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ゼロの看板に偽り有り-03

旋風が渦巻く。
烈風が奔る。
「雪風」のタバサが操る雪よりも冷たく北風よりも鋭い風が、宮殿の絨毯を切り裂いて襲い掛かった。
けれど、それだけだ。
研ぎ澄まされたエアカッターも、岩すら砕くエアハンマーも、魔法の障壁に阻まれて憎き仇敵までは届かない。
ガリア王ジョゼフ。
両親の仇である偉丈夫はタバサをここヴェルサルティ王宮へと呼び出すと、自分を倒してみろと挑発した。
玉座に座したまま、この叔父が憎ければ殺してみろ、とその口で言ったのだ。
その言葉にタバサは表情を変えないまま激昂した。
空気すら灼熱させそうな怒りを最強のスペルに乗せて解き放ち―――そして受け止められた。
それから矢接ぎ早に放った全ての攻撃が、尽く防御されてしまっている。
時にルーンが浮かび上がる光の魔法陣が、時にタバサの魔法以上に強力な魔法が生み出され、全てを蹴散らしたのだ。
ジョゼフを守って立ち塞がる、目の前の二人によって。

「……なぜ?」

タバサの口から疑問が漏れる。
1人はジョゼフの実子、つまりガリア王女イザベラ。
もう1人はジョゼフの腹心の部下シェフィールド。
それは良い。
なんで女王が矢面に立って戦うのかとか、魔法が苦手だったはずなのにとか、疑問はあるがまぁ良い。
タバサが聞きたかったのは二人の姿についてだ。
より正確に言えば衣装について。
そのヒラヒラでフワフワでピラピラしたミニスカの服は何なのかと問い詰めたい。
リボンとかフリルとか星とかハートとか満載の服は何の冗談かと小一時間問い詰めたい。
イザベラはまだ良い。
性格はともかく年頃の少女と言えなくも無いし、容姿も黙っていれば可憐の範疇に収まる。
薄い水色を基調にした改造ミニスカ水夫服に同系色のやたら可愛いデザインのステッキとか、正直痛々しいがまだ良いとしておこう。
問題はシェフィールドの方だ。
眼つきが鋭いとは言え、彼女は美人だと言って文句は出ないだろう。
体型とかボン・キュ・ボンで、一部マニア受けのタバサと違って多くの男性が絶賛すること間違いない。
だが、その大人の色気溢れる姿でフリフリのミニスカを着用している姿は、色んな意味で犯罪だった。
艶やかな長い黒髪を頭の左右で結んだ、いわゆるツインテールの髪型。
頭部に星型にカットされたエメラルドをあしらったナースキャップ。
首まで覆ったノースリーブのワンピースは、身体にピッタリフィットなのにリボンとか大量についている。
足には太腿までを覆うロングソックスにブーツ。
当然絶対領域完備である。
タイトなミニスカから伸びる太腿とかムッチリし過ぎだった。
大きな宝石の付いたリボンの下の胸元とかたゆんたゆんし過ぎだった。
全体的にケバ過ぎて、あんたどこの風俗、あるいは冥王星のセーラー戦士?な外見になっていた。

「なぜそんな、トンチキな格好をしているの?」
「余計なお世話だよ!」
「余計なお世話よ!」

イザベラとシェフィールドは頬を赤く染めて叫ぶ。
どうやら本人達はちゃんと恥ずかしいと思っているらしいので、タバサは少し安心した。
まだ脳ミソは無事だったらしい。
だが、彼女達の背後には羞恥心があるのか怪しい、本物のトンチキ野郎が控えている。
立ち上がったガリア国王は豪奢なビロードのマントを撥ね上げ、壇上からタバサを見下ろして言う。

「どうだね我が姪よ。この量産型魔法少女の能力は?」
「量産型……魔法……少女?」
「そうだ。虚無の力によって生まれる魔法少女を、限定的に再現した魔法少女のレプリカ。
異次元帝国ゾーンの技術力と虚無の魔法が組み合わさって生み出された究極の力。
お前の攻撃魔法すら楽々と防ぐ、強力な力を変身した者に与える事が出来る、画期的な魔術だ!
そして見るが良いシャルロット。魔法少女を生み出す力。始まりの魔法少女の姿を!!」

ジョゼフの手の中には、いつの間にか握られていた黒い杖。
杖っつーか、黒と紫の微妙に禍々しくかつ微妙にファンシーなデザインのステッキが振り上げられる。

コウモリの羽をデフォルメしたような部品の付いた先端部分、単眼を思わせるパーツが見開かれた。
黄色い、ネコのような瞳が光を放つ。

「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ♪
ジェル・イサ・ウンジュー・イル・ハガル♪♪
マジカルバトンで……魔法少女になあーれっ!!」

クルクル回転しながら怪しい呪文を唱えたジョゼフの姿が変化した。
黄色い瞳からあふれ出す光の帯に包まれて、一瞬だけその姿が全裸になった。
ちなみにキケンな部分は上手に光の帯で隠されているので年齢制限も安心だ。
そして再構成されるジョゼフの衣服。
ガリア王族の証とも言える鮮やかな青の頭髪が、薄い黒のヴェールに飾られていた。
涼しげな目元には紫のアイシャドウ。
髪と同色の美髯は形良く切り揃えられ、その下にある拳闘士の如き肉体を包むのは、フリルの施された黒いレザーのボンテージ。
ボンテージらしく、肩とか背中とかヘソとか生肌丸見えのV字カット。
ボンテージなのに、胸には大きな五角形のアメジストがあしらわれた黒いリボン。
鍛え上げられた胸筋を包むカップはピッチピチ。
紫の金属カップで補強されている股の部分とか、凄い角度の食い込みが入っていた。
足には網タイツの上からハイヒールのロングレザーブーツ。
むき出しの二の腕に付いたリングに繋ぐようにしてマントが装着され、爪には紫のマニキュア。
無駄毛の処理が完璧なのが、逆にとてつもなく嫌だった。

「魔法少女―――ラディカル・ガリアよ♪」

カワイく小首をかしげてポーズをキメる。
どっからどう見ても変態さんな、悪の魔法少女(男)がここに爆誕。
瞬間、タバサは脳死した。
窓から覗いていたシルフィードも脳死した。
実の娘と腹心の使い魔は心底辛そうに目を逸らしている。

「さあシャルロットよ! 我が虚無魔法の力によって魔法少女となるのだ!!」

ステッキの眼が再び光る。
プワンプワンと音を立てて放たれるドーナツみたいな光の輪っかが、タバサの身体を捉えた。
放心していたタバサとシルフィードには成す術も無く、ジョゼフ――否、ラディカル・ガリアの術中に堕ちてしまったのである。

それが、今から数日前の事。

そんな事とは露知らないベホイミちゃんは、平和な学院の中庭で洗濯物を干していた。
雲ひとつ無いお天気の今日は、絶好の洗濯日和である。
学院に通う生徒達の服は、扱いが難しい高級素材の物もあるため専門のメイドが洗濯するので、
ベホイミちゃんが洗っていたのは同僚の洗濯物。
それも、寮で使われているベッドシーツの一斉洗濯という体力勝負の洗濯物であった。
大量のでかくて白い布を力技で洗って力技で干しまくったベホイミ。
ついでに汗臭くなってきたドクロ仮面の着ぐるみも、ゴシゴシ洗って干していた。
一応干してあるシーツの中程、人目に付かないあたりで、物干し竿を腕に通してブラーンとぶら下げてある。
見た目は磔獄門かモズのハヤニエみたいで、とっても不気味。

「はー、イイ天気っスねぇ~」

そんなドクロの抜け殻の横に腰を下ろして、一仕事終えた爽やかな笑顔で額の汗を拭う。
空には太陽がサンサン。春風は穏やか&さわやか。はためく真っ白なシーツの海。ベホイミちゃんはメイド服。
すっかりこの生活に馴染みまくっている。
だが、一見弛緩し切っているように見えても、そこは色々後ろ暗い過去の持ち主である。
人の近づく気配を敏感に感じ取って視線を走らせる。

見れば気ままな午後の散歩帰りなのか、片手に籐籠を下げたモンモランシーが暢気に歩いていた。

「ふ~ふんふん~♪ ら~らんららん~♪」
「こっちに来るっ!? イカンっス!」

ドクロ仮面スーツを干しているのを見つけられるのはヤバイ。
一応中の人など居ない事になっているのだから、見られるワケにはいかないのだ。
あと正体がバレて使い魔にされると、忠誠を誓うまで檻とかに入れられて調教されそうな気もするし。
他のシーツが邪魔になるので、咄嗟にスーツを下ろせないと判断したベホイミちゃんは、緊急手段を決行した。

「ふふ~ん♪ ふんふふ~ん♪ はっ!? そこにいらっしゃるのは、ドクロ仮面様!」
「や、やあ昨夜の少女」

フラフラと歩いてきたモンモランシーが発見したのは、物干し竿にぶら下がったドクロ仮面(中身入り)だ。
正体を知られないための苦肉の策として、ベホイミちゃんは生乾きの着ぐるみの中に飛び込んだのである。
干してある体勢のままで。
そんなブラーンとぶら下がった怪人に、恋する乙女の瞳をしたモンモランシーは深々と頭を下げる。

「ドクロ仮面様……あの、昨日はどうもありがとうございました」
「なに、悪の怪人として当然の事をしたまでだ」
「ところで、ドクロ仮面様は、どうして物干しからぶら下がっているのですか?」
「えーっと、その、太陽光線を受けてだな、なんとゆーか、ドクロパワーを貯めているのだ」

イキナリ新設定が付いたドクロ仮面。
うさんくさい言葉だが、モンモランシーは感心したように「へー」とか言って頷いている。

「そうだ! ドクロ仮面様、私さっき森に行って薬草を摘んできたんです」
(うう……生乾きでキモチ悪いっス。早くどっか行ってくれないっスかねぇ……)
「それで、ついでに蛙苺の群生地を見つけたんで、たくさん採って来たんですよ」
(なんで異世界でこんなブラーンってなってるんスかねぇ……せつないっス)
「はいこれ、美味しいからドクロ仮面様も食べて下さいな。あーん♪」
「えっ!?」

気付いた時にはもう遅い。
目の前に近づけられた山盛り一杯の野苺っぽい何かが、仮面にムギュっと押し付けられた。

(うぼあーっ!? いっ、苺のすっぱ甘い果汁が隙間からスーツの中にーっ!?
ベトベトするっスー! 生乾き+ねっとり果汁ってどんな拷問っスかー!?
目っ、目に入ってくるっスー!! ダメぇ! こんなの無理矢理入れちゃダメっスー!!)

ぶら下げられたままビクンビクンとのたうつ干しドクロ仮面。
しばらくするとガックリ死んだように脱力して静かになってしまった。
そんな姿をモンモランシーは微笑ましそうに眺めている。

「まぁ、喜んでもらえて嬉しいですわ」
(うぼー)

どうやら目が腐ってるらしい。

「今度はもっと美味しい蛙苺のケーキを、貴方のために作って持ってきますわね、ドクロ仮面様♪」
(うぼあー)

キャッ、言っちゃった♪ とか言って、口元に拳とか当てて、頬なんかも染めながら踵を返し、寮の方へ駆けてゆくモンモン。

残されたのは、生気の無い様子でシーツの海に揺れるドクロ仮面だけ。
―――いや、建物の影にもう1人が居た。
それは、モンモランシーの元恋人であるギーシュ・ド・グラモンだ。

「モッ、モンモランシイィィィィィィ! おのれぇ、ドクロ仮面めえぇぇぇぇぇ!!」

血涙を流し、噛み付いたハンカチを引き千切りながら、怨嗟の声を上げるギーシュ。
恋人を一方的に奪われたギーシュの嫉妬ボルテージは今最高潮。
しかし、巨大ゴーレムを一撃で倒すドクロ仮面にケンカを売るほど無謀にはなれず、
こうして憎しみの視線を向ける事しかできずに居るのであった。

「ああ、ボクに力があったら。あの怪人を倒せるぐらいの力さえあったなら!」
「その力、あげましょう」

突然背後から声をかけられて、ギーシュは慌てて振り返る。

「き、キミは?」

そこに居たのは小柄な人影だった。
ギーシュより頭一つ分以上小さな身体を包むのは、黒を基調にした豪奢なドレス。
所々をワインレッドで飾り、シルバーの十字架をアクセントに配した、いわゆるゴスロリと呼ばれる衣装。
ドレープが効いて大きく広がったスカートから伸びる細い脚には黒いニーソックス。
身長を10サントは伸ばして見せる底の厚い編み上げブーツを履いているが、それでもなお小さい。
身長よりも長い、妙にメカメカしい杖を持った少女の肩には、デフォルメされた風竜が乗っていた。

「私は悪の魔法少女フィジカル・シャルロットちゃん」
「きゅいきゅい。マスコットのシルフィーなのよ!」

青い髪に小型のシルクハットを乗せた少女は、自分で「悪の」とか名乗る。
感情を感じさせない淡々とした言葉で、シャルロットちゃんは続けた。

「貴方に悪のマジカルパワーを授けましょう。思う存分暴れなさい」
「ちょ、ちょっと待ちたまえレディ! いったい何をするつもりな―――」

慌てるギーシュ。
無理も無い。シャルロットちゃんは無表情なままで長い杖を高く振り上げたのだから。

「悪魂ちゅーにゅー」
「なのね!」

ギーシュには答えず、フルスイングで杖を振り下ろすシャルロットちゃん。
その先端は最大加速でギーシュの脳天に直撃した。

「さあ、これで貴方は―――」
「きゅう……」

当然、巨大なタンコブをつくって倒れるギーシュ。
ぶっ倒れた少年を前に、悪のゴスロリ魔法少女は無表情なままで、しばし沈黙。

「しまった。やりすぎた」

そして無表情のままでそう呟いた。
焦りとか罪悪感とかゼロで、シャルロットちゃんはギーシュの足を掴んで引っ張った。

「どうするのね、シャルロットちゃん?」
「どこかの草むらにでも放りこんでおく」

死体のようにズルズルと引きずられて行く暴行事件被害者。
シャルロットちゃんは見かけからは想像も出来ない怪力で、ギーシュを中庭の生垣にスポーンと投げ入れる。
かくして哀れなギーシュは翌日まで草むらの中で昏倒する事になった。
そのため、正体不明の魔法少女が彼に何をしたかは、翌日まで不明なままである。
平和な学園に何がおころうとしているのか。
それはまだ、誰も知らない―――

第三戦
――○香水のモンモランシーVSドクロ仮面●――決まり手は蛙苺責め
新感覚癒し系魔法少女ベホイミちゃん、第四話へ続く!


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