あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの使い魔・ブルー編-22

アルビオン空軍、その工廠の街、ロサイス。
所々にそびえ立つ煙突からは煙が立ち上っている。
そこら中に積み重ねられた資材と、それを運んだり、
もしくはそれを組み立てたりする者達、
そしてその者達によって作られた物で、今此処は満たされていた。
そのうち、最も大きい物を、資材でも働き手でも無い者が見上げながら、感嘆の声を上げる。

「何とも雄大な船ではないか!この船の主は、自分こそが空の主でもあるような、
 そう言う感覚を与えてくれる、そう言う船とは思えないかね?艤装主任」
「我が身には余りある光栄ですな」

どう聞いてもそうは思ってないような、棒読みと言っても良い口調で応えたのは、
まさに、この船の主となるべき、この船の艤装主任、サー・ヘンリ・ボーウッドであった。
先の内戦――彼らに言わせれば革命戦争だが。とにかく、
その戦いに於いて、彼は功を立て、この船の艤装主任、そして艦長の座を与えられた。
もっとも、彼がそれに対し、特に感慨は抱かなかったのだが。
そんな彼の様子は無視し、艦に備え付けられた大砲を大げさに手で指し示し、大きな声で言う。

「見たまえ!あの大砲を――私の、君への信頼の証として、君が乗る船に送る、新兵器だ。
 錬金に長けるメイジを集めて鋳造した、長砲身の大砲だ!設計士の計算では……あー」

言葉に詰まって、少し時間が流れる。
クロムウェルは、その空気を気まずいと思ったのか、側に立っている男にチラと視線を送る。
男は気のない風で軽く応える。

「従来の46パーセント、射程が向上している。アルビオンのそれに比べると、約1.37倍、
 トリステインに比べれば1.54倍の射程を確保できていることになる」
「そう、そうだったな、ドクター」

ドクターと呼ばれたその男は、余り見ない風貌の男だった。
いや、服装自体はそうおかしい物ではないのだが、黒髪に、黒目。
そして、左目を眼帯で覆っている。
マントをしてはいたが、メイジには見えない。
訝しがるような視線に気付いたのか、クロムウェルが言う。


「彼は東方……ロバ・アル・カリイエから来たのだ。
 彼の地には、我々にはない技術が、魔法によらぬ幾つもの技術があるのだそうだ……
 君も付き合っておいて損はない思う。良かったらこの機会にどうかね?」
「そうですね」

全くもってその気のない返事であったが、それに気付いているのか居ないのか、
どちらにしろ反応はせずにクロムウェルは巨船を見上げる。
ボーウッドも、それに釣られて船を見上げる。
彼のやるせない気持ちと、本来あるべき理想とのギャップから、皮肉の一つを外に出した。

「……この『ロイヤル・ソヴリン』に敵う船は、もはや何処にもないでしょうね」
「ははは、それはそうだが、この船は『ロイヤル・ソヴリン』ではない。
 もはやこのハルキゲニアに『王権』は存在しないのだよ」
「……そうでしたな。しかし、今度の親善訪問……わざわざこの船で行く必要はないでしょう。
 新兵器を積んだ船なぞ、示威行為と取られても仕方ありませぬぞ」

「そうか、君はまだ知らなかったな。今回の『親善訪問』については……」

その口ぶりから、ボーウッドは余り聞きたくはない類の言葉が来ると予測はした。
予測はしていたが、それを上回る、悪いことであった。

「簡単に言えば、不意打ちだ」
「……なんですと?」
「相手の号砲に合わせて、此方の船を一つ、自沈させる。
 それを口実に攻め入ろうというわけだ」

当然、彼にとっては認められる様なことではなく、
感情をそのまま、とは行かないまでもかなり表に出す。

「何を考えているのですか!?そのような行為、許されぬはずがありませぬ!」
「軍事行動の一環だ」
「不可侵条約を結んだばかりですぞ!
 そんな事は、このアルビオンの歴史、いやハルキゲニア全ての歴史に於いてもありますまい!」
「残念だが、これは議会で既に話し合われ、決定し、私が承認した物なのだよ。
 これに口を挟むのならば、政治批判と言っても良い。君は政治家かね?それともあるいは……革命家か」


そう言い、クロムウェルはボーウッドにわざとらしい、
疑っていると言わんばかりの視線を向ける。
それに対してというわけではなく、ボーウッドは一旦言葉を止めた。
彼は、彼自身をあくまでも一軍人だと思っている。
そして、軍人は政治に口出しするような物でも無いとも。それでも、彼は再び口を開いた。

「アルビオン……いや、我々は、歴史に残りますぞ。類を見ない、卑怯者として」
「そうだ、歴史に残るだろう。だがそれは、卑怯者としてではない。
 当然、ハルキゲニアを統一し、聖地を取り戻した英雄としてだ。
 ……それでは、頑張ってくれたまえ」

そう言って、クロムウェルは去っていく。
彼の姿が消えてから、近くで様子を見ていたらしい一人の兵士がボーウッドに駆けよってきた。

「どうかされたのですか?」

そう問われて、自分の態度を思い返し、それを恥じながら問いに答えた。

「不意打ちをする、と言うのだ。命令である以上、従わぬ訳にはいかないが……
 やはり、納得は出来ん」
「……どういう事です?」
「此方の船を一つ自沈させると。
 ……それをトリステインの仕業にするつもりなのだろう」
「……そう、ですか……」

そう呟くと、その兵士もまた去っていった。
ボーウッドはそれを余り気にもせず、船を見上げた。


「なんだか退屈だわ」
「……そうか?」

魔法学院では、いつも通り――つまり、冒険などは無い時間が流れていた。
ブルーが呼び出されてからというもの、
ルイズは危険や困惑が溢れるような日々を過ごしていたが、
過ぎ去ってしまうとなんだか物足りないように思っていたのだった。
ルイズの呼びかけに、ブルーは何か考え事でもしていたのか、少し間をおいてから反応した。

「平和なのは良い事だわ」
「そうだな」
「でも、なんだかこう立て続けに色々あるとね、
 なんだかまたすぐに何か起こりそうな気がするじゃない」
「それは勘弁だな」
「……私もそう思うわ」

話していれば、時間は過ぎる。
その時間を歩いていれば、教室に着くわけだから、教室について、他愛もない会話は終わった。
今回はコルベールの授業である。
本来ならもうやっていてもおかしく無いはずなのだが、
フーケの件で一回すっ飛ばされて、今回が初めての授業となる。
だから、今日もなかったりした場合、結構遅れることになるのだが――

「コルベール先生は行方不明だ」
「……はぁ?」

本来来るはずのコルベールではなく、ギトーがやってきた。
そして、教壇に立って真っ先に言った言葉がこれである。
恐らく、ルイズ達以外の生徒も同じ声を上げていたのだろうが、
タイミングが一致しすぎて逆に少数の声にしか聞こえなかった。
流石に、それ以降の反応は別々だったが。

「え、えーと、行方不明……って事は、授業はなしですか?」
「というか、何処に行ったんですか?」
「そう言えば最近見なかったな……」
「授業暫くありませんよ……?」
「どういうことよ……?」

最後の言葉はルイズの物である。
それに対する回答なり、共感などが得られないかと思ってブルーの方を向く。
彼はというと、その視線が向けられてから、
暫く立ってようやく気付いたようにルイズの方を向き、少し考えてから軽く言った。

「また何か起こったな」
「…………」


「で、どういう事なんですか?」
「おぬしで5人目というのは、良いことなのか悪いことなのか……」

あの後始まったギトーの演説を
ブルーが『サイキック・プリズン』で13秒で終わらせた後、
取り敢えず最も事情を知っていそうなオスマンの所に居た。
尚、ブルーはいつの間にか姿が消えていたが、
きっといてもいなくても変わらないので放置しておいた。
使い魔とメイジは一心同体?そんな物は幻想だ。
ルイズは最近、そう思い始めていた。

「だいたい、授業が終わってからから何故20分もかかってるのかね……?」
「それほど……いえ、少々用事がありまして」
「……本来授業があるべき時間に用事があるのはともかくとして、わしもミスタ・コルベールの行方は知らん」
「そうですか……」
「暫く仕事がないからと、街まで秘薬の類を買いに行ったようなんじゃが……」
「それっきり戻らないと?」
「うむ、そうじゃ」

そこでオスマンが一息つく。
ルイズも、特に聞くべき事は思いつかないので、両者共に沈黙する。
先に口を開いたのはオスマンだった。

「所でミス・ヴァリエール」
「はい」

オスマンが口調を改めて話しかけてきたので、ルイズも姿勢を正し、それに相応しい態度で臨む。

「丁度良いのでこれを渡しておこう」

オスマンは机の片隅にあった古ぼけた本、
と言うよりかはぼろ紙の束と言った方が正しそうなものをルイズに差し出してくる。


「……これは?」
「『トリステイン王家に伝わる始祖の祈祷書』じゃ」

アクセントの位置が少々違う事の意味を理解しながら、ルイズは紙を捲ってみる。
何も書かれていない。

「何も書いてありませんが」
「……どう見ても本物ではないと思うんじゃが……それはこの際関係ない。
 君にそれを渡すのはだな、トリステイン王家の伝統で、王族の結婚式の際には、
 貴族から選ばれた巫女が結婚式の際にはそれを手に詔を読み上げる習わしでな。
 習わしと言っても、王族とも成れば決まり事も同然じゃな」
「はあ」
「そして、アンリエッタ姫殿下は、その巫女としてそなたを指名したのじゃ」
「……わ、私ですか?」
「そうじゃよ。して、巫女はこの祈祷書を式の前より肌身離さず持ち歩き、
 読み上げる詔を考えることになっておる」
「私が考えるんですか?」
「まぁ、草案は宮中の者が推敲するだろうし、別に他人の意見を聞いちゃ成らんわけでもあるまい。
 それに、一生に一度あるかないかの大役じゃ、まさか断りはしまい?」

「……はい、謹んで拝命いたします」
「ふむ、引き受けてくれるのなら心配はないの。
 ……まぁ、用事は以上じゃ」

「それでは、失礼――」
「ああ、待った待った。済まないが、
 君と一緒にアルビオンに行った3人に儂の所に来るように言ってくれんかな?」
「解りました……けど、何でです?」

そう言われると、オスマンは一旦硬直し、数秒考え込んでから、
重くなった口からうめく様に言った。

「…………コルベール先生を捜して貰おうかと思ってのう……」
「……そうですか」


祈祷書を携えて、3人に言伝を伝えてから、ルイズは部屋に戻る。
タバサとキュルケは部屋にいたのですぐに解ったが、ギーシュは何処にいるか解らず、
当たりを付けて女子の集まるところを探しても見あたらないので、諦めて帰ろうとした辺りでようやく会えた。
ちなみに、このルイズの行動が原因で、ギーシュが何者かに毒を盛られたらしいが、それはどうでも良いことだ。
部屋に戻った頃には、結構な時間をかけたため、空が黄昏れてきていた。
薄くなった光を頼りに、机の上に祈祷書を広げて、読もうとしてみる。
が、何も書かれていない。

「……どうしろってのよ」

一応、ページを捲ってみるが、そこにも何も書かれては居ない。
ため息をついて、椅子に寄りかかる。

「確かに名誉なことではあるけど……何も思いつかないわ」

もしかしたらアイデアか何かあるかも知れないと思い、
椅子に座ったまま身体の向きを変えて後ろを見る。

「ねえ、ブルー……」

振り返ったが、誰もいない。ルイズは首をかしげる。
いつも、特に用事はないはずなので、部屋にいるはずなのだが……。

「どうしたのかしら……」

取り敢えずそのことは一時忘れて、詔を考える作業にもどった。
とはいえ、とても順調とは行かず、そのまま夜になった。

人々が寝静まる時間になっても、彼女の使い魔は帰ってこなかった。


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