あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第四話 昼下がりに頭を抱えて


47は、大きなテーブルを挟んだ向かい側に居る白髪を長く伸ばした老人と、その隣に立っている淡い緑の髪をした麗人を一瞥した。
ルイズの言うには、老人はこの学園の学園長であり、麗人はその秘書なのだと言う。
決闘の直後、ルイズと47はコルベールに連れられ、学院長室にやって来た。
ルイズはその間、ずっとお咎めを食らうのではないかとしきりに何かを呟いていたが、此処にきて幾分か落ち着いた表情を取り戻していた。
「さて、ミスタ47。今回はとんだとばっちりを受けたようじゃの」
その学院長、オスマンが暫く二人の顔を見比べてからこんな事を言ってみると、途端にルイズは慌てふためき、すみませんという言葉と共に頭を下げ続ける。
何故か47も腰を叩かれ、一緒になって謝る羽目になったのは些か疑問だったが、その度に送られてくる彼女の視線がどうにも怖い。仕方なしに彼も頭を下げると、オスマンは静かに笑った。
「いや、良いんじゃよ。今回の件、彼らには良い勉強に成ったじゃろうし。それよりも、ミスタ47、君の右手をちょっと見せてもらえないだろうか」
続けて出た彼の要望に、47は微かに怪訝そうな面持ちを浮かべる。一体、自分の手を見て一体何に成るというのか。そこで、彼は召喚された日の事を思い出す。
確か、ルイズに契約の儀式と称して口づけを交わした直後、右手に痛みが走った。
あれは何だったのか。自身もまた、身に起こった奇妙な事態を思い起こし、久方ぶりに黒い手袋を外す。すると、彼は右手の甲にタトゥーのような紋章があるのに気づいた。
それは、そもそも彫り物の趣味のない彼が刻んだものでもない、召喚の時の、あの痛みのあった場所にあった。
オスマンと、47の隣に居たコルベールも幾分か目を細めてそのタトゥーを確かめる。と、同時にコルベールは、手にしていた書物と見比べていた。
「どうじゃ」
「はい。確かにサモン・サーヴァントの証のようですが……この様な形のものは初めて見ます」
コルベールも、オスマンも、お互いの顔を見やって驚きを隠せないでいる。47がどうしたのかと二人に尋ねると、コルベールは何処か嬉しそうに語り始めた。
使い魔の儀式によって召喚された使い魔と、主が契約を交わすと使い魔にはルーンという、言わば使い魔としての証が刻まれる。そして、それらはまず何かの種類によって分断される。
つまり、過去の記録の何れかに必ず当てはまる。だが、47にに刻まれたルーンは、その何れにも該当せず、まだ未確認のルーンの形をしているのだという。
二人は、この未確認のルーンの発見に驚き、喜びを隠せなかったという訳だ。だが、この事を知った47は至極冷静であった。
彼自身、この世界の人間でない事を承知している。であれば、その使い魔としてのルーンも、この世界にまだないものと成っても不思議でないく、寧ろ自然と言えた。
とは言え、このルーンの形が一体何の意味を持つのか、彼の居た世界でも見た事がなく、何を意味しているのか全く知りようがなかった。
それから、今回の決闘については生徒達の自主的な活動の一環という事で、47も、ルイズにもお咎めがない事を知らされた。この時、ルイズは若干涙目になっていが、47の思慮の内に入ってくる事は無かった。



※※※



ルイズが、47を連れて学院の外へと出かけたのは、決闘から数日が経過し、47がハルケギニアに来てから初めての休日を迎えた日だった。
彼の背中につかまり、闊歩する馬に揺られる今日のルイズは上機嫌だ。47は、断片的に知り得た情報によってそれが何故かを知っていた。
先ず、これまで彼女を馬鹿にしていた生徒達が大人しくなっていた。これは、47がギーシュとの決闘の時のインパクトによるものが大きい。
もし、ルイズの事をゼロと呼ぶ事があれば奇怪な技によって発狂させられる。そんな噂が決闘の翌日から直ぐに広まっていた。
次に、47に刻まれた未確認のルーンの存在。初見で彼女は47の事を只の平民だと蔑視していた。
しかし、今は違う。彼に刻まれたルーンは未確認、即ち未知の力を持った使い魔なのだ。
強力なゴーレムを召喚して見返すという当初の目的とは少しずれたようだったが、こんなに腕の立つ使い魔が居れば安心という事らしい。
そして、最も大きいのは、この二点によって彼女の性格に余裕が出始めていた、という事である。これまでの彼女は何の後ろ盾も無く、たった一人だった。
だが、今は違う。強力な使い魔が居る。それによって邪魔な虫がつく事も殆どなくなった。相変わらず魔法は失敗ばかりであったが、それでも魔法の勉強に専念出来る。
魔法など手段の一つでしかないと47は言っていたが、魔法は使えた方が良いに越した事は無い。
そのせいか、昨日の錬金の授業では、やはり爆発を起こしたが、彼女の中で何か引っかかるものがあった。何時もと違う感覚の失敗に、彼女は何処か興奮していた。
誰も信用せず、キュルケが彼女の使い魔、フレイムと共に小馬鹿にしても、満足そうに笑顔を見せてやった。
だが、47にとって彼女は主であるが、底から信用しては居ない。どうしても、自身が殺めたクローンの少女と重ねてしまうのだ。世界が違う以上、同一人物か、それに似た存在である筈も無いのだが。
だから、47は彼女に触れる事はまずない。朝、彼女が着替える時は必ず外に出る。そして、食堂で合流して朝食をいただく。そういった一連の流れが、確立しつつあった。
相変わらず、ルイズは上機嫌のまま色々と47に尋ねてくる。随分体ががっしりしている、馬の扱いが上手い、と。47は決まってああ、と短く応えるのだが、ルイズの表情は陰る事を知らない。
目的地の町についたのは、出発してから二時間後、47が何百回目かのああ、と呟いた頃だった。馬を木陰に残し、ルイズは足早に路地裏に入っていく。
湿った空気が47の鼻をつく。どうやら彼女は47に、使い魔に似合う武器を買ってあげたいらしい。路地裏の店は、どれも怪しげな雰囲気を醸し出していた。
その内の一つ、斧の看板を掲げた、如何にも武器屋に見える店に一瞬戸惑ってから足を踏み入れた。店主の親父は貴族の格好をした少女と、見慣れない黒ずくめの格好をしたスキンヘッドの男を交互に見てから眉唾そうにため息を漏らした。
「何ですかい。ここはお上に知らされるような商売はしてませんぜ」
「違うわ。この使い魔に相応しい武器を買いに来たの」
言いつつ、ルイズは後ろに控える47を指差す。47は無表情のまま会釈をすると、親父は怪訝そうな表情を浮かべた。
47の持つ独特の雰囲気を警戒しながらも、奥から幾つか武器をカウンターに並べ始める。何れも豪華な装飾を施した、金銀に輝く剣ばかりだ。
「へぇ、中々奇麗なのがあるじゃない」
「そりゃあ貴族様がお相手ですから。それ相応のものもご用意させていただきますよ」
親父の顔が、醜い笑みで歪んだ。どうやら相手が貴族だと言う事は理解したものの、商売相手としては明らかに格下に見ているらしい。
正直、47はその点には同意する。だが、主が変なものを買って仕事に支障が出る事は勘弁だ。
豪華な剣を前に、目を輝かせるルイズを脇目に、47は試しに並べられた剣の内の、最も細い剣から手に取る。刃の所を軽く指で弾くと、乾いた音が店内に響いた。
その音と、切っ先の煌めきから彼は直ぐにこの剣はなまくらだと判断する。
「ほう、そちらの方は中々良いものに目を付けられましたね。ですが、貴方程の体格でしたらこれくらいの方が丁度いいと思いますがね」
親父の目線が今度は47に移り、強引に今度は二周り程も大きい、黄金の剣を手渡した。
47は、刃の確認をするまでもなく眉をひそめる。手にした感覚が、既に本当の件のそれとは明らかに異なっていた。
間違いなく、傲慢な貴族の為の剣と言った所だ。成る程親父の良い分はもっともであったが、とてもではないがこんな派手な剣を持ち歩くわけにはいかない。
これであれば、まだバターナイフの方が使い道のあるというものだ。
しかし、親父はそんな47の内心に気づく筈もなく、ルイズに対してこの武器の説明を始めた。47の知らぬ地名やら人名が出ていたようだったが、そもそも興味の無いものを買うつもりは無く、黙ってカウンターに戻した。
それから、親父がルイズに黄金の件の値段を告げて、彼女の目が丸くなったのと、47が店内の隅にあった、傘立てに詰め込まれた傘のような、古い剣を見つけたのは同時だった。
余りの高額に文句を言うルイズを無視して、47はその剣に近づき抜き取る。見た目こそ古かったものの適度な重量感、剣先の鋭さは紛う事無く物体を切るのに適していた。
「おう、兄ちゃん俺に目を付けるとはな。さっきからずっとアンタの鑑定見てたが、鋭いじゃねえか」
47が古ぼけた剣を眺めていると、突然金属まじりの男の声が聞こえた。店内に居たルイズも、親父もその声を耳に入れて47の方を見やる。
「ああ、そこにあるのは口の悪い、役に立たないインテリジェンスソードですよ」
「ああん?さっきからそこのお嬢ちゃんにロクデモナイ品ばかり売りつけようとしやがって。手前の方がよっぽど役に立たないじゃないかよ」
親父が47の持つ剣に対して毒づくと、剣の鍔の部分がカタカタ音を立てて動き始めた。
「おう、アンタ、あの親父の言う事なんざ真に受けちゃあ駄目だぜ」
言下、47は今自分の手にしている剣が喋っているのだと理解する。どうも此処数日、奇妙な出来事が続きすぎていて、多少の不可思議な出来事ならすんなり受け入れられる様になっていた。
一抹の不安を覚えつつも、47は剣に向かって話を始める。
「剣が言葉を話す。成る程、インテリジェンスソードという名前に恥じないな。武器としても悪くない」
「ね、ねえ47。まさかその剣を買うつもりじゃあ」
淡々と話し出した47とは正反対に、ルイズは気が気で無かった。何故、こんな所まできてインテリジェンスソードなどという珍妙なものを買わなければならないのか。
それだったら、先程眺めていた黄金の剣の方が、まだ見栄えが良いのに。
だが、そんな彼女に親父は耳打ちする。今なら只同然で購入出来ると。成る程親父からしてみれば、あんな営業妨害をする剣など、早く売っぱらってしまいたかったのだろう。
最終的に、意気投合したインテリジェンスソードと47の説得と、破格の値段という二つの要因によってルイズが折れた。
「へっへ、俺の名前はデルフリンガーってんだ。デルって呼んでくれよ相棒!」
「俺は47だ。こちらこそよろしく」
デルフリンガーと名乗ったインテリジェンスソードは、結構な大きさであった為に47は腰から、でなく背中に背負う形で持ち運ぶ事と成った。
暗殺者としてやや動きにくくなったが、それでもこの買い物は後に役立つだろう、47はそう確信していた。
一方のルイズは、剣を購入後予算が半分以上残っている事を確認し、様々な衣料品や雑貨の購入に走ってしまった。
結果、一本の件を手にするよりも遥かに多い荷物を学院まで持って帰る羽目となってしまい、47は呆れずにはいられなかった。



※※※



学院に戻った47は、今一度呆れずにいられなくなってしまった。
ルイズの部屋の前に、47が品定めしたあの黄金の剣を抱えたキュルケとタバサが待っていたのだ。
キュルケ曰く、決闘の時に47に惚れ込み、お近づきの印にと受け取ってほしいという。
だが、そもそも購入する気のさらさらなかった剣であり、尚かつ隣のルイズが鬼の様な形相でいるが故にそう簡単に受け取る訳にはいかなかった。
タバサは黙って本に目を通している。47が彼女に視線を送るとやれやれといった様子で肩を竦める。どうやらキュルケは剣を受け取らぬ限り帰るつもりは無いらしい。
「アンタみたいな遊び人からね、プレゼントなんかもらえる訳無いでしょ!」
業を煮やしたルイズが先に怒鳴り声を上げた。しかし、それを聞いても尚キュルケは冷静だった。
「だから、ミスタ47に対する個人的なプレゼントよ。使い魔とか、貴族とかそんなんじゃないわ」
「勝手に人の使い魔に手を出さないで!」
「あら、でもこういうのって本人が決める事じゃない。ねえミスタ47、受け取ってくれるわよね」
さて、困った。というのが47の本音である。何とか喉で塞き止めたがこのままでは埒があかない。
「まあ、このような豪勢なものも時には役に立つ。もらっておくだけもらっておこうと思うのだが。使わない時は飾っておけば良い」
時折、喉が詰まってしまったが何とか47は言葉を絞り出す。どうにも、暗殺任務をこなす時とは別の恐怖があるような気がしてならない。
ルイズはキッと彼を睨みつけ、キュルケはというと嬉しそうに笑顔を見せている。
とは言え、元々その黄金の剣はルイズも欲しがっていたものだった。素直になれないものだとキュルケは口を尖らせていたようだったが、黄金の剣を47に渡すとウィンクをしてみせる。
直後、ルイズに尻を強くビンタされた47だったが決して顔を苦悶に歪ませる事は無かった。
「……ああ。ところでミスタコルベールの部屋は何処か分かるか」
代わりに、47はコルベールの自室を尋ねる。
彼には、この黄金の剣の使い道や、少女の機嫌の取り方よりももっと重要な、そして早急に確かめて起きた事があった。
彼の背中では、背負われているデルフリンガーが時々震えた。



新着情報

取得中です。