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マジシャン ザ ルイズ 3章 (28)

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マジシャン ザ ルイズ 3章 (28)モット伯爵の好意

続いてオスマンは、マチルダにワルド子爵が如何様にしてアルビオンを支配するに至ったのか、その経緯を問いかけた。
これに対しマチルダは、先ほどの自信に満ちた顔つきとは違う様子、幾ばくかの緊張をもってそれを話しを始めた。

ニューッカスル落城後に一時消息を絶ち、その後、唐突な帰還を果たしたワルド。
しかし、再びマチルダの前に姿を現したワルドは、それまでの彼とは違う、得体の知れない別の何かへと変貌を遂げていた。
姿や声、仕草は変わっていない。けれどその言動や行動はそれまでと全く違うものとなっており、何よりも不遜なほどの自信に満ちあふれていた。
実際に彼はマチルダにとって理解の範疇を超えた、尋常ならざる力を身につけており、そして更にはその力を使ってアルビオンの支配に乗り出したのである。
まずはクロムウェルを抹殺し、その上で意のままに動く『動く死体』として復活させると、彼はそれを皮切りにしてレコンキスタ内部の指導者達を次々に懐柔するか、クロムウェルと同様の処理を施して味方として取り込んでいった。
そうしてマチルダが気がついたときには、神聖アルビオン共和国はワルドを支配者とする、死者の王国へと作り替えられてしまっていたのである。
そしてワルドが更にはアルビオンだけではなく、ガリアにまでその手を広げようとしていると知ったとき、マチルダはこう考えたのである。
「このまま彼に付き従っていれば、やがて自分も殺されて動く死体の仲間入りをさせられてしまうのではないか」と。
日に日に増してゆく危機感に耐えながら機会を窺っていた彼女が、トリステイン攻撃の隙を見計らって、アルビオン脱出を決行したのは必然の流れであった。


聞く者には荒唐無稽としか聞こえないこれらの事実を、マチルダは真実味あるものにすべく、身振り手振りを用いて熱意を込めて、丁寧に説明した。
しかし、どれほど懸命に語ろうともこのような話、彼女の言葉だけですんなりと信じられるものではない。
円卓の参加者達の間に、どの様に反応を返すべきか迷うような空気が流れ始める。
すると、オスマンはそのような空気を無視するようにマザリーニ枢機卿の右席、つまりエレオノールへと話を振った。

「それではアカデミーの名代として出席されておられるミズ・エレオノールにお聞きいたします。これまでのミズ・サウスゴーダの発言をお聞きになられて抱かれた感想を、率直にお聞かせ願えませんかな?」
これに驚いたのは当のエレオノールであった。
まさか自分に話が振られるとは思っていなかった彼女であったが、そこは責任ある立場にある者。そのような仕草は漏らさず、十分な余裕と優雅さを持って立ち上がる。そして堂々とした態度でオスマンに質問に答えた。
「わたくしとしましては、彼女の話は全く持って陳腐な筋書きの読み物の類、または夢か妄想に基づいたでまかせであると断ずる他ありません」
そうきっぱりと言い捨てるエレオノールの言葉に、思わずマチルダが声を上げそうになる。
しかし、思いとどまる。声を上げることなく、危ういところで飲み込んだ。
今この場で発言を許されているのはエレオノールなのである、わざわざ心証を悪くする必要はない。

「ふむ、結構です、ミズ・エレオノール。どうぞご着席ください。
 それでは次に、モット伯爵にご起立願いましょう」
再び自分へ発言の機会が与えられると思っていたマチルダが、ここで腰を浮かしかけた。
その動作をうけて、一瞬オスマンが彼女に視線を向けた。そして、その一瞬でオスマンは彼女に向かって軽く片目をつぶって見せた。

かつて彼の秘書であった頃に何度か目にしたその仕草、それは彼が何か良からぬことを企んでいるときによくみせたものであった。
それを見たマチルダは、一抹の不安を覚えながらも、この場はこの元上司に流れを任せることにした。

「それではモット伯爵。あなたが先の戦役で見聞きしたこと、そのうちの敵と交戦に入った際のことを、この場にいる皆さんに説明して頂けますかな?」
そう物腰柔らかに言った老オスマンに対して、直立に起立したモット伯爵。
カラフルな服装に身を包んだ長身の彼が立ち上がると、それこそ劇場の一幕のようであったが、今彼の顔に浮かんでいる表情は真剣そのものである。
それこそが彼がこの場において発言することの重要性を理解している証左。

「はっ。お答え致します」
そう言って腰を折って一礼するモット伯爵。彼は女王とオスマンに一度ずつ敬礼し、最後にルイズに向かって一段と深い敬礼を行った。
モット伯に敬礼される覚えなど無いルイズは、彼のこの行動に一瞬面食らったが、とりあえず笑って返しておくことにした。

「私と我が軍は女王陛下の……」
と、両手を目一杯に広げて、それこそ演目の主役にでもなったかのように語り始めようとするモット伯。
すかさずオスマンが口を挟む。
「いや、そこは省略して構わんから、敵を見つけたところから言ってもらえんかの」
いきなり前口上を始めようとするモット伯爵を諫めるオスマン。
更にはわざとらしく咳払いするマザリーニ枢機卿という、年輩者二人に促される形で、モット伯爵はしぶしぶ口上を切り上げて、本題を語り始めた。

「夜半過ぎ、私が指揮する兵三百が先行する敵部隊と魔法学院近郊の平原にて会敵、敵指揮官を含む竜騎士二十騎と交戦状態に入りました」
「敵はどの様な姿をした者達でしたかな? 何か特徴は?」
右手に書類を持ち上げながら、手の空いたもう片方で髭を撫でつけるオールド・オスマン。
それは台本を読み上げるように淀みなく流暢で、また、実際にその通りであった。
これはオスマンとマザリーニ、そしてアンリエッタの諮問する側である三人しか知らぬことであったが、彼の手の中にある書類こそは、先日モット伯が女王に報告した内容を筆記した報告書なのであった。

「彼らは二十騎全て、生者に非ず。死して動き回るという、始祖を冒涜する汚らわしき亡者達でありました」
「二十騎全て? 飛竜だけで無く、人まで?」
「はい。飛竜と、それに騎乗する騎士達も含めて全てがこの世に惑った死者達でした」
そう言ったところで唐突に言葉を切るモット伯。
「どうかしたかの?」
「……いえ、一点間違いがありました。交戦中に会話を交わした敵指揮官。彼だけは生きていたのかも知れません」
そう言ったモット伯の拳は強く握り締められ、小刻みに震えていた。

「結構ですモット伯爵。では続いて、再びアカデミー名代のミズ・エレオノールに質問をさせていただきます」
モット伯が着席し、それに入れ替わる形で再びエレオノールが起立する。
「先ほどのモット伯爵の発言にあった動き回る死者達、これに関してアカデミー名代として見解をお聞かせ願いたい」
オスマンのこの発言に対して、エレオノールは口元に手をやり、暫し黙考してから答えた。
「結論として可能、ですわ。水魔法の秘術を用いれば死者を思いのままに操ること、それ自体は不可能ではありません」
「それでは二十騎。しかも竜と人間、両方を同時には?」
当然のように返されたこの言葉に、エレオノールが再びぐっと押し黙る。

一人の死者を操るだけならば、そのような魔法も聞いたこともある。しかし多数の死者を、しかもそれを同時に操るとなると、明らかにそれは系統魔法の手には余るのである。
系統魔法の外、例え先住の魔法を用いたとしても、そのような大規模なものは聞いたことがない。
「系統魔法では、不可能かと思われます。水の精霊の力を借りたとしても、二十、しかも竜まで含めるとなると……私の知る限りの知識にはありません」
先住の魔法はその限りではない、と言外に臭わせておく。決して分からないとは口にしない、何ともエレオノールらしい返答であった。

「結構。ではここで一度、第三者の意見を聞いて見るとしましょう。それではミスタ・ウルザ、次はあなたに質問させて頂きます」
先ほどと同様、エレオノールが着席し、今度はウルザが席から起立した。
二人の長身の老メイジは、一度お互いの顔を見やってから話し始めた。
「ミスタ・ウルザ。あなたから見て、二十騎の竜騎士を死者達でまかなうことは可能ですかな?」
「可能です。オールド・オスマン」
きっぱりと言い切ったウルザ。
この発言にエレオノールは顔を一瞬白くさせて、続いて頬を朱色に染めた。

彼の老人の物言いは時にストレートに過ぎる。
そのことを十分に知るルイズは、面子を潰される形となったプライド高い姉へと恐る恐る視線を這わせる。
しかし、そこにはルイズが予想した怒りの形相は無く、ただ顔を赤くして何か言いたそうにしている姉の顔があるだけであった。

「ほほう! して、それはどの様な手段にて可能なのですかな、ミスタ・ウルザ?」
オールド・オスマンはわざとらしく驚いて、その先を聞いてみせる。
「黒のマナを用いた呪文、その中でも死者蘇生に関する呪文でなら可能でしょう」
「はて、マナとは? マナとは何のことですかな? そしてそれを用いる呪文とはなんのことですかな?」
彼もまた、フーケとは違った種類の役者であった。

「マナとは世界に満ちる魔力の源であり、そしてそのマナを用いるのが『我々の魔法』。術者の精神力を消費して使われる系統魔法とは似て非なる魔法であります」
ウルザの口から飛び出した言葉、マナ、それに系統魔法ではない魔法。余りに突飛な、埒外の話である。
多くの参加者の常識にとってあり得ないそれを、オスマンはたたみかける様にして追求する。
「ミスタ・ウルザ。突然そのようなことを言われても信じることは難しい。できることならそのマナを用いた『あなた達の魔法』を我々に見せて頂きたい」
「……是非もなく」
ウルザはそう口にするとローブの中に手をやり、そこから手のひら大の青い球体を一つ取り出して目線の高さに掲げてみせた。
そしてその球体は、ウルザが掲げると同時、彼の手の中でゆっくりとした回転を始める。
球体が手から離し、それが空中に止まって回転し続けていることを確認すると、ウルザは口の中で小さく呪文を唱えた。

瞬間、円卓の間は白から黒へと暗転した。

一瞬の黒の後、再び目に光が届いたとき、彼らは水中にいた。
足下では海草が揺らめき、鼻先を魚が泳ぐ。それらは正しく、海の中の光景であった。

彼が取り出したその球体、それはウェザーライトⅡのブリッジ中央に据えられた半球体と、似た性質を持つものだったのである。

目の前に広がった異変に対して、驚きに声も出ないもの、声を上げるもの、立ち上がって手をばたつかせるもの、冷静に観察するもの。円卓についていた者達の反応は様々。
「み、皆さん! 落ち着いてください、これは幻です!」
そう言って立ち上がったのは不健康そうなまでに青白い顔をした学院教師コルベール。
確かに、周囲を魚が泳ぎ周り、その他様々な海の生き物たちが漂っているのが見える、しかし、水中であるならば感じるはずの息苦しさや水の冷たさは全く感じない。
少し冷静になって考えれば分かること、今自分たちが目にしているそれが幻であり、別に本当に水中に放り出されたわけではない。
人間とは現金なもので、そうと分かればこの不思議を観察する余裕も出てくる。
なるほど、泳ぐ魚はよく見れば半透明で奥が透けて見えていたし、足で触れたはずの海草や貝には全くその実体がない。

だが、そうして観察するだけの冷静さを取り戻した彼らは、そこが自分の知る海の中とは全く異質な世界であることに気がついた。

まず、海の中だというのにそこには町並みが並んでいたのである。しかも王都トリスタニアにも匹敵しようかというような大きな規模の街がである。
海底に存在する街というだけでも奇異であったが、その住人達の姿はますます奇異である。
その街の住人達の手足にひれがあり、体には鱗があった。魚のような人のような、見たこともない生き物達。
それが、至る所で水の中の町並みを泳ぎ回っていたのである。
人のようで人でない者達、彼らが海中で文明をもって文化を築き、かつこれほどに大規模の都市を構築している。
それは彼らの常識を突き崩し兼ねないほどの衝撃を彼らに与えた。

「ここは、このハルケギニアと繋がっていない世界にの一つ、ドミナリアのヴォーダ海に存在するマーフォーク達の都市エトラン・シース。別名アトランティス」
ウルザの口から紡がれる都市の由来とその歴史、円卓の参加者達は初めて見るその光景と解説を黙って聞いている。
確かに、彼の魔法や見せている映像に得体の知れない不気味を感じる。だが、それ以上に目の前に広がる光景は美しく、ウルザの語る言葉は好奇心を刺激した。
そんな彼らの様子を確かめながら、ウルザは更に球体を操作した。

そして世界は再び流転した。

次に彼らが訪れていたのは、見たこともない木々が生い茂り密生している、薄暗い森の中であった。
薄暗さの原因は、上を見上げれば直ぐに知れた。周囲に生えている樹木の樹高が、普段目にするハルケギニアのそれに比べて。桁違いに高いのである。
樹木に見覚えが無ければ、当然生えている草にも見覚えがなかった。
花をつけているもの、毛が生えているもの、それらは様々な種類のものがあり、競い合うようにそこかしこで群生している。
一様に共通するのはその身の高さ。どれもこれもが百五十サントはあろうかという長身を誇っており、背の低い子供が隠れたなら見つけるのは一苦労に違いない。
また、森の中には、頭上から聞こえる甲高い鳥の鳴き声、聞くだけでその獰猛さに縮みあがりそうな獣の唸り、草木の間を素早く動く小動物の立てる物音と、彼らのこれまで耳にしたことがないような様々な音が響いていた。
彼らがそうして暫くの間、あっけにとられていると、森の中を笛を吹くような高い音が鳴り響いた。
途端。緑色の肌をした筋肉質な体つきをした二人の大男が現れて、木に絡まった蔦を伝わり奥へと飛び跳ねていった。
「ここはファーディヤー、様々な生命が生まれ、そして死んでゆく森の世界」

ウルザは続けて球体を操作した。

次に彼らの目にしたのは、見たこともない建築様式の建物が立ち並ぶ、黄金色に輝く荘厳な都市であった。
注意深く観察した者は、この街が石材と真鍮によって作られており、それがこの黄金色の町並みを作り出しているのだと気づくことができた。
また、彼らをして温度を感じることはできないのだが、見ているそこはよほど高温であるのか、目にする全てが陽炎に揺らめいて見えた。
その街が異様ならば、そこに暮らす人々もまた異様。
道を往く彼らの姿は一見すると人のように見えなくもない。
二本の足で地面に立ち、両の手を振って歩いてる。
だが、その姿を見てもまだ彼らが人間だと思える者は、この場にはいないだろう。ハルケギニア中を探してもいないに違いない。
なぜならば、彼らのその体は全てが金属でできていたのである。
そしてそれもまた真鍮。
つまり、この町は人も建物も真鍮でできていたのである。
「ここは孤独なる主人、ファティマ王女により創造された真鍮の都。憤怒の熱に焦がされる、強大な魔力を内包した街」


その場に止まって回転を続けている球体。ウルザはそこに指をかけ、何度目かになる操作を行った。
次の変化に身構える参加者達。
だが、次の瞬間彼らが目にしたのは未知なる世界ではなく、先ほどまで見ていたものと何ら変わったところのない、トリスタニア王城の円卓の間の風景であった。


魚人達が泳ぎ回る海底都市。
樹木が生い茂り、数々の生命が生きる密林のジャングル。
金属人が生活する真鍮でできた都。

どれもこれもが、彼らが知るハルケギニアには無い光景であった。
そしてそれらは、既に知識の外を飛び出して、常識の外の世界と言っても差し支えないものであった。
そして、彼らを驚かせたのはそれだけではない。
先ほどまで彼らが目にしていた光景を作り出していたウルザの魔法、これもまた彼らが知る魔法知識の中に無いものだった。

「あー、オホンッ」
驚きに声を無くしている一同の中、オスマンだけは驚くことは何も無かったというふうにして、落ち着いた声で喋り始めた。
「ミズ・エレオノール、我々が先ほどまで目にしていたあの光景、如何思われますかな?」
オスマンが口にしたことの意味は一つ。
諮問会の続きである。

この場がどの様な場所であったかを忘れていたのか、口を開いて惚けていたエレオノールは、オスマンのこの言葉で我に返った。
一瞬で気勢を取り戻して椅子から立ち上がるエレオノール。
しかし、その勢いとは裏腹に、彼女の口と表情は先ほどまでとは違い、どこか弱々しい。
「……水魔法の幻か、遠見の魔法の応用かと、思われます……」
そう口にする言葉も最後が虚空へと消えていった。
それも当然だろう、彼女自身が自分の口にした言葉が、どれほど馬鹿げているか分かっていたのだから。
例えスクウェアクラスのメイジであろうとも、先ほどのような緻密で精巧な映像と音響とを、同時に全員に見せるなどという芸当は無理に違いない。
これは言うならば失われた虚無や、先住の魔法の範疇。
アカデミーの手には余ると、そう判断せざるを得なかったのである。

先を続けられなくなったエレオノールが言葉を途切れさせる。
そしてこの沈黙を見取って、口を開く者があった。
これまで進行を静観に徹して一言も発してこなかった議長、アンリエッタであった。
「ミズ・エレオノール。ミスタ・ウルザが使った魔法がアカデミーで研究されている魔法の中にない、このことは確かですか?」
「いえ、しかし、女王陛下……」
「ミズ・エレオノール」
二度目、女王がエレオノールの名前を呼んだ。
そして、諭すような優しい声で、アンリエッタはエレオノールに語りかけた。
「あなたが疑いようもなく優秀な研究員であることは、報告を受けて知っております。
 しかし、我々は人、天に比べれば余りに小さな存在。そんな始祖ならざる人の身にあって、知らぬことがあることは当たり前なのです。全てを知り、全てを解き明かし、全てを説明できるなどというのは、人の分を超えた傲慢というものでしょう。
 ですから、私はありのままの、人であるあなたに問います。ミスタ・ウルザの使った魔法、それを知っていますか?」
語る目は為政者である以前の、汚れ無き少女の純真さでもって真っ直ぐに、エレオノールの瞳を見つめていた。
自分よりも年下の少女、末の妹と変わらぬ年頃の、貴族として忠誠を誓うべき……女王の眼差し。
宮廷に巣くう貴族達の濁ったそれとは全く違う、ひたむきさと誠実さを備えたその眼差し。
そんなものを向けられては、さしものエレオノールとしても、ありのままを口にする他は無かった。

「……いいえ、私の知る限りにおいては」
今度こそ、はっきりと口にしたエレオノールの言葉。
「それでは、今現在においてアカデミーが彼の言う『魔法』が存在しないと、積極的に否定する根拠は何かありますか?」
暫し考えを巡らせるエレオノール、だが、答えは最初から出ているも同然であった。
「いいえ、ありません」

それを聞いてアンリエッタは頷きを返す。
「それでは、『マナを用いた魔法』の是非に関しては一時保留とします。ミスタ・ウルザは後日、アカデミーに協力して『マナ』を使った魔法についての調査に協力して下さい。
 また、当会においては今後、暫定的にその存在を認めた上で進めていくこととします。
オールド・オスマン、こういう形で決着するのが一番手早い、そういうことでよろしいですか?」

その女王の言葉に、今度はオスマンが声を失う番となった。
確かにオスマンはここまで、一つの意志の元に誘導する意図で諮問会を進めてきていた。
あからさまで芝居ががかった仕草もその一環だったのだが、そのような形での進行は本来なら容認されがたいものであるはずである。
しかし、目の前の若き女王は、あえてそのオスマンが演出したこの流れに逆らうことなく、むしろ逆に自ら乗ると言ってみせたのである。

(やれやれ。ただの小娘じゃと思っておったが、これはもしやすると、歴史に名を残すとんでもない賢王になるやもしれんのぅ……)

「……賢明なご判断に感謝を」
胸中はおくびも出さずに、オスマンは言う。
対するアンリエッタは、自分もまた一人の役者であると主張するかのように、ゆっくりと頷いてみせたのだった。

                           私はあなたに命を救われたのです! おお! 聖女ルイズ!
                                       ―――モット伯からルイズへ


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