あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ヘルミーナとルイズ2-1


 あのときから数えて、三度目の冬が訪れていた。
 ルイズとヘルミーナはろくに人の手も入っていない、岩がごろごろと転がっている山道を登っていた。
 日はまだ高い。この調子なら目的を果たすのに多少手間取ったとしても、今晩はテントの中で落ち着いて休むことができるだろう。
 今更堅い床では眠れないなどというやわな神経は、両者とも持ち合わせていなかった。

「それでルイズ、道は大丈夫なんでしょうね。こんな物騒なところは用事が済んだらさっさとおいとましたいところなんだけど」
 そう言ったのはヘルミーナ。
 彼女は今年で二十三になるそうだが、現れたときの姿とあまり変わっていない。相変わらずの美しさと妖しさで周囲を惹きつけてやまない。
「そう願いたいわね。私だってこんなところまで来たのは初めてだもの、確証なんて持てやしないわ」
 そう答えたのは手に地図を持って、ヘルミーナに先行していた桃色の髪の女性。
――ルイズだった。
 あれからだいぶ背も伸びた。ヘルミーナと出会った頃は彼女の方が十サントほど高かったのだが、今ではほぼ同じ身長になっている。
 やせっぽちだった体型も、女性的な丸みを帯びたものへと変わっていた。
 胸だけは水準以下であるが、ほっそりとした体つきとのバランスが美しく、それは十分に男を惑わせ得るものとなっていた。
 だが、何よりの変化は、その目であろう。
 もとよりつり目がちだった目は一段とその鋭さを増し、かなりキツイ雰囲気を放っている。
 見たものを震え上がらせるような冷酷な目は、以前のルイズにはないものだった。
 二人とも旅装を纏っているが、それが野暮ったい印象は与えない。
 一般的に動き回るに向いていないメイジや僧侶用のローブを大胆に改造した着こなしは、それだけでセンスの良を感じさせる。
 色はヘルミーナは紫を基調として、ルイズは黒。それぞれ二人のイメージと相まって、彼女たちの魅力を最大限に引き出していた。

「巣立ちを迎えていない火竜の幼体、本当に見つかるのかしら」
「こんな眉唾な情報を見つけてきたのはあなたじゃない。でも、もしも本当なら幼体の『竜の舌』、とても貴重だわ」

 この二人、一般的なメイジとは違う、少々特殊な存在であった。
 曰く、この世界でたった二人の『錬金術師』。
 錬金術の練金は土魔法『練金』を意味するものではない。
 素材を調合し、全く違う効果を持つ様々な薬やアイテムを作り出す研究者の総称、それが錬金術師である。
 それがヘルミーナが召喚された翌日に、ルイズに語って聞かせたことだった。

 そして今、彼女たちは旅の空の下にいる。

 二人が出会った翌日、ヘルミーナは自分が錬金術師であること、材料の収集中に魔物に襲われ、その先にあったゲートに飛び込んで難を逃れたこと、そして自分は親代わりであった先生を捜して旅をしていたことをルイズに話した。
 一方、ルイズはここがハルケギニアという世界であること、ヘルミーナは異世界から来たかもしれないということ、この世界に錬金術というものがないことを伝えた。
 この頃になるとルイズも本来の冷静さを取り戻し、お互いに必要な情報の交換が行うことができた。
 特に、お互いの関心事については念入りに話し合った。
 ルイズにとっては、錬金術のその技。人工生命や死者蘇生、聞いたこともないような途方もない錬金術の奥義の数々。
 ヘルミーナにとっては、異世界の存在とそれに付随する様々な未知なる事柄、そしてルイズが喪ったという少年の話。
 そうしてお互いの関心事が分かったとき、ルイズはヘルミーナに申し入れたのだ。
『自分に錬金術を教えて欲しい』と。
 ルイズのこの申し出をヘルミーナはしばし検討し、結果として承諾した。
 そこにどの様な思惑があったのか、神ならざるルイズには分からなかったが、確かなことは自分が一筋の光明をつかんだという事実であった。
 ヘルミーナは自分が元の世界へ戻るまでの間、ルイズに錬金術を教える、その代わりに自分が戻るための手助けをして欲しいと言った。
 ルイズは一も二もなくこれを快諾し、この世界で最初の『錬金術師の弟子』となった。

 そしてその日の夜、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールは学院から失踪した。
 あれから三年、ルイズは一度もトリステイン魔法学院を訪れていない。当然ヴァリエール公爵家にも。
 今、ここにいるのはただのルイズ。
 貴族の名誉も、家族も、友人も、何もかもを捨て去った、ただのルイズであった。

「毎度思うんだけど、空飛ぶ箒ってこういったところでも使えれば便利じゃないかしら」
「仕方がないわ、あれはそういうものだもの。大ざっぱな移動はできてもこういうところを飛ぶのは向いていないわ」
 ルイズの軽口にヘルミーナが相づちをうつ。
 深い意味はない、毎度の愚痴と切り返しの応酬だ。
 ルイズとヘルミーナは弟子と師匠、召喚者と被召喚者という関係にありながらお互い対等の立場をとっていた。
 お互いが教師であり生徒、そんな二人は主人と使い魔の証である使い魔の契約、すなわちコントラクト・サーヴァントも済ませていなかった。
 ルイズにとって使い魔とは生涯あの少年ただ一人であったし、ヘルミーナ自身も使い魔という立場を望まなかったからだ。

 空飛ぶ箒の調合材料である風石の品質、その調合に使われる中和剤の元となるラグドリアン湖の水についてお互いに意見する。
 いつも通りの大して実りもない雑談をしばし続けたあと、二人は目的地周辺に到着した。
「情報によればこの辺のはずね。ルイズ、準備は良い?」
「氷属性のブリッツスタッフでしょ。分かってるわ」
 ルイズが背負った革袋から強烈な冷気を放つ杖を取り出すと、ヘルミーナも同様にそれを取り出して手に持った。
「標的はあくまで幼体だけ。もしも成体に見つかったら一目散に逃げる。良いわね」
「幼体を見つけたら二人でブリッツスタッフを使ってブレスを使われる前に倒す。手順は覚えてる、大丈夫よ」

 彼女たち二人の目的は竜の舌、それも幼竜のそれだ。
 竜の舌は錬金術の素材としても大変貴重なものであるが、その中でも幼竜のものとなるとその価値は跳ね上がる。
 幼い竜は常にその周囲を成竜たちに囲まれて生活している。
 単独で行動する成竜を相手にするよりも、幼竜を相手にする方がよほど骨が折れるのだ。
 なぜそのような明らかに危険過ぎる幼竜を、女二人で探しているのか?
 それは今ルイズが手にしている一枚の紙切れに原因があった。

 多数の火竜が生息する火竜山脈、彼女たちはそこへ鉱石の採集が目的でやってきた。
 準備を整えるために立ち寄った麓の町に一泊したときのこと、彼女たちは酒場で気になる言葉を耳にした。
 それは「火竜山脈の一角で、親とはぐれた幼竜を見かけた」というものであった。
 普段ならそんな与太話、酔っぱらいの戯言と聞き流すところだったが、それが火竜山脈近郊で幼竜となると話は別だ。
 ヘルミーナとルイズはそれを喋っていた傭兵風の男に近づいて、酒を奢り、しなだれかかり、女の武器を使って詳しい話を聞き出した。
 商隊の護衛だという男は、昨日まで火竜山脈の一部を通る護衛の仕事についていたらしい。
 多数の火竜が生息する火竜山脈は、ハルケギニアでもトップクラスに危険な一帯であることは間違いないが、山脈のどこへ行っても竜と遭遇するというわけでもない。
 竜たちの生活圏の外ならば、その危険度は大幅にダウンする。
 無論、群からはぐれた竜が出現する可能性も完全には否定できない、
 そういうわけで、彼は竜のテリトリーの外を横断する商隊の護衛任務を引き受けていたらしい。
 危険は大きいがその分報酬も大きい、運悪くドラゴンに遭遇しなければしばらく遊んで暮らせる。
 そんなことを心の支えにしながら、怯えつつもきちんと護衛の仕事を果たしていた彼は、もうすぐ山脈が終わろうかというところでそれと遭遇したらしい。
 まだ翼で飛ぶこともできないよう、幼い竜の子供。
 幼竜の周囲に親竜たちがいる。
 子育てに神経質になっている成竜たちは非常に好戦的である。
 危険きわまりない幼竜と遭遇してしまった彼は、正直なところ死を覚悟した。
 けれど、不思議なことに幼竜の周辺には他の竜の姿はなく、商隊が竜を刺激しないように息を殺して歩を進める間も、結局何も現れなかった。
 そうして、商隊と男は無事に街へと到着したというのが話の顛末であった。

 しきりにルイズのお尻を触ろうとする男をあしらいながら聞き出したのは、なかなかに貴重な情報であった。
 最後に男に地図を見せて場所を確認してから、彼女たちは酒場をあとにした。

 そして今ルイズが手にしている紙切れこそ、男が幼竜と遭遇したという場所が記された地図であった。
「まだこの辺に居てくれると嬉しいわね」
「ハルケギニアの竜の生態は分からないけれど、目撃されてからまだ三日。この周辺に居ると考えるのが妥当でしょうね」
 その『周辺』とやらがどの程度の範囲なのか分からないから困るのだとルイズは嘆息した。
 冬とはいえ、火竜山脈は暑い。
 山頂付近の蒸し風呂じみた暑さではないにしろ、二人が今いる場所も十分に暖かかった。
 加えて、街から山の入り口までは空飛ぶ箒で飛んできたものの、そこからは徒歩。
 火竜の幼体がその場所を離れてしまう可能性を考えて、二人は割と強行軍でここまで上ってきている。
 ヘルミーナもルイズも、弱音は吐かないものの、美しい顔を流れる汗は正直であった。
「……少し探して駄目なら、一度休憩にしない?」
「……賛成ね。ドラゴンも、もっとじめじめして空気が淀んでる地下に住めばいいのに」
 そろそろ付き合いも長くなってきたこの師匠の変な趣味には口出しせず、ルイズはあたりを見渡して休憩ができそうな場所を探した。

 ルイズの視界の端を、ちらりと動く何かの影が横切った。
「! ヘルミーナ! あそこ!」
 胸元を手で扇いでいるヘルミーナを余所にルイズが指さしたその先、小高く積み上げられた岩の上、そこには赤い獣の姿があった。
 大きさは牛ほどもあるだろうか。赤い鱗に覆われ、背中には折りたたまれた翼がある。
 間違いない。ハルケギニア原産の火竜種の幼体であった。
 ルイズが気づくと同時、幼竜もルイズたちを確認したのか、威嚇の唸りをあげた。
 発見したのはルイズ、だが先に反応したのはヘルミーナ。
「ブリッツスタッフ!」
 ヘルミーナが手にした杖の先端を幼竜へと向けると、そこから一直線に強烈な冷気が迸った。
 同時、幼竜の喉の奥がオレンジに輝き、恐怖と共に語られる火竜の象徴、ファイアブレスが放たれた。
 幼くともドラゴンはドラゴン、そのブレスはヘルミーナのブリッツスタッフの冷気を相殺せしめる程の威力があった。
 しかも、その余波は二人の肌を軽い熱波をもって炙っていった。
 相殺どころか、押し負けている。
 熱気と冷気がぶつかり合い、その余波で発生した水蒸気、それによってルイズたちの周囲はまるで霧にでも包まれたかのようになっていた。
「ヘルミーナ! 杖!」
 そう言ってルイズは手持ちのブリッツスタッフをヘルミーナに放り投げた。
 ブリッツスタッフはその性質上、使えば使うほどに充填された魔力を消費していくマジックアイテムである。
 つまり、追撃には初撃以上の攻撃力は望めない。
 その最初の一撃がブレスを押し返せないと分かった以上、彼女たちが考えていたブリッツスタッフを使って、遠くから力任せに押し切るという作戦は使えなくなったのである。

 真っ白の視界の中、ドラゴンがいた方向へと一直線に駆けるルイズ。
 懐から小さな杖とピルケースを取り出し、器用に片手でケースの中身を口に運ぶ。
 口に含んだ錠剤を奥歯で噛み砕き嚥下して、次に呪文を唱え始める。
 薬の助けを借り、意識と肉体とを切り離す。意識は呪文に集中し、体はただ最初に決めた通りに前へ向かって走るだけ。
 そうして彼女は走りながら、見事呪文を完成させた。

 霧が薄れ、再び視界が戻ったとき、幼い竜の目にはナイフを片手に持った女が自分へ向かって走ってきているのが映っていた。
 このとき、幼い竜は飢えていた。数日前に親竜とはぐれて以来、常に空腹だった。
 しばらく前に餌になりそうなものを見かけたが、それは数が多く体が大きく、諦めざる得なかった。
 今回見つけた餌はそのときのものと同じ形をしていたが、先のやつよりも小さく、何より柔らかくて美味そうだった。
 目の前の餌を食べる。捕食者の頭は、その原始的な欲求を満たすことでいっぱいになっていた。

 幼竜の顎が開く。今ぞ高熱のブレスが吐き出されるという段となっても、駆けるルイズに怯みは感じられない。
 だが、ドラゴンにしても躊躇いはない。
 真っ直ぐに岩場を上ってくるルイズに向かって、灼熱のファイアブレスが浴びせかけられた。
 これで終わり、一巻の終わり。
 人の身でドラゴンのブレスの直撃を受けて、無事で済む道理などありはしない。
 だが、次の瞬間獲物を確認しようとのそりと動いた幼竜を襲ったのは、腕に走る焼け付きような鋭い痛みだった。
「ギッ!」
 突然襲った未知の感覚。それは不快で、ひどく幼竜を苛立たせるものだった。
「ギャギャッ!」
 体中を使って痛みと怒りを露わにする。
 そうしてじたばたと手足を振り回す幼竜から、素早く飛び退いた影一つ。
 五体満足で、火傷一つ負っていないルイズの姿。
 その手には赤い血を滴らせた、一振りのナイフ。

 しくじった。
 折角のイリュージョンの魔法が成功したというのに、肝心のナイフは幼竜の腕に傷を負わせることしかできなかった。
 正面に投影した幻を囮に使い、自身は側面から奇襲を仕掛ける。そして首尾良く接近したならば必殺の一撃でもって絶命させる。
 これがルイズの計画であったのだが、詰めが甘かったとしか言いようがない。
 幼竜は未だ健在であるし、そのどう猛さは手負いになったことで、ますます手がつられなくなってしまった。
 本来ならこれは一時退却して体勢を立て直すのが定石。だが、それを決行するにはルイズはブレスの射程範囲内部に、深く入り込み過ぎてしまっていた。
 引けば丸焼き良くて生焼け、ならば攻めるか?
 これもまた上手い方法とは考えにくい。
 今のルイズの位置は引くには近過ぎるが、攻めるには遠過ぎる。
 ならばどちらがマシか? 頭がその回答を導き出す前に、ルイズの体は前へと飛び出した。

 弾丸のような俊敏さをもって飛び出したルイズを見て、竜は大きく口を開けた。
 喉の奥では既に赤い焔が灯されている、あとはその塊を怒りに任せて吐き出すだけ。
 あるいは、幼竜が冷静であったならば、また違った行動に出ていたかもしれない。
 自分に躊躇いなく近寄ってくることや、これだけ火を吐いても未だ食事にありつけないでいることで、危険を察知して逃げ出していたかもしれない。
 だからそれはある意味では不幸中の幸い、ルイズの功績だったかもしれない。

 とにかく、竜は怒っていた。
 怒っていたのである。

 幼竜の口から、炎の吐息が放たれた。
 正面から飛び込んでいったルイズの目の前が、美しいオレンジの光で埋め尽くされる。
 それはとても綺麗で、あの夜に、石塀の上から見下ろした闇によく似ていた。
 ルイズの耳元で、誰かが囁いた。
 ただのルイズになって以来、何度も耳にした甘い誘惑。
(これでサイトのところに行けるのよ)
 サイト、その名前を思い浮かべただけでルイズの心がキリキリと痛みを感じた。
 自分を残してどこかへ行ってしまったあの少年、誰かが書いた悪魔のシナリオの向こう側に消えてしまった大好きだった彼。
 そのサイトに逢える、また逢える。
 それを思うだけでルイズの体は力を失ってへたり込みそうになってしまう。

「ブリッツスタッフ!」
 彼女を幻想から連れ戻したのは相棒の鋭い叫び声だった。
 目前に迫った赤い瀑布に、白色の寒波が叩きつけられる。
 瞬く間に周囲はもうもうと水蒸気が立ちこめ、視界を奪った。
 いつの間にか幼竜とルイズの延長上へとその位置を移動させていたヘルミーナが、ブリッツスタッフに込められた冷気の魔力を解放し、ルイズの背中越しにそれを放ったのだった。

 甘美なる誘惑に屈しかけた精神が、強引に現実へと引き戻される。
 意識が飛びかけていたそのときも、ルイズの両足はきちんと目標地点へ向けて動いてくれていた。
 ルイズが気がついたとき、そこは既に竜の眼前。手を伸ばせば触れられる距離だった。
 驚いた幼竜が再びその口を開けてブレスを吐きかけようとする。
 だが、四度目のブレスが放たれるより早く、ルイズの手中にある白銀がきらめき、鱗ごとその喉元を真横に切り裂いていた。


 ファイアドラゴンの幼子が横たわっている。
 その喉元からは赤い血が噴水のように勢いよく噴き出して、周囲を赤く染めていた。
「お見事な手並みだわ」
 返り血を浴びるルイズの背後から手を叩く音がする。
 ルイズが振り返るとヘルミーナが小さく拍手しながら岩山を上ってきているところだった。
「うつろふ腕輪はあなたに渡しておいて正解だったわね」
 非力なルイズが、幼いとはいえ竜の鱗の防御を貫けた要因、ルイズの右手にはめられた腕輪を見ながらヘルミーナが言った。
 うつろふ腕輪、人間の力を引き出すことができる腕輪。
 しかもルイズが手につているそれはヘルミーナの特別製。武器を使った直接攻撃でなら、ドラゴンの鱗も切り裂けるかもしれないと、以前彼女が笑って話していたものだったのだが、本当に切り裂けたのは驚きであった。
「さて、仕上げね」
 幼竜相手とはいえ、竜殺しを成し遂げたという感慨もなく、無表情のままのルイズが倒れた獲物に向き直った。
 喉と口から血を溢れさせる幼竜、その口からはヒューヒューと風が抜けるような音が漏れている。
 そのどう猛さとはアンバランスなつぶらな瞳が涙に濡れて、鮮血にまみれたルイズを見上げていた。
 ルイズはそんな竜の姿を見ても眉一つ動かさずにその場に片膝をつく。
 ついた左の膝を竜の下顎に、そして右足の裏を上あごへと当てて、足に力を込めてその口をこじ開けた。
 そして、血の海になった口内に目的のものを見つけるとルイズはそれを素早くつかみ、根本からナイフを使って刈り取った。
 直後激しく痙攣する幼竜から、ルイズは転がるようにして距離を離すと、ゆっくりと立ち上がった。
 その左手には。血まみれの竜の舌。
「終わったわ」
「そう、それじゃ時間も早いし戻りましょうか」
 二人は特にそれ以上この件に関して話をすることもなく、先ほど上ってきた山道を下山し始めたのだった。

 そのあとには、哀れな竜の骸が一つ。


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