あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第一話 召喚




 そこに現れた人物を見て、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは激しく混乱していた。
 春の使い魔召喚の儀式――これに失敗すれば後はない――において、彼女はある意味初めて魔法に成功したといえる。彼女の呼びかけに答え、それは召喚されたのだから。
 だが、今彼女の目の前にいるのは。
 年の頃は自分より上、明らかに大人の女性。
 肌の色は自分たちよりやや黄色っぽいが、キュルケのように濃い色ではない。
 髪は長い栗色、頭の横でくくられている。
 着ているものは見たことのない意匠の服。かなりきっちりとしたイメージの服で、色は白と紺、スカートも短めではあるが裾が縮まっていて猥雑な感じは受けない。全体的に見れば自分たちの制服をもう少しお堅くしたような感じがした。
 そして彼女のまわりには、金属とも木とも付かない何かで出来た、薄い箱のようなものがいくつか落ちていた。これはおそらく彼女の私物であろう。
 身なりはよいが、杖やマントは所持していない。ということはたぶん裕福な平民であろう。

 と、そんな風に説明できる女性が、気を失ったまま、ルイズの目の前に倒れていたのであった。

 混乱が収まるにつれて、ルイズは自分が何を召喚してしまったのかを理解した。
 「ミスタ・コルベール!」
 あわてつつも、今回の儀式を取り仕切る教師である、コルベール師に声をかける。
 「も、もう一度召喚させてください!」
 しかし、彼女の意に反して、コルベールは首を横に振った。
 「ミス・ヴァリエール……遺憾ながら、例外は認められない。春の使い魔召喚の儀式はすべてにおいて優先する神聖なもの。続きを」
 まわりでは級友達が平民を召喚したのなんだのと盛んにはやし立てているが、そんなものは今のルイズの耳には入っていなかった。
 内心不満ではあったが、これを拒絶すれば自分は落第確定である。そうなればいくら何でもこの場にはいられない。故郷へ強制送還の上そのまま事実上の幽閉、ろくに魔法も使えない公爵令嬢として、いずれ待つのは政略結婚であろう。
 一応婚約者くらいは居る身であるが、魔法学校を落第中退となったら、そんなもの解消される可能性の方が遙かに高い。何しろ彼はきわめて優秀なメイジとして王家に使えている身なのだから。
 (でも、いいのかしら……どう見ても自分より年上の女性を使い魔にするなんて。身の回りの世話はしてもらえそうだけど、それ以外のことには期待できそうもないわよね、はあ……)
 邪険に扱うわけにも行かないだろうし、まあ、メイド扱いくらいかな、と、多少不埒なことも思いつつ、ルイズはコントラクトサーバントの呪文を唱え、いまだ眠ったままの彼女と唇を合わせた。
 と、その時、彼女の胸元で、何かが光った気がした。

 突然マスターに注ぎ込まれた強力な魔法に反応して、レイジングハートは覚醒した。次元間移動と思われる現象にマスター共々巻き込まれ、その衝撃で機能不全に陥っていたようだ。
 そこにゼロ距離で、マスターのものとは異質の魔力が注がれたことを彼女は感知した。
 しかもどうやらその魔力には、マスターに対して肉体的・魔法的危害を加える要素が感知された。すでにマスターの肉体および魔力線に対する侵略行為が行われている。
 直ちに対抗魔法を執行しようとしたが、その侵食はあまりにも強力であり、また、発動場所がマスターの体内であることが災いした。外部からの干渉であれば、干渉元との連結を断ち切ることによって対抗できたであろう。
 だが問題の術式は接触によって直接マスターの体内に打ち込まれた。こうなると対抗術式の起動はマスターに想像以上の負担をかけることになる。
 ただでさえ現在、マスターの内部にはかつての事件による後遺症が残っている。外面的にはほぼ完治したように見えるものの、内部には細かい傷が無数に残っている状態だ。
 そんなマスターの内部で魔法をぶつけ合ったりしたら間違いなくマスターの肉体に今以上の負担をかけることになる。
 打つ手なしであった。

 “申し訳ありません、マスター。防御に失敗しました”

 小さく、はかなげにつぶやくレイジングハート。だが、意外なことに彼女は気がついた。

 体内に侵食した謎の術式は、その過程において、急速にマスターの魔導的内部障害を修復していく。
 リンカーコアとの間に独自の連結線構成。
 神経回路・筋肉組織内に魔力制御可能な副次ユニットを構成。
 左手に収束端末を兼ねたセンサー回路を形成。
 脳の一部と接触する形で各種情報を魔導的にやり取りするためのカプラー端末を作成。
 レイジングハートにはこのシステムに見覚えがあった。

 (リインフォースⅡのユニゾンシステムに酷似)

 そして、このマスターに対する魔導的改造は、レイジングハートには接触できない領域にストレージデバイスによく似たメモリのようなものを形成して終了した。それと同時に、今の術式によって肉体的な痛みを覚えたマスターが覚醒する。
 レイジングハートは、いずれ行われるであろうマスターの質疑に答えるためのデータの作成を開始した。

 使い魔のルーンが刻まれる衝撃で、使い魔となった女性が目を覚ましたようだった。
 「あなた、誰?」
 寝ぼけ眼の女性に、ルイズはそう問いかける。瞳は黒い。食堂のメイドに似たような色のがいた気がする、と、彼女は思った。
 「ここ……どこ?」
 彼女は私の問いには答えず、辺りを見回しながらそう聞いてきた。
 ルイズは少しむっとしたものの、無理もないと思い直し、彼女の問いに答えた。
 「ここはトリステイン魔法学院。あなたは私の使い魔としてここに召喚されたのよ」
 「トリステイン魔法学院?」
 「そう。で、あなたは?」
 名を聞かれていることに気がついた彼女は、見た目より幾分若く感じられる口調でそれに答えた。
 「あ、私は高町なのはです」
 「タカマチナノハ? 珍しい名前ね。私はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。私のことはご主人様と呼びなさい」
 いきなりそんなことを言われ、さすがになのはもとまどった。
 「い、いったい何事なの? なんでご主人様?」
 “落ち着いてください、マスター”
 そこに挟まるレイジングハートの声。なのははすっと落ち着いたが、逆にルイズの方がびっくりして彼女から距離を取った。
 「だ、誰?」

 その様子を見たなのはは、レイジングハートに念話で話しかける。
 (ね、レイジングハート、いったい何があったの?)
 (“どうやら我々は、彼女の召喚を受けたようです。キャロ達が使うものとは形式が違う、未知の魔導によって”)
 (召喚? それで全然知らないところにいるんだ)
 (“はい。それで、申し訳ないのですが、マスターが意識を失っている間に、何らかの魔導改造による拘束を受けた形跡があります。詳細は不明ですが、未知の形式と既知の技術が組み合わさったような、不可解なものです。
 幸いですが、現在のところマスターの身体に不都合な影響はありません。むしろ、生体強化のような、マスターに有益な改造の気もします”)
 (有益な改造? でも、とにかく手遅れなわけね……)
 (“はい。彼女が『使い魔』といっていたところからすると、従属の術式である可能性が高いと思われますが、現時点でその形跡は見られません。なお、マスターを悩ませていた後遺症が、一連の改造の際に取り除かれました。僥倖ですが”)
 (人間の強制召喚、後に無断改造、おまけに従属強制……ものすごい重大犯罪だけど、まわりの様子からすると、そんな感じは受けないわね。ごく当たり前の事みたいだし)
 周りを見れば、自分に語りかけてきたルイズという女の子と同年代の少年少女が多数、その大半は様々な動物と一緒にこちらを注視している。
 そこでなのはにも判ったことがあった。
 (その改造……本来動物用なのかな)
 (“使い魔という呼び方からして、可能性は高いと思います”)
 なのはは一度頭の中の情報を整理した。
 トリステイン魔法学院。
 召喚と従属による使い魔獲得。
 だとすると、一連の行為はこの社会においてごく当たり前のもの。

 ……自分にはそんな社会形態に心当たりはない。

 結論。

 未知の形式の魔法が存在する管理外世界からの強制召喚。

 >現時点において彼女の行為を犯罪として罰することは出来ない。

 >同時に自分のミッドチルダおよび日本国民としての権利行使も無意味。

 >>元の世界との接触が確保できるまでは、自己の生命に危険がない限り彼女たちに敵対するのは不可。それは他世界の文明・文化を不当に弾圧・糾弾することとなり、他世界文明の保護に関する法律違反になる。


 一応、隷属の強制という、自己の尊厳に関わる行為は行われているものの、もう少し情報が集まってからでないと勇み足となる可能性も高い。管理外世界に対する干渉には、かなりの慎重さが要求されるのだ。
 自分から見てどんなに非道、無体な行為でも、現地社会において容認されているのならば否定は出来ない。なのはだって、自分のふるさとである地球――第97管理外世界に対して、管理局が侵攻して地元の文化を野蛮だの、質量兵器行使だのと糾弾・否定されるのはいやである。

 “郷に入りては郷に従え、ですね”

 とどめを刺すレイジングハートの言葉に、なのはは大きくため息をついた。覚悟を決めて、あまり言いたくない言葉を口にする。

 「で、私はどうすればいいんでしょうか、ご主人様」

 それが、後にこの世界、ハルケギニア6000年の歴史を終焉させたあの大事件の始まり、ルイズとなのはの邂逅であった。


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