あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの独立愚連隊-03


「サモンジ、聞かせてもらえる?あの決闘の時、一体何をしたのよ」
 しばらく休んで体力の戻ったルイズと共に部屋に戻るとすぐにルイズが話を切り出した。決闘の直後は、単に大人が仲裁に来たのでギーシュが退いたのかと思ったが、彼が言うにはサモンジから杖を折られたということなのだ。
 考えられるのは、今サモンジが持っている鉄の棒。杖というには妙な形だが、以前宝物庫の見学で見た破壊の杖のようなマジックアイテムではないのだろうか。やはり自分はあたりを引いたのかもしれない、期待の眼差しでサモンジを見つめて答えを待つ。
「この銃で杖を撃ち抜いたんだけど。私、銃は苦手なんだけど距離近かったしね」
 ごくあっさりとした答えが返ってきた。銃?
「ルイズちゃんたちはこんな銃見たことないだろうけど、私達にはそう珍しくないんだよ。結構高いけど。レーザー、う~ん…物を燃やす光を撃つ銃って思ってよ。あの時はまず低出力モードにしてレーザーポインタ代わりに………」
 サモンジが銃を構えながら解説を始める。と、銃を構えた瞬間に左手のルーンが光を放ち、サモンジの視界にはライフルの整備状況やパワーパック残量といった情報が神経反応ヘルメットを装着しているときのように視界に浮かんでくる。
「そういえば、これ何なのルイズちゃん?決闘の時もそうだったけど急に光って銃の状態が目の前に映るんだよね、この左手の…ルーンだっけ、契約の呪文が成功した目印なんじゃなかったの」
 銃を下ろして不思議そうに光の消えた左手を見ながら、決闘のときと今起きた現象を説明するサモンジ。だが、ルイズの知識にもそんな現象は無い。既に内容を暗記すらしている教科書を再度入念に見直すがやはり解らない。
「だめね、やっぱり解らないわ…アカデミーにでも聞いてみる?魔法の研究してる機関なんだけど、身内がいるから連絡はとれるわよ」
「う~ん、便利だし当面は問題ないからいいよ。変に目立ちたくないし、銃を預かるとか言われたら本格的に私何もできなくなっちゃうよ」
 そう言って軽く笑うサモンジ。相変わらずお気楽な奴だ。
「いいわサモンジ、説明を続けて。あんた自分は銃が下手だなんて言ってたけど、あんな100メイル近い距離から杖を狙うなんで十分な腕よ。それに、私が覚えている限り火薬の音や煙はなかったわ。どういうこと?」
 その疑問に再度サモンジが説明を始める。レーザーライフルの原理を説明しても解らないだろうから、と実演を交えて。まずはスコープを外してルイズに渡すと、レーザーライフルを低出力モードに変える。
「ルイズちゃん、ちょっとそこの窓開けて。……で、机の上のいらない紙を窓の前に出してみて」
 ルイズが紙を窓の前に出すと、その上に光点が浮かぶ。
「ね?光の点が当たってるでしょ。で、引き金を引くと」
 ジャッ、という鋭い音と僅かに焦げ臭いような変な臭いを残して紙に穴が開いている。驚愕するルイズにサモンジが続ける。
「こんな風に、最初の光の点に正確に当たるんだ。で、さっきルイズちゃんに渡した望遠鏡で見ながら光の点を当てたいものに合わせて引き金を引けば、ほぼ百発百中さ」
 実際は、レーザーポインタに気付かれた時点で相手が回避行動を取り出すので、そう上手くはいかない。だが光点を見ても狙われていると気付かないこの星の人間相手なら十分だろう。加えて、銃を持つと光る左手に関係するのか、銃のステータスが視界に表示される以外にも自分の体に射撃管制が加えられているかのように動作に補正がかかっているような感触がある。正直、少々気持ち悪い。
 説明を終えて銃を下ろしたサモンジだが、もちろん安全装置は忘れていない。この傲慢なご主人様は魔法という力が使えないことにコンプレックスがある。そこにレーザーライフルという目新しく力のある道具があれば…そう思っていると、予想通りの反応が返ってくる。
「サモンジ、ちょっとこれ貸しなさい!」
 やっぱり……単純だなこの子、などと思いながらあっさりとサモンジは銃を渡す。さっそくサモンジがやったように構えて、引き金を………
「……サモンジ、これ動かないんだけど?どうやるの、教えなさいよ」
 高圧的に聞いてくる。これで素直に教えれば、もうレーザーライフルは返ってこないだろう。笑いをこらえながらサモンジは銃を取り上げ、嘘を吹き込んで誤魔化すことにする。
「ま、こうなるよね。これお店で買うときに持ち主の登録をして他の人には使えないようにするんだよ。完全に戦闘用の武器、人が殺せる道具だから防犯のためにね。だからルイズちゃんには使えないよ」
 それってどういうことよ、持ち主を私に替えなさい、などとしつこく言いすがるルイズを宥めるサモンジ。ルイズは随分と長い間食い下がったが、結局無理と解り、サモンジの持つ道具を片っ端から引っ張り出しては質問攻めにする。
 おそらく、目に見える力を持つ魔法の道具を他の生徒の前で使って見せたかったのだろう。ゼロと呼ばれる自分に力があることを示そうと。だが、この方法は間違いでしかない、使いこなせもしない借り物の力だ。すぐに虚しくなるだけだろう。
 そう思い適当にぼかして説明を続けてルイズが飽きるのを待つ。とは言え、この星から見て目新しそうなのは双眼鏡と高速振動剣くらいだろうが。
 結局、ルイズにとって特に目を引く物はなかったらしく、唯一高速振動剣に興味を持ったようだが、「貴族が剣など持てない」と言って放り投げる。
「使えないものばっかりね……もういいわサモンジ。寝るわよ、明かりを消しなさい。それと、多少は使える使い魔みたいだから少しはましな扱いをしてあげるわ。明日からはその剣を腰に差して私の従者として付いてきなさい。
没落したけれども心優しい貴族に拾われて従者に取り立ててもらった、ってところかしら。感謝しなさいよ」
 その台詞にはサモンジも、少し意地悪だったかな~と同情していたのを軽く後悔する。はいはい、と呆れ気味に返事をしながら明かりを消し、コートを布団代わりに自分も寝る事にする。
 何だか捕虜生活になじんじゃったなぁ……などと思いつつ。半ば奴隷の様に思われる魔法使いの世界、それに対する異常感と不満が薄れてきたのか、すんなりと眠りに落ちた。

「ミス・ヴァリエール。次の授業ですが、教材が多いので貴方の使い魔に少し持ってもらってよろしいですか?」
 翌日、ようやくサモンジも一緒に入れてもらえた食堂での昼食が終わり、次の授業の教室に移動するルイズとサモンジは学院長秘書のミス・ロングビルに声を掛けられ3人で次の教室に向かうことにする。
「そういえばミスタ・サモンジ。貴方の事を誤解しておりました…大変勇敢で豪胆な方なのですね。昨日の決闘の件、聞きましたわ。決闘をする貴族の間に生身で割って入られたとか。素晴らしいですわぁ…元は傭兵だったとか、さぞ勇ましい戦いぶりだったのでしょう?」
 今日のサモンジはルイズからの指示の通りに、レーザーライフルだけでなく高速振動剣をコートの上から見えるように提げている。剣を持つ従者を連れ歩けば万一を恐れ、決闘騒ぎの件で自分をからかう声も減るだろうと考えてのことである。もし教師に注意されても、竜を使い魔にしている生徒もいるのだから、戦士の使い魔が剣を持って何が悪い、と言えばよいと思っていたが…見た目を傭兵らしく飾ったせいで無用に興味を引いてしまったようである。
 サモンジの顔を覗き込みながら言うロングビルに、サモンジの鼻の下が露骨に伸びる。ああ、やっぱり眼鏡っていいよね。そんなサモンジを見て不機嫌そうにルイズが話しに割り込んでくる。
「ミス・ロングビル。こんな使い魔にミスタなど必要ありませんわ。それに、生身ではなくマジックアイテムの銃でグランモンの杖を気付かれず先に撃っていたんです。豪胆どころか、決闘に不意打ちで横槍を入れる卑怯な小心者です」
 その言葉にロングビルの目がかすかに光る。サモンジの腕を取って胸に押し付けながら、いっそう感激したような声を作り、さらに質問を投げかける。もうサモンジにまともな判断力はない。
「まあ!貴族の決闘を仲裁する行動力を持ちながら、さらに銃の名手でもあるのですか。しかも誰も傷つけないように杖を狙いたれるとは素晴らしいですわ。腰に差しておられる剣もマジックアイテムなのですか?さぞ素晴らしい腕なのでしょうね、見せていただけませんか」
 サモンジの肩に顔を乗せるようにして言うロングビル。サモンジの理性はほとんど解けている。いやもう、傭兵部隊というおっさん臭い集団で、近くにいる女性といえば乗り物マニアのうっかり娘と博愛主義者の皮を被った外科手術マニア。鼻の下も伸びようというものだ。
「いやぁ~、私って銃は素人に毛が生えた程度ですよ。剣なんて、なおの事全然ダメで……これは工具として持ってるんですよ。ここのスイッチをオン側にスライドさせると振動して発熱するから、こういう具合に壁をくり抜いて道を作ったり…」
 そう言って廊下の壁に片手で高速振動剣を突き立てる。ざくり、ずぶずぶ、という音がして根元まで刀身が埋まる。息を飲んで驚くロングビルに気をよくしたサモンジは、ぐるり、と壁をくり抜く。斜めに空けられた穴から、その中身が手前に落下する。
「「あ」」
 ルイズとロングビルの声が重なる。そして、ドッスン、という重たい音。
「はっは、まあざっとこんn「何やってんのばかぁー!!!」
 ぱーん、といういい音を立ててルイズの平手 打ちがサモンジに決まる。運んでいた教材の箱ごと倒れるサモンジ。あわてて壁の穴に駆け寄り魔法を使うロングビル。
「あんた、夜中に教室のガラスを割って回る頭の悪い一年生!?何やってんのよ!!」
 我に返って周囲を見てやっちゃったーという顔をするサモンジ。ようやく調子に乗りすぎたと気付いたようだ。しかし、そこにロングビルが割って入る。
「ミス・ヴァリエール、そのくらいで……私がサモンジ様をけしかたようなものですし、ここは私に免じて…ほら、剣の跡もこのように隠しましたから」
 そう言って錬金で隠した穴を指差してにこり、と微笑む。流石にこれ以上怒る気も無くなったのか、ルイズも立ち上がって服を払う。流石に今回は食事抜きにはならなかったが、ルイズはしばらく不機嫌なままだった。

 教室で授業の準備を終えたロングビルは今、中庭から学院の本塔を見上げている。サモンジの持っていたあの剣、宝物庫ほどの厚さはないとはいっても石の壁を簡単に切り裂くほどの切れ味だ。あれを使えば、錬金の通じない宝物庫の壁を物理的に破れる……
 ロングビル、いや、怪盗土くれのフーケは一つ頷くと、早速今夜にでも宝物庫に侵入するべく準備を始めた。

 その夜、ルイズの部屋の中。ベッドの中ですやすやと眠るネグリジェ姿のルイズと、シーツ代わりのコートをひっくり返して腹を出したまま寝息を立てるガラパンとランニングシャツのサモンジ。その部屋の中にもう一人。
 窓の桟、錠の周りだけを錬金で土に変えることで錠を抜き取って侵入した影、土くれのフーケである。錬金を使う間はレビテーションが使えないため、窓枠にしがみ付いていたせいでしびれた手足を振りつつ室内を見渡す。
「(これだね…これさえあれば)」
 足音を立てないように再度レビテーションで室内を移動し、眠るサモンジの上を越えて入り口の靴箱の上から高速振動剣を取り上げる。
「(これほどのマジックアイテムを、こんなに無造作に置いておくなんて……本当に工具としか思ってないみたいね、この男)」
 見れば、銃の方はしっかりと藁束の下に―――剣士がよくやる枕の下に剣、というやつか―――置いて寝ている。銃専門の傭兵だったのだろうか。いや、そんな疑問など今は捨て置くべきだ。フーケは再度レビテーションで窓へ向かう…が。
「…う…ん…」
「(しまった、ローブが!)」
 窓へ一直線に向かったせいで、ベッドの上のルイズにローブを引っ掛けてしまう。
 だが、そのままゆっくりとした寝息を立て始める……すぐに起きる気配はないようだ。フーケはそのまま気付かれる前にと、慌てて窓を開いて外へと飛び去っていった。

……
………
(寒い…)
 ぶるり、と体を震わせ、出そうだったくしゃみをこらえつつ上体を起こすルイズ。まだ暗い。月明かりが 差し込む部屋の中を見回すと、窓が少し開いている。
「なに……サモンジの奴、窓を閉め忘れたの…?まったく…」
 自分のベッドの上の窓だというのにサモンジのせいにする。寝ぼけた目つきでぶつぶつと文句を言いながら窓を閉めようと近づき、気付く。窓の錠が、いや錠があった場所がなくなっている。月明かりに目を凝らすと、窓の桟に土が残っている。
「何これ、土…?まさか、噂の土くれのフーケ?!」
 室内を見回すが、特に荒らされた様子はない。サモンジもぐっすりと眠りこけている。ふ、と気持ちが落ち着く。そうだ、そんなはずはないではないか。いくら、ヴァリエール家の者とは言え、学生の部屋に怪盗が忍び込むなど。
 馬鹿馬鹿しい、改めて気を落ち着けようと鍵の壊れた窓を開けて夜の空気を吸い込む。おそらく、鍵の周りが腐っていて落っこちたのだろう……と、気付いた。先程の、土くれのフーケという単語を思い出さなければ気付かなかった光景。宝物庫のある本塔の5階、窓がないはずのそのフロアからライトの魔法らしき明かりが漏れている……外壁に、穴が空けられている。何者か、おそらく土くれのフーケが噂どおりに錬金で穴を開けて忍び込んで中をあさっているのではないか?そうだ間違いない。月明かりに目を凝らせば、黒いローブの人影がライトの明かりを消して穴から身を乗り出しているところだ。ルイズはとっさに杖を取ると、だめもとで呪文を唱える。
「ファイヤー・ボール!」
 ドカン、といういつもの失敗魔法の爆発。しかし、およそ100メイル近く離れている宝物庫の穴に見事命中したのか、開けられた穴は爆発でさらに大きく広がっている。もしや、不意打ちとはいえフーケを倒したのか?
 しかし、その淡い期待もすぐに消える。宝物庫へ目を凝らすルイズの目に飛び込んできたのは、身の丈30メイルにおよぶ巨大な土ゴーレムが造られる姿である。おそらくフーケは、既にフライかレビテーションを唱えていたためルイズの爆発の直撃は避けられたのだろう。
 慌てて次々に失敗魔法を放つルイズだが、遠いこともあり中々命中せず、さらに頭や背中に命中した分は効果が薄い。一度運良く足首の辺りを吹き飛ばしてよろめかせたが、すぐに周囲の土を取り込んで再生してしまう。
「ななな、なに!どうしたのルイズちゃん!」
後ろを見るとサモンジが飛び起きて、既に銃を構えルイズを押しのけるようにして窓に取り付こうとするが、ルイズも抵抗する。
「邪魔しないでサモンジ!噂の怪盗を私の手で捕らえるのよ!!」
 その言葉に一瞬きょとん、とするサモンジだが、窓からの光景に気付いて状況を大体理解し、即座に失敗魔法を撃つルイズの上から銃を構える。
「ルイズちゃん、あれってギーシュ君のゴーレムみたいな奴でしょ?魔法使ってる人、どこ!」
「ローブ着てる!探して!」
 短く言い捨てて呪文の詠唱を続けるルイズ。フーケを見つけられないサモンジはとりあえずゴーレムに一発撃ってみるが、やはり効果はないようで、去っていくゴーレムを止めることはできなかった。
 結局、ルイズの魔法の音を聞いて目を覚ました学生や教師が目にしたものは、維持を解かれ土の山となった元ゴーレムと、穴の開いた宝物庫の壁だけだった。
 そして、宝物庫には有名なあのメッセージ。
「破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ」

 翌朝、大騒ぎになる学院、その学院長室に三人の生徒が呼ばれていた。
「この三人が、事件を目撃したということです」
 コルベールの紹介で、ルイズ、キュルケ、タバサの三人がオスマンの前に出される。サモンジは壁際に立ったままそれを眺める。
「ちょっと、ツェプルストー。なんであんたまでいるのよ」
「あんたねぇ、夜中にドッカンドッカンやってれば嫌でも気付くわよ。外であんたが秘密特訓でもしてるかと思えば噂のフーケのゴーレムじゃない。びっくりしたわよ」
「………」
 オスマンが質問する前に勝手に喋りだすルイズとキュルケ。それを止めもせずぼんやり眺めるだけのタバサと、後ろで呆れながら頬をかくサモンジ。
 昨夜の状況を説明する3人だが、キュルケが向かいの部屋から、タバサが使い魔の視覚で別視点から見ていただけでルイズ以上の情報はない様である。要するに、フーケは噂の通り大型のゴーレムと塔の固定化を破る強力な錬金を使える、そして追跡の手がかりがないということ。
 しかし、そこにロングビルが飛び込んでくる。
「学院長、フーケの居場所がわかりました!」
 その言葉に一斉に皆の注目が集まる。その視線に臆することなく、ロングビルはオスマンに頭を下げると言葉を続ける。
「遅れて申し訳ありません、朝起きてから急ぎ調査をしていましたので。しかし、周辺の者たちから聞き込みを行って逃走路を追っていったところ、近くの森の廃屋に入っていく不信な黒ローブの男がいたということで、おそらくフーケで間違いないでしょう」
「黒いローブ…フーケで間違いないと思います!」
 続いて叫ぶルイズにオスマンが頷き返す。が、続く言葉に絶句することになる。
「実際にフーケを目撃した私が、破壊の杖を取り戻しに行きたいと思います!」
「ちょ、ゼロが何無茶を言ってんのよヴァリエール!」
「そうだよミス・ヴァリエール。生徒の君がこんな危ないことをする必要は無いんだよ。ここは……」
とめようとするキュルケとコルベールを始めとした教師の前で、ルイズが言う。
「私はフーケを最初に発見しておきながら、みすみす取り逃がしてしまいました。もう一度、フーケを捉える機会があるならば私が……!」
 食い下がるルイズに、キュルケがあきれ気味に、だが微笑を浮かべる。
「なら、私も行きましょうか。あんた一人じゃ心配だしね」
「……」
 キュルケの言葉にタバサも頷く。この娘も協力してくれるようである。3人が顔を見合わせているのをオスマンが満足げに見ている。
「良い友がいるようじゃな…それに引き換え教師どもは…まあよい、ミス・タバサはシュヴァリエの称号を持つ騎士、ミス・ツェプルストーは軍人の名家、ミス・ヴァリエールは…………まあ、名家の者じゃ。任せるに値する」
 オスマンの言葉に微妙な表情になるルイズ。しかし、自分が手柄を立てる機会を逃したわけではない。貴族としての実力を証明して汚名を濯ぐ絶好の機会、今度こそフーケを捕らえる………そんな風に、フーケを捕らえて実力を証明して見せるという目標に静かに燃えるルイズと、軽口を叩きながら微笑むキュルケと傍に佇むタバサ。サモンジも、ルイズの気合の入りように呆れた顔をしながらも笑いかける。
「それでは私が案内しましょう。魔法を温存するためにも馬車を使用させていただきたいのですが…」
そして着々と追撃の準備を整えるロングビル。ルイズらを振り返り、よろしくお願いしますとにっこりと微笑む。

「やあ。君たちも準備ができたようだね」
 ルイズらが準備を整えて本塔から出ると、そこにはギーシュが待っていた。
「宝物庫を襲った、下賎な盗賊の討伐に向かうのだろう?僕も加えれば水以外の3属性が揃う、手伝ってあげようじゃないか」
 そう言ってキザなポーズを決めるギーシュ。そんなギーシュにキュルケが冷めた目で言う。
「あんた、トライアングルの私たちにおんぶ抱っこで破壊の杖奪回の手柄に一枚噛みたいだけじゃない?それに、ロングビルも土のメイジでは?」
 そう言ってロングビルを見る。と、皆の視線もロングビルに向いている。特に、お前は要らないと言われたも同然のギーシュは少し顔が引きつっている。その視線に慌てたように視線をそらしながらロングビルがおろおろと答える。
「そ、それはそうですが……私は貴族の名を失った者ですし実力もその程度、名門グランモン家のギーシュ殿ほどは…ささ、出発しましょう」
 その言葉を引き継いでサモンジが全員を促して馬車へと乗り込んでいく。
「はっはっは、まあ戦力が増えるってのはいいことじゃないか。ちょうどいいし、道すがら戦力確認と大筋の方針を決めようか」

「ラインってことは…ギーシュよりは上じゃない。謙遜なんてして、家名がそんなに大事ですか?気にすることありませんわ。それよりどうして家名を失くしたのか教えてくださらない?」
 ロングビルを質問攻めにするキュルケに、ルイズが突っかかる。黙って本を読むタバサ。会話の輪から置いていかれ居心地の悪そうなギーシュ。
 大体の戦力を把握して方針を決めようと思っていたサモンジだが、キュルケ、タバサ、ギーシュと各々軽く属性と得意な魔法の説明したところでキュルケがロングビルにも確認を始めて完全に話が横道にそれた。こうなった女の子の話が長いのは、サモンジも頭を痛めたガーディアンエンジェル小隊で学ばされた。やっぱりどこでも最近の若い者は…そう思いつつ、あぶれて所在なさげにしているギーシュに話しかける。
「ところでギーシュ君。昨日見たフーケのゴーレム、大きいけど動きはすごく大雑把だったんだよね。動きだけで言うなら君のゴーレムの方が良かったけど、それってトライアングルとかドットってのは関係ないの?」
 ルイズとの決闘騒ぎの他にも実技の授業でギーシュのゴーレムを見る機会があったが、確かにギーシュの造るワルキューレは他のラインメイジの生徒が作る土のゴーレムよりやたらすばやく動作も人間に近かった。授業で行われた模擬戦のルールが土ゴーレム限定+武器暖簾金不可というもので無ければ、ギーシュはそこそこ勝ち残れた、とサモンジは思っている。だが、ギーシュはそんなランクは気にしていないとでもいうように気楽に答えた。
「確かに同じゴーレムならトライアングルメイジの方が滑らかな動きをさせられるね。だが僕のワルキューレはただのゴーレムじゃない。僕の優れたセンスによって形作られる美しい造形によって、美しく舞い、闘うことができる。そうそう真似のできる技術じゃないさ」
 ふっ、と薔薇をかざしながら語るギーシュ。延々と言葉を飾っているが、フーケのように一体型にせずに間接を作った、ということらしい。話を聞く限りは自分のゴーレム作成の腕に中々自身があるようだ。
「ふーん…でもさ、そんなに細かいことができるんならゴーレムに弓を持たせたらいいんじゃない?青銅なら板バネに良いし」
「ははは、誰でもそれを考えるんだね…普通はトライアングルでもゴーレムに弓を引かせるなん細かいことはできないよ、僕にはできるけどね。ただ、自分とゴーレムの視点が違うから狙いが付けられないんだ」
 なるほどーだから授業の時あんな戦い方に…などと他愛のない話で時間を潰す。

 その内馬車は森に入り、徒歩に切り替えて幾分進んだところで空き地に出た。そこには確かに廃屋がある。
「あれが、フーケが潜んでいる廃屋です」
 その言葉にサモンジは腕時計を確認してふーんと相槌を打ち、ルイズ達は緊張した面持ちで相談を始める。相談は実戦経験のあるタバサが主導して作戦を説明していく。
 小屋の中にいるフーケは外に出なければゴーレムを使えず、土のメイジはゴーレム以外の攻撃手段に乏しい。その弱点を突くため、陽動の囮を使って挑発することでフーケをゴーレムを作るのにちょうどいい外に繋がる扉に誘導し、そこを一斉に叩く。
 その作戦に皆同意し、囮はギーシュのゴーレムで残りが包囲、ロングビルは森の中で万一の備えをすると申し出た。しかし、そこにサモンジが待ったをかけた。
「その必要は無いよ。小屋の中には誰もいない、かな」
 車座になって相談していたルイズ達が慌てて立ち上がり、相談に参加していなかったサモンジの方を向くと目の前に変な道具をあてて小屋の方を見ている。
「うん、周りの森の近く……もいない。地面に穴を掘って潜んでるってこともないみたいだよ」
「な、なんでそんなことがわかるのですか!?」
 慌てて食って掛かるロングビル。自分の調査結果が間違いだと言われているのだ、当然の反応だろうと思いつつも戸惑うルイズ達にサモンジが説明する。
「この双眼鏡、赤外線モードがあるんだ。えっと、要するに熱……温かいところを見分けるってとこかな。ほら、人が潜んでいるかどうかは大抵見えるよ」
 そう言って全員に赤外線モードにした双眼鏡を順に覗かせていく。全員、その機能と実際に見える光景に驚愕しながらも面白そうに周囲の風景と他の人間を見て驚きの声を上げる。
 呆然とするロングビルの肩をぽんと叩いてサモンジが笑いながら言う。
「ま、フーケの隠れ家がここじゃないとは限りませんからね。たまたま不在って事もあるでしょ、とりあえず一緒に家捜しと行きましょうか」
「そ、それでは私は……フーケが戻ってきたときのために、馬車を置いてきた森の入り口で見張りをしていますよっ」
 全員を廃屋へと促すサモンジに、呆然としていたロングビルが我に返ってそう言うと逃げ出すように馬車へと走っていく。
 あちゃ~そう来たか………と頭をかくサモンジの脇を、突然ルイズまでもが駆け出していく。
「ちょ、ルイズちゃんまでどこ行くの!?」
「フーケがここに居ないのなら私も馬車のところで見張りをしてる!フーケが来たら捕まえてやるわ!」
 あんまりな行動に絶句するサモンジ。昨日の夜、逃げるゴーレムすら倒せなかったのを覚えていないのか………これだから若いもんは、と頭を抱えるサモンジにキュルケが呆れながら言う。
「やれやれ、一体どうやって捕まえるつもりやら………まあいいわ。もし本当にフーケが来てあの二人だけで捕まえたら私の立場が無いし、私も向こうにいくわね」
 タバサにウインクをしてキュルケが杖を取り出す。そこにサモンジが近寄り、一言忠告する。
「キュルケちゃん、ミス・ロングビルから目を離さないでよ」
「え…どういうこと?」
「今はそれだけでいいから。急いで追いかけてあげてくれ」
 そう言って目配せをするサモンジに首をかしげながらもルイズたちを追いかけるキュルケ。それを確認して、サモンジはタバサとギーシュを連れて小屋に入る。
「さ、さっさと探索して戻ろうか。ここに破壊の杖があれば、フーケは置いといて帰ればいいんだから一番簡単に済むんだけどね」

「破壊の杖」
 家捜しを始めてすぐに目的の物は見つかる。タバサが皆の前に掲げる破壊の杖に拍子抜けしたとういう表情のギーシュ、そしてサモンジは少し意表を突かれたという顔をする。
「破壊の杖って、これ?それはともかく、本物を置いていたって事は…これを見つけて安心して出て来た所を不意打ちする気だった、って線は少ないよなぁ………」
 さらにギーシュが驚きの声を上げて入り口のドアの裏を指差す。
「サモンジくん、あれは君が差していた剣じゃないのかい?これもフーケに盗まれていたのか」
 見れば、昨日靴箱の上においておいた高速振動剣がドアの脇に立てかけてある。しかし、わざわざこれを盗んだということは……
「よし、破壊の杖を取り戻すっていう目的は完了したんだ。すぐにルイズちゃん達と合流して帰ろう、急いで!」
 サモンジはそう言って2人を急かしながら破壊の杖と剣を取り小屋を飛び出す。破壊の杖を手に取るとルーンが光る―――この『破壊の杖』の保存状況は良いらしくまだ使用できることが解る―――が、今はどうでもいい。
「早く!急いで合流しないと、やけになったフーケが変な行動をしないとも限らない!」
 そう言って走るサモンジにタバサとギーシュが何とか追いつく。
「どういうこと」
「今のでミス・ロングビルは黒確定だよっ。フーケの共犯か、フーケ本人だね」
 その言葉に驚きながらも、どうしてそんな結論に至ったのか問いただそうとするタバサだったが、その言葉を発することはできなかった。
「あっちゃー、間に合わなかったか。先を越されたね…何とかルイズちゃんとキュルケちゃんの無事を確認して合流するよ!」
 サモンジの言葉に我を取り戻して再び駆け出す3人。その先、馬車を置いてきた入り口付近の森の中からは、30メイル近い大きさのゴーレムが立ち上がろうとしていた。


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