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魔法使いと召喚師-2

魔法学院の朝は早い。(※学生諸君を除く)
でもその日はいつもと少しだけ違った。
寮塔のとある部屋でそれに匹敵する早起きがいたのである


  ~魔法使いと召喚師~


それは例えるなら、遠足の朝に児童が早起きするのに似ている。
早い話、彼女は人生初めての学校生活が楽しみだったのだ。
両親を師と仰いで修行してきた身では、絶対に体験できないことなのだから。
借り物であっても、学院の制服に袖を通すだけでテンションは上がる。
さてやるべきことはなんだろう?

   * * *

やることその1「お洗濯」。
感覚の共有はできないし、秘薬の材料を集めようにも土地勘がない。
護衛をしようにもここは全寮制の学院で警備付き……。
使い魔らしいことをしようと思えば雑用くらいしかないのである。
そしてやることその2

「召喚術の確保、ですね」

優先順位はむしろこっちのほうが高いかもしれない。
すでに昨日の段階で、身の証を立てるために使用している。
ただ、一種類では手数が足りない。
幸いにして、儀式用に用意されていたサモナイト石がいくつか巻き添えになっていた。
有限な上に属性の関係で使えない物のほうが多いが、ごまかし用には十分だろう。
護衛をするなら攻撃用と治癒用で最低でも二種類。
今後を考えれば霊属性の石は温存したい。
使い勝手を考えると小規模であることも重要。

「ロックマテリアルとリプシーくらいしか……」

当面は大丈夫だろう。タブン……


召喚術。
それはリィンバウム、つまりはクラレットの故郷で発展した特殊な魔術だ。
異世界からの侵略者を強制的に送り返すために、世界の意思より与えられた力である送還術。
その送還術を逆利用することで生まれ、異界との戦いの中で進化した力。
対象が持つ「真の名」を支配することで服従を強いる術。
故に、召喚師の家系を支えるのはその一派が確保している「真の名」の数と質なのであったりする。

最強の召喚師である「エルゴの王」は付けた名前がそのまま「真の名」になるというが
生憎、クラレットにはそれほどの力はない。
自分の家系が保持している霊界サプレスのものと、特定の属性を持たないものだけが頼りとなる。


儀式を終え、前日のポワソとあわせて三種類。
「真の名」が刻まれたサモナイト石、召喚石は誰でも使える危険物だが
術を使用するたびに石を使い捨てにするのも、状況が許してくれない。
しっかり管理するのは、召喚師たる自分の務めだろう。
まずは昨日の傷を癒すためにリプシーを……

「あの……貴族様?」

げに間が悪きかなシエスタ嬢。
召喚師の秘伝のひとつ、召喚石の使い方が異世界に漏れた瞬間であった。


   * * *


魔法学院の片隅に朝から疲れた少女が二人。
何故自己紹介だけで、こんなに息が上がっているのやら。
双方パニックになっていたのが原因なのは、間違いなかろう。
それに加えて、クラレットが纏っていたのは学院の制服。
おまけに得体の知れないふわふわ生物召喚中。
これで杖を持っていたら完璧に貴族である。
というか、杖持ってなくても貴族にしか見えない。

「え~と、つまりクラレットさんは、ミス・ヴァリエールの使い魔として召喚された方である、と」
「はい」
「で、さっきのは、使い魔になっても魔法が使えるかの確認だった、と」
「……はい」
「そして、自分の使い魔を呼んでいるところでもあった、と」
「…………はい」
「ミス・ヴァリエールのお洗濯物を私に頼みたい、と」
「よろしくお願いします……」
「あああ、顔はあげてください! 私の仕事ですから!」

召喚石が誰にでも使えることは、なんとか隠した。
杖を持っていなかったことは「異国の術だから」と逃げた。
恐るべきは貴族の権威である。
「実は家名持ちでした」なんて言ったら失神しそうな勢いだ。
城の前を歩くだけでも職務質問がくるリィンバウムと、どっちがましなのだろう。
雰囲気が似ているから油断していたが、常識がずれている可能性もありそうだった。
これはこれで深刻な問題、とついつい考え込んでしまうクラレットである。



「あの、クラレットさん、この子はどうしたら……」

シエスタの呼び声がクラレットを思考の海から呼び戻す。
目の前には、ふわふわもこもこの謎動物を頭に載せたメイドがいた。
召喚されたのに命令無しで放置されたリプシーである。
陽気な聖精は待つのに飽きて、シエスタにじゃれつきはじめたらしい。

そこに浮かび上がるのはひとつの違和感。
本来、召喚術は対象が現界し続けている限り魔力を消費し続けるものである。
役目を終え次第送還するのは、伝統だけでが理由はない。
長期にわたって現界させ続ける場合は召喚と同時に儀式を行い、魔力の消費を防ぐのが通例だ。
そして、召喚師は魔力の制御技術を叩き込まれているものである。
己の魔力が流出し続けていれば、普通に気がつく。

(……つまりリプシーは現界しているにもかかわらず、私の魔力を消費していない?)

これなら、このままリプシーを使い魔代わりにすることも可能だろう。
原因はおそらく、右手に刻まれたルーンだ。
こちらからは違和感を感じないが、それだけ深く結びついていると理解しておく。
ルイズの、自分の主の側にいるためになら、この力きっと役に立つ。
それがクラレットの確信だった。


   * * *


その日、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーも
(彼女の感覚から見て)かなり早起きしていた。
ひとえに、隣室の新住民が気になったからだ。
気をうしなったメイジの少女、折れた杖に宝石に剣に、果てはゼロのルイズの使い魔である。
なんとも面白そうなオモチャ……もとい、なんともドラマがありそうではないか!
これは存分にいじらねばなるまい。
新たなる相棒、サラマンダーのフレイムと共に身支度を整えいざ出陣。
お~ぷんざどあ~
――ドアをあけたらそこにいるとか、不意打ちですよお嬢さん……。


至近距離で突然扉が開き、且つ扉から飛び出してきたモノと目が合う。
これで動きが止まらなかったら、たぶんその人物はどこか壊れている人種だろう。
キュルケの目の前の人物は、そういった意味ではマトモと言えるらしい。つまらん。

「あなたがルイズの使い魔ちゃんであってるかしら?」
「えっ、あ~、はい」
「今、お時間よろしい?」

多少の逡巡の後、使い魔の少女は「ルイズを起こして」と、もふもふした生物を部屋に放り込んだ。


   * * *


「杖は折れてるけど異国のメイジで、体系はちょっと違う。でも先住魔法じゃない。
 どこまでが嘘で、どこからが本当なのかしら」
「やっぱり怪しいですか?」
「当然。」

怪しくないわけがない。
ファーストネームしか名乗らず、家名を尋ねれば「主人を守るために教えられない」と返された。
キュルケの親友といえる某メイジも、家名を名乗らない人種だしそういうこともあるかもしれない。
使い魔をつれているからメイジだというのは認めよう。
だが、自分が召喚されて素直に使い魔になれるかと聞かれれば、キュルケは「否」と答える。
貴族とは誇りでもって生きているようなもの。
目の前の少女からは、その誇りというものが感じられないのだ。

「けれど、平民と言い張るのもありえない」

平民が持つ貴族への畏れ。それを彼女から感じられないのもまた事実である。
かといって、それを知らないわけでもないのもわかる。
あえて例えるなら、メイジ同士での上下関係に近いのだ。
その上で、クラレットは「嘘を信じろ」と言っている。

(お家騒動か、政略結婚か……、帰りたくない理由があるのね)

これがキュルケの出した結論であった。
学院はクラレットを隠す腹積もりなのだろう。
バレれば国際問題かもしれないが、系統魔法とも先住魔法とも違う魔法を持つ国は、まだ地図上にない。
つまり、バレる先がそもそも存在しないのだ。
「ヴァリエール家の三女を留年させる」よりは、よほど波風が立たなさそうである。
何より、キュルケ自身の留学の理由が「縁談の話に嫌気がさしたから」なのも大きい。
目の前の大人しそうな少女では、親に正面から歯向かうことなどできまい。
ならば取る道はひとつ。

「いいわ。あなたの嘘、手伝ってあげる。そのかわり……」

彼女の協力者となるかわりに出した条件。

「あたしのことはキュルケって呼んで。友人以外の共犯者になるつもりはないから」
「では、改めまして……」

挟まれたのは小さな咳払い。

「これから、隣人として友人として、よろしくお願いします。キュルケ」
「これはご丁寧に。こちらこそよろしくお願いします。クラレット」
「ぎゅっ!」
「フレイムもよろしくね」
「ぎゅぎゅっ」

使い魔に手を振るクラレットと、それに尾で応える使い魔。
嘘はついてても彼女は善良な人間なのだろう。
幻獣に、それも質の高さで名を馳せる火竜山脈の生まれのサラマンダーが気を許すのだから。


~後会話~
「ピピピッ」
「はえっ? ……クラレット?」
「ピッ」
「なんで、そんな丸くてもふもふになってるの?」
「ピピッ!」
「ま、いっか」
「ピ~~~~~」
「ZZzzzzz.......」


※参考
リプシー
サプレスの召喚獣。癒しの力を持つ陽気な聖精。力はまだ弱い。序盤で活躍する回復役。

ロックマテリアル
無属性の召喚術。地上に落ちた小さな流れ星のかけら。誰でも扱えるため序盤の攻撃の要。

ポワソ
天使のお供として働く精霊。好奇心が旺盛。ユニット召喚獣としては優秀な性能。

ヴィンダールヴのルーン
ゲーム的処理だと技能欄に「全召喚獣ユニット化」追加。
でも、サモナの公式小説だと戦闘終了までだしっぱなしが基本なので
実質的にリプシーを浮かべておくためだけのスキル。



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