとして、このタバサとか言うのは完全に予想外。だってこんな無口な子が、ねえ?
 それに何だか他の女の子達もきゃあきゃあわあわあだし、メイド達まできゃあきゃあわあわあだし。リョージもリョージで愛想を振り撒くし。
 ほら今も。ぶつかった(女の)平民と「大丈夫ですか?(にこっ」「え、ええ、大丈夫ですよ。すみません(キャッ☆」なやり取りだし。節操がねぇよ節操が。
 こんな具合である。
 綾時のそんな所しか見ていないルイズは、小柄の貴族目掛けて飛んでくるスリの手を、綾時が一々笑顔を向けながらぶつかったり、手で叩き落として防いでいる事に最後まで気付く事は無かった。

「こっちのが! 良いって! リョージも! 言ってる! でしょッ!」
「いんえ! 絶対! こっちのが! 良いって! ダーリンも! 思ってるッ!」
 二人の女の子に、両腕を引っ張られ、綾時は苦笑を浮かべる。
 彼の主人の手には「オレだ! オレを買ってくれ!!」と叫ぶ長剣。
 反して『微熱』の少女の手には店主お墨付きの大剣。
 発端は数刻前。武器屋に着き、綾時が予算等の問題を考慮して安物の剣を選んでいた際、喋る剣――インテリジェンスソードのデルフリンガー――を発見してそれを選んだが、
 キュルケはそれを綾時がルイズに遠慮しているだけと主張し、店主が薦めた大剣を綾時に買うとルイズと口喧嘩を始めたのであった。
 結局、そのやり取りが終了したのはそれから小一時間後の事だった。
 「どっちも買えば良いのに」とは思っても最後まで口にしなかったタバサと店主であった。



 ゼロの仮面~ナイト・アフター~   4話・了

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