あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの英雄-5


 ルイズの手記-5


 スピノザの胸のルーンが光ったかと思うと、全ての戦争が終わった。
 凄いじゃないのスピノザって駆け寄ろうとしたら、いきなりスピノザが苦しみだした。
 大丈夫? そう聞こうと思ったのに……

 今、スピノザは化け物になって暴れている。
 あれほど戦いたくない、人を殺したくないと言ったスピノザが邪悪の化身のようになって人を殺して回っている。
 私にはそれが、我慢ならない。
 何故ならそれはスピノザの胸に刻まれたルーンのせいだろうから
 私のせいだろうから……
 たとえもう二度と魔法が使えなくなっても構わない。
 一生<ゼロ>のルイズでいい。
 スピノザを助けようと、私は決意する。
 一人で行こうと思ったら背後から肩を叩かれた。
「ちょっと待ちなさいよ、こんな面白そうなことわたしに黙って行くつもり?」
「こ、ここ、の『青銅』のギーシュも及ばずながら手助けしよう」
 震えるツェルプストー、震えるギーシュ。
「いいわ、連れてってあげる! その代わり死ぬのは絶対に許さないわよ! もし死んだら帰ってから私が殺してやるんだから!」
 怯えることはなかったんだ――私には仲間がいる。

「で、実際どうすんのよ?」
 どっ引きで盛り下がった、おばさん空気読めよ……
 空を見上げる、サイトと言う平民がもの凄い勢いでスピノザと斬り合っているがかなり劣勢みたい。
 と言うか、単独でハイパー化したスピノザと戦えるってどんな化け物よ。
 それを見てくしゃくしゃと私の髪をかき混ぜながら、おっさんは笑う。
「なぁに、虚無の担い手が三人もいるんだ。なんとかなる」
 なに? このおっさんも虚無の担い手なの!?
 どんだけ<虚無>を大安売りするつもりよ、あと一人揃ったら始祖の虚無復活じゃない。
「で、何か考えあるの?」
「おう、このガリア王ジョゼフが無策であらいでか」
 なんと言うかこのおっさんやばい、もの凄く目がきらきらしてる。絶対ゲームとかで絶望的な状況ほど嬉しそうに戦略を考えるタイプだ。
「いくら伝説の使い魔だろうと、契約を破棄してしまえばそれまでだ」
「だからそれをどうやるっつってんのよ!」
 おっさんはにやにやと笑いながらゆっくりと指を沈み行く夕陽に向ける。
 夕陽を背負い、蒼白な顔したウェールズ様が何が起こったのかと駆け寄って来ていた。
「ちょっと待っていろ」
 そう言うとおっさんはウェールズ様にガリアンスパイラルクロー! と叫びながら猛烈な指突を繰り出した。
 ウェールズ様はアルビオニアンオーバーブローで応戦するものの分が悪い、おっさんはあっという間に力ずくでウェールズ様から風のルビーと虚無のオルゴールを奪い取った。
「アンリエッタ、僕はもう……最後に君とアンアンしたかった……」
「ウェールズ殿下、殿下ー!?」
 パリーと言う老メイジがウェールズを治療している横でエルフ娘が風のルビーを装着。
 罪悪感に打ちひしがれる私達に、虚無のオルゴールから奇跡の旋律が流れ出す。
「ちなみに我が<虚無>の力は<共融>王族でなくともスペルの重ね掛けがが可能とする呪文」
 何、そのあからさまに取って付けましたと言うような設定。
「待ってて、スピノザ。今助けてあげるから……」
 私は頭痛のする頭を抑えながら、なんとかシリアス路線に戻れますようにと始祖ブリミルに祈りながら、アタラクシアの背に乗り込んだ。



「行くよ坊主、気合い入れな!」
「侮って貰っては困る、このギーシュ・ド・グラモンの華麗なる魔法見せてあげるよ!」

 唱えるのは『土くれ』の代名詞巨大ゴーレム作成の呪文。
 かつてフーケが使っていたものとまるで同じ形をゴーレムがアルビオンの地をくりぬいて起きあがる。
 だがその大きさが尋常ではなかった、山さえ一跨ぎに飛び越えるその巨躯は軽く見積もって九十メイル。そのゴーレムと呼ぶのも馬鹿馬鹿しい移動要塞は鈍重な動きでスピノザに駆け寄ると、世界樹もかくやと言う太さの腕でその体を拘束した。
「こ、これで……」
 そう思ったのも束の間。
 怒れる竜はただ一度咆えると、その口から<虚無>のブレスを吐き出した。
 その一撃がゴーレムの体に達したと思った瞬間、ブレスはゴーレムに使われた魔力全てを吸い取り全てを破壊する大爆発を起こす。
 それの爆発はかつてルイズが一度だけ使った、エクスプロージョンの呪文に酷似していた。
「本当に、化けもんだ……」
 そう呟いたマチルダの言葉の間にもアタラクシアは奇跡の様に距離を詰める。
 鬱陶しい蚊トンボを吹き飛ばそう。
 そう考え、再びブレスの体勢に入った魔竜はその瞳に打ち込まれた灼熱の塊に思わず苦痛の呻きを漏らした。

「それじゃあ、いくわよぉ~」
「頑張る」

 十重二十重と打ち込まれるキュルケと竜騎士達のファイヤーボール、同時に放たれるタバサのウィンディ・アイシクル。
「………」
 炎と氷、相反する魔法がぶつかり霧を作りだした。
 羽ばたき一度で消し飛ばされる霧であったが、しかしアタラクシアは更に間を詰める。
「――!?」
「アタラクシア、避けて!?」
 あえて作られた隙は罠だった。
 狙いも定めず吐き出された虚無のブレスは運悪くスピノザに向かって直進するアタラクシアを射線上に捉えていた。
 その一撃を。
 六千年を生きた剣が受け止める。

「行くぜ相棒、心を振るわせろ!!!」
「はい! デルフリンガーさん!!!」

 まるで聖人が海を割るようにまっぷたつに切り裂かれる虚無の魔法、だがそのあまりにも巨大な魔力を長時間吸収し続けられる訳もない。

「駄目かっ!」

 剣の絶望を、
「まだだよっ!」
 不敵な王女の宣誓が覆す。

「このイザベラ様の幸運の追い風をたっぷりとケツに放り込んでやるからね! いくよ地下水、気合い入れな!」
「はぁ、ナイフ使いが荒い王女さまだぜ、っと!」

 イザベラと、ウェールズの体を乗っ取った地下水の産み出した突風がアタラクシアを舞い上げる。
 傷だらけの紅い魔竜が、まるで弾丸のように加速した。

「いっけぇー!」
「決めきな」
「しっかりね、ルイズ」
「この僕が手伝ったのだから、失敗するはずがないさ」
「……勝って」
 地上で見つめる者達は祈った。
 未来を自らの手で掴み取ろうとする少女の為に祈った。
 ――そうだいつだって、奇跡はただそれを求め願う者達の為に降り注ぐのだ。

 スピノザは、スピノザを駆り立てる<彼>はそれに恐怖する。
 奇跡を体現し、彼を滅ぼそうとする者の存在に恐怖する。
 憎まれ憎まれ憎まれ、全ての人の敵となって消えゆくが<彼>に与えられた役割だ。
 これまでもそうだった。人が破滅に向かう戦いに身を委ねる時、世界の敵として現れ、人の心の憎悪を喰らい、最後に結託した人の手によって滅ぼされることが<彼>の役割だった。
 始祖たる者に与えられた、あまりにも未熟で不完全な人を滅びから救い出す為の機構だった。
 故に“世界の敵”になれないまま救われてしまっては意味がない。
 産まれ持って与えられた使命を果たせない。
 意志など持たない筈の<彼>はその事実に確かに恐怖する。
 <彼>の名前は神の杭、哀しき定めの世界の生け贄。神の如き力を持ち、しかしどこまでの人間でしかなかったブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリが苦悩と共に産み出した<虚無>の使い魔最後の一人。神の心臓――リィンダールヴ。
 人を憎むため産み出された使い魔――故にこそ記すことさえ憚られる。

 だから<彼>は足掻いた、“始祖”に与えられた役割を果たすために。
 それこそが自身がこの世の産み出されてきた“意味”だと言うように。
 空間さえも切り裂く爪が迫る、覚悟するように目を閉じたルイズの目の前で平民の少年が不敵に笑っていた。
「俺は確かにこの世界じゃただの平民だ! けどな泣いてる奴を見捨てるような最低の人間じゃねぇ!」
 一瞬だけでも二人の心が交差したのは、本来交差するはずだった運命の悪戯か。

 ――行ってこい、ルイズ。
 ――あんたに言われるまでもないわ!

 サイトは<彼>の渾身の一撃を受け止めると、そのまま遙かな地面へと真っ逆さまに落ちていく。
 ルイズはそれを一顧だにしない、ただまっすぐに一心に嘆きに咆える目前の魔竜だけを見ている。
 スピノザだけを見つめている。

「行くぞ、お前達!」
 ジョゼフが杖を構える、楽しそうに、実に楽しそうに、狂王と呼ばれた男は己の命さえ注ぎ込みかねない勢いで杖を構える。
 それに続いてティファニアが杖を構える、優しいエルフは怯えながら平和の祈りを口にする。 
 ルイズはとっくの昔に杖を構えている、特訓中に折ってしまった杖の代わりにスピノザと一緒に削りだした不格好な形の樫の杖。
 血が滲むばかりに握りしめる。
「いい加減目ぇ覚ましなさい、この馬鹿竜! どんだけ私を心配させる気よ!」
 ルイズは叫んだ、ただ高らかに力の限り叫んだ。
 それに相対するのは憎悪と恐怖に彩られた魔竜の咆哮。
 一人と一匹の感情が交錯する。
 ――その瞬間、世界はただ一色に染め上げられた。

 白に染まる視界のなかで、ルイズは己の力を一滴残らず注ぎ込む。
 足りない分なら血でもなんでも持って行け、記憶でも命でも構わない。
「ルイズゥゥゥ、いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 ――絶対にスピノザを救うんだ!
「帰って来てよ……スピノザ!」
 優しい優しい、私の魔竜……


新着情報

取得中です。