あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの夢幻竜-14


ゼロの夢幻竜 第十四話「紅の誘い」

キュルケはタバサの使い魔が懸命に急いでいる事は分かっていた。
タバサはそれに加えて、その理由がルイズの使い魔ことラティアスに対しての、並々ならぬ対抗心からである事も見抜いていた。
それ故に自分達があと少しで街に着きそうだといったその時に、ルイズを乗せたラティアスとすれ違った時は言葉も無かった。
その次の瞬間、タバサの使い魔は背中に人を二人乗せているのも忘れたかのように、急転進して後を追い始める。


「こいつぁおでれーた!娘っ子が変身できるのもおでれーたが、こんな速さで飛べるのもおでれーたぜ!」

ルイズに抱かれているデルフは素直にラティアスの持つ力に驚嘆した。
風竜と競争するなら、例え数百リーグ差をつけていたってあっという間に追い抜いてしまうだろう。
いや、それ以前に比べる事さえもおこがましい。
途中何かとすれ違ったが、相手も相当な速度を出していた為か視認は不可能だった。
萌黄色の草原を一陣の風の如く疾走するラティアス。
その視界には早くも魔法学院の立派な校舎が入ってきた。
翼の角度を変えて徐々にスピードを落としていき、ゆっくりとアウストリの広場に着陸する。
その時ラティアスはふっと時間の事が気になった。
まだそんなに時間は経っていない筈―恐らくはまだ午前中―だから、ご主人様ことルイズに許可を貰い、シエスタを背中に乗せてまた街へ行くのも良いかもしれない。
彼女は自分がどれくらいの速度で飛ぶのか知らないだろうから、かなり加減しなければならないだろうが。
そう思いつつラティアスはルイズに向かって訊ねた。

「ご主人様。あの……シエスタさんと一緒に出かけたいんですけど良いでしょうか?」
「シエスタ?……ああ、あのメイドね。えーと、そうねぇ……良いわよ、行っても。
但し、帰ってきたら使い魔としての仕事をちゃんとするのよ?それとあんまり遅くなっちゃ駄目。街中って結構日も暮れる頃になったら物騒だから。それも忘れちゃ駄目よ。」
「はいっ!有り難う御座います!ご主人様!」

ルイズは忠告しつつ答える。
もし行き先がブルドンネ街なら、大通りにある多種多様な店等については先程口が疲れてしまうほど説明をしたから分からないという事は無いだろう。
ラティアスはかなり物覚えが良い方でもある。
そもそも元々この地に住んでいて、尚且つ何回かそこへ足を運んだ事のあるであろうメイドがいるのならあまり心配する事は無いと思えた。
ラティアスは一礼をすると、喜び勇んでシエスタのいるであろう使用人宿舎へと向かおうとした。
その時である。強烈な風を吹かせながら一匹の竜が殆ど同じ場所に降り立った。
ルイズはその姿を一目見て、自分と同じ学年の子が召喚した竜だと気づいた。
確かその名前は……思い出そうとして失敗する。
何分影の薄い生徒だった事と、使い魔の印象の方が大き過ぎたからかもしれない。
その竜ことシルフィードは相当参ったらしく、地に足を付けると同時にその場に崩折れてしまった。
そしてその背中から召喚した本人ともう一人、ルイズにとっては何時だろうとあまり顔を合わせたくない人物が現れた。



「キュルケ!何であんたがここに?!」
「あなたを追ってたのよ。正直に言うとラティアスをね。でも……信じられないわ。
この子の風竜も目一杯頑張ったんだけど、まさか街まで半分も行かない内に行って帰って来るなんて。」

それを聞いたルイズは少し得意げな声になって胸を張って言う。

「そ、そうよ!凄いでしょ?!やっぱり私に相応しい使い魔なのよ!風竜なんかと比べたらこの子が可哀相だわ!」
「おめでたい人ねえ~。使い魔とその主の魔法的な才能と力は平均される物なのよ。
ラティアスは爆発ばかりで何の魔法も出来ない『ゼロ』なあなたの大きな穴埋めと同じなの。
肝心の実力、ついてきてると本気で思ってるの?素敵なご本を読む事だけが魔法じゃないのよ?」

が、キュルケは呆れた調子できりかえした
傍で聞いていたラティアスは黙ってその様子を見ていたが、僅かに腹を立ててしまう。
そりゃあご主人様であるルイズは、通常の授業において魔法の実技をやろうとすれば爆発ばかりで上手くいった試しは無い。
だが先生からの質問には満足に答えられているし、毎日夜遅くまで勉学に励んでいるのを彼女は知っていた。
握っているデルフそっちのけでルイズの言葉の応酬は続く。

「な、何よ!そう言うあんたの使い魔は只のサラマンダーじゃない!只の!」
「只のって言うのは違うんじゃない?火竜山脈のサラマンダーよ。尻尾の火なんて好事家に見させたら値段の付きようもないわね。
それに使い魔としての条件もちゃんと全部満たしてるし。それに……」
「それに何?色ボケしたあんたにこっちの国でのお相手ホイホイつれて来るって言うの?」

冷ややかな笑みを浮かべて挑発するルイズ。
流石にその台詞にはキュルケもかちんと来たのか震えた声で答えた。

「言ってくれるわね、ヴァリエール……」
「何よ。本当の事でしょう?」

正に一触即発の状況。触れれば直ぐにでも火花が飛びそうだった。
暫く睨み合った後、最初に動いたのはルイズの方だ。

「あたしはねあんたの事が大っ嫌いなのよ。いい加減決着つけない?」
「あら、凄く奇遇ね。私もあなたと同じ意見よ。」
「それじゃ……」
「それなら……」
「「魔法で決闘よ!」」

怒りが剥き出しになった二人は遂に互いに怒鳴る事となった。
しかし、この世界の現行法ではメイジ、ひいては貴族同士が互いに決闘を行う事は出来ない。
それを思い出したキュルケの前に険しい表情をしたラティアスが現れる。



「事情は分かりました。あの、私がご主人様の代わりにお相手しても宜しいですか?」
「ちょっと!ラティアス?!」

突然割って入るラティアスにルイズは驚いた。
その様子を見てちぐはぐな間だと思いつつキュルケは言う。

「あらあら。私はルイズと決闘をするのよ。それも魔法を使ってね。まあ、この国の法律じゃ貴族同士の決闘は禁じられているけど。」
「だったら尚更です。誰も知らないからといって決まり事を破ったらいけません。あと、ご主人様とあなたが戦ったら圧倒的にご主人様には分が悪いです。使い魔の私でなら問題は無いでしょう。」

その言葉を聞いてキュルケは小さく吹き出した。
使い魔にまでそう思われているのでは可哀相どころの話ではないと思ったからだ。
だがラティアスは眉一つ動かさずに続ける。

「それとこの間の私の言葉覚えていますよね?」
「え?ああ、覚えているわよ。この間あなたが見当をつけた通り、私も相当な使い手だから覚悟しておきなさいね。今更謝ったって許さないわよ。」

キュルケは意地悪そうに笑ってみせる。
ラティアスはそれに対して、特に意に介した素振りを見せるわけでも無く続けた。

「許して頂かなくて結構です。時間は……今すぐですか?」
「今から?まさか。今日は虚無の曜日よ。私だって色々とやりたい事があるの。そうねえ、今夜にしましょう。それなら良いでしょ?」
「私もやりたい事があるんで……その条件のみました。」
「結構。場所は中庭。異論は認めないわ。」
「どこがその場所でも構いません。」
「大変結構。それじゃ私一旦部屋に戻るわ。せいぜい良い作戦たてておきなさい。」

そう言ってキュルケは、離れて顛末を見ていたタバサと共に寮塔の方へ向かっていった。
その姿をじっと見ていたラティアスにルイズは少々厳しい口調で話しかける。

「私が決闘の相手なのよ。どうして代わったの?」
「決まりは決まりです。誰も見ていなかったとしても守らなきゃいつか必ず罰が当たりますよ。」
「罰って……あんたねぇ……それと、キュルケはギーシュなんかとは力の差があり過ぎるのよ。幾らあんたが凄い力持っていても勝てるかどうか……」
「ご主人様は私があの時全力全開で戦ったと思ってらっしゃるんですね……」

その言葉にルイズは眉を顰める。
と、同時に心の中では大きな好奇心が沸いていた。
そうでなかったとしたら、彼女はまだ本領を発揮していない事になる。
それも踏まえて彼女は恐る恐るその理由を訊いてみた。

「どういう事なの?」
「私にはまだ隠しているちょっと面白い力があるって事です。」

ラティアスは返事と共にふっと不敵な笑みを浮かべた。
残っている隠し玉は一つや二つではないのだ……



その日の夜、本塔に程近い中庭には4人の人影があった。
元の姿のラティアス、それと対峙するキュルケ。
面白い物見たさで連れて行けと駄々をこねたデルフを抱えるルイズ。
そして相も変わらず本を読み続けているものの、キュルケの事が気になったタバサ。
双月の光は彼女達を包み込む様に照らし続けている。
ラティアスはあの後シエスタを連れて街に出ようかとしたが、大事を前に遊んでいたら負けてしまうと思い取りやめることにした。
というよりもシエスタはラティアスがルイズと出かける前から『一緒に出かけるのはまた今度』という事で納得していた訳なのでどう動いても大きな変更点は無かった訳だが。
かなり冷めた視線で見つめるラティアスにキュルケは杖を構えつつ話す。

「勝敗の決め方は?私は杖を奪われたらそこまでだけど……あなたはどうするの?」
「そうですね。飛べなくなったら……という事にしましょうか。」
「分かったわ。」

ラティアスは臆す事も無い。
その様子にキュルケの胸は鼓動を速くし始める。
ギーシュの時も大立ち回りをやってのけた彼女は、果たして自分に対してどんな責め方をしてくるのか。

「そっちからどうぞ。」
「それじゃ、いくわよ!」

その言葉を合図に遂に両者の衝突が始まった。
キュルケは先ず得意な『ファイヤーボール』で様子見を行ってみる。
素早い呪文の詠唱はメロン程の大きさもある大きな火球を幾つも作り出し、ラティアスに対してそれらを撃ち放つ。
ラティアスはそれらを素早く避けてキュルケに接近しようとする。
しかし、キュルケは炎の壁を自分に近い四方に展開させ、ラティアスの侵入を防いだ。
暑さもかなりのものがあるためラティアスは一旦後退って距離を取った。
それを見計らったかのように炎の壁は一瞬の内に解かれ、
中から現れたキュルケが自分の周りに予め作って滞空させておいた『ファイヤーボール』を、弾道を変えながら再び幾つも間断無く放ってきた。
その瞬間的な速さは目を見張る物で、やっと相手との間を詰められるような距離になっても避けるだけで精一杯である。
次にその距離になって攻撃しようとすれば、あっという間に炎の壁を展開され近づけなくされてしまう。
後はその繰り返しである。
ラティアスもギーシュに対して繰り出した物と同じ技を用いて対抗する。
確かにそれは一時的にせよ効果を齎した。
しかし、キュルケが編み出す炎の勢いの方が些か勝っているのだろうか、防壁とも呼ぶべき炎という名の牙城を崩すに至っていない。
一進一退の攻撃は尚も続く。
悟られぬようにしてキュルケに近づくしかないと考えたラティアスは、精神を集中させて全身の羽毛を震わせた。
これこそがラティアスがルイズに話した隠し玉の一つであった。
そしてそれと同時に炎の壁を消したキュルケ、事の成り行きを見守っていたルイズとタバサは自分の目がおかしくなったのかと思う一瞬を見た。
目の前で一瞬にしてラティアスがその姿を消したからである!
何が起きたのか把握するのに一瞬戸惑ったキュルケは慌てて炎の壁を展開する。
そして自分が暑さを苦痛に思わない範囲にまで壁の幅を狭めた。
その中で彼女は今自分の目の前で起こった出来事について必死で考える。
光の粒子が彼女の周囲に取り巻き、一際強く輝いたかと思ったら消えたのだ。
ラティアスは確かに素早い動きを繰り返していたが、それは見えなくなるほどの物ではなかった。
ならば光を利用したのだろうか?
双月の光と自身が繰り出した『ファイヤーボール』の光を使って?
しかしその答えが出る前に勝敗は決した。
キュルケの背中を、いきなり強力な風と猛烈に濃い霧が襲ったからである。
バランスと集中力を崩した彼女は前につんのめる形で地面に転ぶ。
それと同時に彼女の周囲にあった炎の壁も、滞空状態にあった『ファイヤーボール』も一偏に消えた。
キュルケは一体何が起きたのか把握しようとすると大変な事に気づく。
自分の右手に杖が無いのだ。
探そうとして身を起こそうとすると、自分の眼前に探そうとしている杖がその先を向けられた。
それを持っているのは、人間形態に変形したラティアス。
彼女は息一つ荒げる事無く、すっぱりと言い切った。

「あなたの、負けです……!!」


新着情報

取得中です。