あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのMASTER-09


学院長室から退室したキートンとルイズは廊下を歩いていた。ルイズはルイズでぶつぶつと小言を言っている。
まあ、キートンを召喚して以来、騒ぎに巻き込まれてばかりなのだから、無理も無いだろうが。
 二人が歩いていると、向こうから女性が歩いてくる。遠目でもわかるほどの美人である。
眼鏡をかけており、いかにも知的な印象があった。女性は二人に微笑を浮かべながら一礼すると、学院長室へと歩いていった。
 「彼女は?」
キートンが尋ねる。
「ミス・ロングビル。オールド・オスマンの秘書をしている人よ。…ちょっと、いつまでジロジロ見てるのよ」
「ふーん…。秘書、ね」
キートンはもう一度、振り向いてミス・ロングビルを確認する。ルイズはいい加減にしなさいとばかりにキートンの尻を抓った。
抗議の声が来るのかと思いきや、意外な言葉がルイズへと向けられる。
「ルイズ。悪いけど、今晩は別の部屋に泊まってくれ」

所変わって、ここは学院長室。コルベールが退室した後、一人だったオールド・オスマンは、室内に入ってきた彼女の姿を見て、大いに喜んだ。
もっとも、彼女はそんなオスマンをあまり相手にしなかったが。
「どこに行っておったのじゃ、ミス・ロングビル。わしゃもう寂しくて寂しくて…」
「申し訳ありません、オールド・オスマン。図書館で本の整理をしておりまして。それよりも、先ほど人が出て行かれたようですが…」
オスマンは慌ててゴホンと咳をする。『土くれのフーケ』のことは、あの二人とコルベール以外、誰にも言わないはず…だったのだが。
「わたくし、誰よりも学院長のことを案じております…。もし宜しければ、ご相談下さい」
こういって、オスマンに寄り添ってきたのだから。あっさりとオスマンは秘密にするはずであった『あの事』を彼女に話してしまった。
「おお、おお!す、すまんのう。いやな、隠し事をするつもりでは無かったのじゃが…」
オスマンはデレデレしながら包み隠さずミス・ロングビルに事の詳細を話す。何よりも自分の秘書だ。やはり、こういった重大なことも話すべきだろう。オスマンはそう考えてしまった。
「…という訳で、あのフーケが出たんじゃ。幸い、奴の杖を奪うことには成功したのじゃがな」
「そうでしたか。恐ろしいですね、あのフーケが…」
そうじゃろう、とオスマンが言う。
「ミス・ロングビル。くれぐれも、このことは他言無用にな」
「勿論、わかっておりますわ。ところで、フーケの杖はどこに保管されておられるのですか?」
オスマンは少し考える。さすがに杖が置かれている場所まで話してよいものだろうか。

 だが、いつもと違って優しいミス・ロングビルの態度にすっかり気を良くしているオスマンは、呆気なく場所を言ってしまった。
「うむ、実はここにな…」
そう言って、本棚の裏にある隠し棚を開ける。そこには確かにフーケの杖が入っていた。
「ミス・ロングビル。恐らく、フーケの奴はまた襲ってくるだろうからの」
「はい、オールド・オスマン。わたくしも気をつけますわ」
ミス・ロングビルはそう言うと、いつも通り、本日の事務作業の仕上げに入る。オスマンもまた、いつも通り、モートソグニルを使って、彼女のスカートの中を偵察していた。

深夜―
休日も終わりを告げ、新しい日のために生徒たちは就寝する。草木も眠ると言うのだろうか、そんな静かな夜の学院の中を素早く動く影があった。

フーケである。
彼女が向かう先は、学院長室。そして、目当てのものは唯一つ。こっそりと室内に入ると、本棚の裏の隠し棚を開ける。
「ふふ…。ようやく、取り返せたわね」
いかにも嬉しそうに笑みを浮かべる。杖を取り戻したとはいえ、まだ目的は達成してはいない。宝物庫のお宝を強奪するのが目標ではあるが、もう一つあった。
あのキートンとか言う男に仕返しをすること。
生徒名簿で奴がヴァリエールと同室であることはわかった。今頃はグッスリ眠っているだろうし、倒すのは造作も無いだろう。ヴァリエールの方はどうとでもなる。
その後、混乱の隙に宝物庫からごっそりと獲物を頂く。そういう算段だった。
「待っていなさいよ…!」
フーケははやる気持ちを抑えつつ、ルイズの部屋へと向かった。

ルイズの部屋のドアが静かに開けられる。と、同時にフーケが部屋の中へと侵入した。キートンとルイズは既に眠っているようだ。
あまり大きな魔法は使えないが、この至近距離なら充分だろう。そう思い、キートンのベッドへと近づく。
「覚悟…」
「人の部屋に勝手に入るのは良くないよ」
突然、後ろから声が響く。ドアから光が差し込むと同時に、男が入ってきた。キートンである。
眠っているはずの男が何故―!?いや、それよりも、どうやって自分が部屋に侵入してくることを知ったのか。フーケは狼狽する。

「学院長室から出たあと、すれ違った時にまさかと思ったんだけど、どうやら当たりだったようだね」
「…なんで、わたしだとわかったの?」
キートンは射抜くような目つきでフーケを見る。場に緊張した空気が流れる中、キートンは彼女に説明する。
「すれ違った時に君を見たんだが、どうも歩きを〝作っている〟ように思えてね。君が退室した後、オスマン氏に言って細工をしてもらったのさ」
細工?細工とは何のことか。だが、今はそんな些細なことはどうでもいい。こちらには『切り札』がある。
フーケはそう思い、ルイズのベッドに素早く走り寄って、杖を向ける。
「動くんじゃないよ。大事な御主人様に傷を付けたくは無いでしょう?」
フーケはそう言い、不敵な笑みを浮かべる。追い詰められている状況だが、まだ望みがある。このヴァリエールの娘を人質にすれば、手出しは出来まい。
そんな計算だった。だが、目の前の男は慌てる素振りを見せない。
「シーツをめくってごらん」
微笑を浮かべながら、男が話す。めくる?どういう事か。そう思いながら、シーツをはがす。
「藁…!?」
ベッドの上には縄で太く結ばれた藁があるだけだった。恐らく、男のベッドの方にもあるのだろう。
自分はまんまと一杯食わされたのだ。悔しさで頭に血が上りそうになる。
だが、まだ終わる訳にはいかない。せめて、男に一度でも仕返しを―
「ああ、そうそう。それも細工の一つでね。その杖は偽物だよ。本物は既に別の所に移してある」
慌てて杖を見る。紋様こそ彫ってあるが、確かに、自分が持っていた杖とは違うようだ。これは、これは只の―
「木の棒だね。オスマン氏に言って作ってもらったのさ」

「ふ、ふふふ…!」
フーケは肩をわなわなと震わせる。自分をここまで追い詰めた人間は初めてだ。まして、何の力も持っていなさそうな奴が―!
「…貴方、名前は?」
一転して落ち着いた声でフーケが尋ねる。
「平賀・キートン・太一です」
 「あんたの名前と顔、覚えたわよ…!このままで済むと思わないことね!!」
精一杯、強気な顔をしながら怒鳴るとフーケは窓を突き破り、逃げようとする。が、既にコルベールが外で待ち構えていた。
窓の外からは悲鳴と怒鳴り散らす声が聴こえる。
「…終わったの?」
キートンの後ろからルイズが姿を現す。それと共に、キュルケ、オスマン、タバサも現れた。
「やるじゃない、お兄さん!あのフーケをここまで追い詰めるなんてね」
キュルケが満面の笑みを浮かべながらキートンの腕に抱きつく。キートンは慌ててルイズの方を見るが、時既に遅し。
真っ赤な顔をしながら睨んでいる。そんな騒ぎを他所に、タバサはあくびをした。
「…のぅ、キートン君。きみ、わしが彼女にバラすと知っ…」
ゴホンと咳をすると、キートンは窓の外の夜景を見る。綺麗な満月だ―。下もそろそろ騒ぎが収まってきたようだが。

「これで、彼女も諦めてくれるといいんだが」



 翌朝―キートンとルイズは再び学院長室にいた。
フーケの問題は解決したのか…と思ったキートンであったが、目前のオスマンの顔は険しい。どうやら、再び問題が起きたようだ。
ルイズの授業だが、オスマンがどうにかしたらしい。それほど話が長くなるということでもあろうが。
オスマンは咳払いをすると、静かに話し始めた。
「キートン君。まずは昨日のフーケ捕獲作戦、ご苦労だった」
作戦自体はうまくいったはずなのだが…オスマンの表情は崩れない。隣にいるコルベールと言えば、ハンカチでしきりに額の汗を拭いている。
「何かあったんですね」
「うむ…。ミス・ヴァリエールの部屋からフーケが飛び出したあと、ミスタ・コルベールがうまく追い詰めた。捕獲までいけるかと思ったんじゃが…」
コルベールから汗がますます噴き出す。
「…何者かが現れ、フーケを連れて行ってしまった。どこのどいつが奴をさらったのかはわからん」
「申し訳ありません!」
コルベールが謝る。まあ、あと一歩のところで逃げられたのだから無理も無いだろう。
相当に悔しいに違いないのだから。
 「とはいえ、拠点を失った以上、フーケも当分は大人しくしているだろう。キートン君、ご苦労だった。暇があれば、共に茶でも飲みたいもんじゃな」
オスマンは静かに言うと、二人に退室するように言う。二人が出て行くと、オスマンはぶつぶつと愚痴を言い始めた。
「…だって、仕方が無いじゃろ。居酒屋でいい気になってたときに彼女の方から近付いて来たんじゃもん。そうじゃ!それこそ、フーケの策略…」
「あの、学院長」
コルベールが口を開く。
「前々から思っていたのですが、なぜフーケはあの宝物庫を狙ったのでしょう?」
オスマンはふん、と鼻を鳴らすとまた愚痴を言い始める。
宝物庫は確かに貴重な文献やマジックアイテムこそあるが、フーケの目を引くような特異な物は無かったはずだ。
「知らんよ。あそこにはわしが昔使った思い出の品々があるからな、案外それが目当てだったかも知れんぞ」

「やあ、大変な目に遭ったねえ」
「…まったくよ」
部屋へと向かうまで二人は話す。フーケの捕獲こそ失敗したものの、既にキュルケが学園のあちこちに言いふらしてしまったらしく、キートンは有名人となってしまっていた。
授業中の生徒たちが密かに好奇心の目で二人を見る。だが、恥ずかしいと言う気持ちは無かった。むしろ、ルイズは誇らしかった。
「ま、今回はあんたが一番の殊勲者ってことね」
 そう言うと、キートンは照れながら頭を掻く。頼りにならなさそうで頼りになる男。
この男といると色々と大変だが、なぜか嫌ではない。ルイズにとって、その感情がなんとも不思議であった。


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