あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのアトリエ-05


「お皿があるね」
「あるわね」
「何だか貧しいものが入ってるね」
「入ってるわね」
「…」
(ああー、た、頼むから怒らないでよ? わ、わたしのせいじゃ、ないんだから…)


ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師5~


 こんなはずじゃなかった。もっといいものを頼んであげよう、そう思って厨房に行ったのに。
 この私が頭を下げて(さんざん自分の偉大さを吹聴した後にほんの少しだけ)
 彼らの能力をこの上もないほど評価して(貴族風をぴゅーぴゅー吹かせて)
 準備金まで用意して渡してあげるって言ってるのに(金に汚い平民を心底毛嫌いした態度で)
 なんであのオヤジがあんなに怒っていたのか、皆目見当もつかない。
 余分な材料はないの一点張りで、ようやく渡されたのが山盛りのパンの耳だけ。
 案の定、ヴィオラートは無言でその皿を見つめて立ち尽くしている。
 今のルイズには、ヴィオラートの反応をただ見守る事しかできない…。
「そっか…ごめんね、気がつかなくて。」
 何を納得したのか、ヴィオラートはいつにもましてルイズに暖かい視線を送る。
「貴族って言っても、色々あるもんね。余裕ない事だってあるよね?」
 なにか勘違いされているようだ。ルイズのことを貧乏貴族とでも思ったのだろう。
「あたしは自分で何とかするから大丈夫だよ。他の使い魔さんたちと一緒に食べてくるね?」
 そういい残すと、ヴィオラートは粛々と食堂を去って行く。
(な、なんでまた私がこんな…ああもう、善意、善意…ヴィオラートは善意でやってるんだから…)
 ルイズの独り相撲は、ヴィオラートが満足顔で帰ってくるまで延々と展開されていた。

 朝食が終わると、授業の時間だ。
 ルイズたちが教室の扉をくぐると、教室の生徒達から無遠慮な視線が飛んできた。
 中には指を挿して笑っている不届きな生徒もいる。先ほどのキュルケもいた。
 なるほど、男子生徒に囲まれてご満悦のようだ。口だけではない、ということか。

 教室の中には、生徒と共に様々な使い魔が入り込んでいるようだ。
 ヴィオラートの世界ではモンスターとして忌み嫌われるだけの存在の多くが、この世界では使い魔として人々の役に立っている。
 何よりヴィオラートもこの世界では異邦人、ある意味ここにいる使い魔たちと同じ存在である。
 自分の倒してきたモンスターさんたちの中にも、仲良くなれるひとはいたかもしれない。
 ヴィオラートはほんの少し、そんな感傷を脳裏に浮かべた。

 ルイズが席に座ると、ヴィオラートもそれにならって隣に腰掛ける。
 ルイズは思わずヴィオラートに顔を向けるが、
「ん?」
 悪意のない、楽をしたいという気持ちすら読み取れないまっさらな笑顔を見せられると、何も言えなくなってしまう。
(悪意が見えないってのが、調子狂う原因よね…)
 ルイズはもはや諦観といった感覚で、ヴィオラートを俯瞰して見てみる。
 どちらかといえば地味な部類に入るが、それを含めて魅力的と感じる男性は意外に多いように思える。
 気性は善良ではたらきもの、女よりもお嫁さんとしてのアピールが自然に出てくるタイプ。胸連峰には劣等感を刺激されるが、キュルケのようにそれをひけらかすわけでもない。新しい環境への適応力は抜群だし、錬金術?という特殊技能まで兼ね備えている。
(まったく、良い子ちゃんを体現したような高スペック体ね)
 何だかもう、ヴィオラートに対してつっぱるのが馬鹿らしくなってきた。
 というか、 ヴィオラートに頼るのも悪くないかな、そんな考えがルイズの頭の中を占めるようになってきた。
(ま、そんなヴィオラートが私の使い魔なんだし…やれることはやってもらっても…いいかな。)
 シュヴルーズ先生の『錬金』授業を熱心に聞くヴィオラートの横顔を眺めながら、ルイズの意識は深いまどろみの中へと落ちていった…

「…ル、ミス・ヴァリエール!!」
「はひっ!?」
 ルイズにとっては一瞬だったような気がするが、かなり長い間舟を漕いでいたらしい。
 さすがに放置できなかったか、シュヴルーズ先生がルイズの頭を軽く叩いて呼び覚ます。
「ずいぶんと余裕をお見せになっているようですけども。」
「すいません…」
「では、あなたにやってもらいましょう。」
「え? わたし?」
「そうです。基礎錬金です。ここにある石ころを、金属に変えてごらんなさい。」
 ルイズは立ち上がらず、戸惑うような表情を浮かべて周囲を見渡す。
 ふと、キュルケと視線が合ってしまった。すると。
「先生、危険です。やめといたほうがいいと思いますけど。」
 キュルケが、味わい深い困り顔でシュヴルーズに忠告する。しかし。
「失敗を恐れていては何も変わりません。ミス・ヴァリエール、やってごらんなさい。」
 むしろ、たきつける方向に向かってしまったようだ。
「やります」
 ルイズは緊張した顔で、石のある教壇の方へと歩を進めた…。

 結論から言うと。基礎錬金は見事に失敗し、四散した。
 いや四散どころではなく、消し飛んだ。
 爆心地にいたシュヴルーズ先生は重傷。マリコルヌも重傷。
 キュルケその他の生徒は避難していて、無事。
 ルイズと何も知らないヴィオラートの顔は、すすだらけになった。
 ヴィオラートはゼロのルイズという名前の由来を、知った。



新着情報

取得中です。