あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

爆炎の使い魔-07


 ギーシュとの決闘が終わった次の朝、ヒロは日課であるルイズを起こした。
「ルイズ。そろそろ起きろ。朝食の時間に遅れるぞ」
「ふぁぁ・・・わかったわ」
「私は先に出る」
「ちょ、ちょっと、一緒に食事しないの!?」
 慌てて起きるルイズ。
「昨日の今日だ。いきなりあんなことがあった後では他の生徒も警戒するだろう。何、食料の確保はできるから安心しろ」
「あ・・・」
 昨日のギーシュとの決闘を思い出すルイズ。そしてあの異形の左手も。今日もヒロは、体が隠れるくらいのマントを羽織っていたので腕は見えなかったが、あのマントの下には確かにあの巨大な左手が存在するのだろう。
「い、いいじゃない!ヒロは人間じゃないんでしょ?だったらどんな格好してて、どんな能力もってても不思議じゃないわ!」
 そこでふとルイズは一言。
「ね、ねぇヒロってエルフなの?」
 おそるおそる聞いてくるルイズ。
「エルフ?ああ、エルフの知り合いはいるが、私はあんな潔癖症軍団とは違う」
 エルフの女王、アゼレアが頭に浮かぶヒロ。
「エルフに知り合いって・・・じゃ、じゃあヒロってなんなのよ・・・」
「私はな、魔族だよ」
 それだけ言うとヒロはルイズの部屋から出て行った。
「まぞくって・・・何?」
 ルイズのつぶやきに応えるものはいなかった。なぜなら、この世界には魔族などいないのだから。



 昨日と同じように、厨房へ向かって歩くヒロ。道中、思い浮かぶのは昨日の決闘のことだ。
(昨日は我ながらまずいことをしたな・・。成り行きとはいえ、魔法の使用、左手の露呈、問題は山積みだ。この学園でもこんな異形の者は、追放されるか、迫害されるかのいずれかしかない。)
ヒロの左手は、幼少時、人間に襲われた友人をかばって切り落とされたものを、自分の魔力で再生したものである。
別段気にすることはないはずなのだが、面倒事は極力避けた方がいいと考えた。
その結果が、体を覆うほどのマントである。
普通にしていれば、旅人だと思われるだろうし、まず怪しまれることはないと思ったからである。
 思えば武器もない状態だ。もし戦闘にでもなろうものなら、武器無しでは少々心許ない・・・GOHはここへ召喚された際になくなってしまったようだ。
昨日のギーシュレベル、あの程度なら1対1ではまず負けることはないだろう。
しかし、この学園の生徒全員が相手ならどうなる?
数の暴力というものがいかに恐ろしいかを、身をもって知っているヒロは、自分の状況にため息をつくしかなかった。

 考えごとをしているうちに、厨房の前に着く、厨房に入ると若いコック数名が前に立ちふさがる。
「何だ・・・?」
ヒロはにらむ。それにたじろぐコックたち。そんな若者たちを押しのけて、後ろから太った親父が現れた。
(ブリモリンみたいなやつだな・・)
ヒロがそんな失礼なことを考えていると、への字にしていた親父の口がひらく。
「お前、メイジだそうだな」
「は?」
「とぼけたフリをしてもだめだ。お前、昨日貴族の小僧と決闘して、魔法を使って勝ったそうじゃねぇか」
「確かに魔法は使ったがな・・・別にメイジというわけではない。大体メイジというのは人間の貴族がなるものなのだろう?私は人間ではないから、そのカテゴリからは外れるわけだ」
「人間じゃねぇって・・お前さん、そのとがった耳、まさかエルフ!?」
 同じことを、同じ日に二回も言われてこめかみを押さえるヒロ。
「私はエルフではない。そうだな・・貴族のメイジに召喚された、魔法が使えるちょっと変わった種族だ、とでもしておいてくれ」
 魔族について説明すると日が暮れそうだったので、もうやけ気味になっていたヒロは左腕を見せた。
「これを見ろ。こんな腕の人間はいないだろう?」
 ヒロの腕を見たコックたちは呻く。
「なんだそりゃ・・」
「ば、ばけものだ・・・」
 予想通りの反応だ。
「さあ、気が済んだらそこをどけ。私は自分用の食事を作りたいだけだ。長居するつもりはないから安心しろ」
 ヒロは少しイライラしていた。ただでさえあまり好きではない人間、その上今はその人間の使い魔ときている。
大魔王の娘として生を受け、新生魔王軍の君主として戦争をしていたこともある自分だ。
 いきなり未知の世界へ飛ばされ、この世界のことをよく知らないとはいえ、自分の姿などで、ここまで偏見の目で見られると、さすがにイライラも募るというものだった。
 ヒロが、コックを押しどけて厨房の中へ入ろうとすると、さきほどの太った親父がまたも前に立ちはだかる。
「まちな」
「なんだ・・・?」
「お前さん、貴族と決闘したのはシエスタを助けるためだったそうじゃねぇか」
「別に他意はない。単純に私が気に食わなかっただけだ」
ヒロの言葉を聞くと、太った親父はニカーッとした笑みを浮かべた。
「その謙虚な態度・・気に入ったぜ!!お前さんが貴族だろうと貴族じゃなかろうと、そんなの関係ねぇ!!お前さんはシエスタを助けてくれたんだ、その事実は変えようがねぇ。貴族は嫌いだが、お前さんのことは好きになれそうだ」
 いきなりの親父の態度に目をぱちくりさせるヒロ。
「おう、お前さん、食事にきたんだったな。よし、今から俺が美味いもんを作ってやるからそこで待ってな!」
 笑いながら厨房へと消えていく親父。すると周りのコックが互いに顔を合わせ頷くと、ヒロの両手を取った。
「さ、使い魔さん、こっちの席へどうぞ」
「コック長の作る料理は美味いっすからね!」
 連行される宇宙人のように、ひょいっと両脇から持ち上げられるヒロ。
「お、おい!お前たち!」
 そのまま椅子にストンとおろされる。
「お前ら!さっさと手伝え!」
「「「は、はい!」」」
 厨房の奥から、親父の怒鳴り声が聞こえると、急いで作業を始めるコックたち。ヒロは置いてけぼりだった。
「あ、あの・・ヒロさんっ!」
 コックたちが散らばると、そこにはシエスタがいた。
「すみません・・・あのとき、逃げ出してしまって」
「気にするな。過ぎたことだ」
「ほんとに、貴族は怖いんです。私みたいな、魔法を使えないただの平民にとっては・・・」
「魔法が使えない。か・・別に魔法を使うわけが全てではないだろう。私とて、練習せねば魔法は使えなかった。ただ、別に魔法を使いたかったわけではなく、単にそうする必要があったからだ」
 ヒロはスペクトラルタワーに上ったことを思い出す。思えば9歳の頃の話だ。
「それでも、やっぱり圧倒的な力の前には、私たち平民は成す術がないんです」
 うつむくシエスタを見ながらヒロは考える。
(貴族しか魔法が使えない、か。この世界では魔法は血族など、それが関係しているのだろうか。それならこの学院にいる生徒、教師も含めて全員貴族というわけか。それを思えば決して少ないわけでもないな。いや、この国の全人口がどれだけいるのかもわからない状況だ。深く考えることは、まだ早すぎるな)
「でも、今回は本当にありがとうございました。経過はどうでも、私は貴方に助けられました」
「お前はこの学院に雇われているのだろう。ここのいくら貴族といえ、全てがああいう輩でもあるまい。教師などなら助けてくれそうな気もする。
 大事なことは、相手が上の存在であっても卑屈になりすぎないことだ。怖いからと、相手の言いなりになっていては何も解決しない」
「はい、逃げた後、ヒロさんが戦っているのを見て、思いました。逃げてるだけじゃ何もできない。貴族様を倒すとかじゃなくって、もっと自分を強くもとうって。私、あのとき何も考えられなくなって、でも、今度からはちゃんと1人で対応できるようにします」
 笑顔を浮かべるシエスタ。そんなシエスタを見て、ヒロも笑みを浮かべた。



「待たせたな!」
 さっきの親父が料理を持ってやってきた。量もそれほど多いわけではなく、確かに美味しそうな匂いを漂わせている。
「さあさ、食ってくれ。遠慮はいらねえ」
 言われたヒロは料理を食べる。
「確かに、いい味だ。私が今まで食べた料理の中でもかなり上の位置にくる」
「はっはっは、言ってくれるじゃねぇか。そういや自己紹介がまだだったな。俺の名前はマルトー、ここのコック長だ」
「私はヒロだ」
「ヒロって名前なのか、こんなこと聞くのもなんだが、その腕、やっぱり人間じゃねぇのかい?」
 マルトーはヒロの左腕をちらりと見る。そんなマルトーにヒロは食事をする手を止めて言う。
「そうだな。まあ半分は人間だ」
「ほう!半分人間だなんて変わってやがるな。まあいい、お前さんは貴族からシエスタを救った俺たちの英雄だ。これからはいつでも着た時には料理を作ってやるぜ」
「それは、嬉しい限りだな。だが、自分の仕事を優先してもらってかまわん。時間が空いてたら作ってくれる、程度で私は十分だ」
 あまり大人数で騒ぐのを好まないヒロらしい発言だったが、マルトーはそれを遠慮と受け取ってしまうのであった。
「お前さんは貴族に勝っちまうくらい強いくせに、威張ったりしないんだな。ますます気に入ったぜ。シエスタ!」
「はい!」
「このお嬢さんに、アルビオンの古いのを注いでやれ!」
 お嬢さんと言われ、ちょっとぎょっとしたヒロ。呼ばれたシエスタは満面の笑みになると、ワイン棚から言われた通りのヴィンテージを取りだした。
「お、おい、こんな時間から酒を飲む気はないぞ」
「気にするな!別にお前さんは学生ってわけじゃねぇだろう。授業中寝てたって何も言われねぇさ」
「そういう問題ではnんぐぐぐぐ」
「遠慮なんてすんじゃねぇ」
 無理矢理飲まされるヒロ。結局2杯も飲んでしまった。それから、食事のときはヒロは厨房を訪れるようになり、厨房の全員がヒロを歓迎し、シエスタもそんなヒロと仲良くなっていくのであった。



 ヒロがこの世界に来てそろそろ1週間がたつ。
朝食が終わると、ルイズと一緒に授業に出る。これもすでに日課となっていた。
 ヒロにとって、この学院の授業は非常に有意義である。
なんといっても学校である。この世界の内情や常識を教えるのが役目なのだ。
情報収集にこれほど適した場所もないだろうと感じた。
1番最初に気がついたことは、ここの世界の魔法は、戦闘よりも日常生活に特化したものが多いこと
である。
(なるほど、貴族=メイジとやらがこの世界で幅を利かせているわけだ。ここまで製作などの過程をスキップ出来るとなると、普通の職人というものはまず育つわけがない。しかし造形や細かい部分までは、使用者のセンスに委ねられているようだ。まったく職人がいないというわけでもないのだろうな)
 ヒロは授業を良く聞く。
おまけにわからないことがあれば質問すらする始末である。
授業態度にいたっては、この教室の誰よりも熱心であると言えるだろう。
先日の戦闘を見ていた教師たちも、最初はヒロを少し恐れるような印象があったが、戦闘狂ではないヒロは騒ぎを起こすつもりはなかった。
それどころか、授業中にわからないところがあると、ストレートに質問をしてくるヒロに次第に好印象をもっていった。
元来、教師は質問に答えるのが仕事なのである。
貴族ではないとはいえ、自分の授業をちゃんと聞いてくれるヒロは「いい生徒」なのであった。
 その日も2つ目の授業を終えると、教室移動のため、ヒロはルイズと歩いていた。
「ねぇヒロ。あんたあんな強いくせに、どうしてこんな普通の授業を受けてるの?」
「普通も何も、私はこの世界の人間ではないのだから、ここで聞く内容は9割がた知らないことばかりだ。お前に聞くのも1つの手だが、せっかく授業と言う形で教えてくれるわけだ。活用しない手はあるまい。それに教師はお前より年上だ。お前の知らないことも多数知っているだろうからな」
 なるほど、と納得するルイズ。
 ルイズは今まで、この学院を魔法の使用方法を学び、自身の能力を向上させるための場所だと思っていた。
もちろんそれは間違いではないだろうが、それ以上に、世間一般のことを学ぶ授業も確かに少なくはなかったことに気がついた。
自分はこの学院に来る前は世界は自分の家だけだった。
それを、思えばいかに自分が世間知らずに育ってきたかを思い出す。
(そうだわ。思えば魔法が使える様になることばっかり考えてきたけど、この学院を卒業したら私は領主、もしくは領主の妻として平民の上に立つことになるわ。世間のことを知らなくて民の支持なんて受けられるわけない。)
 自分とは違ったヒロの授業の受け方を聞いたルイズは、これ以降、魔法が使いたい、と思う気持ちだけでなく。
自分の将来のことも考えるようになっていた。これが後、ルイズにある行動を取らせることになる。



 ルイズとヒロがなんてことのない日常を送っている最中、学院長室で、ミス・ロングビルは書き物をしていた。
 ミス・ロングビルは居眠りをしているオスマン氏を見ると、薄く笑みを浮かべた。誰にも見せたことのない笑みである。
ミス・ロングビルは低い声で『サイレント』の呪文を唱えると、オスマン氏を起こさないように、足音を消して学院長室を出た。
 ミス・ロングビルが向かった先は、学院長室の下にある、宝物庫がある階である。
 ここには、魔法学院設立以来の秘宝が収められているのである。
 そこはとても厳重な扉があり、普通の手段では開きそうになかった。
 ミス・ロングビルは、近くに誰もいないのを確認すると、ポケットから杖をだす。
大きさはエンピツくらいだが、持っている手首を振ると、するすると杖は伸びて、指揮者の指揮棒くらいの大きさになった。
 ミス・ロングビルは、低く呪文を唱えると杖を扉に向けて振る。
「『アン・ロック』は通用するわけないか。この分だと『錬金』でも無理そうだね。多分スクウェアクラスが『固定化』の呪文をかけてるみたい」
 ミス・ロングビルがどうしたものかと、扉を見つめていると、階段を上ってくる足音が聞こえた。
 すると、ミス・ロングビルは杖を折りたたみ、ポケットにしまった。
 現れたのは、コルベールであった。
「おや、ミス・ロングビル。こんな場所でどうなさいました?」
 ミス・ロングビルは愛想のいい笑みを浮かべる。
「ミスタ・コルベールではありませんか。ええ今宝物庫の目録を作成しておりまして・・」
「はぁ、それは大変だ。この宝物庫は秘宝クラスからガラクタまで多種多様なものが入っておりますからな」
「まあ、今すぐにしなければいけない仕事、というわけでもないのですけれどね」
「なるほど、まあ、中はオールド・オスマンが詳しいですからな。一緒に見て回った方が作成も早いかもしれません」 
 すると、ミスタ・コルベールは思い出したようにミス・ロングビルのほうを向く。
「その、ミス・ロングビル・・」
「なんでしょうか?」
 照れくさそうに、ミスタ・コルベールは口を開く。
「あの、よろしければ、ご一緒にお昼などいかがですかな?」
 ミス・ロングビルは、少し考えた後、にっこり微笑んで、申し出を受けた。
「ええ、喜んで」
 コルベールは、思わず飛び上がりたいのを抑えて、ミス・ロングビルと歩き出した。
「ところで、ミスタ・コルベール?」
「はい?なんですか?」
「宝物庫の中に入ったことはあるのですか?」
「もちろんですよ。まあろくなものはありませんが」
 思わぬ誘いが成功したミスタ・コルベールは非常に気を良くしていて、何でも喋ってしまいそうな勢いであった。
「では、『死神の鎌』をご存知?」
「あれですか・・」
 いきなり真剣な顔になるミスタ・コルベール。
「あれは確かに大鎌の形をしております。しかし、なんというかあれほど禍々しいものを見たのは初めてです。本当に死神がいるとすれば、ああいうものを持っているのしょうな。触ったこともあるのですが、なんというか、持っただけで魔力を吸われるような感覚になりましてな。とてもではあり
ませんが、人間に扱えるものではないのではないでしょうか・・」
「では、なんのための道具なのでしょうか?」
「これはあくまで持論なのですが、おそらくエルフが使っていた武器、ではないでしょうか。あれほどのものはまず人間が扱うものとは思えません」
 真剣なミスタ・コルベールの様子に、思わず息を呑むミス・ロングビル。
(そんなとんでもないものなのかい・・でもそれだけのものなら好事家が好きそうじゃないか。)
「しかし、宝物庫は立派な造りですわね。あれではどんなメイジを連れて来ても、開けるのは不可能でしょう」
「確かに、魔法に関しては無敵でしょうが、物理的な力なら何とかなると思うのですよ」
「物理的な力?」
「例えば、巨大なゴーレムで叩いたりとか」
「なるほど、大変興味深いお話ですわ、ミスタ・コルベール。食堂でも聞かせてくれないかしら」
 二人は会話をしながら1階へと降りていった。


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