どこかの国のどこかの広場
そこで水晶玉を持った吟遊詩人の少女が歌っていた
そこで水晶玉を持った吟遊詩人の少女が歌っていた
「……この物語の主人公は
魔法使いの家に生まれたのに
魔法の使えない女の子。
何をやっても爆発ばかり。
ついつい周りにも厳しくあたる。
魔法使いの家に生まれたのに
魔法の使えない女の子。
何をやっても爆発ばかり。
ついつい周りにも厳しくあたる。
物語の始まりは魔法学校。
使い魔召喚の儀式からよ。
使い魔召喚の儀式からよ。
彼女が呪文を唱えた後に
銀の鏡から出てくるのは何かしら?
銀の鏡から出てくるのは何かしら?
ドラゴンやグリフォンのような幻獣?
ワシやフクロウや犬やネコ?
ワシやフクロウや犬やネコ?
それとも遠い国からやってきた
ちょっと情けない男の子?
ちょっと情けない男の子?
それは呪文を唱えなくっちゃ分からない。
さあ、物語を始めましょう。
さあ、物語を始めましょう。
ラララ、ララ……」
―使い魔はじめました 第一話―
「ふわぁあ、今日も疲れたぁ……」
自分の横であくびをする飼い猫:チョコの声を聞きながら、
少女:サララは小さなベッドに腰かけ、日記を書いていた
『今日も快晴、商売は順調、ミスリルの原石を盗りにダンジョンへ潜った、
明日の朝一番で、白銀の剣と組み合わせてもらいに行こう……』
そこまで書いた所でサララは筆を止め、ふと、窓の外を見る
外では、大きな満月が煌々と空を照らしていた
いや、輝く丸い大きなその光は月ではなかった
「わわ、な、なに?」
異常事態に気がついたチョコが、声を上げる
突如として部屋に飛び込んできた銀の鏡は、
驚いて逃げる間もなかったサララとチョコ、
そして彼女の集めたあらゆるアイテムの詰まった『魔女の大鍋』を
飲み込むと、忽然とその場から姿を消したのである
自分の横であくびをする飼い猫:チョコの声を聞きながら、
少女:サララは小さなベッドに腰かけ、日記を書いていた
『今日も快晴、商売は順調、ミスリルの原石を盗りにダンジョンへ潜った、
明日の朝一番で、白銀の剣と組み合わせてもらいに行こう……』
そこまで書いた所でサララは筆を止め、ふと、窓の外を見る
外では、大きな満月が煌々と空を照らしていた
いや、輝く丸い大きなその光は月ではなかった
「わわ、な、なに?」
異常事態に気がついたチョコが、声を上げる
突如として部屋に飛び込んできた銀の鏡は、
驚いて逃げる間もなかったサララとチョコ、
そして彼女の集めたあらゆるアイテムの詰まった『魔女の大鍋』を
飲み込むと、忽然とその場から姿を消したのである
「(始祖ブリミルよ、我にご加護を!)」
二年生へ進級するために必要な『使い魔』召喚の儀式
その儀式において、少女ルイズは、始祖に祈りながら、ルーンを唱え、杖を振った
いつものごとく、起こったのは激しい爆発
「けほけほ、おい、ゼロのルイズ!やっぱり失敗か!!」
同級生達からは怒りの混じったからかいの声が飛ぶが、
しかし、ルイズはその爆煙が晴れるのを、じっと見つめていた
「(確かに、今、『魔法が成功した』ような感覚があったわ!)」
わくわくしながら煙が晴れるのを待つルイズ
「おい!煙の中に何かいるぞ!」
一人がそう叫んだのを皮切りに、同級生達もじっと見つめる
煙が晴れた時、そこに現れたものを見て、全員がぽかんとする
二年生へ進級するために必要な『使い魔』召喚の儀式
その儀式において、少女ルイズは、始祖に祈りながら、ルーンを唱え、杖を振った
いつものごとく、起こったのは激しい爆発
「けほけほ、おい、ゼロのルイズ!やっぱり失敗か!!」
同級生達からは怒りの混じったからかいの声が飛ぶが、
しかし、ルイズはその爆煙が晴れるのを、じっと見つめていた
「(確かに、今、『魔法が成功した』ような感覚があったわ!)」
わくわくしながら煙が晴れるのを待つルイズ
「おい!煙の中に何かいるぞ!」
一人がそう叫んだのを皮切りに、同級生達もじっと見つめる
煙が晴れた時、そこに現れたものを見て、全員がぽかんとする
「鍋……?」
「鍋と、子どもと、猫?」
ざわざわと騒ぐギャラリーよりも、ルイズはさらに困惑していた
オレンジのリボンがついた大きな緑の帽子を被り、
同じ色のワンピースに白いエプロンをつけた腰まである桃色の髪の少女
身長は帽子含めて145サントくらいだろうか
その傍らには茶色と白の毛並みをし、青い瞳を輝かせる猫
一番目立つのは、小柄な少女ならすっぽりと入り込んでしまいそうな巨大な鍋である
どうやら、それが自分が召喚してしまったものであるらしかった
「ミスタ・コルベール!」
とりあえず引率の教師に声をかける
「……おめでとう、ミス・ヴァリエール
召喚に成功したようですね」
「あ、ありがとうございます……じゃなくて!
あの、私はその一体……どれ、と契約したらいいんでしょうか?」
ルイズとコルベールは、召喚されたものを見やる
周りをきょろきょろと見回す少女と、その傍でおろおろする猫、そして、巨大な鍋
「私としては、猫と契約したいんですが、あれ、どうみても彼女のものですよね……」
困ったように言うルイズに、コルベールは告げた
「そうですね。では、とりあえず、彼女と話してはどうですか?彼女も、戸惑っているようですし」
コルベールの言葉に従い、ルイズはその少女の傍へ歩み寄った
「鍋と、子どもと、猫?」
ざわざわと騒ぐギャラリーよりも、ルイズはさらに困惑していた
オレンジのリボンがついた大きな緑の帽子を被り、
同じ色のワンピースに白いエプロンをつけた腰まである桃色の髪の少女
身長は帽子含めて145サントくらいだろうか
その傍らには茶色と白の毛並みをし、青い瞳を輝かせる猫
一番目立つのは、小柄な少女ならすっぽりと入り込んでしまいそうな巨大な鍋である
どうやら、それが自分が召喚してしまったものであるらしかった
「ミスタ・コルベール!」
とりあえず引率の教師に声をかける
「……おめでとう、ミス・ヴァリエール
召喚に成功したようですね」
「あ、ありがとうございます……じゃなくて!
あの、私はその一体……どれ、と契約したらいいんでしょうか?」
ルイズとコルベールは、召喚されたものを見やる
周りをきょろきょろと見回す少女と、その傍でおろおろする猫、そして、巨大な鍋
「私としては、猫と契約したいんですが、あれ、どうみても彼女のものですよね……」
困ったように言うルイズに、コルベールは告げた
「そうですね。では、とりあえず、彼女と話してはどうですか?彼女も、戸惑っているようですし」
コルベールの言葉に従い、ルイズはその少女の傍へ歩み寄った
「ぺっぺっ、口に砂が入っちゃった
何だったんだろうね、あの鏡……って、あれ?」
口に入った砂を吐き出していたチョコは周りの違和感に気づく
芝生の生えた広場と、広がる青空、そして遠めに自分達を眺めている子供達
全員が、マントをつけ、杖を持っている
「わわ、何だろ、ここ?ねえ、サララ、わかる?」
サララは、チョコの問いに首を横に振ると辺りを見渡した
一体、何が起こり、ここは何処なのだろうか?
少なくとも、先程まで居た店の屋根裏ではない
と、人々の中から、一人の少女が彼女に近づいてきた
「ねえ!その猫、とついでにそっちの鍋、あんたの?」
事情を説明してもらおうとした矢先、少女の口から質問がとんできた
とりあえず、こくり、と縦に頷く
「ううー、そ、そんなあ……折角、使い魔を召喚できたと思ったのにぃ……」
少女はがっくりと肩を落とし、恨めしそうな目でサララを見る
「まあまあ、ミス・ヴァリエール。まだ、彼女が残っているではありませんか?」
その後ろからやってきた男性が少女の肩に手を置いた
「ミスタ・コルベール!人間を使い魔にするなんて、聞いたことがありませんよ!」
少女は慌てて振り向くと、男性に抗議をしているようだ
「しかしねえ、君が召喚したものは、彼女の持ち物であるようだし
となると、彼女と契約するしかないだろう?
これは神聖な『使い魔』召喚の儀式なんだよ、例外は認められない」
「でも……」
何だったんだろうね、あの鏡……って、あれ?」
口に入った砂を吐き出していたチョコは周りの違和感に気づく
芝生の生えた広場と、広がる青空、そして遠めに自分達を眺めている子供達
全員が、マントをつけ、杖を持っている
「わわ、何だろ、ここ?ねえ、サララ、わかる?」
サララは、チョコの問いに首を横に振ると辺りを見渡した
一体、何が起こり、ここは何処なのだろうか?
少なくとも、先程まで居た店の屋根裏ではない
と、人々の中から、一人の少女が彼女に近づいてきた
「ねえ!その猫、とついでにそっちの鍋、あんたの?」
事情を説明してもらおうとした矢先、少女の口から質問がとんできた
とりあえず、こくり、と縦に頷く
「ううー、そ、そんなあ……折角、使い魔を召喚できたと思ったのにぃ……」
少女はがっくりと肩を落とし、恨めしそうな目でサララを見る
「まあまあ、ミス・ヴァリエール。まだ、彼女が残っているではありませんか?」
その後ろからやってきた男性が少女の肩に手を置いた
「ミスタ・コルベール!人間を使い魔にするなんて、聞いたことがありませんよ!」
少女は慌てて振り向くと、男性に抗議をしているようだ
「しかしねえ、君が召喚したものは、彼女の持ち物であるようだし
となると、彼女と契約するしかないだろう?
これは神聖な『使い魔』召喚の儀式なんだよ、例外は認められない」
「でも……」
口論をしている二人を見ながら、チョコはひそひそとサララに話しかける
「ねえ、サララ、どうやら、彼女の『使い魔』にならなきゃ
いけないみたいだよ?どうするの?」
その言葉にサララも困ったように顔をしかめる
「うーん……」
二人、もとい一人と一匹で頭を抱えていると、
覚悟を決めたかのような顔で少女が近づいてきた
「……あのね、私はあんたを召喚しちゃったの。
召喚したものは、使い魔にしなきゃいけない。
そっちの猫と、あとついでに鍋も、あんたのものよね?
だから、仕方ないのよ、仕方ないんだから、
あんた、私と契約して使い魔になりなさい!」
その不遜な物言いに、チョコは不満そうだった
「べぇーっだ!誰が使い魔になんかなってやるもんか、ねえ、サララ?」
チョコは、サララが断るだろう、と思って声をかける
考え込むような顔をしていたサララだったが、やがて少女を見上げると、
決心したように、大きく頷いた
「えええー!ちょっと、サララ、本気なの!
使い魔なんて、何やらされるかわかんないよ?
雑用とか洗濯とか掃除とか!ボク手伝わないからね!」
「(みゃあみゃあうるさい猫ね)な、納得してくれてよかったわ」
少女はそう呟くとサララに視線を合わせるようにしゃがみこんだ
「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」
そういうと、サララの唇に少女は唇を重ねた
サララの目は驚きに大きく見開かれる(見えないが)
「……終わりました(女の子で、子供相手だから、ノーカウントよね、うん)」
ぽう、と髪と帽子で隠されたサララの額が一瞬輝く
「っ!!」
瞬間、襲ってきた痛みに眉をしかめるサララ(見えないが)
「わあ!どうしたの?おい、そこのお前!サララに何したんだよ!」
チョコがサララの異変に気がついて、食ってかかる
「何って、使い魔のルーンが刻まれてるだけよ……え?
あ、あんた、今、喋らなかった?」
ルイズが驚きながら、チョコを抱き上げる
「喋るよ!……ってあれ、おかしいな?
ボクの声はサララにしか聞こえないはずなんだけど」
一人と一匹は互いに驚いている
「どうやら、無事に終わったようですね、ミス・ヴァリエール
それとお嬢さん、ルーンが刻まれたか確認させてもらえませんか?」
そう言うと、サララの前髪をあげ、額にルーンが刻まれたことを確認する
「……ちゃんと、ルーンも刻まれたようです
召喚も契約も一度で成功して、よかったですね、ミス・ヴァリエール」
ニコニコと笑うコルベールの目の前に、ずい、とチョコを差し出すルイズ
「あ、あの、ミスタ・コルベール!この猫なんですけど!!」
「ちょっと、何するんだよ、離して、はーなーしーてー!!」
みゃあみゃあと騒ぐチョコに、コルベールは顔をしかめる
「嫌がっているようですから、離してやりなさい」
「あの、この猫、喋ってますよね?」
ルイズは、恐る恐る尋ねてみる
「ねえ、サララ、どうやら、彼女の『使い魔』にならなきゃ
いけないみたいだよ?どうするの?」
その言葉にサララも困ったように顔をしかめる
「うーん……」
二人、もとい一人と一匹で頭を抱えていると、
覚悟を決めたかのような顔で少女が近づいてきた
「……あのね、私はあんたを召喚しちゃったの。
召喚したものは、使い魔にしなきゃいけない。
そっちの猫と、あとついでに鍋も、あんたのものよね?
だから、仕方ないのよ、仕方ないんだから、
あんた、私と契約して使い魔になりなさい!」
その不遜な物言いに、チョコは不満そうだった
「べぇーっだ!誰が使い魔になんかなってやるもんか、ねえ、サララ?」
チョコは、サララが断るだろう、と思って声をかける
考え込むような顔をしていたサララだったが、やがて少女を見上げると、
決心したように、大きく頷いた
「えええー!ちょっと、サララ、本気なの!
使い魔なんて、何やらされるかわかんないよ?
雑用とか洗濯とか掃除とか!ボク手伝わないからね!」
「(みゃあみゃあうるさい猫ね)な、納得してくれてよかったわ」
少女はそう呟くとサララに視線を合わせるようにしゃがみこんだ
「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」
そういうと、サララの唇に少女は唇を重ねた
サララの目は驚きに大きく見開かれる(見えないが)
「……終わりました(女の子で、子供相手だから、ノーカウントよね、うん)」
ぽう、と髪と帽子で隠されたサララの額が一瞬輝く
「っ!!」
瞬間、襲ってきた痛みに眉をしかめるサララ(見えないが)
「わあ!どうしたの?おい、そこのお前!サララに何したんだよ!」
チョコがサララの異変に気がついて、食ってかかる
「何って、使い魔のルーンが刻まれてるだけよ……え?
あ、あんた、今、喋らなかった?」
ルイズが驚きながら、チョコを抱き上げる
「喋るよ!……ってあれ、おかしいな?
ボクの声はサララにしか聞こえないはずなんだけど」
一人と一匹は互いに驚いている
「どうやら、無事に終わったようですね、ミス・ヴァリエール
それとお嬢さん、ルーンが刻まれたか確認させてもらえませんか?」
そう言うと、サララの前髪をあげ、額にルーンが刻まれたことを確認する
「……ちゃんと、ルーンも刻まれたようです
召喚も契約も一度で成功して、よかったですね、ミス・ヴァリエール」
ニコニコと笑うコルベールの目の前に、ずい、とチョコを差し出すルイズ
「あ、あの、ミスタ・コルベール!この猫なんですけど!!」
「ちょっと、何するんだよ、離して、はーなーしーてー!!」
みゃあみゃあと騒ぐチョコに、コルベールは顔をしかめる
「嫌がっているようですから、離してやりなさい」
「あの、この猫、喋ってますよね?」
ルイズは、恐る恐る尋ねてみる
ルイズが口にした言葉に、事の顛末を見守っていた同級生達がぽかん、とし、
そして関を切ったようにいっせいに笑い出した
「ははは!ゼロのルイズったら、何を言っているんだ!」
「ただみゃあみゃあ鳴いてるだけじゃないか!」
「とうとう、馬鹿になっちまったのか!!」
大声で一人と一匹を指指しながら、彼らは笑った
「違うわ!本当に喋ってるのよ!!」
「そうだそうだ!君らが聞こえないだけじゃないか!」
やいのやいのと騒ぎ立てる彼らに向かってルイズとチョコは叫ぶ
「……ほらほら、騒がない!君達は先に教室へ戻っていなさい!」
コルベールがそう声をかけると、同級生達は思い思いに呪文を唱え空へ舞い上がる
「へへ、じゃあなゼロのルイズ!」
「お前は歩いて来いよ!」
「フライもレビテーションも使えないもんな!」
からかいながら去っていく彼らを、ルイズは涙目でにらみつける
折角召喚できたと思ったら、平民の子供と、
喋ってるのに喋ってない猫と、巨大な鍋だったのだから泣きたくもなるだろう
「へえ、凄いなあ。こっちの魔法使いは、箒が無くても飛べるんだあ」
だから、腕の中の猫がそう呟いた瞬間、ルイズは驚いた
「こっちの、って、あんた、どこの田舎から来たのよ」
「『だんじょん』の町」
「どこよ!」
「『だんじょん』の町は『だんじょん』の町だよ!」
「そんな名前の町、聞いたこともないわ!
大体、あんたねえ、喋るんだか喋らないんだかはっきりしなさいよ!」
ルイズが、怒り心頭でチョコに叫んだ
「あんた、じゃない!ボクには『チョコ』って名前があるんだよ!
ボクの飼い主で、『だんじょん』の町一番のやり手の商売人、
魔女『サララ』がつけてくれた名前が!」
怒りながらそう叫んだチョコの言葉に、ルイズは言葉を失った
「な、何ですって、魔女?今、あんた魔女って言ったの?」
「そうだよ!そこにいるサララは、魔女なんだから!
まあ……もっとも、魔法は使えないけどね」
何てことだ、と思いながら、ルイズは自分達を見上げる少女を見た
彼女もまた、自分と同じ魔法使いであるという
「(しかも、魔法の使えない、ってところまで同じなんて……)」
ルイズは、ショックのあまり眩暈がしてきそうだった
そして関を切ったようにいっせいに笑い出した
「ははは!ゼロのルイズったら、何を言っているんだ!」
「ただみゃあみゃあ鳴いてるだけじゃないか!」
「とうとう、馬鹿になっちまったのか!!」
大声で一人と一匹を指指しながら、彼らは笑った
「違うわ!本当に喋ってるのよ!!」
「そうだそうだ!君らが聞こえないだけじゃないか!」
やいのやいのと騒ぎ立てる彼らに向かってルイズとチョコは叫ぶ
「……ほらほら、騒がない!君達は先に教室へ戻っていなさい!」
コルベールがそう声をかけると、同級生達は思い思いに呪文を唱え空へ舞い上がる
「へへ、じゃあなゼロのルイズ!」
「お前は歩いて来いよ!」
「フライもレビテーションも使えないもんな!」
からかいながら去っていく彼らを、ルイズは涙目でにらみつける
折角召喚できたと思ったら、平民の子供と、
喋ってるのに喋ってない猫と、巨大な鍋だったのだから泣きたくもなるだろう
「へえ、凄いなあ。こっちの魔法使いは、箒が無くても飛べるんだあ」
だから、腕の中の猫がそう呟いた瞬間、ルイズは驚いた
「こっちの、って、あんた、どこの田舎から来たのよ」
「『だんじょん』の町」
「どこよ!」
「『だんじょん』の町は『だんじょん』の町だよ!」
「そんな名前の町、聞いたこともないわ!
大体、あんたねえ、喋るんだか喋らないんだかはっきりしなさいよ!」
ルイズが、怒り心頭でチョコに叫んだ
「あんた、じゃない!ボクには『チョコ』って名前があるんだよ!
ボクの飼い主で、『だんじょん』の町一番のやり手の商売人、
魔女『サララ』がつけてくれた名前が!」
怒りながらそう叫んだチョコの言葉に、ルイズは言葉を失った
「な、何ですって、魔女?今、あんた魔女って言ったの?」
「そうだよ!そこにいるサララは、魔女なんだから!
まあ……もっとも、魔法は使えないけどね」
何てことだ、と思いながら、ルイズは自分達を見上げる少女を見た
彼女もまた、自分と同じ魔法使いであるという
「(しかも、魔法の使えない、ってところまで同じなんて……)」
ルイズは、ショックのあまり眩暈がしてきそうだった