突然、ルイズとワルドの目の前に現れた、謎の男・伏羲(ふっき)。
その背後の『ゲート』から、わらわらと人々が出て来た。半透明の者や、どう見ても化け物な存在まで。
その背後の『ゲート』から、わらわらと人々が出て来た。半透明の者や、どう見ても化け物な存在まで。
「ふ……フッキ!? 『始まりの人』って、まさか六千年前降臨された『始祖ブリミル』!?」
「まぁ、始祖だがのう。そちらで言うブリミルとやらより、ずっと昔からおるよ。
異世界でも、どうやらわしらの言葉は通じるようだのう。時におぬしら、趙公明の奴を知らぬか?」
「まぁ、始祖だがのう。そちらで言うブリミルとやらより、ずっと昔からおるよ。
異世界でも、どうやらわしらの言葉は通じるようだのう。時におぬしら、趙公明の奴を知らぬか?」
「彼が1ヶ月ほど前、急に『神界』から姿を消しました。
よく調べると、他にも数十名の神が消えており、詳しく捜索した結果、ここにたどり着いたわけです。
『神界』の管理者である、元始天尊さまの監督不行き届きですね。
定例会議が月一から段々伸びて、百年に一度になっていたそうですし」
「変化に乏しい世界だし、みんな不老不死だから、時間感覚がおかしくなるのはしょうがないよ。
それで、宝貝もいくつかなくなっていたんだ。この世界にあってはならないオーパーツだし、回収しなくちゃね」
よく調べると、他にも数十名の神が消えており、詳しく捜索した結果、ここにたどり着いたわけです。
『神界』の管理者である、元始天尊さまの監督不行き届きですね。
定例会議が月一から段々伸びて、百年に一度になっていたそうですし」
「変化に乏しい世界だし、みんな不老不死だから、時間感覚がおかしくなるのはしょうがないよ。
それで、宝貝もいくつかなくなっていたんだ。この世界にあってはならないオーパーツだし、回収しなくちゃね」
青い長髪で黒マントの美青年と、天使のような美少年が現れる。ルイズは思わず頬を染めた。
「プッ、プリンスは今ニューカッスル城よ! あっちの方角!
反乱軍『レコン・キスタ』の空中艦隊と戦っておられるわ!!」
「うーむ、異世界の歴史に介入するのはマズイのう……まぁとりあえず説得してみて、ダメなら再封神だ。
……ところでおぬし、その杖はわしの『打神鞭』か?」
ワルドの持つ杖に伏羲が反応する。ワルドは答えない。
「プッ、プリンスは今ニューカッスル城よ! あっちの方角!
反乱軍『レコン・キスタ』の空中艦隊と戦っておられるわ!!」
「うーむ、異世界の歴史に介入するのはマズイのう……まぁとりあえず説得してみて、ダメなら再封神だ。
……ところでおぬし、その杖はわしの『打神鞭』か?」
ワルドの持つ杖に伏羲が反応する。ワルドは答えない。
「でも望ちゃん、宝貝は持ってるでしょ?」
「うむ、ここにのう。ちゃんと『太極図』もついたやつが。
……では、これはレプリカということか? ちと渡してもらうぞ」
伏羲が軽く杖を振ると、風の輪がワルドの手足を縛る。
なすすべもなくワルドは杖を奪われ、ルイズは空中に立つ伏羲の腕に掴まる。
「うむ、ここにのう。ちゃんと『太極図』もついたやつが。
……では、これはレプリカということか? ちと渡してもらうぞ」
伏羲が軽く杖を振ると、風の輪がワルドの手足を縛る。
なすすべもなくワルドは杖を奪われ、ルイズは空中に立つ伏羲の腕に掴まる。
「あ、ありがとう……ございます、『始祖』さま」
「ニョホホホ、礼には及ばぬ」
伏羲がいきなりぬいぐるみのように簡略化した姿になり、ルイズはぎょっとした。
ワルドの杖を、伏羲が調べる。確かに宝貝のようだが……。
「ニョホホホ、礼には及ばぬ」
伏羲がいきなりぬいぐるみのように簡略化した姿になり、ルイズはぎょっとした。
ワルドの杖を、伏羲が調べる。確かに宝貝のようだが……。
「ムゥ……いくつかの魂魄が、この中に封印されておるっ!
いなくなった劉環に、陳桐に、張桂芳と風林……む? この金髪の男は知らんぞ」
「ウェールズ皇太子だ。さっき僕が殺した」
「プ、プリンスとワルドが、さっき天数がどうとか白い女神とか、『歴史の道標』がどうとか、
よく分かんないことを話してたわ……あんたたち、知ってるんでしょ!?」
いなくなった劉環に、陳桐に、張桂芳と風林……む? この金髪の男は知らんぞ」
「ウェールズ皇太子だ。さっき僕が殺した」
「プ、プリンスとワルドが、さっき天数がどうとか白い女神とか、『歴史の道標』がどうとか、
よく分かんないことを話してたわ……あんたたち、知ってるんでしょ!?」
ルイズは始祖相手にタメ口だ。見た目は若いし、あまり貴族らしくないからなのか。
それを聞いた伏羲が、渋い顔をした。
「……ああ、よーくな。まったく数千年振りに聞いたぞ」
「やはり、奴か!! しかし、なぜまたこのような異世界に?」
「燃燈よ、あやつもわしと同様、魂魄を自在に分裂させる能力があった。
その欠片が何かの拍子にこっちへ紛れ込み、この世界の影響を受け変質して、
またぞろ妙な歴史を作っておるのではないか? さしずめ六千年前の始祖降臨とやらが怪しいのう」
それを聞いた伏羲が、渋い顔をした。
「……ああ、よーくな。まったく数千年振りに聞いたぞ」
「やはり、奴か!! しかし、なぜまたこのような異世界に?」
「燃燈よ、あやつもわしと同様、魂魄を自在に分裂させる能力があった。
その欠片が何かの拍子にこっちへ紛れ込み、この世界の影響を受け変質して、
またぞろ妙な歴史を作っておるのではないか? さしずめ六千年前の始祖降臨とやらが怪しいのう」
「……あの、あなたたち何者?」
「神だ。全知全能でも、唯一絶対でもない。もとは人間だったり妖怪だったり、いろいろだ。
人類社会や地球環境がそれなりにうまく回っていくよう、調整しておる。
歴史自体は人間のもので、あまりわしらは介入せんがのう」
「まだ肉体を残した『仙道』や『妖怪仙人』も沢山いるよ。僕は魂魄体の『神』。
望ちゃんは『始祖』だし、やるだけやったから、今はサボり放題なんだけどね」
天使が笑う。フッキとかスースとかボーチャンとか、どれが本名なのだろうか。
「神だ。全知全能でも、唯一絶対でもない。もとは人間だったり妖怪だったり、いろいろだ。
人類社会や地球環境がそれなりにうまく回っていくよう、調整しておる。
歴史自体は人間のもので、あまりわしらは介入せんがのう」
「まだ肉体を残した『仙道』や『妖怪仙人』も沢山いるよ。僕は魂魄体の『神』。
望ちゃんは『始祖』だし、やるだけやったから、今はサボり放題なんだけどね」
天使が笑う。フッキとかスースとかボーチャンとか、どれが本名なのだろうか。
「趙公明がこっちに来ていた事は、わしが始祖の力で調べたが、
詳しい事は分からんでな。すまぬがちょっとおぬしらの記憶を覗かせてくれ。少しでよい」
ルイズとワルドの額に、伏羲が手袋をした掌をのせる。
「……ふむ、ふうむ、なるほどのう。あやつめ、このワルドを『封神計画』の遂行者に選んだのか。
そりゃ強力な風を使えるメイジだが……『ちんとう』を倒してもあまり自慢にはならんかのう」
どうやら、ワルドもしばらく妖怪退治をしていたようだ。
「ではスープーよ、このルイズを乗せて安全なところへ連れて行け。
わしらは趙公明をどうにかせねばならん。面倒だのう」
「ラジャーっス、ご主人!!」
ルイズは、ポフッと空飛ぶ喋る白いカバの背中に座らされる。
「……ま、待って! 私もプリンスのところへ、ニューカッスルへ連れて行って!
彼は、一応私の『使い魔』よ! 説得するって言うのなら……!」
詳しい事は分からんでな。すまぬがちょっとおぬしらの記憶を覗かせてくれ。少しでよい」
ルイズとワルドの額に、伏羲が手袋をした掌をのせる。
「……ふむ、ふうむ、なるほどのう。あやつめ、このワルドを『封神計画』の遂行者に選んだのか。
そりゃ強力な風を使えるメイジだが……『ちんとう』を倒してもあまり自慢にはならんかのう」
どうやら、ワルドもしばらく妖怪退治をしていたようだ。
「ではスープーよ、このルイズを乗せて安全なところへ連れて行け。
わしらは趙公明をどうにかせねばならん。面倒だのう」
「ラジャーっス、ご主人!!」
ルイズは、ポフッと空飛ぶ喋る白いカバの背中に座らされる。
「……ま、待って! 私もプリンスのところへ、ニューカッスルへ連れて行って!
彼は、一応私の『使い魔』よ! 説得するって言うのなら……!」
「うーむ、まぁよいが、趙公明は連れ帰るからな。我慢せい。
あのような非常識で強大な存在、野放しには出来ぬぞ」
「プッ、プリンスは最も高貴な『真の貴族』よ!! 私から彼を取り上げないで! お願いよ!!」
あのような非常識で強大な存在、野放しには出来ぬぞ」
「プッ、プリンスは最も高貴な『真の貴族』よ!! 私から彼を取り上げないで! お願いよ!!」
スープーの背中で騒ぐルイズに、伏羲も閉口する。
「あーもー、めんどいのう。説得の役には立つかも知れんし、連れて行ってみるか……」
「お兄様―――――――っ、どこにおられるの―――――――――っ!!!」(ドカ――――ン)
ゲートから化け物どもが現れた。『飛刀』がいつか見せてくれた、プリンスの妹たちだ。
「お兄様―――――――っ、どこにおられるの―――――――――っ!!!」(ドカ――――ン)
ゲートから化け物どもが現れた。『飛刀』がいつか見せてくれた、プリンスの妹たちだ。
「げぇっ、ビーナス!! ええい急ぐぞスープー、ニューカッスル城へ!
ルイズ、案内せい! ワルドは誰ぞ、そこのゲートを潜って『神界』へ封印しておけ!」
「わ、分かったわ、こっちよ! プリンスがピンチなら加勢しなきゃ!!」
「ピンチってのう……記憶を見せてもらったが、この世界の旧式艦隊ごとき、あやつにはいくら集まろうと、
ピンチのうちにも入らんぞ。核兵器でも使わねばのう」
ルイズ、案内せい! ワルドは誰ぞ、そこのゲートを潜って『神界』へ封印しておけ!」
「わ、分かったわ、こっちよ! プリンスがピンチなら加勢しなきゃ!!」
「ピンチってのう……記憶を見せてもらったが、この世界の旧式艦隊ごとき、あやつにはいくら集まろうと、
ピンチのうちにも入らんぞ。核兵器でも使わねばのう」
あれだけの艦隊を向こうに回して、ピンチのうちにも入らない、だって? ……マジですか?
「え゛……なによ、カクヘイキって」
「この世界を構成するごく微小な粒子から、途轍もない力を引き出す科学技術を利用した兵器だよ。
具体的にはウラニウムをね……」
「普賢よ、今はそんな話はよい。この物理オタクめが」
神々とルイズは、一路ニューカッスルへ飛ぶ。
すでにそこには、深い森ができていた。趙公明の生み出した妖怪密林だ。
趙公明の原形『巨大花』も、『レキシントン』号を押し潰して着陸し、さらに巨大化していた。
「え゛……なによ、カクヘイキって」
「この世界を構成するごく微小な粒子から、途轍もない力を引き出す科学技術を利用した兵器だよ。
具体的にはウラニウムをね……」
「普賢よ、今はそんな話はよい。この物理オタクめが」
神々とルイズは、一路ニューカッスルへ飛ぶ。
すでにそこには、深い森ができていた。趙公明の生み出した妖怪密林だ。
趙公明の原形『巨大花』も、『レキシントン』号を押し潰して着陸し、さらに巨大化していた。
「……遅かったか……このままでは、ここら一帯養分を吸い尽くされて、死の砂漠になりかねんぞ」
「お兄様、お迎えに参りましたわっ!!! 心配いたしましたのよ!!」
「お兄様、お迎えに参りましたわっ!!! 心配いたしましたのよ!!」
趙公明の顔がついた巨大な花が、ぐぐっと振り向いた。ルイズは仰天する。
「「おお、ビーナス、クイーン、マドンナ! それに太公望くん、もとい伏羲くん!!
久し振りだね、元気だったかい? おや、ルイズも一緒とは、どうしたことだね?」」
「「おお、ビーナス、クイーン、マドンナ! それに太公望くん、もとい伏羲くん!!
久し振りだね、元気だったかい? おや、ルイズも一緒とは、どうしたことだね?」」
一行はさっそく、説得にかかる。
「趙公明よ、妹たちも心配しておるし、早く人型をとって『神界』へ帰還せい!
わしら神々は、地上のことに深入りせんと、誓約したであろう!!」
「「ノン! 僕はそこのミス・ルイズ・フランソワーズに召喚され、正式に契約したのさ!!
高貴なる美少女のナイトとして、華麗に戦えるこの世界にいるのを邪魔するのかい?
帰還させたくば、僕と戦って倒してみたまえ!!!」」
「趙公明よ、妹たちも心配しておるし、早く人型をとって『神界』へ帰還せい!
わしら神々は、地上のことに深入りせんと、誓約したであろう!!」
「「ノン! 僕はそこのミス・ルイズ・フランソワーズに召喚され、正式に契約したのさ!!
高貴なる美少女のナイトとして、華麗に戦えるこの世界にいるのを邪魔するのかい?
帰還させたくば、僕と戦って倒してみたまえ!!!」」
趙公明が、取り込んだフネから砲火を放って威嚇する。『ガンダールヴ』の力だろうか。
「「ワルドくんはどこだい? 彼とも決着をつけねば!! ハハハハハハ!!!」」
「その人は捕まえたっス! 『神界』に戻るっスよ、趙公明さん!!」
「「ノンノン!! 僕は帰らない!!」」
「プリンス! お願いよ、もう終わったの!! やめて!!」
「「ノンノンノン!!! まだ暴れ足りない!!!」」
「「ワルドくんはどこだい? 彼とも決着をつけねば!! ハハハハハハ!!!」」
「その人は捕まえたっス! 『神界』に戻るっスよ、趙公明さん!!」
「「ノンノン!! 僕は帰らない!!」」
「プリンス! お願いよ、もう終わったの!! やめて!!」
「「ノンノンノン!!! まだ暴れ足りない!!!」」
「……三度目、だね。望ちゃん」
「うむ……説得は失敗だ、ルイズにビーナス。では燃燈、楊ゼン、張奎、奴を再封神する。
皆はルイズとビーナスを連れて、向こうへ下がらせい」
伏羲が神々に命令する。二人は神々に連れられて、離れたところへ避難させられた。
「……しかし、どうするんです師叔、アレを……倒すだけなら可能ですが……」
「申公豹の『雷公鞭』やナタクの『金蛟剪』や燃燈の『盤古幡』では、この浮遊大陸ごと落としかねんな。
おぬしの『六魂幡』は魂魄を消してしまうし、張奎の『禁鞭』でもアレは倒し切れんし……ぬぅ」
「やっぱりここは、望ちゃんにやってもらおうよ。せっかくだし」
「そうだのう……毛玉、セミ、普賢。ちょいと協力せい、陣を布く」
「うむ……説得は失敗だ、ルイズにビーナス。では燃燈、楊ゼン、張奎、奴を再封神する。
皆はルイズとビーナスを連れて、向こうへ下がらせい」
伏羲が神々に命令する。二人は神々に連れられて、離れたところへ避難させられた。
「……しかし、どうするんです師叔、アレを……倒すだけなら可能ですが……」
「申公豹の『雷公鞭』やナタクの『金蛟剪』や燃燈の『盤古幡』では、この浮遊大陸ごと落としかねんな。
おぬしの『六魂幡』は魂魄を消してしまうし、張奎の『禁鞭』でもアレは倒し切れんし……ぬぅ」
「やっぱりここは、望ちゃんにやってもらおうよ。せっかくだし」
「そうだのう……毛玉、セミ、普賢。ちょいと協力せい、陣を布く」
「私は毛玉ではない、袁天君でありおりはべり」
「我はセミではない、董天君なり(ミーン ミーン)」
「我はセミではない、董天君なり(ミーン ミーン)」
4人は軽く相談すると、趙公明を中心に四方を囲み、宝貝を発動させる。
「……宝貝『打神鞭』と『太極符印』、及び亜空間系宝貝『寒氷陣』『風吼陣』のリンク完了……。
いいよ、望ちゃん!!」
「よーし、じっとしておれ趙公明!! 太極、両儀、四象、八卦……!
空間系宝貝『誅仙陣・改』!!」(ヴヴン)
「……宝貝『打神鞭』と『太極符印』、及び亜空間系宝貝『寒氷陣』『風吼陣』のリンク完了……。
いいよ、望ちゃん!!」
「よーし、じっとしておれ趙公明!! 太極、両儀、四象、八卦……!
空間系宝貝『誅仙陣・改』!!」(ヴヴン)
ばかでかい立体魔法陣が巨大花と森を包み、氷雪の嵐が襲い掛かる。
物理を操る電脳宝貝『太極符印』が気圧や温度を調節し、宝貝同士をリンクさせる。
亜空間系宝貝『寒氷陣』と『風吼陣』が吹雪を起こし、植物を切り刻む。
物理を操る電脳宝貝『太極符印』が気圧や温度を調節し、宝貝同士をリンクさせる。
亜空間系宝貝『寒氷陣』と『風吼陣』が吹雪を起こし、植物を切り刻む。
伏羲の『誅仙陣』は、本来は魂魄を溶かす雪を降らせるのだが、
今回は『打神鞭』で風を操り、限定空間内に猛烈な疾風を吹き荒れさせる。
ピシィ、ピキィと巨大植物たちが凍りついていく。
今回は『打神鞭』で風を操り、限定空間内に猛烈な疾風を吹き荒れさせる。
ピシィ、ピキィと巨大植物たちが凍りついていく。
「「……う、あ、あああああああ!!! また僕が凍る、凍りつく!!」」
「プリンス!!」「お兄様!!!」
「プリンス!!」「お兄様!!!」
風の国アルビオンに雪風が吹き、趙公明は瞬間冷凍された。
(つづく)