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ゼロの英雄-2


 ルイズの手記-2



 ×月△日



 シルフィから私たちの特訓を聞いてタバサがやる気になったらしい、使い魔品評会は私とスピノザ組とタバサとシルフィード組のガチンコバトルの様相を呈した。
 兎に角、タバサは風竜の得意分野であるスピードを何処まで極める方向に行ったらしい。
 風の魔法を利用した鋭い刃物のような飛翔、燕のような動きで超高空から地面スレスレへと一気に落下し校舎に当たるぎりぎりで壁に沿って再び上空へ。
 異常とも言えるアクロバット飛行は私には出来ない。
 けど私にだって意地がある、スピノザの背に乗って宙に舞う。
 その速度はタバサとシルフィード組よりもずっと穏やかだ、あんな凄いものを魅せられた後ではきっと退屈に映るだろう。
「見てなさいよ」
 私は獰猛に笑った。
「うん、みんなにとっておきの魔法見せてあげようじゃないか」
 スピノザの言葉に従って失敗魔法が花開く、あっけに取られる地上のみんなの顔を横目に見ながら失敗魔法で青い空に<爆発>と言う絵を描いて行く。
 親愛なる私のアンリエッタ姫様へ。
 ハートマークも忘れない。
 暫く宙を舞った後、最後に懐から取り出した大量の花びらを空中に撒き私たちは地上に降りた。
 地上では誰を優勝にするかの喧々囂々の協議中。
 私も頑張ったけど、タバサの競技も凄かった。
 高鳴る胸、不安な気持ち。
 その時、スピノザが大丈夫と私の肩を叩いた。
「あっ、僕は韻竜ですので、それも得点に加味してもらえます?」

 ――何言い出すのー!?
 呆気に取られる審査員、そりゃそうだ私も呆気に取られたわよ。
 雰囲気的に僅差ぽかったから、スピノザがいらない気を使ったのね。
「まったくしょうがないわね、これまでずっと秘密にしてたのに」
「なかなか好きな時にルイズと話せないのは、ストレス溜まるからねー」
 竜のくせになんてこと言い出すのか、スピノザ自重しろ!
 暫しの間があって結果発表。

 ――優勝!

 思わず涙が零れる、タバサもおめでとうって言ってくれた。
 キュルケはなかなかやるじゃない、ギーシュはさっきからずっとモグラと戯れているので無視。 

 頑張って良かったと、私はスピノザの胴体に顔を埋める。
 スピノザは私の魔法は失敗なんかじゃない、と言ってくれた。

「良かったね、僕を呼びだした君ならきっと出来るはずだと思ってた」
 何言ってるのよ馬鹿竜、そんなこと言われたら涙が止まらないじゃない。
 思い出す訓練の日々、ああ、あれだけ酸っぱい思いをしたけど頑張って良かった!
「ルイズ、素敵なあなたの魔法もう一度見せて貰えますか?」
「はい、姫様。このようなもので宜しければ」
 私が杖を振る、ぼんっと爆発する。
 失敗でしかないそれが、今は凄く嬉しかった。
 私の魔法は失敗だ、それでも<ゼロ>なんかじゃない。
 スピノザを呼び出せた、使い魔にだって出来た。
 そしてこんな風に姫様に喜んでもらうことだって出来たんだ!

 品評会が終わった後、私はベットのなかで考える。
 即ち、私の失敗魔法とは一体なんなんだろうかと?
 特訓のおかげでだいぶ造詣が深まったけど、一体全体なんなのかさっぱり分からない。
 コルベール先生の<爆炎>ともまったくプロセスが違うみたいだし……
 色々と悩んでいると、扉をノックする音が耳響く。
 三回、二回、三回と言う、何かを伝えようとするかのようなノックの回数。
 ――まさか姫様!
 うきうき気分でベットから這い出して、扉を開ける。
「久しぶりね、ちびルイズ」
 あまりのことに真っ白になる。
 長い金髪と、間違いなく私の姉さまだと言う平らな胸、きつそうな目と、似合いすぎてる三角眼鏡。

 ――エレオノール姉様がやってきた。

 でもなんかおかしくない? いまいちほっぺを抓む手にも、口調にもキレがない。
「あの素敵な殿方は、一体どなた?」
 は?




 エレオノールは怒っていた。
 ルイズが、あの心配ばかりかける末の妹がもう何日も学院の授業を欠席していると言うのだ。
 聞けば春の使い魔召喚で巨大な黒竜を呼び出したと言う。
 魔法が使えないのにそのような希少な使い魔を召喚し、挙げ句授業を欠席する。
 あの可愛らしいちびルイズは同級生に虐められているのだろう、そのようなことヴァリエール長姉として見過ごしておくことが出来るはずがない。
 その黒竜が韻竜であること、ルイズが品評会で優勝したことを知り、ついに我慢できなくなった。
 アカデミーに黒韻竜調査の名目で休暇を取り、馬車に揺られて、魔法学院を目指す。
 しかし妹が呼び出した黒韻竜とはどんなのだろう?
 ドラゴン、しかもあのルイズが召喚した奴で、しかも品評会で優勝?
 エレオノールの想像は物凄い方向に加速していく。
 主にモスラーヤモスラー的な意味で。
 エレオノールが魔法学院に降り立つ時には、彼女の頭のなかの黒韻竜は、体長が四十メイルもあり、色々と巨大で、その上絶倫でガラが悪く、おまけに頭が三つに分かれていて、ルイズを見るたびに「うへへへ、さぁ可愛らしいご主人様、この仮面のブラックドラゴンが貴様にご奉仕してくれるわ!」と天に向かって業火を吐く言う訳の分からない状態になっていた。

「ルイズ……」
 焦る気持ちのままエレオノールは魔法学院の土地に降り立ち。
 そしてそこで信じられないものを見た。
 ――ドラゴンが畑を耕している。
 眼鏡を絹布で擦ってエレオノールはもう一度目の前の光景を見た。
 ――ドラゴンが巨大な如雨露で畑に水をやっている。
 嗚呼、きっと自分は疲れているのだ、頭痛のする頭を撫で、目頭を揉みほぐし、たっぷり五分ほど経ってからエレオノールは再び目を開ける。
 ――ドラゴンがシーツをタオル代わりに首に掛け炎のブレスで風呂を湧かしている。
「いやぁこれはこれは、アカデミーの主席研究員殿が参られるとは……」
 ハゲの教員が駆け寄ってくる。
「ええと、まさかひょっとして……」
「その通りです、あそこにいるのがミス・ヴァリエール嬢が召喚した韻竜……
 思わず眩暈がする、頭痛がする。
「そ、そうですか……ええと、悪いですけれど少し気分が悪いのでこれ頂きますわ」
 だからエレオノールが机の上に置いてあったワインを一気したことはけして責められることではないのだ。
 たとえそれがモンモランシーがギーシュに飲ませるために用意しておいた、ほれ薬入りのワインだったとしても。





 ×月□日



 エレオノール姉さまがモンモンのモンモンする薬を飲んだ。
 「しっかりしてください姉さま!」
 私の言葉も言葉も届かない、エレオノール姉さまコルベール先生に迫る迫る。
 キュルケはヴァリエールの惨状を笑う笑う。
 くそぅツェルプストーめぇ……
 モンモンはとんでもないことしちゃったと青褪めるは、ギーシュはそんなモンモンに涙目の君も可愛いよと落としに掛かるはカオス過ぎ!
 コッパゲは困ります、困りますぞ! と言いながらもすげー嬉しそうだった。あんなのが義兄様なんて絶対にやだ!
 おまけに騒ぎのせいでモンモンの薬がぶちまけられ、それが使い魔の餌箱のなかに。

 使い魔同士が盛りの季節を迎えた、異種姦的な意味で。
 きゅいきゅいも飲んでしまったらしい「シルフィにスピノザさまの子供く・だ・さ・い・きゅい!」
 とか、どう見ても子供とは思えない誘惑の仕方をしてスピノザを狼狽させている。
 これでもまだ呑んだ量が少なかったから効果が薄いとか、全量呑んだら一体どうなるのよ!?
 解毒剤作らせる為にモンモンの首根っこひっつかんで精霊の涙を手に入れる為に例え火のなか水の中、雲の中森の中。
 スピノザの背に乗ってそのスピードと寒さに泣き喚くモンモンを無視してラグドリアン湖に出発。
 あまりの早さにモンモンが吐いた……




「スピノザさまとシルフィはいつも一緒なのね、きゅいきゅい」
 ルイズは自分の予想が甘かったと歯噛みする、恋する乙女は盲目なのだ。
 タバサに与えられた任務など知らぬとばかりにシルフィがスピノザを追いかけてくるなど予想してしかるべきだった。
 スピノザはスピノザで困っているような満更でもないような感じだった。
「と言うか精神年齢十歳くらいの子供に言い寄られて動揺するとかどうなのよ、そこんとこ……」
 そんなことを愚痴っている間にラグドリアン湖に付いた。
 馬車でこそ三日掛かるが、風竜の背に揺られて向かうのなら半日も掛からない。
 さっそく水の精霊を呼び出そうとした一同は湖の真ん中に以外な相手を見いだす。
 深紅の鱗深紅の瞳深紅の翼、しなやかな肢体をラグドリアンの水に晒し一匹の雌竜が水浴びをしていた。
「――アタラクシア?
 スピノザはルイズが初めて聞く声音で、そう呟いた。
「スピノザ?」
 赤竜が驚いたように振り向き。
「その子、誰?」
 ぞっとするような声で呟いた。
 スピノザがゆっくりと振り向くと、いつの間にか引き離した筈のシルフィがゆっくりとスピノザの首に頭を擦りつけていた。
「きゅいきゅい、スピノザさま。好き大好き、シルフィだけを見て!きゅい!」
「いや、アタラクシアこれはね……」
「へぇ、そうだったんだ……」
 アタラクシアの声音はいつもと変わらない、変わらないことがスピノザには恐ろしい。
「人間の雌餓鬼に欲情するような変態だと思ってたら、小さい子なら誰でも良かったんだ……」
「ちっ、違う。これは……」
「嫉妬は見苦しいのね、おばさん。きゅいきゅい」
 アタラクシアは魂すら消し飛ばすような咆哮を放った。
 あまりにも恐ろしすぎたせいで体がこわばった為に下着がほんのちょっとしか濡れなかったことに、ルイズとモンモランシーは始祖ブリミルに感謝した。
「女の嫉妬は恐ろしいわね……」
 今日のお前が言うなである。
 モンモランシーの呟きに、ルイズは心底から嘆息した。





 ×月◇日



 「湖の上の騒ぎをなんとかして欲しければ涙寄こせゴルァ」と、ほとんど脅迫まがいに涙を奪取。
 ――本当にこれでよかったのだろうか?
 考えても答えは出ない、せめてお詫び代わりに盗まれた指輪くらいは取り返して上げないとヴァリエールの名誉に関わるわ。
 ちなみにアタラクシアと言う赤竜はスピノザをひっぱたくと「この浮気者!」と泣きながら南の空へと消えていった。
 モット伯がドラゴンに食われたと言うのはひょっとして……
 エレオノール姉さまは薬の効果が切れるとスピノザを調査に来たことすら忘れるくらいにどんよりとした空気を纏わせて帰っていった。
 「いくらなんでもあのハゲに……」そう呟く言葉があまりにも痛々しい。
 シルフィのほうは「きゅい、シルフィったらなんてはしたないのね!」と恥ずかしがってスピノザと顔も会わせようとしない。
 そのせいか目に見えて落ち込んでいる、ただ一人でひたすら陶器を焼いて――間違って自分の手まで火傷したり、延々と野菜に話しかけてメイドに慰められたりしてる。
 重傷だと分かってるけど、私にはどうしたらいいのか分からなかった。




 スピノザは落ち込んでいた。
 勿論、アタラクシアのことである。
 彼女までこの世界に来ているなんて思ってもみなかったのだ。
 かつて体を重ねたこともある、大切な友人。
 だが今更どの面下げて会えと言うのか?
 大切な友人である彼女より、スピノザは種族の違うエチカのことを選んだ。
 選んでしまった。
 その選択を前に、アタラクシアに再び仲良くしてくれなどとは言えない。
 けれど……
「泣いてたな……」
 記憶にあるアタラクシアはいつも粗野で勝ち気で乱雑で、魔王竜の代名詞みたいな奴だった。
 それでも彼女は雌なのだ、女の子なのである。
 最後にあった時の姿を思い出す、アタラクシアとは思えないほど自分に甘えてくれたあの竜を。
 そのアタラクシアが涙を流して居た。
 他ならぬこの自分のせいで……
「ごめん、アタラクシア」
 償う方法を持たない竜の言葉が、二つの月が浮かぶ夜空に消えた。


「スピノザー!」
 そんなスピノザに足元から声を掛ける人物が一人。
「泣いてないで、とっとと行くわよー」
 何処にと聞き返したスピノザに、ナイムネを張ってルイズは言った。
「女の子泣かせたら、謝りにいくのが筋でしょうが!」
 そう意地を張ってみたルイズはとても<ゼロ>とは思えないほどに輝いていた。
 彼女はまだ知らない。
 これから先に待ち受ける運命を。
 出席不足で成績優秀だと言うのに単位が<ゼロ>と言う恐怖の未来を!


 ジョゼフの手記-2



 ×月○日

 サイトの持って来たパソコンと言う奴は凄い、物凄い勢いで暇が潰れる。
 潰れてはいけない時間まで潰れている気もするがそれはそれ、今でさえ凄いのだが回線を繋いでこそ真価を発揮するらしい。
 ネットに繋がっていないパソコンなどただの箱、って一体どれほど凄いんだ!?
 なんとかしようと巨額の費用を投じて研究させる――が、なかなか成果が上がらないらしい。
 サイトが言うには無線LANと言うものをが使えるかもとのこと。ううむ、線を繋ぐのに無線とはこれ如何に。
 研究者呼んで研究させていると市政の研究者の興味深い論文を発掘したとか、魔法学院のコルベール?
 まぁ気が向いたら招聘してみるか、パソコンに入っていたマジックザギャザリングとやらの体験版とやらで遊ぶ。
 くくく、我がスリヴァーデッキの前にはもはやNPC如きでは相手にならんか。 
 待っていろまだ見ぬ猛者よ、とっととハルケギニア統一を終わらして貴様に会いに行く!
 しかし今はパソコンパソコン……と
 アルビオンではいつぞやのクロムウェルとやらが頑張っているらしい、いいことだ、あまり忙しくなると遊ぶ時間が減る。急ぐわけでもなし泥沼の消耗戦でもやらせておこう。
 って、ちょっと待て、何故命中率5%で……ぬわぁぁぁぁ、イデがぁぁぁぁ!?




「なんか最近ジョゼフ王丸くなったな……」
「と言うか、あまり部屋から出てこなくなっただけの気が……」
「おお怖い、一体次はどのような策謀を……」
 噂話に華を咲かせる騎士や侍女達の間をすり抜けながら、サイトはプチ・トロワへと急いでいた。
 原因はただ一つ、とても王族とは思えないおでこの眩しい王女様のせいだ。
「遅い!」
 息を切らせて駆けつけたと言うのに、イザベラは実に不満顔だった。
「なんだよ、いきなり呼ばれてすぐ来れる訳ねーだろ!」
「うるさいね、使い魔が主人に口答えするでないよ!」
 ひゅんと音を立てて鞭が翻る、乗馬用の棒状の鞭ではなく主に召し使いが粗相をしたときに使われる先が細かく分かれた型の鞭である。
「わひぃ!?」
「あ、こら、避けるんじゃない!」
 イザベラ様叩く叩く、サイト避ける避ける。
 しかしガンダールヴ補正の付いたサイトに攻撃が当たるはずもなく、イザベラ様ヘタるヘタる。
「はぁ……はぁ……まったく……この……馬鹿…使い……魔が……」
 激しく息切れするイザベラ様、その頬が微妙に赤いのは息切れのせいかそれとも他の要因か。
「第一俺はジョゼフの使い魔だろ、イザベラには自分で呼び出したドラゴンがいるじゃねぇか」
 もっともそのドラゴンは召喚されたと同時にイザベラを食べようとするわ、それに失敗して逃げるわ散々だったが。
 サイトがそう言った途端、イザベラはそのおでこまで茹で蛸のように真っ赤になった。
「うっ、うるさいうるさい、とっとにかくだね。あたしものはあたしのものだけどお父様のものも当然にあたしのものだから、あんたはあたしの使い魔なのよ!」
 真っ赤になりながらもの凄い理屈を宣うイザベラ、以前サイトに全裸を見られたのがよっぽど心の傷になっているらしい。
「それが嫌なら、あの赤いドラゴンを探すのを手伝うんだね!」
 どうやら最初からそれが言いたかったらしい、サイトは溜息を吐くと仕方なしと言った感じで頷いた。
「はいはい、分かりましたご主人様っと……ところでお前さ」
「なんだい?」
「お前って、性格の割に随分可愛らしい下着……」
 青と白のしましま。
 最後まで言う事無く、サイトの顔面に思いっきり鞭の柄がめり込んだ。
「こんの、馬鹿犬がぁぁぁぁ!」
 顔を真っ赤にしながらイザベラは怪鳥の如き悲鳴をあげた。
 内股でドレスの裾を抑えながら眉を吊り上げるその姿は、年相応の女の子のようだった。




 ×月×日

 娘が脱走した。
 カステルモールと言う騎士が様子がおかしい事に気づいた時には、既にスキルニルと入れ替わっていたらしい。
 しかもサイトまで連れ出している。
 ふざけんな。
 あの馬鹿娘はともかく、サイトにはまだまだ働いて貰わねばならない。
 パソコンに入っていた『クラナド』とか言うソフトを遊ぶためには、サイトの国の言語を理解する必要があるからだ。
 なにやらサイトの世界ではたかがゲームであるはずのこのソフトは『人生』とか言われているらしい、そんなこと言われたら興味が沸いてしょうがないではないではないか。
 配下のエルフを使って追跡させてみると、どうやら姪のシャルロットを使って逃げ出した使い魔を追っているらしい。
 いくらなんでもそんなもの追いかけられる訳もないか……
 仕方なしに久々に放っておいたアルビオンに介入しようかと思ったら、王党派が逆転勝利したらしい。
 うそーん。
 しかしあれだけ緻密に描いた我がチェスの盤上が此処まで狂うとは、思わずぞくぞくしてきたぞ。
 元はただの暇つぶしに始めたハルケギニア統一だが、そろそろ本腰を入れて取り組むことにしよう。
 しかしやはりパソコンに気を引かれるのも事実だったりする。
 あ、あと五分だけ……



「本当にアルビオンにいるんだろうねぇ!」
 隣でぎゃーぎゃー騒ぐ望まぬ客に閉口しつつタバサはシルフィードの背中の上でいつものように本を読んでいた。
「報告通りなら、そう」
「しっかし良かったのか、勝手に出てきて」
「いいのよ、お父様に言ったら自分も行きたがるに決まってるんだから」
「子供みたいな人だもんな、あの人」
 タバサが眉間を抑える、どうやら現実とイメージの摺り合わせに苦労しているらしい。
「そんでもってあたしのことをさんざん馬鹿にするわけよ、自分の娘って言うのにさ」
 そしてちらりとイザベラはタバサを見る。
「その点、ガーゴイルは随分とお父様のお気に入りだからねぇ」
 きょとんとタバサは目を丸くした。
「あいたっ、ちょっとあんたご主人様に手を挙げるとは随分えらくなったもんだね」
「こんな可愛い子にガーゴイルとか言うお前が悪いんだろ」
「あんだって、この馬鹿犬が!」
 シルフィは溜息を付くと、さらに羽ばたく速度を早めた。
 背中の上で姦しく騒ぐ者達を乗せ、向かうは浮遊大陸アルビオンである。





 カステルモールの手記


 カステルモールですが、宮殿内の空気が最悪です。
 どうやらあの簒奪者が召喚した使い魔であるところのサイトはとことん空気の読めない人間であるらしい。
 平民であると言うのに宮殿内を我が物顔でのし歩き、あちこちでトラブルを起こす。
 それだけならまだしもわがまま姫までセットでついてくる、胃に穴が空く日は近いと思う。
 しかもサイトが持ってきたパソコンとやらに入っている“強制的に劣情を催させる絵画”と言うのがまた恐ろしい。
 オルレアン公派であったはずの者たちが、毎日のように犬の如く簒奪者の私室へと入り浸っているのだから。
 一度なんとか正気を保って帰ってきた同僚に聞いてみたところわけの分からない答えが返ってきた。
「びっくりするほどユートピア、やっぱコミックL○はいいよな!」
 なにがなんだかわからない……
 ――最後の一人になるまで戦い抜く決意をする。

 しかし何か引っかかるのだ、あのサイトと言う少年が持っている剣、前にどこかで見たことがあるような……
「子供の頃の筈……それなら見たのはガリア、だよな?」
 考えても考えても答えは出ない。
 そうこうしているうちに、件の同僚が現れた!
「お前も行こうぜ新世界!」
「ちょ、おまっ」
 わたしはにげだした。
「いざイザベラ様ツンデレ萌えの世界へ!」
 しかしまわりこまれてしまった!
「アッー!」
 ――ざんねん、わたしのぼうけんは、かゆっ、うま。




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