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ソーサリー・ゼロ第二部-21

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五二〇

 ウェールズ皇太子と語り合ううちに夜が明けてしまったことに気づいた君は、傍らの寝台――ウェールズの寝床だ――で眠るルイズをそっと揺り起こし、
朝だぞ起きろ、と言う。
 ルイズはむくりと上体を起こすと、しょぼつく眼をこすりながら
「んん~、あによ……もう朝ぁ? 顔洗う、水持ってきて~」と言うが、
椅子に腰掛けて苦笑を浮かべるウェールズの姿を眼にして、さっと顔色を変える。
「こ、こ、皇太子殿下!? な、なにゆえにわたしたちの寝室に! え、あれ? ここ、どこ? 宿屋?」
 寝ぼけた頭で必死に状況を把握しようとし、かえって混乱するルイズを前に、君とウェールズは顔を見合わせてにやりと笑う。
「ラ・ヴァリエール嬢、私が桶を取ってこようか? そうそう、この城には井戸がないので、汲み置きの水しかないのだが許してくれたまえよ」
「け、結構です! ど、どうなってんのよ!?」
 顔を真っ赤にしたルイズの悲鳴が、朝の城に響き渡る。

 朝食を終えた君、ルイズ、ギーシュの三人は、ワルドに殺された国王を弔問するため、遺体の安置されている礼拝堂を訪れる。
 そこには既に大勢の人々が訪れており、国王に最後の別れを告げるために列を作っている。
 ウェールズの父親である年老いた国王、ジェームズ一世の皺と髭に覆われた顔は、眠っているかのように穏やかなものである。
 周囲の者たちがささやいていた話によれば、国王は心臓を一突きにされ、苦痛を感じる暇もなかっただろうということだ。
 昨夜君たちに見せた態度といい、ワルドは裏切り者ではあるが、少なくとも残虐で恥を知らぬ男ではないらしい。

 ニューカッスルの城の地下に設けられた船着場で、君たちはウェールズと別れの挨拶を交わす。
「君たちの乗る避難船には『ユリシーズ』号が護衛につくので、反乱軍や空賊の襲撃はまずなかろう。安心してトリステインに戻って、
アンリエッタに伝えてくれたまえ。……昨夜、私が新たに決意したことをね」とウェールズは言い、
君たちひとりひとりの手をぐっと握る。
「それでは、お別れだ。勇敢なる若き貴族たちと、遥かな異国から来た使い魔殿よ。君たちの行く手に、よき風が吹かんことを!」
「皇太子殿下にも!」
 ルイズとギーシュが声をそろえて、ウェールズに言葉を返す。
 君は黙って一礼する――ふたたびこの青年と酒を飲み交わす日が来てほしいものだと思いながら。

「ねえ」
 船倉の隅、君の隣に座ったルイズが、ラ・ロシェールへと向かう難民船に乗り込んでから初めて口を開く。
 ルイズは君から顔をそむけたまま、ぼそぼそと小さな声で
「その……昨日はごめんなさいね」と言う。
 君がなんのことだと訊き返すと、
「あ、あんたのこと野蛮って言っちゃったでしょ。取り消すわ」
 そう言ってゆっくりと振り返り、君の眼を見る。
「それに、ウェールズ皇太子も説得してくれたし……臆病者呼ばわりしたときはどうなることかと思ったけど。姫様もきっとお喜びになるわ」
 君は気にすることはないと告げる。
 君にとっても、ウェールズに死んでほしくないという思いは彼女と同じなのだから。
「それと……あんたの帰る方法。男爵のことは残念だったけど、きっと別の方法があるはずよ。わたし、ちゃんと探すから。気を落とさないでね」
 君は無言でうなずく。
 任務を果たすために、一刻も早くカーカバードに戻らねばならぬ立場にある君だが、奇妙なことにさほど焦燥感はない。
 戦争こそあれど、≪旧世界≫のどの地よりもずっと洗練された文化をもち自然も豊かな、この美しき世界の居心地が良すぎるせいだろうか?
 君の気のない応対にいらだったのか、ルイズは少しだけ声を荒げ、
「帰ったら、まっすぐ王宮に出頭して、姫様に一切合財を報告しなきゃ。あんたも無礼がないようにね!」と告げる。

 ルイズが外の空気を吸いに行くと言って甲板に上がっていくのを見送った君は、今度は傍らに立てかけたデルフリンガーに話しかける。
「なにか用かい、相棒?」
 君はこの魔剣に、昨夜のワルドとの闘いで『思い出した』と言っていたのはどういう意味なのか、そして、いつの間にか刀身から錆が綺麗に落ちているのは
いったいどういうことなのかと尋ねる。
「へへっ、よく訊いてくれた相棒。聞いて驚け、俺ぁ六千年前、伝説の使い魔≪ガンダールヴ≫が振るっていた剣なんだよ!」
 デルフリンガーは自慢げにそう言うが、君は聞き慣れぬ名前を出されて首を傾げるばかりだ。
「……ああ、相棒はずっと遠くの国から来たんだっけな。いいか、≪ガンダールヴ≫ってのは始祖ブリミルが従えた使い魔の一体で、
≪神の楯≫とも呼ばれてだな……」
 デルフリンガーの長くなりそうな説明を途中でさえぎり、なぜ闘いのさなか、唐突にそのようなことを思い出したのかと訊くと、魔剣は
「相棒の闘いっぷりを見て≪ガンダールヴ≫を思い出したのさ。身動きもできねえくらいずたずたにされてんのに、ご主人様を護るためならてめえの体に鞭打って
飛び出すあたりなんて、そっくりだぜ」と答える。
 それを聞いた君は、では自分はその≪ガンダールヴ≫の再来なのか、と尋ねるが
「いんや、それはねえ。相棒は武器を持った途端に力が増すわけでも、心の震えで強くなるわけでもねえからな」という答えが返ってくる。
「とにかく、相棒の献身的な闘いっぷりを見た俺ぁ≪ガンダールヴ≫に握られていたときのことを思い出してな。慌てて本当の姿になったってわけだ。
ずいぶん昔に、なにもかもに飽き飽きしてた頃があってな。そんとき、わざとボロ剣の姿になったんだよ」
 デルフリンガーの説明を聞き終えた君は、この物忘れの激しい食わせ者め、と悪態をつく。
 伝説の剣だかなんだか知らぬが、これからも振り回し、叩きつけ、魔法にぶつけてやるから覚悟しろ、と。
 君の言葉にデルフリンガーは
「へへっ、望むところだぁ。あらためてよろしく頼むぜ、相棒!」と、
 嬉しげに答える。
 以後、デルフリンガーを使って闘うときは、攻撃力の減点を無視して普通の武器として扱ってよい。

 その頃、君たちが後にした浮遊大陸アルビオンでは、ある異変が起きていた。
 奇妙な甲高い音が、大陸全土に響き渡ったのだ。
 ニューカッスルの城で部下に命令を下すウェールズ皇太子、包帯を巻きつけた手をじっと見つめるワルド子爵、ウェストウッド村へ向かう途中のフーケ、
スカボロー近辺の街道に座り込む盲目の物乞い、天幕の中で車座になり博打の結果に一喜一憂する傭兵ども、北方高地に棲むオグル鬼ども
――アルビオンに居るすべての者が聞いたそれは、錆びついた金属が軋る音のようだったとも、断末魔の悲鳴のようだったともいう。

 ふたつの世界を隔てる壁は、引き裂かれたのだ。






 君は剣を抜いてルイズとギーシュを護るべく進み出るが、周囲を取り囲んだ傭兵どもは嘲笑をやめない。
 敵を威嚇するべく剣をひと振りすると、刃が空を切る音と同時に、もうひとつの音が君の耳に響く――弓弦の鳴る音だ!
 後ろから飛来した見えぬ矢が、君の胸を貫く。
 君の旅は終わった……。



 君はルイズとギーシュに、合図をしたら一斉に駆け出すぞと伝える。
 顔を蒼白にしたギーシュは何度もうなずくが、ルイズはあいかわらず放心したままだ。
「どうした、早く出て来い!」
 大男のいらだった声が響くと同時に、君は今だと叫び、ルイズの手を掴んで傭兵どもとは逆の方向に向かって走る。
 二十ヤードほど走ったところで、前を走るギーシュが火の玉の直撃を受け、その全身が燃え上がる!
 悲鳴をあげてのたうち回るギーシュを助けに駆け寄ったところで、君の背中にも火の玉が命中する。
 あまりの激痛に意識を失う君が最後に眼にしたものは、信じがたい光景を前にして正気づき、悲鳴を上げるルイズの姿だ……。



 伏せて火の玉を避けようとする君だが、それが高度を下げつつまっすぐ向かってくるのを見て血が凍る!
 メンヌヴィルの使った術は恐るべきものであり、敵がどう逃げようがけっして的を外さぬのだ。
 火の玉は君の顔を直撃し、視力を奪う。
「なにを寝ている、お楽しみはこれからだぞ?」
 倒れ伏した君を見おろし、メンヌヴィルは笑う。
「次はどこがいい、手か? 脚か?」と、
君をじわじわと焼いてくのが楽しくてたまらぬ様子だ。
 君の運命は定まった。
 ≪白炎≫に情けはない。
 時間をかけて苦痛に満ちた死を迎えることになる。



 渾身の一撃で先頭に立つひとりを斬り倒すと驚いたことに、敵は血の一滴も流さず、幽霊のごとく消えうせてしまう!
 驚きに眼を見張る君だが、その一瞬の隙が命取りとなる。
 後に続く三人の敵すべてが、君めがけて突きを繰り出してきたのだ。
 青白く輝く杖には研ぎ澄まされた槍の穂先さながらの威力があり、たやすく君の体を貫く。
 穴だらけにされた君は床にくずおれる。
 君の旅はここで終わった。



 敵の突きは、疾風の速さで君の胸に突き刺さる。
 たちまちのうちに喉に血が溢れ、その場に倒れこむ。
「……巻き込んでしまって、すまない」
 離れた場所に立っているはずのワルドの声が、眼の前の敵から聞こえてくるというのは、どういうことなのだろう?
 その疑問が解き明かされることはなく、君はすみやかに意識を失う。



 体力点一を失う。金縁の鏡は持っているか?
 なければこの術は使えず、そのままワルドの術によって回廊から吹き飛ばされてしまい、下へ、下へと落下して、命を落とす。

 持っていても結果は同じだ。
 鏡に映ったワルドの複製が実体化するより先に、魔法の暴風は君を鏡ごと吹き飛ばす。
 回廊から転落した君は、地面に激突して息を引き取る。
 君の冒険は終わった……。



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