あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

零顧の礼

               「ゼロのルイズにつきあうだけ、時間の無駄ですよ」



周りがどっと笑った。
「ヴァリエールは進級出来なかったため、退学。それで良いじゃないですか」
「なんと」
「大体、ルイズが学院にいること自体、何かの間違いなんですよ」
「いや、待つんだ君達」
「違いない、違いない」
背中に、浴びせられる罵倒。
コルベールが止めようとしたが、その声もかき消されていく。
コルベール先生。不甲斐ないばかりに迷惑をかけて、申し訳ありません。とルイズは内心で詫びた。
ゼロ。それは、生まれてこの方、一度も魔法を成功させたことのない自分に、科せられた渾名。
そんな不出来な生徒のために、今も先生は身を挺して庇ってくれている。それだけで、ルイズの胸は一杯になった。
次のサモン・サーヴァントに失敗したら、潔くこの学園を去ろう。ヴァリエールという名も捨てよう。
そう思えば、出来ないことは無い。
自分に足りないのは、覚悟だ。とルイズは小さく呟いた。
思念を、ひとつにする。魔法を成功させるイメージだけを、追う。ルイズは杖を低く構えた。
どれほどの時、そうしていただろうか。もう、何も聞こえない。ルイズの全身は、汗で濡れている。
ルイズは死力を籠めて、サモン・サーヴァントの呪文を唱えた。


「宇宙の果てのどこかにいるわたしの下僕よっ。神聖で美しく、そして、強力な使い魔よっ。
 私は心より求め、訴えるわ……我が導きに、答えなさいっ」


 ジャーン ジャーン ジャーン

「なにぃっ」
「な、何が起こった?」
「わぁっ」
「あの矢さえくらわなければ……」
「これは銅鑼だ、銅鑼の音だ」
銅鑼の音に驚いた使い魔たちが、暴れだした。草原が阿鼻叫喚の大騒ぎになる。
サラマンダーが炎を吐く。マンティコアが、フクロウが飛び上がる。スキュラが暴れ、大ヘビがカラスを飲み込んだ。
「俺のラッキーが蛇に喰われた、ラッキーが」
ルイズは呆然とした。
人がいる。

その人は倒れたまま動かない。一瞬、死んでるのではないかとルイズは思った。
それもこれも、着ている袍と、握り締めている羽扇の白さがいけないのだ。まるで白装飾のようではないか。
一瞬影が動いたように見えたけど、それも錯覚だろう。
大騒ぎする人垣を意に介せず、ルイズは信頼する先生の名を叫んだ。


「ミスタ・コルベール」





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「でも、本当に良いのですか」
「彼が貴族かもしれないというのなら、それこそ問題はないと思うよ。春の使い魔召還は神聖な儀式だ。
 貴族がそれを知らないはずがない」
「貴族を使い魔にするなんて聞いたことがありません」
「人を使い魔にした前例もないよ」
「そもそも、あそこで寝ているおじさんは、本当に貴族なのか?」
「平民に決まってるさ。もしだよ? ルイズが貴族を呼べたりしてごらん。ルイズの魔法が成功したことになっちまうよ」
「そんな馬鹿な。ハハハ」
「ハハハ」
「うるさいっ。外野は黙ってなさいっ」



草と、土の匂いだ。
周りの騒がしさに目を覚ました孔明は、自分がうつ伏せに寝転んでいることに、気がついた。
まだ、生きてる。最初に自覚したことは、それだった。
ならば、次の策を。
雍州からの撤退は、滞りなく進んでいるか。司馬懿はどう動く。追撃か。ならば殿は。魏延は。
孔明は躰を起こそうとした。頭痛。倒れこむ。呻きが出た。
土の、匂い。
どういうことだ。孔明は、痛む頭で必死に考える。
私は、営舎にいたはすだ。何故草の上にいる。そもそも、ここは何処だ。
「大丈夫ですか」
声が聞こえる。女の声だ。


「あまり大丈夫じゃねぇな」


寝返りを打ちながら、咄嗟に答えた孔明は、自分の口の悪さに驚いた。



「そ、そうですか」
抜けるような青空を背景に、冷汗をたらしながら少女は答えた。
変わった服装をしている。それに、髪が桃色だ。異国の者だろうか。

               ―――――別に普通だと思いますがね

頭痛がする。何だ、今の声は。
「どこの貴族の方でしょうか?」
貴族? 貴族とは何だ。

               ―――――てめぇが、何処の国のお偉いさんか聞いてんだよ

なるほど。それなら答えられる。
「蜀の国の丞相」
孔明は、言葉を選びながら答えた。
「ショク? ジョウショウ?」
「蜀は国の名。丞相とは、分かりやすく言えば国王の元で政を治める者」
草原が、しんとした。
しばらくして、人垣からどよめきがあがった。
「ミ、ミミミ、ミスタ・コルベール」
目の前の少女は、顔を真っ青にしたり、白くしたりしている。まるで死人のようだ。大丈夫だろうか。
「なな、なんだね。ミセス・ヴァリエール」
「私はミスです、ミスタ・コルベール。それより、私、この方と、儀式を続けてしまって良いのですよね?」
儀式? 私と?
「そうだ。早く。君にとっては、空前絶後のチャンスだ。これを逃したら、もう君には一生チャンスは無いと思うべきだ。
 なに、外交問題が起きても、全てあの学院長に押し付けてしまえば良い。さあ。早く」
だめだだめだ、と野次が飛ぶ。
ルイズは孔明の顔を、正面から見据えた。
今度は、顔を真っ赤にしている。面白い娘だ。孔明は、そう思った。

「名前を教えていただけますか?」
「諸葛孔明。あなたは?」


「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。
この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
ルイズは、杖を孔明の額に置くが早いか、頭を両手でがっと掴み、


キスをした。



「そんなのありかっ」
「こんなの契約じゃない。詐欺だっ」
「この、悪党めっ」
「ルイズは、ゼロじゃなかった。悪鬼の化身じゃ」
「私のファーストキスを掴まえて、悪党だの悪鬼だの……。他人を侮辱するのも、いい加減にしなさいよっ」
「こらこら。貴族はお互いを尊重しあうものだ。
 ミス・ヴァリエールが、コントラクト・サーヴァントもきちんと成功させたんだ。祝ってあげなくては」
ミスタ・コルベールと呼ばれている中年の男性が、なおも言い募る、少年少女を宥めている。
一体、何が起きている。
草原で目を覚ましたかと思えば、国を聞かれ、名を聞かれ、果ては、口づけをされ。
これが、儀式か? ならば、契約というのは? そもそも、この者達の妙な名前は、一体――?
そのとき、孔明の頭が急激に痛みを増した。



―――――私の天運は、ここで尽きましたか……
―――丞相っ


               ―――――劉備殿。天下統一、おめでとうございます……
               ―――孔明っ、孔明っ


―――――見事です、陸遜。私の天下三分の計、ここに敗れたり……
―――諸葛亮殿


               ―――――俺は、負けたんだよなぁ。この俺が。なぁ、卑弥呼……


―――――ビッグファイア。このような醜態を晒しまして、申し訳ありません……



これは、誰だ。
左手に微かな痛みを覚えながら、孔明は、意識の坩堝に沈んでいった。



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