あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Let's GO ! ZEROPANMAN!~そして世界は回り始める~

 少年は空飛ぶ戦艦の上、ただじっと眼下を見下ろしていた。
 浮遊大陸アルビオン、その開けた戦場でうごめく黒い影に、少年はただじっと視線を向けていた。


 少年はその砕け散った世界から一人、召喚というプロセスを経て青年の手中に呼び出された。
 青年は杖も使わず浮かぶ赤いおくるみを来た赤ん坊に、己に宿る伝説の力を実感していた。
 赤ん坊の成長は早かった。
 ほんの数日で十年以上の成長をとげ、驚くほどの速さで知識を吸収していく。
 まるで“今まで溜まっていた分を吐き出す”かのように、赤ん坊は少年へと成長した。

 青年、ロマリア皇国皇帝ヴィットーリオ・セレヴァレはその力をもって聖地奪還を夢に見た。

 しかしその少年は、誰よりも強く誰よりも賢く、そして誰よりも高潔であった。

 ジュリオ・チェザーレというふざけた偽名を与えられたその少年は、誰よりも平穏を愛していた。
 それこそ本来皇国を挙げて敵対すべきエルフと交友関係を結ぶことをその視野に入れるほど。


 そんな平穏を愛する少年は今、国境を越えてはるかアルビオンの大地に立っている。
 一応の理由は“視察”だった。
 浮遊大陸アルビオンの異常、それは大陸が速度を上げて移動していること。
 トリステインの北西を浮かんでいたアルビオン大陸が各国の上を飛び始めたことだった。

「ジュリオ様、やはりアルビオン側面に何かの装置が取り付けられているもよう」
「あのゴーレムのような技術ですか?」
「そこまでは不明ですが、形状から考えてそうではないかと」
「(ううん、確かに彼らの技術力なら十分可能でしょうが、しかし何故?)」

 大陸を移動させる理由がわからず、ジュリオは思案しながら近くの古木の表面をなぞる。
 手袋に緑色の粉が大量に絡みつく。

「やはり、これはあのカビ……」
「ジュリオ様、これをご存知なのですか?」
「ええ。ですがこれはもう失われたはず……本当にこの騒ぎを引き起こしているのはガリア王なのですか?」
「そのはずです。我々の手のものからの情報でもそうとしか。ただ奇妙な情報もあります」
「奇妙?」

 手の中の枯死したカビを払い落としながら、ジュリオは情報官に振り返る。

「被害者がほとんどいないのです。町そのものはカビに覆われゴーレムに破壊されていますが、人的被害は逃げ出してきた民衆の間のいざこざが原因のものばかりで」
「……人的被害を必要としない? なのに町を占拠して破壊活動を?」
「ええ。建物を残らず瓦礫に変えてカビで木々をなぎ払って、まるで更地を作るために動いているとしか」
「更地? この状況で戦争行為ではなく破壊発動? そんな必要が何故……」

 ふと、少年の脳裏に浮かぶ情報。
 神殿、伝説、悪魔の扉、聖地、聖域、そして召喚された自分。

「地図を! ハルケギニア全域の地図を! 各地の神殿と聖域の地図もお願いします! 竜騎士隊の皆さん、お手数ですが戦場の映像を上空から視察してください! 副長! 彼らに遠見の水晶を!」

 慌てて机の上に置かれたものをなぎ払い、少年は受け取った地図を広げる。
 聖域と神殿の位置を地図にマークしながら少年は叫ぶ。

「これじゃありません副長! かつての始祖ブリミルのころの聖域の地図です!」

 遠見の鏡を操作していたメイジが、竜騎士からの情報を処理し始める。
 古き地図を重ね合わせかつて聖域と呼ばれた場所同士を結んでいく。
 東方の森付近で見つけた遺跡も同じく地図にマーキング。
 それは驚くほどキレイに、五芒星を描いた。

「ジュリオ様! アルビオン戦場に巨大な魔法陣が!」
「位置は!? 現在のアルビオン、いえ、その魔法陣の位置は!?」

 地図に移るアルビオン大陸の位置を表す光点が、五芒星の中心へ近づいていく。

「大陸を移動させている推進装置の破壊を!」
「無理です! 間に合いません!」

 叫ぶように伝令を返す兵士たち。

 かつての世界で“成長”を放棄することで“最強”を得た赤ん坊、世界が変わることでその制約から解き放たれた少年、かつて『あかちゃんまん』と呼ばれていた彼は、思わず天を仰いだ。

 ゆっくりと、何かに押しのけられるように黒雲が晴れていく空を。

「誰か僕のマントを!」

 右手のルーンを輝かせ、あかちゃんまんは竜のミルクの入ったビンをつかみ、そして叫んだ。


 戦場の中心にあった城、正確には城の跡。
 相次ぐ虚無のぶつかり合いで完全に崩壊した城の上空、二つの力がはじけて光る。

「ははははは! どうしたミス・ヴァリエール! 迷いが見えるぞ、その拳から!」

 拳から放たれた虚無の衝撃を同じく槍から放った虚無の衝撃で相殺し、ガリア王ジョゼフは馬上に笑う。

「くっ!」
「どうした虚無の担い手よ! その姿はハッタリか? 先代が泣いているぞ!」
「黙りなさい!」

 槍が虚無の幻を貫き、その後ろから打ち込まれた拳もまた、同じく虚無の幻を貫く。

「どちらにせよ私の勝利は変わらんよ! ここで勝とうが負けようが!」
「ハッタリを!」
「ハッタリ? もう少し回りに視線を向けるべきだったな!」

 その声にルイズは視線を横に流す。
 その視界におかしな光景が映った。
 それは町並み、トリステインでもアルビオンでもない、発達した工業技術が作り出す鋼の町並み。
 海が、見えない。

「……ゲルマニア!? そんな!」
「後ほんの十秒ほどなのだよ、ミス・ヴァリエール。後ほんの十秒ほどで、私と私のミューズの目的は達成される!」

 大陸が五芒星の中心に迫る。

「今、この世界の全てが捻じ曲がる!」

 聖域により描かれる五芒星の真ん中に、アルビオンはたどり着いた。

 瞬間、世界が止まった。

 輝き始めるルイズの胸、ちょうど心臓の上に刻まれたルーンが輝きを放つ。

「あ、ああ! 精神力が!」
「は、ははははは! なんという虚脱感!」

 馬の上でジョゼフが脱力する。

「くああああ! 間に合わなかった!」
「ジュリオ様!」

 風竜の上、ジュリオの、あかちゃんまんの右手のルーンが光を放つ。

「な、何だ、この吸い上げられるような感覚は!」

 宮殿の中、ヴィットーリオの体から精神力が失われていく。

「ぬう、面妖な!」
「あう! 力が!」

 左手のルーンが放つ熱にかつぶしまんはひざをつき、その横でティファニアが崩れ落ちる。

「あはははは! あはははははは! 始まる、始まるの! また楽しいゲームが!」

 荒れ果てた鋼の建造物の中、赤いドレスの少女の額のルーンが輝く。

「ミス・ヴァリエール、見たまえ、今この世界は生まれ変わる」
「何を言ってっ!」

 大陸そのものが光を放ち、中心に浮かぶアルビオンの魔法陣がそれをかき集め空に光点を浮かべる。
 その光点が走り、ありえないほど巨大な魔法陣が描かれていく。
 見覚えのあるそれは、ルイズが二年生の春の儀式でも用いたもの。

「召喚魔法!?」
「始まるぞ、待ちに待ったこの瞬間が! 我々ならば『四つの四が揃ったとき、「始祖の虚無」が復活する』、エルフたちなら『四つの悪魔が揃いしとき真の悪魔は目覚め、大災厄をもたらす』、まあ私はどちらでも構わんがね!」
「まさかあれが!」
「然り! あれこそが悪魔の門! 命の星は意志無きものに意志を与え、意思あるものに力を与える! メイジもエルフもくそくらえだ! はははははははは!」

 世界が悲鳴を上げる中、四つの四から吸い上げられた力がゆっくりと、悪魔の門をノックする。
 あらゆる命の中で等しく、世界にヒビが入る音が聞こえた。
 ゆっくりと空から、否、“空のように見えていた世界を覆う鏡”から“それ”は現れた。
 “それ”は大地、“それ”は世界、“それ”は命。
 “世界そのもの”が、鏡を抜けてせり出してくる。
 失われた世界、砕け散った世界、全ての可能性を繋ぐ、“真ん中の世界”。

「そんな、あれは、あれは」

 あかちゃんまんは竜の背で呆然とそれを見る。

「あれは僕の世界!」

 何よりも偉大な幻想が、世界を包み込んだ。


『Let's GO ! ZEROPANMAN!~そして世界は回り始める~』








 鋼の古城の中、力を吸い上げられ倒れる赤いドレスの少女を、白いスーツに包まれた手が優しく受け止める。
 その傍らには赤いスーツを着た男と黄色いスーツを着た男。
 少女の無事を確かめホッと息をつく三人の前で、ひときわ大きなカプセルから培養液が抜かれていく。
 開かれたカプセルの中、黒い亜人が一歩を踏み出した。

「結局こうなりましたね」
「まあいいんじゃねーの? 死に掛けてた俺らにゃどうしようもなかったんだし」
「そうだね。でもそれはそれとしてもだ、君はどうするんだい?」

 白い服の亜人から少女を受け取りながら、黒い亜人はぞろりと並ぶ牙を除かせ、心底楽しそうに笑った。

「決まってるだろ? 世界はいつだって、オレ様のものだ」

 その笑みに、三人もまた笑みを返す。
 直後後ろで小さく足音。
 冷凍睡眠カプセルの中にいた老人と女性が、帽子の位置を整えながら歩み寄ってくる。

「ならワシはもう一度、工場を作らんといかんのう」
「そうですね」

 楽しそうに、本当に楽しそうに、六人は笑う。

「それじゃあ行きましょう、ジャムおじさん」
「そうじゃな。もう一度子供たちにパンを焼いてやらねばのう、バタ子や」
「はい!」
「アンアン!」


 かくて世界はつながり、“真ん中の世界”と一つになったハルケギニアは革新のときを迎えた。
 あらゆる世界につながるその“真ん中の世界”は、そこにある命そのものに力を与える。
 それでも変わらず、どんなときでも、森の中の小さな建物からはおいしい香りが漂っている。
 命を生み出す老人と、絶対に外さない魔球を投げる女性が、楽しそうに歌いながらパンを焼いている。
 静かな静かな夜の空、命の星が降り注ぎ、黒と赤は青い髪の少女とその父親と共に楽しそうにいたずらを考える。
 侍は相棒の魔剣を抱え、二つの月の下美女の酌を傾る。
 かつて赤ん坊だった少年はホットミルクを飲んでベッドの中へ、王はそれを静かに見守る。
 桃色の髪の少女は先代に会うか会うまいか頭を悩ませる。

 そして繋がる世界の中、子供たちの夢が歩き出す。
 幼いころに思い描いた幻想の世界が顕現し、ハルケギニアと混ざり合う。


 神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。握った両の豪腕と、吐き出す業火を携えて、導きし我を守りきる。
 神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。愛と勇気を胸に秘め、導きし我を運ぶは地海空。
 神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識と英知をもって、導きし我に助言を呈す。
 神の心臓ヴァンダールヴ。悲しき定めの神の天秤。ただその均衡を保つため、笑って悪意を受け止める。

 四人の僕を従えて、我はこの地へやってきた。
 生み出す命に愛を込め、我はこの地に生を振りまく。

        ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ジャムトリ

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