あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

とある使い魔の一方通行-04


―――――虚無の日・夕暮れ
「ねぇ、ダーリン?この剣、素晴らしいと思いませんこと?」
キュルケが一方通行に剣を見せる。
「ゼロのルイズなんかには勿体ないものですけれど。貴方なら、きっとこの素晴らしさがわかると思うの」
ちらり、とルイズを一瞥するのを忘れないキュルケ。
「キュルケ!人の使い魔に勝手に物を与えないで!」
目を怒らせ、ルイズがキュルケに詰め寄る。
(うるせぇなァ…しかもまた物扱いかよ)
「あらルイズ。女の嫉妬は見苦しいわよ」
「だ、誰が嫉妬なんかするのよ!」
「違うの?貴方がとても買えないような品を私がプレゼントするものだから、嫉妬しているんじゃなくて?」
「アクセラレータ!」
ルイズが一方通行に怒鳴る。
なまじ、剣の価値がわかってしまっただけに、ルイズはキュルケに強く言えないようだ。

「だからうるせぇってンだろ?俺ァ武器なンざ無ェ方が強いンだよ。このナイフがあれば十分だっての」
パァッとルイズの顔が輝いた。
「ふ、ふんっ。わかってるじゃない」
それとは対照的に、キュルケの顔が曇る。
「ダーリン…」
キュルケの顔を見ると心が少し痛んだ。
あの剣がいくらしたかは聞いているので、それが無駄になったとなればさすがにきついだろう
(…ったく、俺ァボケたか?ってか、良心なンて物があること自体、らしくねェ)
「誰もいらない何て言ってねェだろ」
「「えっ?」」
ルイズとキュルケの声が重なった。
今度はみるみるキュルケの顔が輝き、ルイズの顔が赤くなっていく。
「ンな高い物買わせて、いらねェなんて言わねェよ。ありがたく貰っとく。」
「ダーリン…やっぱり、本当は優しいのね…」
「言っとくが、何も返せねェからな」
一方通行の腕に腕を絡ませ(さすがに反射は切る)喜ぶキュルケ。
「な、な、な…何してんのよキュルケ!」
「あらぁ、誰かと思ったらルイズ。まだいたの?」
プルプル体が震えだしたルイズ。
「あ、アクセラレータ。あんた、私の使い魔よね。何勝手にしてんの」
面倒くせぇ、と思いながらもちゃんと反応をする一方通行。
(らしくねぇよなぁ)
さっきからずっとそんなことばかり考えている。
これが平和ボケというやつだろうか。
だが、元に戻ろうとは思わなかった。
この、生ぬるい温度が気持ち良かった。
そんな事を考えている間に

「「決闘よ!!!」」

そんな声が聞こえてきた。
「あァ?何やってンだお前ェら」
「良いの、ルイズ?お互いに使っていいのは魔法だけ。貴方、絶対に、確実に、100%勝てないわよ?」
「う、うるさいうるさい!そんなことやってみなくちゃ分からないでしょ!」
「はぁ…ま、良いわ。適当な所でやめてあげるから」
「私を侮辱する気!?」
(決闘っても、ただの痴話喧嘩か)
見ると、タバサは何も起きていないように本を読んでいる。
適当に、放っておくことにする。
―――――ルイズが呪文を唱えた。
対して、キュルケは杖を下におろしたまま動かそうとしない。
ルイズの呪文が完成。杖を振り下ろす。
―――ズドンッ
大きな爆発、大きな音。
明らかにドットクラスの魔法すら使えないルイズが使えるものでは無い。
トライアングルクラスの自分ですら、あのクラスの爆発を起こすには相当の力を必要とするだろう。
それを、2秒とかからず起こせるのだ。あれは一種の才能だと思う。
当たれば、自分だって一溜まりもないかもしれない。
…が。
爆発は、キュルケの大きく背後。
学院の壁を直撃し、破壊していた。

―――――遡ること数分。
巷を騒がしている盗賊、「土くれのフーケ」。
貴族や金持ちの家のみに忍び込み、厳重な警備を嘲笑うかのような手口で、秘宝を盗み出す盗賊。
それにかけられた懸賞金はウナギ登りに上がっている。
しかし、未だつかまらないどころか、年齢・性別すら分かっていない。
その、「土くれのフーケ」が今。
学園の宝物庫。その外の壁の前に立っていた。

「ったく、どうしたもんかね」
愚痴を吐いては、いくつかの呪文を唱え、失敗する。
おそらくスクウェアクラスの固定化が掛けられているのだろう。
トライアングルクラスの自分の力では、これは錬金出来そうにない。
「いっそのこと、ゴーレムで力任せに…」
考えた瞬間にすでに口から呪文が流れていた。
数瞬の間に呪文は完成し、地面から巨大なゴーレムが現れた。
「さぁて、いっちょぶちかますわよ!」
―――ズドンッ!
「なッ!?」
轟音。
今のは何の音だ?ゴーレムが殴ったのか。違う。
もしかして、学園の誰かに見つかって攻撃を受けたのだろうか。
にしては、ゴーレムに損傷は全くない。あわてて周囲を見回す。
そこには、
淡いピンク色の髪をした少女と、燃えるような赤い髪の少女が、杖を握って対峙していた。
(どうやら、あの二人の仕業らしいね…)
だが、自分にまだ気づいた様子は無いようだ。
そして何より。
爆発によって、宝物庫の壁に穴があいていた。
「ふふ、ラッキー♪」
このままいけば、見つからずに目的のものを運べそうだ。

―――5分後。
宝物庫の中では、ひとつの秘宝と一枚の紙が入れ替わるように置きかえられていた。
紙には、ただ一言こう書かれていた。
[破壊の杖、確かに領収しました 
土くれのフーケ]
―――――翌朝、学院長室にルイズ・一方通行・キュルケ・タバサの4人が呼ばれていた。
あの後、巨大な地響きのような音に気づいた4人。
あわててそこへ向かうと、巨大なゴーレムと、その方に乗っている高笑いをする人間のようなシルエットを発見した。
その事件の目撃者として、4人は呼び出されたのだ。

「ほむ…なるほど、つまり…」
「フーケを追う手がかりは無し、といことですかな」
オールド・オスマンの言葉に、教師の一人・コルベールが続けて言った。
鬚をなでながら、オールド・オスマンは気づいたように言う。
「そういえば、ミス・ロングビルが見当たらんのう」
「それが、その…今朝から姿が見当たらないのです」
困惑したように、そして心配したようにコルベールが答える。
「何じゃと?あの真面目なミス・ロングビルが、今朝からいないとなると…」
「はい。もしかしたら、巻き込まれた可能性も…」
他の教師と4人を放って、真剣に話をしている2人。
そこへ、ミス・ロングビルが現れた。
「ミス・ロングビル!無事でしたか!?いや、今までどこに…」
血相を変えてコルベールが詰め寄るが、彼女はそれをかわして、落ち付いた様子で報告を開始した。

「なるほど…その小屋にフーケは隠れている可能性があるのじゃな?」
「はい。ですが、逃走中の盗賊がそんな場所に入るというのも奇妙な話です。罠である可能性も…」
「その農民が、ウソをついている可能性は?」
「完全に否定はできませんが…その可能性は低いと思われます」
「ミス・ロングビルが言うのなら、確かじゃろうて」
言うや否や、オスマンは立ち上がり
「ミス・ロングビルは非力ながらも、フーケの居場所へとつながる可能性を探し出してくれた!そちらはトライアングルクラス。名をあげるチャンスじゃ!捜索隊に志願する者はおらんか?」
力強く教師たちに聞かせた。
だが…
その中の、誰ひとりとして手をあげる者はいなかった。
「おらんのか?おや、どうした!フーケを捕まえて名を上げようとするものはおらんのか!」
依然として、誰ひとりとして反応する者はいない。
その中で…顔を俯かせたまま、ルイズが杖を上げた。

――――ざわっ
ルイズの行動をみた教師が、突然ざわめき始めた。
教師の誰かが声を上げた
「ミス・ヴァリエール!あなたは生徒じゃありませんか。ここは教師に任せて…」
他の教師も頷く。
(腰抜け共が。自分達は何もしないくせに、教師としての対面だけは守ろうとするンだな)
冷めた目で見渡す一方通行。
だが。
「誰も杖を上げないじゃないですか」
ルイズは、きっと唇を強く結んで言った。唇をへの字に曲げ、真剣な顔をしたルイズが、何故だがひどく眩しく見える。
そして、その様子を見てやがてキュルケも杖を上げた。
「ふん。ヴァリエールに負けてられませんわ」
キュルケが杖を上げるのを見て、タバサも杖を上げた。
「心配」
ただ一言だけを発して。
(ハッ、自分の身も守れねェようなアマチャンが良くやンぜ)
そう思いながらも、一方通行は止めようとはしなかった。
「よし、3人に任せるとしよう」
オールド・オスマン!何を…
彼女らは生徒です!行かせるべきでは…
反対の声が上がったが、
「では、諸君らが彼女らの代わりに行くかね?」
その一言で、すべてが黙った。

結局、場所を知っているミス・ロングビルと4人で捜索隊が結成された。

―――――馬車にゆられて何時間か。
「皆さん、申し訳ありません」
突然、ミス・ロングビルが声を発した。
「どうしたんですか?」
ルイズが質問を返す。
「実は…少々迷ってしまいまして…現地の農民の方に案内してもらおうと思うのですが」
「そうですか。もとより、私たちは場所を知りません…すべてお任せしますわ。ミス・ロングビル」
キュルケも言葉を返す。
「わかりました。申し訳ありません」
そして、現地の農民であるという一人のまだ幼い少年が、その小屋の場所まで案内することになった。

―――12くらいだろうか。
幼いその少年は、貴族の3人よりも一方通行に興味を示した。
「アクセラレータ、さん、っていうんですか?変わったお名前ですね」
「あァ」
「貴族様の使い魔をなされているんですよね?すると、僕と同じ平民ですか?」
「ンなようなモンだ」
だが、正直一方通行にとっては鬱陶しい。
純粋な子供というのは、どう扱えばいいのか分からない。
そして、その眼で自分を見られるのが嫌だった。
「俺の事ァどうでもいいだろ。ちゃんと場所まで案内してくれ。あそこのお姉さんのところへでも行ってな」
「は、はい」
そういうと、目をつぶって拒絶の意思を表す。
それから間もなく、その小屋へと到着した。

「たぶん、ここが貴方達の言っていた小屋だと思います。このあたりは人が滅多に入らないので、ここにある小屋はここだけですから」
少年が説明する。
「どうやら、ここで間違いないようですね…」
「そう、じゃ、この子はさっさと返しましょうね。このまま一緒じゃ危ないもの」
キュルケが提案する。
「まァ、それに反対するつもりは無ェが…このまま、歩いて帰らせンのか?結構な距離だと思うけどな」
一方通行の指摘に、少年が焦る。
「い、いえ、このくらいの距離歩くのは慣れてますから。貴族様のご迷惑になるようなことはいたしません!」
「いいえ、私たちの都合で無理やり来てもらったんだもの。帰りくらいはちゃんと送るわ」
ルイズ言い、結局馬車で待機、ということになった。

「さて、ンじゃ俺ァあの小屋を調べてくる」
「え!?」
言うや否や、一方通行はすたすたと小屋へ歩いて行った。
(実際、こいつらと一緒にいるよりも一人のが安全だからなァ)
全く警戒せずドアを開くと、一通り罠がないか調べて…

「罠とかは特に無いみたいだな」
と、みんなに知らせた。

全員が小屋に入り、何か手掛かりがないかと調べていると…
「みなさん!これは…」
ミス・ロングビルが声を上げた。
そこには。
「これは…破壊の杖!」
フーケに盗まれた、破壊の杖がしまわれていた。


「なんか、あっけなかったわね~」
キュルケが叫んだ。
「…何も無い方が良い」
「それもそうね」
タバサが応え、それにキュルケが応えた。
ミス・ロングビルがそれを持って小屋の外へ出た。
他に手がかりになるものが無いか、軽く調べなおす。
その時、小屋の外で見張りをしていたルイズから悲鳴が上がった。

「キャアアアア」
「ルイズ!」
勢いよく一方通行が飛び出した。
その先にはミス・ロングビルから破壊の杖を奪い取ろうとしている巨大なゴーレムと、その肩に乗っているフーケが居た。
「―――ッのやろォッ!」
暴風を操作し、ミス・ロングビルとルイズ、そして少年と破壊の杖を数m離れたところへ吹き飛ばす。
同時に周囲の砂を巻き上げ、肩に乗っているフーケらしき影へと飛す。
「逃げろ!ルイズ!」
視界を遮られたフーケ。
すぐにキュルケとタバサがやってきて、呪文を唱え始める。
だが、同時にゴーレムを反転させ、逃走した。
(逃がすかよォ!)
「お前ェらはそこで破壊の杖を守ってろ!動くンじゃねェぞ!」
返事を聞かずに飛び出し、普通の人間にはとても出せないような速度でゴーレムの追跡を開始する。
いくら歩幅が大きくとも、ゴーレムは大した速度は出せない。
時間にして5分程度。一方通行はフーケに追いついた。
「手間ァとらせやがって。とっとと終わらせて戻らせて貰うぜ」
あくまで余裕の態度を崩さない一方通行。
(っても、あの質量じゃ風で吹き飛ばせねェしなァ)
どうしたものか、と考える。
ふと、脳裏にあのクローンのオリジナルの姿が思い浮かんだ。
(まァ、試してみるのも悪くは無ェか)
思い、その辺に落ちている石ころに手を伸ばす。
「なァ。今、ここにどれだけの速度があるか。知ってるか?」

――――フーケは何も答えない。
「一重に速度といっても、それには自転・公転・遠心力・重力など様々な力がかかっています。さて、問題です」
10cm程度の石ころを持ち上げる。
「これらのすべてのベクトルが、一点に集中したら。どうなるでしょうか」
ベクトル変換。
それは、彼の肌に触れている全てのベクトルを自由に変えることができる力。
その力により、慣性のベクトルを180度変更さてた石ころ。
―――――轟ッッ!!!
重さ100g程度の小石が、音速をはるかに超える速度を生み出し。
そのエネルギーは、土くれのゴーレムをた易く射抜き。
その風は、周囲の森の木々をなぎ倒した。

嵐が過ぎ去った跡地には、見るも無残な森だったものが残されていた。
そこには、フーケの姿などもちろん存在しない。
「あァ…ちっとばかし、やりすぎたかな?」
どうでもいいように軽口を叩いて、元来た道を歩き始めた。
―――瞬間
「グァッ!?」
全身に、激しい痛みが走った。
(なっ…一体!?)
痛みの正体を探るため、思いを巡らせ
「く…ルイズかっ!」
元の道を凄まじい速度で走りだした。
―――追跡を開始した直後
「み、みなさん!彼を追わなくてもいいのですか!相手はあのフーケなんですよ!」
ミス・ロングビルが慌てて言う。
「大丈夫じゃない?ダーリンは強いし、やられるようなヘマしないわ」
「安心」
2人は事も無げに言う。
「いくら強いと言っても、彼は平民ですよ!貴族を手玉に取るような相手に…」
―――瞬間、音が消えた。
数瞬遅れて、轟ッっと凄まじい音があふれる。
鳥が一斉に羽ばたき、風の塊が頬を撫でた。
「ひゃっ」
少年がおびえたように体を竦ませる。
「終わったみたいね。いつも思うんだけど、一体どんな力を持っているのかしら」
「先住?」
「ルイズ、あんた本当に何も知らないの?」
ふ、とキュルケがルイズを見やる。
「し、知らないものは知らないわよ…自分の事何も話さないし…あいつ…ブツブツ」
呆気にとられているロングビル。
(魔力が…まさか…ゴーレムがやられた!?)
あのゴーレムは、足止めだけでなく破壊の杖を使わせる為のものだ。
当然、トライアングルクラスの攻撃でも壊せないように表面は錬金した鉄で覆っている。
それを、一瞬で屠ったというのだろうか。それも、使い魔の平民が。
(あ、ありえないわ…)
愕然とするロングビル。
だが、いつまでもボーっとしていたらすぐに彼が戻ってくるだろう。
あんなことをやってのける化け物相手に戦うのは完全に自殺行為。
それならば、戻ってくる前にせめて破壊の杖だけでも奪い返さなければ。
「ええい…まったくもう!」
悪態をつきながら、杖を振り上げ呪文を唱える。
一瞬の間に、巨大なゴーレムが現れた。
「「!!?」」
不意を突かれた2人の反応が遅れた。
(確か、あの2人はある程度の力は持っていたはずだね)
ゴーレムを操る。
(下手に戦ったら足止めされる可能性がある。安全に、雑魚を人質にとって逃げるべきだろうさ!)
その手でルイズと少年をその掌の中に納めた。
「そこの2人!この2人を潰されたくなかったら、おとなしく破壊の杖を返しな!」
グゥッ!っと掴まれた2人の間から苦悶の声が漏れた。
「ミス・ロングビル…まさか」
「土くれのフーケ…」
唇を噛み、己の不覚を悔いるキュルケのタバサ。
おそらく、あの肩の人影もゴーレムだったのだろう。
巨大なゴーレムを作れるのだから、そんなことは出来て当たり前だということを失念していた。
だが、二人はすぐに気持ちを切り替え策を練り始める。
(策を考えさせる暇なんかないんだよ!)
「早く渡しな!じゃないとこの2人がどうなるかわからないよ!」
「く…」
唇を噛むキュルケ。
しぶしぶと、そばに落ちている破壊の杖を手に取り…
瞬間、ひらめいた。
「破壊の杖」
タバサも同じ事を考えたのだろうか。
キュルケの頬が歪む。
「わかりましたわ。この破壊の杖…お返ししますっ!」
破壊の杖えを手に取り、魔力をこめゴーレムへ振る。
―――――

何も、変化がなかった。
(っち。結局無駄足だったね…)
「な、何!?これ破壊の杖なんじゃないの!?」
あわてるキュルケだが…
「ふん。本当に無駄足だったね…早く破壊の杖をよこしなっ!」
握る手を強める。
ギリッ。
悲鳴が途切れた。
意識を失ったのかもしれない。
「危険」
タバサがキュルケに目配せする。
「…わかったわ」
それに、深く頷くキュルケ。
そして、キュルケが破壊の杖を放り投げた。

――――勝負は、一瞬。
(絶対に失敗するわけには…いかない!)
タバサの口から、呪文が漏れる。
その小さな声は、破壊の杖を見つめているフーケには届かない。
そして、キュルケが破壊の杖を投げた。
すでに詠唱は終わっている。
身の丈もある、巨大な杖。
それを振りかざし、現れた巨大な氷の矢はゴーレムの手を正確に射抜いた。

―――ズンッ!
ゴーレムの腕が千切れ飛んだ。
(何!?)
そして、キュルケが唱えたレビテーションにより2人を救出。
「チッ…やってくれるねぇ!」
小さく呪文を唱える。
対して、タバサはすでに詠唱を完了していた。
先ほどの大きさは無いが、巨大であることには変わりない氷の矢が飛んできた。
が。
その矢は、巨大な腕に阻まれ、消滅した。
「なっ…」
驚いて声を上げた、キュルケ。
そして、目をむくタバサ。
「ふふっ…教えてあげるわ。私の二つ名は土くれのフーケ。土さえあれば、このゴーレムは何度でもよみがえるのさ!」
そして、ゴーレムが再び少年をつかむ。
「言ったはずよ…抵抗したら、こいつらの命はないと!」
二人の表情が絶望に染まった。
ミチリッ
意識を失った哀れな少年は、その体を潰され。
ボトリッ
と頭だけが地面へと落下した。

残る二人をまとめて腕で弾き飛ばし、破壊の杖を拾い上げた。
「手間とらせやがって…」
一瞬、全員を踏みつぶそうかとも考えた。
(そんなことしたら、あの化け物が追いつくわね…逃げるか)
止めを刺すことなく、フーケはゴーレムを反転させし、

「待てよ」

「なっ…!」
そして、化け物が現れた。

いくらなんでも早すぎる。
ゴーレムが消滅した場所とここまでの距離は、少なくとも馬で2~3分はかかる。
それだけの距離を置いて、ゴーレムに追いつかせたのだ。
なのに…
(まだ2分もたってないよ!)
一体何だこれは!
叫びたかったが、動けない。
顔をゆがめた、14,5歳程度にしか見えない少年が。
自分の命を刈る、死神に見えたのだ。

―――重力すら速度に変え、木々をなぎ倒し一方通行は奔る。
痛みが、全身を襲う。
(そンなもン、構ってられッかよ!)
時間にして、1分か2分か。
来たときの倍以上の速度で、一方通行はルイズの元へと舞い戻る。
「待てよ」
身を反転ようとしたロングビル、いやフーケへと言葉を叩きつける。
その表情は、ルイズが受けた痛みを受けて苦痛にゆがんでいる。
正直、立っているだけでもやっとだ。
(だが…あの程度を消滅させる程度なら全く問題は無ェな)
自転操作でもしようかと、適当な物を探す。

地べたに寝転んでいる、おそらくは気絶しているであろうルイズ・キュルケ・タバサの姿を確認した。
そして―――
おそらくは、あの少年のものであろう。
血液の水たまりと、頭部を発見した。

(何…だと…?)
一体これはどういうことか。
死んだ?
何故?
彼はごく普通に生活をしていた、一般人だ。
この場所へ案内するために連れてこられ、偶々ここにいたにすぎない。
偶然なのか。
たまたま、運が悪かったから死んだというのか。
いや―――
守れたはずだった。
考える。
ここと学院は、馬車で数時間の距離がある。
ミス・ロングビルは、朝の1-2時間でその距離を往復したというのか。
今まで、誰にも姿を見られずに盗みを行った大盗賊相手に、人が滅多に入らないような場所に、ただの農民が偶然行き、そのアジトを発見でき、偶然ロングビルがその農民に話を聞くことができたというのだろか。
これらすべて、普通に考えればありえないことだ。
だが、自分の力を過信しすぎた。
自分なら、どんなことが起きても守りきれると。
そう、思ってしまった。
全ては、自分の油断が招いたことなのだ。
(俺の力は、自分だけは守れても他人は守れないってのによォ)
本当に馬鹿だ。
自分の力を過信しなければ。
この、学園都市最高の。
能力開発された230万人の中で最大の頭脳を持ちながら、小学生でも気づくような矛盾を見過ごしたのだ。
「ぐ…く…くは…」
おかしい。
可笑しすぎる。
結局、自分は壊すしか脳が無いのだ。
誰かを守ろうなんて、おこがましい。
1万人の罪の償い?

―――そんなこと、できるはずがない

「くははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
笑いが止まらない。
もう、能力を押えようとは思わない。
とりあえず、あの三下を消滅させよう。
無造作に手をかき回し。
暴風を操作し。
風を一点に集中させる。
頭上、100メートルの位置。
暴風が集められた瞬間まばゆい光が周囲を照らす。
摂氏一〇〇〇〇度を超えるプラズマが発生した。
プラズマは、周囲の空気を飲み込み瞬く間に巨大になっていく。
そして、フーケが何事かを呟き。
光の玉に飲み込まれ、完全にフーケは消滅した。


フーケは殺した。
だからなんだというのだろう。
学園都市最高の頭脳が、生きていればいるほど自分の罪を増やしていくと告げている。
もう、何をどうすればいいのかも分からない。
最強の存在は、自分の過去にすら勝てないのだ。

「アク、セラ…レータ?」
「…」
意識を取り戻したばかりのルイズが、一方通行に呼びかける。
「だい、じょうぶ?」
「―――ッ!」
(何で人の心配してやがんだ…!自分の方が大変じゃねェか…)
そんな状態で、しかし自分のことより一方通行の心配をする。
「あんたが…守ってくれたのね。ありがとう…」
自分はこんなにボロボロなのに。
「守ってなンか…いない!」
叫ぶ。
「俺は!守ってなンかいねェ!あのガキを助けられなかった!殺した!助けられたはずなのに!」
叫ばずにはいられなかった。
「そう…彼、死んでしまったのね…」
「違う!俺が殺した!」
「いいえ…違うわ。アクセラレータ。貴方は殺してなんかいない」
「ッ!?」
しかし、ルイズは冷静に、静かに、言い聞かせるように一方通行へと話しかける。
「あなたがいなければ…ここにいる、みんなが殺されていた。殺したのはフーケ。そして、ミス・ロングビルがフーケだということに気付かなかったのは、先生も含める全員」
そして
「もし、貴方が彼を殺したというのなら、それは私たち全員の罪。誰かがあなたを人殺しと糾弾するのなら、私が全力で貴方を守るわ」
そう、宣言した。

(また…だなァ)
また、救われた。
自分よりも圧倒的に弱い、貧弱な人間に。
最強である筈の自分が、二度も守られ、救われた。
それだけでなく、これからも自分を守るとまで言った。
そう、そうなのだ。
何かを守るのに、最強である必要など無い。
あの、最弱の少年のように。
この、貧弱な少女のように。
無敵にならなくても、最強ですらなくても。
きっと、人を守ることはできるのだ。
ならば、最強である自分は。
守れないはずがない。
守らなければならない。
今度こそ。
光の道を歩む、この少年のような人間を、今度こそ守る。
たとえ、フーケのように消滅しようとも、闇の奥底へもぐろうとも、出来得る限りのすべての手段を行使して。
一方通行は、その覚悟を決めた。


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