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ゼロの使い魔-闇の七人-1


 トリステイン魔法学院。メイジ達が集う、世界随一の学び舎。
 故に多くのメイジが、この学院で一生の伴侶となる使い魔を得る事になる。
 俗に「春の使い魔召還」と称されるこの儀式は、そのまま昇給試験でもあり、
 皆が皆、優れた使い魔を得るべく、自然と力をいれるのが常であった。

 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールも、その一人。
 貴族=メイジの家柄でありながら、およそ一般的な魔法の悉くが不得手であるという少女だ。
 “ゼロの”ルイズなる不名誉な渾名を返上する為にも、より一層の力を入れ、彼女は召還呪文を唱える。
 爆発。
 爆発。
 爆発。
 幾度と無く繰り返される爆発。そして空白。
 呪文を唱える度、色とりどりの火花が散り、空間が炸裂するが、
 しかし煙が晴れた後、其処には彼女の望む使い魔の姿は無い。

 周囲の人々も「さもありなん」と言った顔で頷いていた。
 所詮、彼女は“ゼロ”だ。
 何でもない。何もできない。故に“ゼロ”。
 使い魔すら、召還できないのだ。

 彼らの反応を知るが故に、ルイズは必死になる。
 使い魔が欲しい。 使い魔が欲しい。 使い魔が欲しい!
 悔しくて、悔しくて。
 涙が出るほど悔しくて。
 次第に周囲には夜の帳がおりはじめたというのに、彼女は諦めない。
 諦めず、必死に、もう何度目かもわからない召還呪文を、高らかに唱えた。

「全宇宙のどこかにいる私の使い魔よ!
 この世で最も強く、賢く、美しい存在よ!
 わが呼び声に答え我が元に来たれ!」

 あまりにも必死だったせいだろう。
 そして今、この時が“夜”だったからだろう。
 その声は、ある存在に聞き届けられた。

 ――爆裂。

 現れた使い魔の姿に、飽きずに様子を見守っていた皆が驚いた。

 其処にいたのは獣人であり、人間であり、そしてエルフであったからだ。
 その数、七人。

 獣人が召還される。これは有りうるだろう。
 人間も、生き物である以上、まったく無いとは言い切れまい。
 エルフも――恐るべき種族ではあるが、同様だ。

 だが、七人である。
 “ゼロ”だからと言っても、およそ信じられない現象だ。
 この光景を見て、召還した本人のルイズも、どう反応してかわからないまま、
 「春の使い魔召還」儀式は、一応、これをもって完了となった。

 ――大方の予想に反し、彼ら七人は、極めて魔法学院に適応した。

 皆が皆、魔法を使えるという(メイジであるとは言わなかったが)驚くべき事実もあったのだろう。
 生徒達も彼らを見下すことはなく、また貴族ではないが故に学院で労働に従事する人々も彼らを受け入れた。

 もっとも率先して学院に関わったのは、二人の蜥蜴人である。
 オチーヴァ、テイチーヴァと名乗った彼らは、双子の姉弟なのだという。
 元来、読書を好んでいた二人は、学院の膨大な蔵書を読み耽り、
 そして時折、授業に顔を出しては、水を吸う樹木のように新たな知識を汲み上げていった。
 特に彼らと親しくなったのは教師、コルベール。
 未知の世界の、未知の知識。それらに夢中になったのは彼も同じだった。
 三人の間での交流が深められていくのは自然の成り行きである。

 ヴィンセンテという吸血鬼は、オールド・オスマンが好んで自室に誘っていた。
 当初こそ、やはりヴァンパイアという怪物を警戒しているのかと思ったが、そうではない。
 単に茶飲み相手が欲しいという、それだけの理由だった。
 何せこの吸血鬼、300年を生き延びてきたというのだから驚きだ。
 無論肉体は若々しいのだが、精神的にはオスマンに近い。話も弾むというものだ。
 つまり好々爺が一人増えたことになり、ミス・ロングベルの苦労が二倍になったのは言うまでも無い。

 学院の職員たちに気に入られたのはエルフのテレンドル、人間のマリーという女性陣二人。
 そして驚くべきことに、オーグのゴグロンであった。
 とはいえ、この恐るべき顔つきの大男が、そう簡単に受け入れられるわけもない。
 だが、その一方で彼はとてつもなく良い奴だった。
 職員の仕事を良く手伝ったし、貴族たちの無理難題を笑い飛ばすような人物である。
 そして傍らに寄り添うテレンドル。エルフであっても(あるが故に)美しい彼女だ。
 何かにつけて言葉の足りないゴグロンを補って、二人して認められていた。
 マリーはマリーで厨房に入り浸り、マルトーとの間で熱心に料理のレシピを交換している。
 彼女の「異国的な」料理は、中々に料理長を苦しめているようではあったが。

 一方、生徒達に気に入られたのは誰であろう、猫人のムラージ・ダールだ。
 口が悪く、人間種の事を「薄汚いサルめ」と公言して憚らない男だが、面倒見が良いことは直ぐに知れた。
 たとえば生徒達がインクを切らしたとき、授業用に使う魔法道具が足りなくなったとき。
 何処からか、そういった品々を調達し、困っている人々に配っていったのが彼だ。
 今ではすっかり気に入られ、皆に取り囲まれる日々を送っている。
 本人は実に迷惑そうだが。

 そして最後の一人。
 一行の代表としてルイズの使い魔となったのが、蜥蜴人の彼だった。
 リザード――異国の言葉で蜥蜴という意味だ――と名乗った彼は、自分はそれ以上でも以下でもないという。
 短剣、長剣、弓矢、それに幾つかの魔術に精通し、滅法強い。
 容姿は蜥蜴人である為いたしかたないとしても、ルイズにとっては素晴らしい使い魔に思えたろう。
 何より、魔法の使えぬ自分を馬鹿にすることがない。
 ただ気に入らないのは、その寡黙で愚直、謎めいた雰囲気が――彼女の隣室の女性を虜にしたことだ。
 まあ、幾ら“微熱の”キュルケといえども蜥蜴に思慕の念を抱くことはあるまい。
 そう高を括っていたのだが、どうやら「種族の壁は恋を燃え上がらせるのよ!」とのことだ。
 悔しいかな、ルイズ自身も、この蜥蜴人に対して思うところがないでもない。
 だからと言っても鬱憤をぶつけても、リザードはそれを素直に受け止めてしまう。
 まったく、この想いを何処にぶつけて良いものやら、と彼女は日々悶々としているらしい。

 だが、誰もがこの奇妙な集団に疑問を抱かなかったわけではない。
 “雪風の”タバサは違った。あるいはコルベールもそうであったかもしれない。
 およそ尋常なる者どもではないことは、即座に見て取れた。
 相当な手練れだ。若年ながら、数々の修羅場を潜り抜けた彼女には、嫌と言うほどにわかる。
 気配を感じない。足音が聞こえない。
 自分も気付かぬうちに背後を取られている。
 そして、あの男――リザード。
 一体如何なる経験を積めば、アレほどまでに各種の武具に精通できるのだろうか。
 タバサには、想像もつかなかった。


 その疑問が解消されるのは、それからしばらく後のこと。
 とある貴族によって、学院のメイドが連れ去られた日の夜に――……。


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