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ゼロの登竜門-06

ゼロの登竜門 第三章 その1『tune the rainbow』


空は快晴、陽光はさんさんと輝いている。
突如空に現れた青き影に、レコン・キスタ軍は戸惑いを禁じ得ない。
大陸の端に存在する、ニューカッスル城で繰り広げられている最後の戦い。
晴れ晴れとしたその日差しを嘲笑うかのように、精細な雨粒が戦場へと降り注いでいる。
その光景を冷たく見下ろすのは青き竜。桃色の髪の少女。
高さにしておおよそ50mほどの位置に浮かぶ、兵士達にはみたこともない不思議な生き物に乗っている。
「下がりなさい、薄汚いレコン・キスタ。我らはトリステインとアルビオンを繋ぐ虹の化身」
少女の名はルイズ、そして彼の乗る青き竜の名はキング。
天を掛ける空の王。天候すら変える力を持つ強大なる存在。
そしてそのキングは、高らかに響く少女にじっと耳を澄ましている。
敵兵もがそんな光景に見とれ、雨が降っている事を気に止めない。
「引きなさいレコン・キスタ。そしてあなた達の総大将に伝えなさい。無駄に兵を失いたくなければ武器を納めよと。戦争をやめよと」
ルイズの声が、ウェールズの風の魔法によって戦場一帯へと響き渡る。
レコン・キスタは誰が喋っているのかはわかっていない、キングの背に乗るルイズの姿は、対比して非常に小さく、見えなかったからだ。
しかし、その存在を、王党派の貴族は理解した。
青き竜、イーグル号のマストを飛ばしたあの青き竜を見違える者などいやしない。
そう、たとえイーグル号に乗り合わせなくても、昨日帰還した者からその話は誰もが聞いている。
トリステインからの使者。麗しの桃色、ミス・ヴァリエールと。孤高の金、ミスタ・グラモン。
彼らがここにいることは、おそらくウェールズ皇太子も一緒だろうと推測できる。
頭上に輝く陽光が彼女らの影を大地に映し、そして影はその周囲に七色の光を纏う。


警告を無視し、地上の傭兵は矢を放ち、メイジ達は魔法を放つ。
すかさずウェールズが風の魔法でそれらを吹き返す。
弾かれたそれらは戦場に降り注ぎ、悲鳴が聞こえるが気にする事じゃない。
予測していたこととは言え、ルイズは軽く溜息をついた。
そしてキングを魔法も矢も届かない位置へと浮上させた。
「殿下。キングの好きにさせます。城まで引くように兵に伝えてください」
「あ、あぁわかったよ。君達も無理をしないようにね」
ウェールズはそう答えて、フライを唱えてニューカッスルの中庭へ下降する。
降りてきたウェールズの姿に部下が駆けつけた。
「殿下! あれは……ミス・ヴァリエールの使い魔ですね? なぜ殿下があちらへ?」
その問いを筆頭にひっきりなしに投げかけられる部下の言葉を、ウェールズは手を振ることで制した。
「……全軍一時撤退を命令。キングが何かをするようだ。ここは彼らに任せよう」
ジェームズ一世が討ち死にしていることが伝えられ、ウェールズは悲しげに目を伏せた。
父が死んでいるならばその時点で王位はウェールズに引き継がれる。
「アルビオン王国! 国王ウェールズの名において命ずる! 王党軍全軍撤退せよ!全軍撤退せよ!」
ウェールズの言葉は高らかに復唱され、戦場へと伝えられる。
しかし撤退戦は非常に過酷だ。敵に背を向けるため完全に無防備になる。
しかも敵の数は50000、こちらは既に200。
一体どうやって彼らは勝つというのだろうか。

背中にヴェルを、そして両手にダンデを抱いて、ダンデの頭に額を付けてギーシュはじっと瞑想していた。
使い魔との意思の疎通、視界を共有すると言うモノはメイジならば誰でも出来ること。
しかし、ヴェルダンデの場合は複眼。人間の視界との余りのギャップにギーシュは断念せざるを得なかった。
早い話、非常に酔ったのである。
そして今、ギーシュが行っているのはダンデの思考を読み取るということ。
成長した己の使い魔がどんなモノなのか、二つに増えた使い魔がどんなモノなのかを。
幸い、使い魔のルーンは両方に刻まれていたため問題はない。
そしてソレを羨ましそうに見つめるルイズ。
自分もマネをしてぴとりとキングに額を付けるが、何を考えているのかわからない。
ギーシュに気付かれないように頬を膨らませた。悔しい。
(そりゃぁ、ヴェルもダンデも格好良かったけれど……でもでも、フーケのゴーレムを破壊したりワルドを………氷漬けにしたのもキングなんだから)
(キングの方が上よ、うん、絶対、だから視界の共有とか意思の疎通とか出来なくても問題ないわ)
(キングはわたしの考えてることわかってくれてるみたいだし)
「君の方はどうだい?」
「へっ? なにが?」
突然ギーシュに話しかけられ、ルイズはわけもわからず首を傾げる。
ギーシュはそんなルイズの動作に怪訝な顔をした。
「なにが……って今キングと話してたろう? キングはなんて言ってたんだい?」
ミラレテタ。
話できなかったことを必死で誤魔化そうと、ルイズはわたわたと手を振った。
「そ、そうね、うん問題ないって、自分に任せて欲しいって言ってたわ。ホントわたしの使い魔はとってもお利口さんね」
ほっほっほと白々しく笑うルイズにギーシュは少しだけ眉を顰めたが。追及しても仕方ないのでとりあえず納得した。
雨が、強くなった。


砲撃は止んでいる。
この城に攻撃するどころじゃなくなっているのだろう。
それにしても五万もの大軍と、あのロイヤル・ソヴリン号を足止めするとは。
100人どころではなく、たった二人でさえわからなくなった。
希望を持つのは悪いことだろうか?
ふとその時、見慣れぬ人がそこの城の角を曲がっていくのが見えた。
黒髪の。青い服を着ている少年……だろうか? 後ろ姿だったから年齢は判断付かなかったが。
捨て置いてもよかったが、何となく気になったので、ウェールズはその角へと向かう。
もちろん、ワルドのような不埒モノである可能性も捨てきれないため、杖は抜いたまま。
「君…………?」
通路に体を見せるのと同時に杖を前に掲げたが、そこには何もなかった。
ただ、壺や絵画、ガーゴイルなどの美術品が置いているのみ。
「……見間違いだったのかな?」
通路の先はおおよそ100m、向こう側まで扉は皆無、曲がり角までしっかり見える。
ちょうど反対側から部下が現れたので、風の魔法を応用して言葉をやり取りする。
誰もここから来ていないらしい。
すぐ傍らにあった銅像に手を置きながらウェールズは考える。
見間違いだったのか。違和感を拭いきれないながらも無理矢理納得することにした。
不意に、銅像の傍らに剣を見つけた。長さにして150サントほどある。誰のモノだろうか。
誰かが置き忘れたのか。そう言えばさっき見えた少年が背負っていたモノか?
ディテクトマジックをその剣にかける。反応無し。罠では無さそうだ。
柄を握って軽く抜いてみると、錆びた刃が姿を現す。
一瞬、持っていくべきかどうかを悩んだが。丁度部下に呼ばれ、結局ウェールズは剣をその場に置いて廊下を通り抜けた。
持ち主がいるならば動かしたら困る場合もあるだろう、そう判断してのことである。
誰もがいなくなり、空気すらも止まったその時。さっきまで触れていた銅像がドロリと溶けた。

「おまたせ~」
と言ってやってきたのはタバサとキュルケだった。
キングのすぐ側でシルフィードがホバリングして停止する。
ほぼ二日遅れでやってきたのは、タバサの服の確保に手間取ったかららしい。
急ぐからと言ってたたき起こし、パジャマのまま連れてくるから。せめて着替えるまで待ってあげればよかっただろうに。
当のタバサは特に気にしていないらしかったが、せっかくアルビオンに行くんだから相方がそんな格好では締まらない。とキュルケの談。
タバサは相変わらずシルフィードの背に乗って本を読んでいる。結局着ているのはキュルケやルイズと同じ学院の制服。
「って言うかあんたの使い魔って一体何なのさ」
シルフィードの足にぷらーんとくくりつけられているのは土くれのフーケだ。
全身をグルグルと縄で縛られている。そしてその縛り方はとても官能的だった。
いわゆる亀甲縛りの形である。フーケの豊かな胸がその縄によって強調され、ギーシュがそれをガン見している。
「………ツェルプストー。あなたいったいなにやってんのよ……」
「ふふん。どぉ? 召喚されし書物に書いてあったのものを思い出しながら縛ってみたのよ」
胸を張ってのたまうキュルケに、ルイズは溜息をついた。
「これだからゲルマニアの女は下品だって言うのよ……」
「あら、何事も経験よ?殿方を魅了するためならどんな手段だって身に付けておいて損はないわ」
キュルケの言葉にルイズは何も反論せず、ただフーケからぷいっと視線をそらした。
両手両足を背中側へとまわされ、しかもそれを縄で結び、それを更にシルフィードの脚に繋いでアルビオンまで来たのだろう。
いくら敵とは言え、あんまりな仕打ちにルイズは同情を禁じ得なかった。
「フーケ大丈夫?」
「大丈夫なわけ有るか! あたしにこんな趣味はないよ。ったくあんたからも言っておくれよ。杖も持ってないし逃げやしないからほどいてくれ、って」
「ほどいてもあたしは構わないけど……一旦降りないとダメよ?」
キュルケにそう言われ、フーケは眼下を望む。
レコンキスタの軍がこちらを見上げている。無理だ。
やれやれとフーケが悪態をつく。
「ったくとんだ災難だよ……おや、あの色男はどこ行ったんだい?」
フーケが言うのはワルドのことだ。
ワルドがいないことにキュルケとタバサもようやく気付き、顔を上げる。
「ワルドは裏切り者だったわ……仮面の男がワルドだったのよ」
ルイズが言うと、タバサはもう興味が無さそうに本に視線を降ろし、キュルケも一言「そう」と言うだけだった。
「ところでギーシュ、それは?」
キュルケが指差しているのは、腕の中のダンデである。
「あぁ、成長したんだ。そのおかげで子爵を撃退できたんだ」
と言いながらもギーシュはフーケから目をそらさない。ルイズがぽかりと頭を叩く。
「ずいぶん大きいわね……でもあんた抜け殻なんで背負ってるの?」
無理もない、背中のヴェル、抜け殻も動くと言うことはその目でみないことには予想も出来ないだろう。
「こっちも僕の使い魔なのさ」
そう言って肩を振るわせると、ヴェルが身震いしてゆっくりと背中から離れた。
「ほらね? あぁ背中の隙間から中は覗かない方が良いよ、立ちくらみするから。魂でも吸い込んでいるのかな? はっはっは」
そう言われると覗きたくなるらしい。キュルケはそっと手を伸ばしてヴェルを抱き上げ、くるりとひっくり返して……。
もう少しでシルフィードから落ちるところだった。
風が、吹いてきた。

門扉は既に内側から閉ざされ、番兵は内側にのみ存在する。
敵、レコンキスタは空に在るキングに気を取られてニューカッスルに注意をおいていない。
不意に、番兵は城から出てきた少年に気付いた。
少年? 確かに少年だ。
身長は170サントを少し超えたくらいだろうか。鞘に収めた大剣を背負って苦もなく歩いている。
「まて! 外に出てはダメだ。ミス・ヴァリエール嬢が……」
そこまで言ったところで。タン、と地面を蹴って少年は跳躍する。
7mを超える門扉を、魔法を唱えることなく飛び越えた少年に彼らは唖然とするばかりだった。
城から出てきた少年に、レコン・キスタの傭兵達が気付く。
少年は肩に背負った剣に右手を伸ばし、わずかに抜いた。
その状態で固定。鍔が空気に晒される。
そしてその鍔がカタカタと動き、声を発した。
「相棒。良いのかい? あの王子さん見逃して」
「なに言ってんだよデルフ。偵察で良いって言われたじゃんか。闘えっていわれてねーし」
「じゃぁ今目の前にいる連中はいいのかい? 連中は旦那側の人間だぜ?」
「それも問題ねーよ。闘わねーし」
喋る剣。一般的にはインテリジェンスソードと呼ばれ、自らの意思を持つ武具である。
と有ることがきっかけで出会い。剣の方が少年を「使い手」と呼び売り込んだ経緯がある。
彼自身は本来武器を持つことは必要としていなかったが。あまりにもしつこいので、結局購入してしまったのだ。
ちなみに剣の料金は彼の主の元に請求するように伝えた。それを伝えたら武器屋の店主は驚きのあまりひっくり返ってしまったが。
少年の意図が掴めず、デルフと呼ばれた剣がなおも話しかけてくる。
「じゃぁどうするってんだ? まさかアレをあいてにしようってんじゃねーだろうな?」
デルフが言う『アレ』とは、はるか頭上の彼方に浮遊する青き存在だ。
「無理無理。一応挨拶しておきたい気もするけど、お楽しみはあとにおいとこーぜ。それに、じつはおれご主人から言いつけられてたこと有るんだよ」
「へぇ! そうだったのか。オレに内緒にしとくたぁ、チィッとばかし寂しい気がするが許す。お前は相棒だかんな」
デルフの軽口に、彼もその表情に笑みを浮かべる。
ただ、いまいち笑い方を知らないような、そんな歪な笑みではあったが。
「ご主人もあまりこの戦い気にしてないみたいだしな。クロムウェルが何かするんなら勝手にさせておけ。みたいな感じだし」
「クロムウェルってーと。レコンなんたらっていうのの親玉だっけか。しっかし旦那も何をしたいのかさっぱりだねぇ」
「さっぱりでもご主人の言うとおりに動くのがオレの仕事で。相棒のお前の役目だろ」
「違いねぇ」
彼の言葉に、デルフが愉快そうにカタカタと振るわせる。
「それじゃ。帰るか」
「んだぁな」
恒例となっているデルフとのお喋りを彼は打ち切る。
レコン・キスタは、たった一人で出てきた少年を警戒して攻撃を放ってこない。
ただでさえ雨が降っている中、頭上に気を取られているのだ、仕方ない。
しかしそんな彼らを無視するように、少年はすいっと空を見上げた。
そしてじい、と翼を持つ龍、タバサの使い魔『シルフィード』を見つめた。
正確には、その翼、を。



浮遊大陸であるはずのアルビオンに雲がかかる。
凝縮されたその雲はやがて太陽を覆い、大粒の雨を降りそそがせた。
タバサは変わらぬ表情のまま本を収めた。この状況では読むのもままならない。それどころか本自体を傷めてしまう。
狂喜乱舞したのはルイズだ。まさか己の使い魔がこんな事まで出来るとは思ってもいなかった。
使い魔召喚からコレまで、物事はとんでもない勢いで好転している。
そしてルイズの心の中にはもっと立派にならなくてはと言う思いがすくすくと成長する。
その凛とした眼差しは、仇敵であるキュルケもが思わず見とれて、微笑みを浮かべてしまうほど。
仇敵であるというのは、かつてのヴァリエールとツェルプストーの戦いの歴史が理由で、実際のところキュルケ自身はルイズに悪感情は抱いていないのだ。
ただルイズが悪感情を向けてくるから、ついついからかってしまうのだ、可愛い妹のような感覚が近いだろう。
けれど、コンプレックスの塊であったルイズの顔はもう見えない。その顔は自信に満ちあふれ、そして素晴らしき決意が遠くを見据えている。
それがキュルケは嬉しく、同時にほんの少し寂しく感じられるモノであった。ルイズには口が裂けても言えないことであるが。
「……何よツェルプストー。気色悪いわね、にやけて」
「あらそぉ? あたし笑ってた?」
ルイズの言葉をいつものようにあしらうと、ムキになって口を出してくる、こう言うところは相変わらずだ。
「笑ってたわよ。コレが戦争だって事わかってるの? こんなときによく笑えるわね」
ルイズの言葉にキュルケは眼下を望む。
大粒の雨がボタボタと地面に落ち、地面を沼地のように変質させる。
レコン・キスタは全身が濡れ鼠のようになり、時折落ちる落雷が水たまりを介して走り抜ける。
「一方的じゃない」
「……コレでも手加減してる……のよね? キング」
大雨を降らせ、それと一緒に何度も雷を落とし、敵軍を攻撃する。キングが行っているのはそれだ。
敵の攻撃は当たらない。ただこっちは上からモノを落とすだけ。一歩間違えれば虐殺行為だ。
しかし見た限りでは倒れたり落雷でしびれたりしている者はいるみたいだが、死者はいない……とおもう。ルイズは自信が持てなかった。
「ねぇキング。雷も良いんだけどもうちょっと穏便にできない?」
ルイズがキングの頭をぺしぺしと叩いてそう言うと、キングはあまごいを止めた。
そして、真紅の瞳が眩く光り、静かに低く遠く、叫び始めた。
雨は止み、そして世界の温度が低下する。
空気中の水蒸気が瞬く間に凍結し、雪へと変わる。
気圧の差によって風が吹き荒れだし、生み出された雪は吹雪となりて戦場へと襲いかかる。


しとしと振る雨は沈む世界。がらがらと落つる雷は猛る世界。さわさわと吹く雪は閉じた世界。
レコン・キスタは、もはや自分たちが何と闘っているのかわからなくなっていた。
いや、コレはもはや戦いなどと言うレベルではない、雨を降らし雷を落とし、そして雨を雪へと変えたこの広範囲に至る魔法!
メイジなどではない。まさしく『異常』としか言えないこの事態を引き起こせるメイジなど。どれだけかき集めたって出来るはずがない。
「……引きなさい。レコン・キスタ……」
背筋をぞくりと撫でる幼い声。はるか上空に有る青い影。
何処からか現れて瞬く間に戦場を支配してしまった。アレは一体何だというのだ。
魔法は届かない。影に乗っている何者かが散らしてしまう。
メイジの使い魔? だとしたらそんなモノを使役するメイジとは一体どれほどの実力を持っているというのか。
傭兵が矢を射るが、それもやはり届かない。それどころか弾かれた矢が地面に落ちて仲間に刺さる始末。
レキシントンからの竜騎兵が出撃するのも見えたが、そちらも近づくことすら叶わず、曇天からの落雷によって叩き落とされた。
もはや、意地など無意味、このままここにいたら落雷に撃たれ黒こげになるか、吹雪に巻かれて凍死するかの未来しかない。
「冗談じゃない! こんなところで死んでたまるか!」
誰かが言ったセリフが呼び水となり、金で雇われた傭兵はもちろん、貴族の連中も我先にと逃げ始める。
そしてこの好機を逃がさないと見たのが王党派。
ニューカッスルの門扉が開かれ、王軍が戦場へ踊りだそうとするのも、そして頭上から一つの影が飛び降りたことも。
レコン・キスタは、もはや気にしている場合ではなかった。

「ねぇキュルケ……わたし考えたんだけど……」
「何よ」
吹雪にまかれ逃げまどうレコン・キスタを見下ろしながらルイズは呟いた。
そしてキュルケはそのルイズに視線を向けて答える。
「なんのために、戦争ってするのかしら」
「……あたしにはわかんないわよ。軍人じゃないし」
「愛する人の為に敵を殺して。そして殺した人にも愛する人っているはずなのよね」
「まぁ……そうね」
レコン・キスタはもはや軍としての体裁を成していない、総崩れの状態だ。
当然だろう、雨を降らし雷を落とし吹雪を起こしたのだ。
しかし、ルイズの心はさっきとはうって変わって沈んだ状態だ。
さっきまではキングがやったことに大喜びだったのに。戦争について考えた途端一気に沈んでしまった。
アンリエッタからの頼み、ウェールズの誇り。勝ってるのに、嬉しくない。
人は、人を愛するべきだ。そして愛する人を奪うべきではない。結局はそう結論づけた。
それは、ルイズが女の子故の未熟さから来るモノなのか、女故の強さから来るモノなのか。
彼女自身ですらそれは判らない。でも……。
『彼女』はそう望んでいるはず。ならば友達としてすることは一つ。
ルイズはギーシュに声をかける。
「ギーシュお願い。これから言うことをウェールズ様に伝えてきて欲しいの」
「何なりと、ミス・ヴァリエール。女性の頼みと有れば如何なるモノであろうと断らないのがグラモンの教えなのだよ」
こんな時にでも調子を狂わさずキザったらしいことを吐く。そんなギーシュにルイズは苦笑しながら、伝える。
眼下のニューカッスルの門が開こうとする。戦況が優位なうちにレコン・キスタを一人でも多く討ち取ろうと考えたのだろう。
けれどダメだ、キングの攻撃は敵を選ばない。雷は狙い撃ちに出来るが吹雪はそうは行かない。そして……。
あまごい。かみなり。ふぶき。起動した破壊の小箱、最後の一つをキングは発揮する。


「雨は夜更け過ぎに、雪へと変わるだろう……」
「相棒、なんだねそれは」
少年が唐突に口にした言葉をデルフが尋ねる。
「いや、昔あった歌のフレーズなんだけどよくは覚えてねぇな、サビとイントロくらいしか」
「へぇ! 歌か。そういやオレも相棒のことよくわかんねぇな。元いたところどんなとこだったか教えてくれよ」
「そうだなぁ……オレが元いたところか。一言じゃ言い表せねぇなぁ」
「断片でもいいさ」
「とは言ってもオレもあんまりあちこち行った訳じゃないし。前のご主人に捕まって住処から離れたくらいだからなぁ……」
捕まる。住処。相棒が語る断片的な単語を、デルフは理解することが出来ない。
「前のご主人ってどんな奴だったんだね?」
「こんな奴」
そう言って、彼は自分自身の顔を指差した。
「ハハハッ、なるほど、自分の主人は自分自身って奴か。相棒言うねぇ、かっこいいぜ、しびれるぜ」
デルフは都合よく解釈し。少年は否定も肯定もせずにただうすく笑うだけ。
そして、『ぱんっ』と音を立てて彼の背中に一対の翼が生える。
そう、それは頭上にて羽ばたく竜の物と全く一緒。
タバサの使い魔、シルフィードの所有する皮膜の翼。
「相棒ってそんなことも出来るのかい」
デルフの言葉に彼は応えず、ただ背中から剣を外して両腕で抱え、パチンと納刀する。
そして一度バサリと翼が動くと、彼の体がふわりと浮いた。
背後の門扉が開かれようとしている。レコン・キスタは総崩れで撤退しようとしている。
長居は無用、さっさと帰る。
頭上にいるルイズたちに見つからない程度、レコン・キスタに標的にならない程度の高さへ、少年は飛び上がった。
そうだ、もう少し撤退しやすくしてやろう。
そう思い至った少年は深く息を吸い込んで、叫んだ。

「殿下……いえ、陛下……」
「ミスタ……」
傍らに二体の使い魔を従えたギーシュがふわりと門扉の前に降臨する。
「……ありがとう、君達のおかげで我ら王党派はレコン・キスタに一矢報いることが出来る……今なら勝てないまでも……」
「違う、とのことです。陛下」
ギーシュの言葉にウェールズは眉を顰めた。
「レコン・キスタはもはや総崩れ。逃げるなら今です、陛下。イーグル号に乗って脱出するよう命令を」
ルイズからの伝言、それは徹頭徹尾変わらなかった。
ウェールズの思いがわからないわけではない。ただそれでもルイズは友達を、アンリエッタの意思を尊重した。
ならば、不肖ギーシュ・ド・グラモン。我が友ラ・ヴァリエールのために一肌脱ごうではないか。
そう、ギーシュの心の中は既にできあがっている。
たとえどんな手を使っても、ウェールズに首を縦に振らせてみせる。
「それは………………」
長い沈黙のあと、ウェールズはそれでも「出来ない」と答えた。
「なぜです? 敵は撤退を始めています。逃げる敵を背後から刺すのですか?」
「それは……」
言葉に詰まったウェールズに、ギーシュはその薔薇を振ってキザったらしく言った。
「ウェールズ陛下。アルビオンの礼儀や風習と言ったモノはあいにく不勉強故に存じ上げません」
ですが、とギーシュは言う。一国の王を相手取っているのにギーシュは決して引かない。
「背を向けて逃げる相手を、あえて追うということは、いささか美しさに欠けるというモノではないでしょうか?」
ギーシュの言葉は、戦争のなんたるかも知らない若造のセリフ。そんなモノ一笑に伏してしまえばよかったのに。
けれどウェールズはそれが出来なかった。その言葉が、自分たちを案じているが故に、紡がれる言葉だと理解しているが故に。
「ぼくは棘なんだ。外敵から友を守り。そして敵の多いとわかっている外界へ、解き放つわけにはいかないんだ」
それでも渋るウェールズに、ギーシュは宝刀を抜いた。
「ならばこう言おう。アルビオン王国国王。ウェールズ一世に申し上げる。『この戦いはわたし達の勝ちである。敗者は勝者の命に従うべきである。よって国王陛下は我々の捕虜にさせていただく』だ、そうです」
ギーシュの言葉に、ウェールズは呆気にとられ言葉を失った。
そして唐突にぷっと吹き出して大声で笑った。
「それは、ミス・ヴァリエールの入れ知恵かい?」
爽やかな笑みを浮かべてそう言ったウェールズに、ギーシュも同じような笑みで応える。
「芯の強さは。ぼくらより彼女らの方が上ですよウェールズ様。到底真似できません。さぁ、行きましょう陛下。アンリエッタ姫殿下がお待ちです」
すっとギーシュは右手を前に出した。口に薔薇をくわえながらのその動作だが。もはやキザを通り越して笑いの呼び水にしかならない。
もっとも、そんなギーシュを笑える者など一人としていない。
「了解した。敗者は勝者に従おう、ミスタ・グラモン。アルビオン王国軍所属。国王ウェールズ・テューダー。我が杖にかけて捕虜となることを宣誓する……コレでいいのかい?」
杖を掲げてウェールズはそう宣言した。
ギーシュが笑った。



説得は成功したようだ。降りたギーシュが両手を振っている。
そしてルイズはキングをぺしぺしと叩くと、ゆっくりと下降し始めた。
隣のタバサのシルフィードもそれに伴い着地する。
「うぺ」
「ご苦労様」
「おやすい御用さ」
ルイズの労いの言葉を、ギーシュは薔薇を振りながらさも当然と言った風に応えた。
そのギーシュの左手には杖が。ウェールズの杖が握られている。
一応名目上は捕虜という建前、杖を預かる必要があったらしい。結局直ぐ返すのだが。
二人ともフライを唱え、キングの背に乗り移ってその背びれに捕まる。
その途端、世界が揺れる。
目の前のニューカッスルの輪郭がぶれている。
ゴシゴシと誰もがまぶたをこすったが、そのぶれは止まらない。
それどころか低い轟音が断続的に鳴り響き始めた。
彼らはわからない。空に浮くが故に大地の振動を逃れられていることに。
ニューカッスルの外壁にヒビが入る。塔の煉瓦が砕ける。
「キング! あなたね!?」
一瞬何が起こっているのか誰もがわからなかったが、ルイズの声で覚醒する。
雨。雷。雪ときて今度は大地を揺らしたのだ。
ルイズは、キングが何をしても驚かないようにしようと、今この時決意した。
キングがすることでいちいち驚いていたら、身が持たない。
それよりも驚くべきは破壊の小箱だ。一体どういう仕組みになっているのだろうか。
いまいちどんな効果があるのかわからない。アナウンスの意味がわかれば良いんだけれども。
唯一わかるのは『ポケモン』という単語がキングやヴェルダンデといった生き物を指すことぐらいだ。
小箱はまとめて袋に詰めてキングの口の中に入れている。長い牙に結びつけて落ちないように。
その時だ、破壊の小箱の入った袋をキングの口の中から引っ張り上げた際、変な音が聞こえた。
「キュルケ今何か言った?」
「なんのこと?」
そう返したキュルケの顔は、ホントになんのことかわからないといった様子だった。
けれどやはり聞こえる。コレは音ではなく……声……か?


              序章。

これより我が知りし真理をこの唄に残す。この世の全ての物質は、小さな粒より為る。
四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。
その四つの系統は、『火』『水』『風』『土』と為す。

神は我に更なる力を与えられた。四の系統が影響を与えし小さな粒は、更に小さな粒より為る。
神が我に与えしその系統は、四の何れにも属せず。我が系統は更なる小さき粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。四に非ざれば零。零即ちこれ『虚無』。
我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん。

これを聴けし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐ者なり。
またその為の力を担いし者なり。『虚無』を扱う者は心せよ。
志半ばで倒れし我とその同胞の為、異教に奪われし『聖地』を取り戻すべく努力せよ。
『虚無』は強力なり。また、その詠唱は永きに渡り、多大な精神力を消耗する。詠唱者は注意せよ。
時として『虚無』はその強力により命を削る。従って我は聴者を選ぶ。
例え資格無き者が指輪を嵌めても、この唄は詠われぬ。
選ばれし聴者は『四の系統』の指輪を嵌めよ。されば、この唄は汝に届かん。

以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を託す。
初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン』

             ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ



音源を探り、ルイズは袋から小箱を取りだした。
破壊の小箱とは違う色、形をした色あせた小箱。
歌はその小箱からひっきりなしに聞こえてくる。
「なにその汚い箱。それも破壊の小箱なの?」
ちがう、破壊の小箱はこんな形じゃない。これは、なぜこれが混ざっているのだ?
指にはめた水のルビー。アンリエッタからもらった宝石が燦然と輝いている。
「キュルケ、聞こえないの?」
「だからさっきからなんの話よ」
聞こえていない。隣のタバサに視線を向けると、彼女もふるふると首を振った。
聞こえているのはわたしだけ、なら、わたしが…………?
ドクンと心臓が大きく鼓動するのが自分でもわかった。
ずっとわからなかった、失敗続きだった自分の魔法。まさか、まさかこんなところで……!
「それは……『始祖のオルゴール』かい? なぜそれがここに?」
その小箱を見たウェールズが、怪訝そうな顔をしている。
「始祖のオルゴール? 国宝じゃない。なんであんたがそんなモノ持ってるの」
キュルケの言葉にルイズは首を振った。知らない。
破壊の小箱は、お使いに行く際に必要になると思い。貸してもらえるよう、アンリエッタに頼んだ物だ。
必要になるだろうから、と言うことで借りた。そしてアンリエッタは快諾し、翌朝にオスマンから直接受け取った。
と言うことなら、オスマンが間違って入れたのだろうか。にしても国宝を間違えて入れるとは、常識では考えられないことだが。
唄はエンドレスで唱えられる。
「ねぇ、ルイ……」「しっ、黙って……」
キュルケの言葉をルイズが短く遮った。
じっとその唄に耳を傾ける。そしてそんなルイズを怪訝そうに見つめる一行。
「…………わたしの系統……わかったかもしれない……」
ルイズはそう言って、レキシントン号を睨み付けた。
「タバサ。二人をお願いできる?」
ルイズの言葉にタバサは怪訝そうに首を傾げたが、一言「大丈夫」と答えた。
「ギーシュ、陛下。シルフィードへ移ってもらえますか?」
ルイズがいったい何をしようとしているのか、未だに誰もがわからない。
しかししいて反対することでもない、移って欲しいと言われれば、移る。
そしてルイズはキングをペしペしと叩いて飛ぶように指示する。
二対四つの視線は、じっとレキシントンを見つめる。
判明した系統、それが本当ならば、今までのアレは失敗などではなく。
「ねぇ始祖ブリミル。あんたヌケてんじゃないの? この指輪がないと『始祖のオルゴール』は聞こえ無いんでしょ? その聴き手とやらも。注意書きの意味無いじゃない」
けれど、聴き手を選ぶという文句。ならば聞ける自分が、聴き手と言うことになるのだろう。
歌が聞こえる、聞こえるのならば呪文も効果がでるかもしれない。
初歩の初歩の初歩、『エクスプロージョン』。
キングはなおも飛行し、レキシントンの頭上、大砲の届かぬ位置に躍り出た。
そして唱える。
遥か彼方の空の下で。
既に雨は止み、雲は切れて陽光が大陸に差し込んでいる。
邪魔する者は誰一人としていない。それどころか今その場所はたった一つの存在によって掌握されていた。
青き空の王。虚無に目覚めし少女。
そして、呪文を完成させたルイズはその破壊の威力を理解する。
眼下にあるのは巨大な船、それに乗る人間の姿もはっきりと見える。
この呪文に巻き込む全ての人を、理解した。
そして少女は選択する、殺すか、殺さぬか。破壊すべきはいったい何か。
きゅっと瞳を閉じて、そしてゆっくりと開いた。
鳶色の瞳はなおも決意に満ちあふれている。
破壊すべきは、敵の巨船『レキシントン』号。
ルイズはその杖をぎゅっと握りしめ、力強く振り下ろした。

遠くレキシントン号の上空へと躍り出た使い魔と、その主を目で追っていたその時だった。
「ちょっとあんたら、降りたんだったらこれほどいとくれよ」
シルフィードの真下からそんな声が聞こえる。
その声に気付いた四名はそちらへ視線を向けた。
亀甲縛りでシルフィードの脚にくくりつけられていたフーケだった。
先程着地した際に、ついでに地面に降りたような形になっている。
ただ、雨によって出来た泥水が口に入ったのか、しきりにぺっぺと吐いていた。
「どうする?」と決定権のないギーシュがキュルケに訊く。
「そう言えばなぜ彼女は縛られているんだい? いったい何を?」
事情を知らないウェールズがそう訪ねた。
その質問に、フーケが盗賊であったことを説明する。
「なるほど……しかしもう杖は奪っているのだろう? ならばほどいても良いんじゃないかい?」
「でしたら王子様……今は陛下でしたかしら? どうぞなさってくださいな」
キュルケの言葉にウェールズは頷き、シルフィードから降りる。
そしてまずは脚にくくりつけられていたロープをほどいた……が。
「これは……何処からほどいたら良いのかな……?」
困り顔でウェールズがキュルケを見上げる。
全身に巻き付かれた縄が、ローブを纏ってるとはいえ豊満なフーケのカラダを強調していたのだ。
さすがにむやみに触れるのは躊躇する。
「アンロックで構いませんわよ」
キュルケの言葉に従い、ウェールズは「縄よ解けよ」と、アンロックのコモンマジックを唱える。
すると、きつく締められていたはずのロープが独りでにしゅるしゅると解かれた。
自由になった体を起こし、フーケは立ち上がって固められていたカラダをほぐす。
「ったく……とんだ災難だったわよ……なによ」
腰に手を当てたり肩をグリグリと回しているその時、顔をじっと見つめるウェールズの視線に気付いてとっさに隠した。
「……君……何処かで会ったことないかい」
その言葉にフーケが小さくピクリと肩をすくませる。
そしてゆっくりと振り返ってにっこりと笑った。
「あたしゃしがない盗賊風情さ、一国の皇太子なんかと面識なんざ有るわけ無いね。他人のそら似じゃないのかい?」
そういうフーケの頬には、頬に付いた泥が目の下までぐるっと模様のように引き延ばされていた。
たった今、顔を隠したときに付けたのだろう。
「そうか……いや……。そうだ、思い出した。ミスタ・サウスゴータ!」
突然のウェールズの叫びに、フーケは肩をすくませ、キュルケが、タバサが、ギーシュが視線を向けた。
思い出したのは、かつて何度か面識のあった叔父の部下。
兄に王位を譲り、そして自らは大公としてトリステインのサウスゴータ一帯の広大な土地を納め、財務大臣を担っていた叔父君。
そしてその腹心とも言える、部下。
「それじゃぁ……まさか、まさか君は……マチルダ・オブ・サウスゴータ……なのか?」
その名が呼ばれたとき、フーケは奥歯をギシリと噛んだ。そしてウェールズに顔をそむけたまま「違う」と力なく言った。
「いや……間違いない、思い出した。五年前父上の誕生会に叔父君の紹介されたサウスゴータ公。その時に会っているはずだ。眉の形が父親似だと……」
「……それ以上は。何も言うな」
フーケの絞り出すような言葉に、ウェールズは言葉をそこで切った。
そんな二人を、誰もが神妙な顔で見つめていた。
貴族の名を追われた、と言ったあの時のフーケの言葉を、キュルケは思い出す。
まさか、フーケが元公爵家の娘だったことにも驚きだったが。その爵位を奪うことになったその理由が想像付かない。
タバサも興味が無さそうに本を開きながら、そのページがさっきから一つもすすんでいない。
「………あー……ミス・フーケ。いや、ミス・マチルダかな?」
「……どっちでも良いさ。いまさら名前なんて」
「いったい、昔の君達に何があったんだい」
空気を読まずに、ギーシュが好奇心からそう訊いた。キュルケが「このバカ」と眉間にしわを寄せて表情を作る。
「……昔の話さ。四年前のアルビオン王国の大スキャンダル。その火消しのとばっちりを受けただけってのことさね」
フーケはそう言って、ローブに付いた泥をパンパンと払った。
そしてそのまま立ち去ろうとしたところで、キュルケがレビテーションで浮かした。
「なにすんのさ」
「それでもあなたが盗賊だったことには変わりないでしょう? トリステインに戻ったら再度衛士に引き渡すわ」
視界の端では、白い光がレキシントン号を蹂躙している。
やれやれ……次から次へと厄介なことが起こるモノだ。
フーケをシルフィードに乗せ、キュルケは深く溜息をついた。



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