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プレデター・ハルケギニア-03


その翌日、路地裏の廃屋には衛士隊の姿があった。
現場は衛士達により封鎖されてはいるが、たくさんの野次馬でごった返している。
廃屋の外の片隅には誘拐された少女達、そしてその少女達の雇い主だという筋肉質な男性が抱き合っていた。

「しかし、一体何者なんだ?普通じゃねぇぜこんなの……」
一人の衛士が廃屋の天井を見上げる。そこには全身の生皮を剥がされた男達が  
逆さ釣りになっている。まるで人間が家畜に対してするように。

部屋の一角に切断された男の生首が転がっている。
その生首が不意に空中へと持ち上がった。見ると生首の髪を白く細い、それでいて
武骨さを感じさせる手が握っていた。
短く切り揃えられた金髪に青き瞳、この女衛士アニエスが後に編成される
『銃士隊』の隊長となることはまだ誰も知る由も無い。
青い瞳が生首の切断面を見つめる。


(何て切り口だ……どうすればこんな風に……)


その切り口は長年剣に携わってきたアニエスの目から見ても、いや長年剣に携わってきたからこそ
眩しく映った。
「おい、アニエス」
アニエスが考えこんでいると後ろから自分の名を呼ぶ声がした。
生首を戻すとアニエスが立ち上がり振り向く。
「何だ?何かわかったのか?」
「いや、コレなんだが……昨日魔法学院から届いた手紙だそうだ」
そう言うとアニエスに手紙を手渡す。
「魔法学院?……先日、当学園の生徒の一人が召喚した使い魔が逃亡。
特徴は身の丈2メイル以上、全身に鋼色の鎧とマスク……」

アニエスがはっとした表情になり少女達のほうを見る。



「うう、スカロン店長~」
「よしよし、怖かったでしょう妖精さんたち、ジェシカ」
「お、お父さん苦しいって、みんな無事だったんだから……」
「ああ、こんなカワイイ女の子達があんな光景見せられるなんて一生トラウマよ!犯人は変態だわ! 
猟奇趣味の変態悪魔よッ!!」
スカロンと呼ばれた筋肉質な男が少女達をまとめて抱きしめている。
少女達はみな泣き崩れているがジェシカという、どうやらスカロンの娘らしきあの黒髪の少女は
笑ってはいるがその顔色は青い。昨晩の惨劇の中、他の少女たちはみな失神してしまったが
彼女の気丈な精神は失神することを許さず、一部始終を見せられることとなったのだ。

「すまない…ジェシカ殿、少しいいだろうか?」
「はい?」
アニエスの呼びかけにジェシカがスカロンの抱擁を脱出する。
「もう一度、犯人について詳しく……」
その時、アニエス達の背後で甲高い女性の大声が響いた。

「アカデミーの者よ!全員現場から出なさい!!」
アニエスが振り返るとそこには十数人の魔法衛士隊、そして一人の女性の姿があった。
紫のロングスカートに長袖の白のブラウス、腰まで伸ばした金髪につり上がった眉と眼。
つり上がった眼に合わせるかのごとく掛けたメガネの形までつり上がっている。
アニエスがその女性に詰め寄る。

「一体どういうことだ!?アカデミーが何のようだ!」
「事情を説明する必要はないわ。いいからあなた達はすぐに撤退しなさい」
「何だと……ソレはッ!?」
つり目の女性が一枚の紙をアニエスの目の前に突きつける。
「陛下の許可証よ。わかったらとっとと出て行きなさい!」
「クソッ……みんな撤退だ」
アニエスと他の兵士、そして他の野次馬どもを追い払い金髪の女性が呆然としているジェシカ達に詰め寄る。
「あなた達が被害者ね?詳しく話を聞かせてもらうわ」




学院の一室のベットにコルベールの姿があった。
一命は取りとめたとはいえ当然まだ体を動かせるような状態ではない。
コンコンとドアを叩く音がした。
「どうぞ」
コルベールがそう答えるとオスマンが入ってきた。
「これは、学院長!」
コルベールが身を起こそうとするがオスマンが抑える。
「そのままでええよ。傷が開いてしまうぞい」
「すいません……」
「ふむ、どうかね傷の具合は?」
「はは、大分楽になりました。貴重な秘薬を使ってくださったと聞きました。
ありがとうございます」
「ええよ。こんな時に使わずに何の為の秘薬じゃ」

数瞬の間を置きオスマンが話だす。
「さて……こんな状態の君には悪いのだが、聞かせてもらえるかな。
君が闘った亜人のことを」
「…はい、私が知る限りのことを話ます」



コルベールの話を聞き終えたオスマンは何か深く考えこんでいるようだったが
やがて小さく諦めたように呟いた。
「やはりな……」
「え?」
「あ、何でもない、何でもないぞい!……ゴホン!
しかし困ったことになったの」
「ええ、聞けばあの後学院の外に逃げ出したとか。
早く見つかればよいのですが……」
「ふふ、あの『炎蛇』ですらたやすく仕留める相手じゃぞ?」
「学院長……その名前は……」
「すまんすまん、冗談じゃ」

その時ドアをノックする音が響いた。
「入りたまえ」
オスマンが答えると一礼しミス・ロングビルが入ってきた。
「学院長、来客です」
「誰じゃね」
「アカデミーの方です。お話したいことがあると」



オスマンが学院長室につくとあの金髪のつり目の女性が立っていた。
「ごきげんよう、オスマン学院長。アカデミーのエレオノールと申します」
「これはごきげんよう。で、何のようかな?お忙しいアカデミーのお方が」
 オスマンが少し皮肉っぽく言い放つ。
「昨日の晩、ブルドンネ街で殺人事件が起こりましたわ。
殺されたのは少女数人を誘拐した人身売買の犯罪者十数人。
男たちは全員殺された後全身の生皮を剥がされて逆さ吊りにされた……
まるで家畜のようにね」
オスマンが一瞬はっとした表情になるがすぐに元の穏やかな表情に戻る。
「少女達の証言によれば犯人は全身に鎧を纏った長身の亜人……
昨日あなたが手紙で書いた脱走した使い魔で間違いありませんわ」 
「ふむ、そんなことが起ってしまったか……ご報告感謝するぞい」


「オスマン学院長、私がここに来たのは単なる報告ではありません。
あなたにお話をお聞きするためです」
「ん?わしに?一体何を聞こうと言うのかね、この老いぼれに」
「ふふ、まだとぼける気ですか……あなたはあの事件唯一の生き残りです。
嫌でも協力してもらいますわ」
エレオノールの言葉にオスマンは長く伸びた髭をいじりながら答える。 
「あの事件?何のことかのう、最近すっかりモウロクしてな。昔のことはよく思いだせん」


「あの亜人の持っている価値は想像を超えますわ。
それはあなたが一番わかっているはずです。
ここに保管されている『破壊の銃』も、そして我々の所にあるアレも結局何一つわからず
研究はストップしています。あの亜人を捕らえられれば全てが解明できるかもしれない…… 
またとないチャンスですわ」

「捕らえる?……フフ、ハハハハハハッ!!」
エレオノールの言葉にオスマンは突然、腹を抱え笑い出した。
「何がおかしいのですか?」
笑いすぎて流れた涙を拭きながらオスマンが答える。 
「ハハハ、すまんすまん……なぁエレオノールさん。
わしが言えることは一つだけじゃ。まぁ無駄な助言だろうがの。
『馬鹿なことは考えるな』、それだけじゃ」




その日の深夜のブルドンネ街の路地裏、そこにポツンとある武器屋に奇怪な姿があった。
あの亜人だ。人身売買の犯罪者達を葬り去り、今度は何を思ってか武器屋へと忍び込んでいた。
巨大なトカゲのような手が壁に掛けられたマスケット銃を手に取る。
この世界では最新式の物だ。亜人は数秒ほど手にした銃を見ていたがすぐに壁に戻した。
その時、室内の一角から低い、男の声がした。

「おい、何だおめーさん。こんな寂れたボロ武器屋で物盗りか?」
亜人が驚いた様子で振り向く。
「ここだよ、ここ」
見ると部屋の隅に乱雑に積まれた剣の一本の鎬の金具部分がカタカタと動き喋っているのだ。
「へへ、いい事教えてやる。店の奥の方に行ってみな。値段だけは張りやがるナマクラが
いくつも置いてあるぜ」
亜人は喋る剣を不思議そうに首を傾げながら見ている。
その時カウンターの扉の向こうからガタガタと音がした。

「やべぇ、起きやがったか?おいどっかに隠れろよおめーさ……ウオッ!?」
扉を乱暴に開け店主が現れる。
「おいうるせーぞデル公!何時だと思ってやがる!こんな夜中に『一人』でブツブツと。
ついにイカレやがったか、ああッ!?」
「あ~すまねぇ、寝言だよ寝言。気にせず眠ってくれや」
その内貴族に頼んで溶かしてやる、と言い残し店主は乱暴に扉を閉めた。

「おでれーたぜこりゃあ……おめーさん姿を消せるのかよ。
先住か?でもおめーさんどう見てもエルフなんかには見えねーしな」
先ほどより大分小声で剣が喋る。同時に青い電流が走ると共に亜人が姿を現す。
「はは、こいつはおもしれー……オイ俺を連れてけ!どうせここにいたって売れやしねぇ。
そろそろここで寝てるのにも飽きちまった。頼むぜ相棒!!」

翌朝、路地裏の武器屋からは一振りの長剣が無くなっていた。


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