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第8回 趙・公明開花!

華麗なる貴族・趙公明、クライマックス!!


『レコン・キスタ』の厳しい包囲網を潜り抜け、2隻のフネはニューカッスル城に到着した。
さっそく出迎えを受けるが、念のためとして杖や武器、動物の使い魔は向こうに預けられる。

「おお、殿下! これは大手柄ですな!!」
「やあパリー、積荷はなんと『硫黄』だよ! 全てはこのプリンスのおかげさ!
 これで我が軍は『レコン・キスタ』に一泡吹かせて、美しく散ることができる!」
「ははは、敵方にはトロール鬼やオーク鬼、それに得体の知れない怪物どももいるとか。
 残った砲火をことごとく放って、奴らを粉微塵にし、冥土の土産にしてくれましょう!」
城内の将兵は歓声をあげる。もはや彼らには、それしか道はなかった。

ウェールズ皇太子は自室に入ると、小箱からアンリエッタの恋文を取り出し、ゆっくりと読み始めた。
そして静かに封筒に入れると、ルイズに手渡す。思い残す事はない。
「姫から頂いた手紙だ。このとおり、確かに返却したよ」
「殿下、有難うございます。これで私のお役目は果たせました」
ルイズは深々と頭を下げ、手紙を受け取る。来る途中のフネの中で何度も亡命を勧めたが、断られた。
討ち死にの決心は固いようだ。ならば、もはや何をかいわん。

ウェールズはニコリとルイズに笑いかけ、そっと『風のルビー』を指から抜くと、手渡した。
「私の形見だ。アンリエッタに渡してくれ、勇敢なる大使ルイズ殿。
 そして、皇太子は最期まで誇り高く戦って、立派に戦死しましたと、姫に伝えてくれればいいさ」


決戦の前夜、城のホールで行われたパーティーに、ルイズたちも参加させられる。
王党派の貴族たちはきらびやかに着飾り、テーブルにはありったけの豪華な料理が並ぶ。
老王ジェームズ1世の演説が済み、最後のパーティーが始まった。

「ああ、明日で終わりなのに、死んでしまうのに、なぜ彼らはこんなに明るいの……?」
「フフフ、もうすぐ終わりだからこそ、人はかえって明るく振舞うのだよ。ルイズ・フランソワーズ」
傍らに立つ趙公明が答えた。ルイズは、泣き腫らして赤い目を伏せる。
「けれど……私には理解できないわ。あの人たちは、どうしてわざわざ死を選ぶの?
 姫様が逃げてって、亡命してって言っているのに! 他国に迷惑をかけるからなの?」

「戦場で勇ましく散る事は、王侯貴族の男としての名誉であり、誇りであり、また義務なのさ」
「分からない。分からないわ……女だから、なのかしら? 私も貴族なのに。ただ、魔法は使えないんだけど」
「ノンノンノン。魔法が使える者が貴族なのではない。メイジなら傭兵にだって盗賊にだっている。
 危機にあっても敵に後ろを見せない者こそ、『真の貴族』なのさ!! いいかな、ルイズ?
 それに明日は、この僕が麗しき戦場に出て、反乱軍を華麗に倒してあげよう!!」

趙公明とキュルケはパーティーの主賓として、派手に宴席を盛り上げる。ルイズも少し、笑顔を見せた。
ライトが飛び交い、スモークが特設ステージを包み、やんややんやの大喝采だ。
ワルドとタバサは、静かにテーブルで酒食を貪っている。

翌朝。もうすぐ始まる貴族派の総攻撃から逃れるため、非戦闘員が続々と脱出船に乗り込む。
ルイズたちも、ここから脱出するために中庭に集まっていた。見送りにはウェールズが立ち会う。

「お忙しい中の見送り、有難うございます。皇太子殿下」
「いや、構わないよ。最後の客人だ、丁重にお送りしなければね。昨夜はとても楽しかった」
ウェールズが微笑む。そこへ趙公明がにこやかに進み出る。
「ノンノン、僕はここに残って、数万の敵軍と華麗な戦いを繰り広げる気満々なのだが?」

「いいえ、プリンスをこのような戦場に赴かせるわけには参りません。
 あの愚かな野望を抱く叛徒どもに『ハルケギニアの王家は弱敵ではない』と示し、
 我らは見事戦死いたします! どうぞ、しっかとご検分下されますよう」

「ノー、ですよ殿下。あなたはここで、いとも無念な死に様を晒すことになっているのですから」
突如、ウェールズの胸板を、背後から鋭い風を纏った『杖』が貫く。
それはワルドの『打神鞭』だ。
「それが我ら『レコン・キスタ』の望み。そして運命の然らしむる、歴史の帰結ですので」

「ぐあっ……!!」

ドウ、とウェールズが倒れる。ワルドは杖を振って、皇太子の『青い血』を散らす。
「殿下、これは神の定めたもうた運命、いわば天数と申すもの。お恨み召されるな」
「が……はっ! 何が……運命、天数だっ……」
趙公明にも反応できなかった。『天数』は神とは言え如何ともしがたい。死すべき命は、救えない。

ウェールズの体から魂魄が飛び出し、バシュッとワルドの杖に吸い込まれる。やはり、またか。
「ワルドくん! 先日の劉環といい、今の皇太子といい、その杖に魂魄が封印された!
 キミが『レコン・キスタ』側についた事といい、いったい何なんだね、その杖は!!」

あの杖、『打神鞭』は風を操る宝貝、それ以上のものではない。
のちに『杏黄旗』でパワーアップしたり、スーパー宝貝『太極図』がインストールされたりしたが、
それ自体には、魂魄を封印する機能はなかった。魂魄の封印は、『封神台と封神フィールド』があっての事だ。

……誰が、こんな機能を? いや、本物なのか、あれは?

「プリンス、これも『天数』です。この国は我ら『レコン・キスタ』のものとなり、
 その支配もすぐに終わる。僕はその争いを利用して、多くの命を奪わねばならない」
「ワルド!! 目を覚まして、正気に戻って!! お願いよ!」

革命騒ぎを利用した、『封神計画』か。宝貝や神界の者どもが来ているのも、天数。つまりは……。
「なるほど、ワルドくん。キミの夢枕には、『白い女神』が現れたのだね?」
「なぜ、それをご存知で? 彼女は、やがて現れる貴方をも殺せと命ぜられた。
 そうすれば僕は、『聖地』で永遠の命を得られると」

やはり、か。趙公明が愉しげに笑う。
「彼女は『歴史の道標』。この異世界でも、あちらと似たようなことをしているようだね。
 『創造と破壊の神』として、歴史を自分の思い通りに進めようと、地上に介入し……
 気に入らなければ全て壊して、新しく作り直す。まるで子供の砂遊び」

ルイズにはさっぱり、何がなんだか分からない。すでに半狂乱だ。
「プリンス! ワルド! 何を言っているの?! 神様とか歴史とか、一体何の事!?」
「ルイズ、キミは知らなくていいし、知らない方がいい。
 今言えるのは、ワルド子爵が我々の敵であるということ。
 そして彼には、『レコン・キスタ』などよりも遥かに恐ろしい存在が味方しているってことさ!!」

趙公明が『縛竜索』を振り下ろし、ワルドを両断する。
しかし、それは風の魔法による『遍在』。もう一人のワルドがルイズを攫い、凄まじい速度で『レキシントン』へと飛んだ。
再び振り上げた鞭は、別の遍在に背後から叩き落される。そしてそのワルドも、ふっと掻き消えた。

「皇太子の命、王女の手紙、そして『虚無の担い手』ルイズ。3つとも僕がもらった!
 今はプリンスには敵わないが、いずれ始末してみせよう」
ふわりとワルドは甲板に降り立つ。艦隊は総攻撃態勢に入り、砲火が城壁を砕く。
『レキシントン』は少しずつ、城から離れだした。ひとまずこの場を離脱するようだ。

「プリンス! 皇太子が、それにる、ルイズがっ!! 信じられない、あの子爵がそんな……」
呆然としていたキュルケが、今更ながら取り乱す。タバサが風竜を呼び寄せた。追撃する気か。

「フフフ……フフフフフフ、よかろうワルドくん!
 ならばこの僕は『悪の貴公子・ブラック趙公明』となり、キミたちの『神の正義』に立ち向かおうじゃないか!!」

武者震いした趙公明が鞭を構えて、くるるんと華麗に回転すると、髪も衣服も真っ黒になる。
冥界において亡者や悪鬼を監督し、疫病神を支配する暗黒の武神『玄壇趙元帥』の相である。

「さあ、伸びたまえ『飛刀』くん! あのフネに突き刺さるのだ!!」
激しい霊力を注ぎ込まれた妖剣『飛刀』が数十メイルもの長さに伸びる。
ブラック趙公明はそれを『ガンダールヴ』の力で思いっきり投げつけ、『レキシントン』の側面に突き刺す。

「キュルケくん! タバサくん! いざ、皆を連れて逃げたまえ!
 僕は彼らを倒してくる! できるだけ遠くへ逃げるんだ!!」

言い放つや、ブラック趙公明は鞭を伸び続ける『飛刀』に巻きつけ、ハイジャンプした。
そして剣身を駆け上り、『レキシントン』の甲板へ乗り移る。シュルシュルと『飛刀』が縮み、手元に戻った。
「う、うわああああ!! あ、あの距離から来たぁぁあ!?」
「ばっ、化け物だ! きっとエルフかなんかに違いねぇ!!」
「ノンノンノンノン、しからば反乱軍の諸君に教えてあげよう!!
 我が名は麗しき貴族・趙公明!! 冥土の土産に覚えておきたまえ、あの世で役に立つはずさ!!!」

名乗りをあげると、ブラック趙公明は伸縮自在の宝貝『縛竜索』と妖剣『飛刀』を振り回し、
『万里起雲煙』で大砲のような威力の火矢を放って、貴族派の艦隊を焼き討ちし始める。
戦いの場を得たプリンスは、遊びまわる子供のように楽しそうだ。いや、まるで怪獣である。

「ハハハ! ハハ! ハーーーーッハッハッハ!!!」

しかし、艦隊はやむなく旗艦である『レキシントン』に照準を合わせ、次々に砲弾を撃ち込んできた。
さしものブラック趙公明も、これだけの集中砲火には耐え切れないだろう。
いやいや、スーパー宝貝『金蛟剪』こそないが、彼には奥の手がある。

哄笑するブラック趙公明の全身からツタが、根が、枝葉が伸び、燃え盛る『レキシントン』を覆い始めた。
その植物は、炎熱や乗員や兵糧や『風石』を呑み込んでエネルギーを吸い取り、猛烈な速度で成長する。
全長200メイルの巨大戦艦が、バリバリと音を立てて内外から破壊される。
ゆっくりと高度は落ちていくが、墜落はせずになんとか空中にとどまっている。

「う……嘘っ……!!」

誰も、目の前の現実を信じられない。
趙公明がフネに乗り移ってから数十分後、空中に山のような巨大植物が現れた。
彼の『妖怪仙人』としての原形、『伝説の巨大花』である。

そして、ブアアァァァアアと花が開く。そこには、巨大な趙公明の『顔』があった!!!
輝く大きな瞳の眼、凛々しい眉毛、それに口が、子供の落書きのように『花』についている!!!

「いっっっ……イヤァァアアアアアアアア!!!!!(ばたっ)」
「(ふらっ ぱた)」

キュルケは絶叫し、無言のままのタバサと同時に倒れ、失神する。
あまりにも、あまりにも常識を超えた光景であった。

「「見たまえ! 見たまえ!! 僕はさらにさらに美しく伸び広がり、増殖する!!!
 キミたちを苗床にして、僕の森が生まれるのさ!! 麗しいだろう!!
 どこだいワルドくん、勝負だ! 僕と勝負して決着をつけようじゃないか!!!」」

巨大な花からブフーッと種が撒き散らされ、地に落ちるとたちまち樹木となり、森となる。 
彼は男性だが、単為生殖できるようだ。森には動き回る人食い植物が闊歩し、人畜を喰らう。
種は軍艦の甲板でさえ出芽し、メキメキと成長してフネを飲み込んでいく。
残されたニューカッスルの将兵も、ただただ見守る事しかできない。

その頃、ワルドはルイズを抱え、高速で戦線離脱していた。
アルビオン王国が滅びても、『レコン・キスタ』が滅びても、彼にはどうでもいい。
「ではルイズ、ひとまずロンディニウムへ行こうか」
「イヤ! 離してワルド、プリンスはどうなっちゃったの!?」
「彼はもう、誰にも手がつけられん。逃げるが勝ちさ」

しかし、ワルドの眼前で突如、ぽかっと何もない空間に黒い『穴』が空いた。
人ひとり通れそうな大きさの穴だ。召喚用のゲートとも違う。
ワルドが警戒して上空へ逃れると、凄まじい稲妻がその穴から発射された!
スクウェア級の魔法『ライトニング・クラウド』の、数万倍の威力であろう。

「フゥ……『雷公鞭』でようやく、異世界との連結口が拡がりましたね。感謝しなさい、皆さん」
「大体、師叔がなかなか捕まらないから、この異世界を発見するのに時間がかかって……」
「それに、何さ望ちゃん、さっきの小さなゲートは。こんなに人数がいるんだから、
 最初からもっと大きく作ればいいのに」
「うっ、うるさいのう! 異なる位相の世界をつなぐのは、結構大変なのだぞ!
 今まで何とか断片的に情報を掴めていたのは、わしのお蔭であろうがっ!(ギャーギャー)」

なにやら大勢の話し声が、穴の中から聞こえる。
そのうちゲシッと誰かが蹴り出され、ワルドとルイズの眼前で、空中に直立し静止した。
全身黒ずくめの不思議な衣装に身を包んだ、小柄で飄々とした青年だ。
だが、その纏うオーラの強さは、プリンス以上である。

「だっ……誰よあんた、いきなり!!」

「誰か、だと? よろしい、名乗ってくれようぞ。
 我が名は『伏羲(ふっき)』!! 始まりの人の一人である!!!」

(つづく)

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