あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ベルセルク・ゼロ-07


 ルイズは目を覚ますとまだ重いまぶたをごしごしとこすった。
 窓からは朝の光が差し込んできている。
 今何時だろう? ルイズは枕元に置いていた時計に目を通した。
 授業が始まるまではまだ暇がある。
 ようやく覚醒し始めた頭を振って、ルイズはベッドから降りた。
 ちらりと壁に背を預けて眠るガッツに目を向ける。

 ―――いいぜ、元の世界に帰るまでの間、お前の使い魔をやってやる

 昨夜、そう宣言したその使い魔は、静かに寝息を立てていた。
 そういえば、とルイズは思いだす。
 ガッツを召喚したその日、ガッツが気絶しベッドで眠り続けていた間、ルイズは自分なりに使い魔をどう扱うか考えていた。
 その時にとったメモを机の引き出しの中に入れっぱなしだった。
 ルイズは引きだしを開けると『使い魔の扱い方!!』と書かれたメモ帳を手に取った。
 パラリと表紙をめくる。

 一.何の能もない平民なのだから、洗濯その他雑用をやらせるべきだわ! 着替えの手伝いなんかもやらせるべきね!!

 実に元気良く書きなぐっている。
 ルイズは視線を下げ、己の姿を確認した。
 ネグリジェである。つまりこれから制服に着替えなければならない。
 ガッツを起こし、着替えを手伝わせる。ガッツの逞しい手がルイズのネグリジェに指をかけ、するすると上に引き上げ―――ルイズの下着があらわになる。
 ガッツが持つ制服に袖を通し、ガッツの指がそのボタンをとめていく。
 必然、ガッツの太い指がルイズの慎ましやかな胸に触れる。
 ルイズは小さく「あ――」と声を漏らした。

 ―――っ て 出 来 る か そ ん な こ と ! ! ! !

 ルイズは顔を赤くしながらメモ帳をパァン!!と思いっきり床に叩きつけた。
 ぱたぱたと頭上に浮かんだ己の妄想を打ち払う。
 そしてまたちらりとガッツの様子を伺った。

 一.主人より遅く起きる使い魔には鞭打ちの刑!!

 再び引き出しを開けると愛用のムチを取り出し、ガッツの頭に向かって一振り。
 パシンッ!! 小気味良い音が鳴る。
 ガッツの左目がくわっ!と開き、立ち上がると同時にドラゴンころし。ずんばらりん。
 あっはっは、胴と足が泣き別れだわ。無様ねルイズ・フランソワーズ。
 ―――ルイズはため息と共に制服を手に取ると、コソコソと着替え始めた。
 まあね、あの時はガッツのこと何にも知らなかったからね。
 大体ガッツの左手義手だしね。洗濯しなさいなんて鬼畜か私は。
 制服に着替え終わってルイズは床に落ちたままのメモ帳を拾った。
 こんなものガッツに見られたらどうなるかわからない。
 ルイズは決してガッツの目に触れることがないようスカートのポケットにメモ帳をしまった。
 準備を終え、授業へ向かおうとドアを開け部屋を出る。その前に、もう一度ガッツの様子を伺った。
 けっこうパタパタと動いたというのに、ガッツはまったく起きるそぶりを見せない。
 それもそのはず、実はガッツ、30分程前にようやく寝付いたところである。

 ―――意外と寝起き悪いのね

 そんなことはつゆ程も知らないルイズは使い魔の思わぬ一面にくすりと笑うと、ゆっくりとドアを閉めた。



 それからしばらくして、ガッツは目を覚ました。
 しぱしぱする目をこすろうとして、自身の体に毛布がかけられていることに気づく。
 ルイズはもう部屋にいない。どうやら起きてどこか出て行ったようだ。
 その時にでも、かけてくれたのだろうか?
 ただの高慢ちきな小娘だと思っていたが―――意外な一面もあるようだ。ガッツは思った。
 毛布をベッドに戻す。
 ふと腰元のバッグに目をやると、毛布のせいで蒸していたのだろう、汗をだらだらかいたパックが寝苦しそうにベヘリットを蹴り上げていた。ベヘリット涙目である。
 腹具合から今の時間を推定するに、眠りについてから3時間ほどたっていると思われる。
 さてと―――何をするか。ガッツは頭を悩ませた。
 とりあえずルイズを探してみるか。そう思い立ったガッツはベヘリットの鼻を引っ張りながら眠るパックをたたき起こした。


 トリステイン魔法学院の廊下をガッツは歩いていた。
 パックがその前を飛び、先導する。
「うむ、今日もセンサー好調! ルイズはこの部屋の中にいるよ」
 わずかなドアの隙間からガッツは教室の中を覗き込んだ。
 多くの少年少女が己の使い魔を引き連れて長机に着席している。
 おそらく全ての少年少女はメイジ、かつ貴族なのだろう。
 隙間からではルイズの姿を確認できない。
 ガッツはドアを開いた。
 教室がシン…と静まり返る。生徒たちの視線が一斉にガッツに集中した。
 右の窓側、ギーシュは一瞬肩をすくませ、中央ではキュルケが目を輝かせ、タバサは一瞬ガッツに目をやるとすぐに読書を再開した。
 左の窓側、ルイズもガッツがまさかこんなところに来るとは思っていなかったのだろう、驚き固まっていた。
「な、なんですかあなたは!」
 突然現れた黒尽くめの剣士に、土のトライアングルメイジであり、本日『錬金』の授業を行っていたミセス・シュヴルーズは狼狽した。
 どうやら彼女はガッツとギーシュの決闘を直に目にしていないらしい。
「ミセス・シュヴルーズ! 申し訳ありません! その男は私の使い魔なんです!」
 慌てた様子でルイズが説明する。それからルイズは自分の座る窓側の席へガッツを手招いた。
 ガッツが歩み寄ってくる。ルイズの頭にまたもや『ルイズメモ』がフラッシュバックした。

 一.教室の席はメイジのものよ! 使い魔は床!

(言えるかッ!? わたしッ!!)
 ルイズがわたわたしてるとガッツは既にルイズの席の傍まで来ていた。
 ルイズに言われるまでもなくそのまま壁に背を預ける。
 拍子抜けしたルイズははたと気づいた。

 ―――てゆーかガッツ座れないんじゃないの?

 サイズが問題なのだ。ガッツでか過ぎ(甲冑着込んでるし)。席狭すぎ。
 結局ガッツの選択肢は一つである。まだルイズの席が窓側だっただけましというものだ。
 ガッツが教室中央で仁王立ちしている画を思い浮かべ「ないわ…」とルイズは首を振った。

 気を取り直して授業が再開される。
 意外にもガッツはシュヴルーズの話を興味深く聞いていた。
 前述したが、今日の授業は『錬金』についてである。
 シュヴルーズが錬金の原理についてつらつらと説明している。
 錬金とは物質を金属に変える魔法らしい。教壇に立つ中年の女はただの石ころを真鍮なんていう金属に変えてみせた。
 なるほど、この世界では武器弾薬の補充には事欠かないようだ。
 ガッツはこの世界で矢や投げナイフを使うことがあるかはわからないが、一応、そういう技術があることを頭に刻み込んだ。
「ところでさ、ルイズ。あの女の人がちょくちょく言ってるスクウェアとかトライアングルってどういう意味なの?」
「こら、パック。今授業中よ」
 ルイズの机に座り込んでいたパックがピーピー騒ぎ出した。
「じゅぎょうってなによ? いいじゃん教えてよ」
「しょうがないわね。いい? 魔法には系統があって…」
 ルイズの魔法のレベルについての講釈が始まる。
 長いので以下略だ。
「…てわけよ。わかった?」
 ルイズが説明を終えた時、パックの頭からぷすぷすと煙が上がっていた。
(絶対わかっちゃいねえな)
 パックの性格と知能をよく知るガッツは思った。
 ガッツの方はというとルイズの説明を大体ではあるが理解していた。
 シールケをこっちに連れてきたら何に該当するのだろうか―――ガッツはそんなことを考えていた。
「ミス・ヴァリエール!!」
「は、はい!!」
 シュヴルーズから叱責の声が飛ぶ。
「授業中の私語は慎みなさい」
「すいません……」
「お喋りをする暇があるならあなたにやってもらいましょう。ここにある石ころを望む金属に変えてごらんなさい」
 そんなシュヴルーズの言葉に教室中からブーイングが飛ぶ。
 やめさせろ、危険だ、そんな声が端々から聞こえた。
「わかりました。やります」
 そんな周囲の声に反発するようにルイズは立ち上がった。
 教壇に向かうと、緊張した面持ちでシュヴルーズの隣に立つ。
 ガッツは首を捻った。
 なぜこうも皆反対しているのか。
 赤毛の女など顔面蒼白ではないか。
 なんてことを思っていると―――石が爆発した。
 そしてガッツは知る。ルイズの二つ名『ゼロのルイズ』その意味を。

 教室の片づけを行いながら、ガッツはルイズに声をかけた。
「お前が錬金を使うといつもああやって爆発すんのか?」
 ルイズはごしごしと床についた煤を雑巾でぬぐっている。
 少しべそをかいているようだった。
「…そうよ」
 本当にもう、泣きわめきたいくらいに恥ずかしかった。
 こんなんじゃもう、ご主人様としての威厳なんて地の底である。
「だいじょぶだいじょぶ! ルイズもいつか出来るようになるって!!」
 片づけを手伝いもせずぷかぷか浮かびながらパックは能天気な励ましをかける。
 ルイズはガッツの反応が怖くてたまらなかった。
 せっかく使い魔としてやっていってくれると言っていたのに、ご主人様がこれじゃ、早々に愛想がつきたんじゃないだろうか。
 しかしガッツの言葉はルイズの予想外のものだった。
「大したもんだな」
 その言葉に驚いたルイズは瓦礫を運んでいるガッツの方を振り向いた。
 その顔に皮肉や何かを含んだような様子は見られない。
 ガッツは真剣に感心していた。ルイズの起こした爆発、その威力に。
 自身の持つ炸裂弾を大きく超える火力だった。
 しかもそれはただの石ころにルイズが『錬金』をかけた結果だという。
 だとすれば『武器』としてこれほど有用なものは無いとガッツは思っていた。
(……励ましてくれたのかな)
 そんなガッツの真意など知らないルイズはそんな風に思っていた。


 片づけが終わると昼食の時間だった。
 ルイズはガッツに『アルヴィーズの食堂』の説明をしながら食堂に入室する。
 テーブルの上には豪華な料理が並べられてあった。
 パックは目を輝かせる。ガッツも少し感心している様子だった。
 ルイズは自分の席について―――気づく。
 自分の席の隣の床に、粗末なスープとパンが置いてあった。
「あ゛っ」
 忘れていた。そういえば、こういう料理を用意するようにと、ガッツを召喚したその日に厨房に命令していたんだった。
 それからようやく今日、ガッツを伴って食堂に来ることになったわけで、こんなもんガッツに食えなんて言えるか!!ってなわけで。
 ルイズメモ。

 一.「あのね、本当は使い魔は外。アンタは私の特別な計らいで、床」

 なんて考えてた台詞ももちろん言えるかッ!!となる。
 ルイズはコソコソとテーブルの下にスープを隠した。
 ガッツに見られた。
「―――!?!!?!!?」
 真っ青な顔で必死に言い訳を考える。
「何たくらんでたかは知らねえが……どの道、ここでおちおち飯を食ってるわけにゃいかねえらしいな」
 そう言い残してガッツは食堂を出て行った。
「ちょ、ちょっとガッツ!?」
 そんなに怒ったんだろうか―――そう考えて、ルイズはようやく気づいた。
 食堂にいた生徒たちが、敵意を持った眼差しでガッツを睨み付けていたのである。
 ギーシュとのいざこざでガッツがした貴族への耐え難い侮辱。それに対する怒りは根強く生徒の心に残っているようだった。

 当のギーシュは本来昼食をとるべき昼休み、食堂には行かず中庭の原っぱに座っていた。
 トリステイン魔法学院は中庭にもよく手が入れられていて、咲き誇る花々と整えられた木々が美しい様相を作り出していた。
 そんな庭を眺めながらギーシュは考えていた。
 脳裏に浮かぶのはワルキューレを切り倒しながら自分に迫り来るガッツの姿。
 ガッツが振り回すその無骨な大剣。優美さも、雅さの欠片も無い、ただ『敵を粉砕する、そのためだけに造り上げられた剣』。
 その在り方を―――美しいと、感じてしまってはいなかったか。
 貴族に対して耐え難い侮辱を行ったあの男に、憧れのようなものを自分は感じてしまっていたのではないか。
 ギーシュは薔薇の杖を振り、ワルキューレを錬金する。
 中身を伴わないその優美な姿が、今のギーシュの目にはひどく矮小なものに映った。


 夜になって、ルイズが部屋で魔法書に目を通していると、ガッツが部屋に帰ってきた。
 少し頬が煤け、露出している右腕にも少し傷が出来ているような気がする。
 何かあったのか聞きたいが―――そこまで踏み込んでいいのだろうか?
 使い魔の状態を把握しておくのは主人の義務、そう自分に言いきかせてルイズはガッツに声をかけてみた。
「ガ、ガッツ…それ、ど、どうしたの?」
 よく観察してみるとけっこう深い傷のようにも見える。
 ルイズは慌てて机からいつも自分が使っている傷薬を取り出した。
 ガッツに駆け寄り、傷に薬を塗ろうとするルイズをガッツは手で制した。
「必要ねえよ、もう処置はすんでる」
 言われて傷口をよく見ると、ほのかに輝く粉が塗りつけられている。
(何か特別な魔法薬でも持ってるのかしら?)
 考えたがルイズにはわからなかった。それよりもまた自分がガッツに対して何も出来なかったことに落ち込んだ。
 ガッツが口を開く。
「何人か貴族のお坊ちゃま連中に襲われてな」
「え! 嘘っ!? 何ソレ!?」
 告げられた衝撃の事実にルイズは声を上げた。
 確かにガッツは貴族を侮辱したとはいえ、今は自分の使い魔だ。
 それに手を出すとは許せない。あとでとっちめてやる。ルイズは思った。
 それにしてもギーシュとの決闘を見た後でガッツに挑む気概がある者がいたとは…ルイズはそこにも驚いていた。
 そして最も気になるのは。
「も、もしかして、ここ殺しちゃったり、して、ない、わよ、ね?」
 ガッツは鼻で笑った。

(ど、どっちよぉぉぉ~~~~!!!!)

 ルイズは心の中で悲鳴を上げた。

「心配すんな、そんな面倒なことはしちゃいねえよ」
 ガッツの言葉にルイズはほっと息を吐いた。
「で、でもね、ガッツ。あの時あなたが言った言葉は貴族にとってはとても許しがたいものなのよ? そ、その、面倒ごとが嫌なら、一度謝っちゃったほうが…」
 勇気をもって注意してみる。ルイズはガッツの反応をびくびくしながら待っていた。
 ガッツが口を開く。ルイズは身構えた。
「そうだな。いきなり襲われるようなことがなけりゃあ、な」
 ガッツの言葉にルイズは拍子抜けした。
(い、意外と素直なのね……)
 ガッツとて誰にでも譲れないものがあるということは承知している。
 あの時は頭に血が上っていたため、発言を取り下げる気はさらさらなかったが、今のガッツは避けられる面倒事はなるべく避けるつもりでいた。


「そ、それじゃあ眠る時は言ってね。毛布、貸すから」
 そう言ってルイズは机に戻ろうとする。
「おい」
 その背中をガッツは呼び止めた。
 ビクッ!と肩が震えてルイズは恐る恐る振り返る。
「な、なに…?」
 ガッツはぽりぽりと頭をかいた。

「何をビクビクしてるのか知らねえが……使い魔をやると言った以上はちゃんとやってやる。もっとシャンとしろよ『ご主人様』」


 ―――不意打ちだった。不意打ちだったが故に、心にしみこんだ。
 そうよ、主人が使い魔に媚びてどうするの。
 ガッツを使い魔らしく扱いたいのなら、私がまずご主人様らしくふるまわなくっちゃ。
 使い魔を恐れるメイジなんて、メイジじゃない!!
 私は私らしく、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールらしくあなたに接するわ、ガッツ!!
 決意を新たにガッツに顔を向ける。
 その顔にはガッツを召喚して初めて―――『不敵な笑み』が浮かんでいた。

「お前がちゃんと俺が帰る方法を探している限り、な」

 そしたら釘を刺された。
 うぐっ、となったけれどルイズは「わかってるわよ!」と返す。
 俄然やる気が出てきた。うん、私はやっぱりこういう風にやるほうが私らしい。
 その時パックが窓から部屋に入ってきた。学院内を散策でもしていたのだろう。
 ルイズは鞭を取り出すとガッツにビシイッ!と突きつけた。
 頭の中には『ルイズメモ』が復活している。

「あなたのご主人様として命じるわ、ガッツ!! これから毎朝私の下着を洗濯しなさい!!」

 ぴかー。
 ルイズから放たれる光にパックとガッツが照らされる。

 変な空気になった。





 ぽとりとルイズのポケットからメモが落ちる。
 ルイズがそれに気づくより早く、ガッツはそれを拾い上げた。
 ルイズの顔が真っ青に染まる。パックもガッツの傍に飛びよってきてメモに目を通した。
 不思議だ。ルーンの効果だろうか、メモの字は読めずとも、その内容はばっちりと意訳されてガッツの頭に流れ込んでくる。
 ガッツはメモを窓から投げ捨てた。


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