あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

魔法使いと召喚師-1

荒野の果て。
本来ならば誰も近寄らぬその場で、その儀式行われていた。
その径、数十メートルはあろうかという魔法円。
その数、数十人からなら召喚師の集団。
この世ならざるもの、魔を司る王を呼び寄せる儀式である。

世界の再生のために、世界を破壊する者達。
それが彼ら。

少女は諦めていた。
自分が器とされることに。
自分が贄とされることに。
これが自分の宿命であると、自分を騙していた。
子に親を選ぶ権利はなく、彼女の親は召喚師だった。
それだけのこと。

だけど、最後の瞬間、彼女は願ってしまった。
生きたい、と。
助けて欲しい、と

だから、それはきっと奇跡ではなく必然。
精緻に編まれた術に、他所からの召喚という楔を打ち込まれた。
輝ける鏡が捕らえた獲物は、儀式の要、魔王の依り代、捧げられし娘。
全ての意味は崩壊し、織りこまれた式は意味を失い、流れを見失った魔力が荒れ狂う。
その嵐は、あらゆる生物がただの物になっても矛を収めなかった。

魔力の嵐はおさまったのは、巨大な陣は抉り取られ、荒野に大穴があいたころ。
生き物がいない以上、結果を気にするものはもういない。
仮に、儀式の参加者と死体の数がつりあわなかったとしても……。

   * * *

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは焦っていた。
使い魔の召喚に成功した。そこまではいい。
その使い魔が人間の少女なこととか、それなりにいい服を着ていることとか、
オマケに目が合った直後に意識を失ったことは、今は脇においておこう。
最大の問題は、彼女の召喚とともにぶちまけられたものだ。
へし折られた杖、血に染まった布、破損した剣が幾本か。
色とりどりの宝石も散らばったが、それを問題にしない程にキナ臭すぎる品ばかり。
使い魔自身も無事とは到底いえない程に、傷にまみれていた。

「……ミスタ・コルベール!」

故に、ルイズが禿頭の教師に判断を仰いだのは当然のことであり、
結果として、その日残った授業全てを欠席することとなった。

   * * *

数刻後、保健室の中は妙な空気に満たされていた。
原因は桃色がかったブロンドの魔法使いと、紫がかった黒髪の眠り姫。。
保健室の水のメイジ曰く、「気絶の原因は精神力の使いすぎ」らしい。
精神力が尽き、杖も折られる。メイジとしては最悪の状況。
コルベールとしては、ルイズの召喚が彼女を救ったと思いたかった。
場合によっては外交問題である。
そうなってしまっては、教え子も進級どころではないのだから。


蒼か、金か、無色か。
召喚された少女、――クラレットが最初に考えたのはこれだった。
この状態はどう考えても召喚術の結果だからだ。
リィンバウムの存在を召喚できるかは知識にないが、他に表しようがない。
まず手当てを受けていること確認。
無色じゃない。無色だったら使えない召喚獣はその場で破棄される。
夢うつつで聞いた単語に「学院」というのがあった。
金でもない。彼らは召喚術を家単位の秘伝としている。
ならば蒼か。帝国の軍の可能性もあるが、どちらにしろ当面は安全だ。
とりあえず起きよう。起きて話をしよう。


「お目覚めかな、え~と、ミス……」
「クラレットとお呼びください。家名は申し訳ありませんが……」

人間関係は自己紹介からはじまる。これはどこの世界でもきっと同じこと。
だが、その始まりに問題が発生した場合どうすればいいのか。
家名があるのに名乗れない。それは彼女が訳あり以外の何者でもないことを示している。
沈黙が場を支配するのは当然かもしれない。

「あの……、続き、よろしいですか……?」

先に沈黙に屈したのはクラレットだった。

「あぁ、これは失礼。私はこのトリステイン魔法学院で教師をしているコルベールと申します。こちらは、」
「ルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
「私を召喚したのはルイズさんで……え……」

小さな違和感。その原因を求めて情報を反芻する。
――魔法学院?

「今、魔法学校って言いました?」
「いかにも。ここは魔法学院です」

生粋のリィンバウム人にとって、魔法とは召喚獣が使うものである。
ここは、その魔法を教えてくれる教育機関らしい。
つまりは……異世界。

「あの、ここは……」
「ハルケギニア大陸の、トリステイン王国にある、トリステイン魔法学院。って、なんで頭抱えてるのよ?」
「知ってる地名が……ありません……」


   * * *


夜。双月は二人を照らす。
やっと『魔法使い』になれた少女にとっても、暗闇から抜け出た少女にとっても、その光はまさに祝福だった。
右手に刻まれた絆の証を掲げ見る。

「『コントラクト・サーヴァント』でしたっけ」
「先生ももう少し気を利かせるべきよね……」
「ちょっと恥ずかしかったです」

調べ終わるまで自分が若い女性の手を握っていたのに気がつかないあたりが、彼の独身の理由な気がする。
できれば契約の儀式を凝視するのも勘弁して欲しかった。
いやまぁ、それが仕事なのは二人ともよ~くわかっているのだが。
そして問題はもうひとつ

「異世界、ねぇ」
「信じられませんか?」
「いきなり信じろって言う方が無理よ」
「私には、他の世界を知らないことのほうが不思議でした」
「召喚術だっけ。まぁ、あんたからすればそうなのかもね」

人間を使い魔にするのも前代未聞だが、使い魔の立場を自分から希望するというのも希少だろう。
元より送還する術がない旨を伝えたときの表情も、『安堵』と思しきものであった。
クラレットの召喚術は送還とセットで扱うものだという。
ならば、それはつまり彼女に帰る意思がないことの証。
むしろ帰ることを恐れているということなのかもしれない。

「ねぇ、クラレット。」
「はい?」

小さな疑問だ。答えをえる必要はどこにもない。
使い魔は一生のパートナー。答えを求めるのは無駄でしかない。

「召喚した私が言うのも変なんだけど、いいの? 帰る方法、探さなくて」
「幸か不幸か、向こうには悲しい思い出ばっかりでした。だから少し嬉しいくらいで」

言葉だけ聞けばそれは真実なのだろう。

「嘘」

でも虚言だ。証拠だってある。

「本当ですよ」
「泣きながら言っても説得力ないわね」
「いじわるですね。嬉し涙ってことにして頂けませんか?」
「ならそういうことにしといてあげるわ」

故郷というのは帰る場所のことを指す言葉だ。
あるいは「帰る」という言葉を聞いて、二番目くらいに思い出す場所でもいい。
もし自分がラ・ヴァリエール領に帰れなくなったら、というのはあまり考えたくない。


「……ルイズ」
「何?」
「無色の派閥の召喚師、『破戒の総帥』オルドレイク・セルボルトが娘、
 クラレット・セルボルトはもうこの世にはいません」

それはとても強くてまっすぐな言葉。
だから、ルイズは聞かないわけにはいかなかった。
だってそれは、使い魔の決意表明なのだから。
自分の主としての最初の仕事であり、クラレットの使い魔としての最初の仕事。

「ここにいるのはあなたの、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔の…」

一拍置いて、彼女は言った。
それはもう嬉しそうに。これ以上ないほど誇らしげに。
そして、とても楽しそうに言い放った。

「クラレットです」



~後会話~
「あの、私はどこで寝ればいいんでしょう?」
「とりあえず今夜は一緒に寝るわよ…。探せば予備のベッドくらいあるでしょ」
「従者が一緒でいいんですか?」
「そこはほら! 女の子を床で寝かせるわけにもいかないでしょ! 体とかにもよくないし!」




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