あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第四部 第4話 『作戦』 上


 ~アルビオン戦五日前~

「みんな、準備は良いかい?」
 メガネの少年が後ろを振り返り、少女達に尋ねる。

『お、おっけーよ!どんと来なさい!』
 麦わら帽子に白いワンピースを着た桃色の髪の少女が、緊張した面持ちで答える。
『大丈夫よ、必ず耐えて見せるわ!』
 サングラスに赤いキャミソールを着た赤毛の女性が、気合いを入れる。
『…行く』
 水色Tシャツにハーフジーンズを着た青いショートヘアーの少女が、無表情に頷く。

「それじゃ・・・行くよ!」
 少年は、扉を開け放った。少女達が後に続いて外に一歩出る。


『『…あ、あ!あっついいーーー』』
 桃髪赤髪少女は、ソッコーで回れ右して桜田家に飛び込んだ。青髪少女は、外に出る前
に回れ右してた。


『ああ~、このくぅらーって凄いわねぇ~。外のサウナがウソのようだわ~』
 キャミをパタパタしてクーラーの冷気を胸に受けるのは、キュルケ。
『ちょっと~、チキュウがこんなに熱いっつーか、蒸し暑いなんて聞いてないわよ。あん
たらよく生きていられるわね。こんなんじゃ、キャミソールなんて下着姿で歩き回りたく
もなるわ。
 ん~でも、このセンベイって美味しいわぁ』
 センベイばりぼりかじってるのは、ルイズ。
『これ…凄い。遠見の鏡?』
 TVにかじりついてチャンネルをいじってるのは、タバサ。

 トリステインの3人娘は、日本へ来ていた。だけど、日本の夏にはハルケギニア貴族の
誇りも勝てやしない。



 ガリアから戻った一行は、何食わぬ顔で朝食へ向かった。戦争前のゴタゴタで、彼等が
昨日の午後からいなくなった事を咎める者もいなかった。
 ルイズは宮廷から、明日正午に使い魔を連れて王宮へ参内せよ、との命が下っていた。
 キュルケには実家へ避難するよう手紙が来ていたけど、丸めてゴミ箱ポイ。
 タバサには、特に何も変化はない。

 ・・・つまり、明日の昼までは全員フリー・・・
 3人の頭に浮かんだ事は、口にするまでもないくらい顔に出てた。

 3人娘は普段通りに授業を受け(男子生徒が著しく減っていたが)、アニエスという平
民出の女性武官に激しくしごかれた後、ひと眠り。夜を待ちルイズの部屋に集合。ちなみ
にジュンと薔薇乙女は、体力回復のため、ずっと休息。
 カーテンを何重にも重ね、ドアも厳重に鍵をかけ、ディティクト・マジックで魔法が仕
掛けられてないか調べ上げ、全員で壁や天井や床に細工や覗き穴が無い事を確認した後、
nのフィールドへ旅立った。
 タバサが命じられた北花壇騎士としての任務や、アルビオンとの戦争等について、相談
するために。そして何より、異世界を見たくてしょうがないから。



「いやぁ~、そう言われてもなぁ…この夏は凄い暑さだったんだ。おかげでもう九月末な
のに、この有様だよ。特に今日は酷いや」
『んも~ぅ、せっかく異世界を見回るつもりだったのにぃ。これじゃ外に出れないわぁ』
『ちょっとキュルケ。あたしたちは別に遊びに来たんじゃないんだかんね!重要な作戦会
議のために来てるんだから!』

 ルイズは、ずずずぅ~と派手に音を立てて、ストローでコーラを飲み干す。

『うわっ!?なにそれ、その真っ黒で泡だらけの!美味しいの!?』
『うーん、炭酸水に砂糖たっぷり入れたって感じかしら?色は不気味だけど、なかなか刺
激的ね』
『へぇ~、ねぇジュンちゃーん。あたしもちょうだーい』
「あ、今姉ちゃんが入れてくれてるよ」

 と言ってる所へ、のりがお盆にコーラだけでなく、色んなジュースを入れてきた。
「は~い、みなさーん!お待たせしましたー」
  パパッ
 音もなく寄って来たタバサが、残像も見えない素早さでコーラとアイスティーを取って
いく。
『あー!それあたしも飲みたかったのにぃ!』
『まぁまぁルイズ、他にもあるんだからさぁ。慌てないの!』
 キュルケはスプライト、ルイズはアップルジュースを口にする。
『うわー!炭酸水をこんな甘くするなんて、びっくりだわぁ!』
『へぇ、リンゴを飲み物にしちゃったのね。凄い甘さねぇ』
 タバサも、無言無表情ながらも、頬が緩んでるように見える。

「ねぇねぇジュンくん、なんて言ってるの?」
「ん?ちょっと変わってるけど、すっごく甘くて美味しいってさ」
「うわ~、よかったぁ!それじゃ、お昼ご飯に花丸ハンバーグ作っちゃうね!
 それにしても、残念だなぁ、あたしもハルケギニア語がわかったらいいのになぁ。お姉
ちゃんもお話したいなぁ」
 キャイキャイ楽しげにおしゃべりする2人と、クールで無口な少女を眺めて、会話の輪
に入れないのりは、嬉しくもため息をついてしまう。


「ハーイ!みんなぁ、お洋服をぉさ・ら・に!たっくさん持ってきたわよー!」
「なめらかプリンやチーズフランや、とっておきのモカロールも持ってきたかしらー」
 廊下から大荷物を両手に抱えてるのは、金糸雀と草笛みつ。

『わー!やったぁ!どれどれ見せてよー!へーこれ何?さまーにっとっていうの?』
『おお、これがチキュウ女性の必須アイテムという、ぶらじゃーなのね・・・なるほど、
これは殿方の脳髄を直撃するわね』
『じゃーじ…動きやすそう…もかろーる、美味しい』
「あ、あのさ・・・お願いだから、3人ともさ・・・ていうか、さぁ」

 通訳をしているジュンが、真っ赤になってうつむいてしまう。
『あら、なぁに?』
 と、ニヤ~っとしながら、わざとらしくキュルケが聞いてくる。
「僕はここで、通訳しなきゃ、だから、ここで、下着を広げないで欲しい・・・」
 キュルケは既にキャミソールを脱ぎ始めてた。もちろん、わざと。

  ぽかっ
 赤くなったルイズが、ジュンを殴り飛ばす。
 のりもみっちゃんも金糸雀もコロコロと笑ってる。

「ところで、真紅と翠星石はどこにいったかしら?こんな大事な会議に遅れるなんて、同
じ薔薇乙女として恥ずかしいかしら!」
「あ、二人なら水銀燈を探しにいってるよ。水銀燈のヤツ、デルフリンガー持って、どっ
か行っちゃたんだ」
「失礼ねぇ。ちゃあんと間に合ったじゃないのぉ」

 廊下からやってきたのは、自分の身長より遙かに長いデルフリンガーを肩にかついだ水
銀燈。 

『へへ、悪く思うな、ジュンよ。なにせこの姐さんのお見舞いってやつぁ長くてよぉ!』
「で、デル公!余計な事いうんじゃないわよぉ!」
『いいじゃねぇか、恥ずかしがらなくてもよぉ。しゃべる剣が珍しいって喜んでくれてた
しよ!』
「うううっうるさいわねぇ!」
 照れ隠しにデルフリンガーをブンブン振り回す。

 その様子に、タバサが首をかしげた。
『スイギントウは、デルフリンガーの言う事が分かる?』
 答えたのは、水銀燈の後ろから現れた真紅と翠星石。
「ええ、分かるわ。でも、ハルケギニア語が分かるって事じゃないの」
「私達ローゼンメイデンはぁ、物に宿る魂とお話をするのですぅ。言葉じゃないですぅ」
 ちなみに真紅と翠星石は指輪経由で、ジュンへの魔法効果を間接的に受けている。おか
げでハルケギニア語を話す事が出来ている。

  ピンポーン
 呼び鈴が鳴る。扉を開けたジュンの前には、ピンクのTシャツとキュロットスカート
の巴。
「よぉ、いらっしゃい。でも日曜は午前中、剣道部の練習じゃなかったっけ?」
「こっちの方が大事よ。お邪魔するわ」
「ああ、悪いな、無理に呼びつけて。ありがとな」
 巴も、かしましい女性達の茶会に入っていく。


 桜田家の広いわけではないリビングには、魔法学院の少女3人に、草笛みつ、のり、巴
に薔薇乙女4人、さらにはおしゃべりなデルフリンガーもいる。


「さて、それでは、今日来れる人はみんな来たようなので」
 ジュンが、立ち上がって司会進行を始める。

「あー!カナのとっておきプリンを盗ったかしらー!?」「あ~らぁ?ごめんなさぁい」
「ちょっと水銀燈、いい加減デルフリンガーを置いて座りなさいな」『まぁまぁいいじゃ
ねぇかよシンク。俺もたまにゃあ、こんなステキな姐さんに振られたいぜ』「あらあら、
わかってるじゃないのぉ」

「今後のローザミスティカ捜索と!来るべき対アルビオン戦争!そして高位の『治癒』魔
法を使えるメイジの協力について!」
 大きな声で、皆の注意を引こうとする。

「あらぁ、ダメですよキュルケさん!ブラはデザインよりサイズと材質が重要ですよ!」
『と、のりは言ってるですぅ。まぁ、のりは趣味がババァなのでぇ、デザインについては
のりに期待してはダメですぅ』『え~?でもぉ、このレースなんかステキよねぇ。絶対こ
れがいいわよ』『た、タバサも、ぶ、ぶらじゃあ選ぶの??』『このすぽーつぶら、よさ
そう』『う、うう、なら、あたしだって、あたしだって!』「あのルイズさん?ブラは、
胸を、その・・・」
 巴には、こちらの寄せてあげるブラを使ってみては?・・・なんて口が裂けても言えな
かった。

「今!みんなで!話し合おうと!!」
 声を必至に張り上げるジュン。

  パシャパシャパシャっ!
「うっわー!これよこれなのよ!!これぞまさに天使!?悪魔的天使だわー!!」
 みっちゃんは凄いテンションでデジカメ撮りまくり。
「ちょ、ちょっとぉ~。あんたさっきからなんなのよぉ」
 水銀燈は、その不気味なまでの勢いに、すっかりタジタジ。
「いい!白銀の長い髪!黒い翼に逆十字ドレス!まさにこれは、シニフィエとシニフィア
ンの具現化よぉ!」
  パシャパシャパシャパシャパシャパシャ!
「ちょっとあんたぁ・・・いい加減にしなさいよ!」
「そうっ!その表情よっ!!愛と狂気を併せ持つ、甘い毒っ!!さぁほら、剣をこうかざ
してっ!」
 水銀燈の赤い目に睨まれても、怯むどころかますます興奮してる。あまりの勢いに押さ
れて、渋々デルフリンガーを八相に構える。
「きゃーっ!!これよこれ!!っさっすがローゼン!!伝説の人形師!!まさに天才の技
だわぁあーー!!」
『お、おで、れーたな・・・すんげえ女だなこりゃ』
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ!

「人の話を聞けえーーーーーーーーーーーーっっ!!!」
 ジュンの絶叫が、残暑厳しい街に響き渡る日曜日なのであった。




―――トリステイン魔法学院 深夜 ルイズの部屋

 日付が変わり、アルビオン戦四日前となった。正午には、ルイズ達は王宮へ行かねばな
らない。
 真っ暗な部屋に、鏡台からの光りが満ちる。
 緑の光玉が鏡面からちょっとだけ覗く。しばしの後、紅・緑・紫・金色の光りが室内を
飛び回り、鏡面を出入りする。そして、どやどやと大小様々な人々が鏡からわき出した。

「よーっし、どうやら安全ね」
 腰に手を当てて安堵したのはルイズ。
「廊下は、大丈夫」
 扉をちょっとだけ開けて外を確認するジュン。
「外は・・・大丈夫、何もいないわ」
 何重にも重ねられたカーテンをめくって外を確認するのはキュルケ。
「室内、魔法反応無し」
 ディティクト・マジックを室内にかけるのはタバサ。
『うっわー!っこっこここがハルケギニアなんだぁ!写真撮らなきゃ撮らなきゃ』
 といってデジカメを手にして窓へ向かおうとしたみっちゃんの目の前に、水銀燈が手に
するデルフリンガーが突き出された。
『ちょっとあんたぁ?今回の作戦、忘れたっていうのぉ?』
『あ、あはは、ごめんなさい、興奮しちゃって』
「まったく、しゃーねー姉ちゃんだよなぁ!」
 デルフリンガーも呆れた様子だ。
『大丈夫よ、みっちゃん!この作戦が終われば、自由にハルケギニアに来れるかしら!』
 と、朗らかに言う金糸雀の頬を翠星石が、ぎにゅうぅ~っとつねり上げる。
「んなワケないですぅ~!ばれたら大変なのは変わらんですよぉ~!nのフィールドも地
球も、トップシークレットですぅ~!」
『いにゃあ~!い、痛いのぉ~』

「ちょっと翠星石も金糸雀も、そのくらいにして、真面目にしなさいな!」
 真紅がふわりと鏡台に降り立つ。その背後から、最後にジュンがわき出した。
「よーっし!みんな揃ったし、早速始めようか」
 一同の前に立ち、ジュンが作戦の最終確認をする。

「それでは拠点はここ、ルイズさんの部屋。キュルケさん、タバサさん、デル公、そして
ルイズさん、よろしくお願いします」
「任せて!」「うふふ!楽しみだわぁ~」「おうよ!6000年が伊達じゃねぇってみせ
てやるよ!」
 タバサもコクリと頷く。

 ジュンは右手を高々と掲げる。
「それでは、ミッションスタート、1stフェイズだ!タイムリミットは日の出まで!各
員の奮闘に期待する!行けぃっ!」
  ぽかっ
「声でっかい!」『かぁっこつけてんじゃないわよぉ』『似合わない…かしら?』
 ちょーしこいたジュンに一通り突っ込みを入れつつ、全員nのフィールドへ入っていっ
た。




 空が白み、学院に朝日が差し始めた頃、全員が鏡台から帰ってきた。ルイズがぐったり
とベッドに倒れ込む。
「ぐへぇ~、さっすがに疲れたわぁ」
「ふぅ、とにかく準備は完璧よぉ~。これで上手く行くと思うわ」
 キュルケもベッドに腰をかけて息をつく。そのタバサは、もうフラフラだ。杖で体を支
えて立ってる。

 金糸雀とみっちゃんが床にべとーっと突っ伏してる。
『か、カナ・・・大丈夫ぅ?』
『カナは、頭脳派、だから・・・肉体労働は苦手かしら…?』
 そんな金糸雀の頭を、水銀燈がデルフリンガーでツンツンつついてる。
『なぁにが頭脳派よぉ、おバカのくせにぃ。でもま、よく頑張ったんじゃないのぉ?』
「そうだぜ、みんなよく頑張ったわな!これで、かなり楽になるんじゃねえか?」

 ジュンは疲れ果て、椅子にだらぁ~っと腰掛けてる。口を開くのもおっくうそうだ。
「み、みんな、とにかくお疲れ様ぁ~。あとは2ndフェイズまで、ゆっくり休んでね」
「ふぅわ~う、お疲れ様ぁ~」「おやすみ」『それじゃ、またねー!』『うふふふ、次はこ
の金糸雀様が、悪人共をとってめてやるかしら!』『あんたの場合、逆にとっちめられる
のが関の山ねぇ。ま、せいぜい足引っ張るんじゃないわよぉ』
 キュルケとタバサは扉から、草笛と金糸雀と水銀燈は鏡から帰って行った。

「ふぅあ~、それじゃみんな、あたし達も昼まで寝ましょうか」
「だな。王宮へ、か・・・緊張するなぁ」
「あたし達ローゼンメイデンにとっても、晴れの舞台よ。ゆっくり休んで行きましょう」
「ですねぇ。それじゃ、おやすみなさいですぅ」
「おう、なんかあったら俺が起こしてやるからよ。おめーらはゆっくり寝な」
 壁に立てかけられたデルフリンガーを見張り役に、4人は夢の世界へ旅立った。




  ~アルビオン戦四日前、昼~

  コンコン
 太陽がかなり天上に上がった頃、ルイズの部屋がノックされた。ルイズ達を呼びに来た
のはシエスタ。
「失礼します。王宮より竜騎士隊がお迎えに参りました」
「へ~。遅いと思ったら、馬車じゃないんだ。まぁいいわ、すぐ行くと伝えて」
「承知しました・・・?」

 シエスタはルイズの部屋を覗き込む。だが、いるのはルイズと、トランクから出てくる
薔薇乙女だけ。ジュンの姿は無かった。そのルイズの頭には素っ気ない黒のカチューシャ
がついている。
「あぁ~らぁ?ジュンがいないのが気にかかるのかしらぁ~?」
「ふぇっ!?し、失礼しました!で、ですが、その、使い魔達も連れてくるようにとのこ
とでしたので」
「大丈夫よ。ジュンは今、コルベール先生の研究室に行ってるわ」
「そうでしたか。では、呼んで参ります」
「無用よ。今伝えるわ・・・ジュン、聞こえる?迎えが来たって。・・・大丈夫、もうす
ぐ来るって言ってるわ」
「はぁ・・・?」

 シエスタには、ルイズが独り言を言ってるように見えた。カチューシャから伸びる棒の
先に付いた、黒くて丸い綿の塊に話しかけているように見えていたから。



 コルベールの研究室では、ジュンがコルベールにゼロ戦の具合について尋ねていた。な
にせ、1週間ほど前にバラバラにされてたから。
 外からは、広場で走らされている女生徒達のかけ声が聞こえてくる

「・・・オーケー、すぐ行くよ」
 ジュンは、インカムのマイクを引っ込めた。
「凄いな。その、とらんしーばーというのは・・・こんな離れた場所から自由に話が出来
るとは」
 コルベールは、感心しきりだ。興味深げにインカムとトランシーバーを観察している。
「ええ、便利ですよ。ゼロ戦から降ろした機械、あれと似たような物です。ただ、この携
帯用のヤツは小型なので、1リーグくらいしか話が出来ないんですけどね」
「なるほど、あのササキという人の遺品には、色々便利な物があったんだなぁ…今度、見
せてくれないか?」
「ええっと、その、故人の物なので、僕の国の風習上、ちょっと問題が・・・」

 ジュンが先日日本で買い集めて持ってきた品々は、海軍少尉佐々木武雄の遺品、という
ことにしていた。

「ふむ、そうですか、残念ですぞ。ですが、気が変わったらぜひぜひ!」
「はい。それじゃ、王宮へ行ってきます。また、離陸お願いしますね」
 そう言ってジュンはコルベールの研究室を出ようとした。だが、何か言いたげな教師の
姿に気が付いた。

「あの、何でしょうか?」
「君は・・・戦争に行くつもりかね?」
 コルベールの表情は、真剣そのものだ。

「まだ、分かりません。おそらく王宮や軍の人は僕たちを狩り出したいでしょうけどね。
僕らはルイズさんの使い魔なので、ルイズさんが戦争に行かないのなら、僕らも行きませ
ん」
「ミス・ヴァリエールはなんと?」
「志願するつもりだそうです。でも、女の自分が志願するなんて、お父様がお許しになら
ないだろう、と」
「そうかね、そうだろうね・・・で、君自身は、戦争に行きたいのかね?」

 冴えない中年男のハズの教師は、刺すような目で少年をみつめている。普段の授業での
姿とはあまりに違う雰囲気に、コルベールの真剣さをうかがいとれる。

「・・・ルイズさんが危険な目に遭うなら、僕らは主を守ります。それに、戦争が始まっ
たのは、僕らが余計なマネをしたせいでもあるんですから。責任は取らないと」
「そうか…行かずに済むと、いいな」
「ええ。…失礼ですが、先生は志願されないのですか?」

 既に、ほとんどの男性教員と男子学生が軍に志願している。残った女子生徒に対し、ア
ニエス率いる平民出身女性士官達が、減った授業の穴埋めとして軍事教練をしている。

「私は教師だ、そしてここは学舎だ。だから私は授業をするよ」
 コルベールはにっこり微笑む。それが当然という風に。

「そうですか。それも良いと思います。人殺しなんて、しないで済むなら、それにこした
ことはないんですから」
「そうだね。そして私は、君のような少年を戦場に送りたくはないんだ」
「僕も、行きたくはないです。でも、戦争は向こうからも来てしまうんですね。この前の
戦艦の件で、よく分かりました」
「本当だね。まったく、戦争とはイヤなものです・・・」
 嘆く教師の顔には、深い悲しみに彩られていた。まるで巨大な重しを担ぐかのように、
苦しみに満ちていた。




 学院の正門前に、若い竜と少年騎士が待機していた。柔らかな白い金髪に、少女の様な
顔立ち。竜は風竜。
 正門から続く道の横に作られた滑走路。その学院側の端には、ゼロ戦の格納庫代わりに
立てられた、大きなテントの様な物がある。

 ルイズと使い魔達とコルベールがやってくると、若い竜騎士はビシッと敬礼する。
「ミス・ヴァリエール及びその使い魔のお迎えに上がりました!自分は未だ竜騎士の見習
いでありますが、全力をもってお送り致します!」
「なんでまた、見習い竜騎士が迎えなの?」
「は!急ぎ王宮へお連れするように命じられたものの、現在竜騎士隊は軍事演習に忙しい
ためであります!そのため、見習いの自分が派遣された次第であります!」
「そう、それじゃしょうがないわね。んじゃ、私は風竜に乗るとするわ。ジュンはひこお
きでお願いね」
「うん。派手に僕らを見せつけるとしよう。到着したら着陸のナビをお願いするよ。真紅
と翠星石は」
「あたしはゼロ戦に乗るわ」「それじゃ私はルイズさんと一緒に竜にのるですぅ」
「じゃ、コルベール先生。またエンジンお願いします」
「ああ、頑張ってな」
「へへっ、こんなもん見たら、王宮の連中もジュンを平民だなんてバカに出来ないぜ」

 ジュンと真紅とデルフリンガーはゼロ戦で、ルイズと翠星石は風竜で飛び立った。


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