第一話 「召喚!ファンタジー・エクスプロージョン・ファーストキス」
荒れ果てた大地、どす黒い雲に覆われた空。
文明の滅んだ地球上でおそらく唯一残った人工物であろう巨大な塔の頂上に、
少年―天野河リュウセイは立っていた。
カブトボーグ世界チャンプであり、これまで幾度と無く世界の危機を救ってきた男だ。
傍らには金色の仮面をした男が倒れている。
名はビッグバン、謎の組織ビッグバン・オーガニゼーションの総帥であり、
この地球を滅ぼした張本人であった。
死闘の末ビッグバンを倒したリュウセイだったが、
失ったものは余りにも大きすぎた。
親友、ライバル、いや、人どころではない、他の動物や植物すらも、もうこの地球上には残っていないだろう。
「オレは…何も守れなかった…」
絶望的な孤独に打ちひしがれる彼の前に、それは現れた。
(光の…壁?)
その光る鏡のようにも見える円盤は得体の知れないものであったが、
そこから微かに感じる人の気配は、
誰もいなくなってしまった世界の中、戦いによって精神を磨り減らした彼の心に安らぎを与えた。
それにより今まで張り詰めていた緊張の糸が切れ、彼は意識を手放す。
倒れこんだ光の先で、誰かに会えると信じて。
文明の滅んだ地球上でおそらく唯一残った人工物であろう巨大な塔の頂上に、
少年―天野河リュウセイは立っていた。
カブトボーグ世界チャンプであり、これまで幾度と無く世界の危機を救ってきた男だ。
傍らには金色の仮面をした男が倒れている。
名はビッグバン、謎の組織ビッグバン・オーガニゼーションの総帥であり、
この地球を滅ぼした張本人であった。
死闘の末ビッグバンを倒したリュウセイだったが、
失ったものは余りにも大きすぎた。
親友、ライバル、いや、人どころではない、他の動物や植物すらも、もうこの地球上には残っていないだろう。
「オレは…何も守れなかった…」
絶望的な孤独に打ちひしがれる彼の前に、それは現れた。
(光の…壁?)
その光る鏡のようにも見える円盤は得体の知れないものであったが、
そこから微かに感じる人の気配は、
誰もいなくなってしまった世界の中、戦いによって精神を磨り減らした彼の心に安らぎを与えた。
それにより今まで張り詰めていた緊張の糸が切れ、彼は意識を手放す。
倒れこんだ光の先で、誰かに会えると信じて。
瑞々しい緑の芝、青く澄んだ空。
貴族達が魔法や礼節を学ぶ名門、トリステイン魔法学校の近く、
これから長き時を共にする使い魔を呼び出す神聖な召喚の儀式が行われる草原の上で、
桃色の髪の少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは絶望に打ちひしがれていた。
呆然とした彼女の視線の先にいるのは、前髪が黄色く他は茶色いという妙な髪形で気絶している少年―リュウセイ。
魔法を使おうとすると爆発して失敗してしまう自分を馬鹿にしてきたクラスメイト達を見返すために
立派な使い魔を呼び出して周りの人間を驚かせたいと考えていた彼女にとって、
竜でも幻獣でもないただの人間を召喚してしまったという事実は余りにも強烈過ぎた。
慌てて引率であるコルベールにやり直しを要求するも、儀式は神聖なるものとして却下され、
現実が飲み込めずへたり込んだままの彼女に生徒達の心無い野次が飛んでくる。
「おい!『ゼロのルイズ』が平民を召喚したぞ!」
「オォーゥ!ルイズサーン!いくら魔ほ…マージックが使えないからって、その辺の平民をつれてきちゃだめデショー」
あまりの悔しさにとうとうこらえきれず一筋の涙が伝っていった頬を、
誰かの手が優しく撫でる。
驚いたルイズが顔を上げると、少年がいつの間にか目覚めてこちらに微笑んでいた。
次の瞬間表情は怒りに変わり、それは野次を飛ばしていた周りの生徒に向けられる。
「話は聞かせてもらった…お前ら!オレと勝負しろ!
オレが勝ったら…二度とこの女の子のことを馬鹿にするんじゃねぇ!」
ビシッ!と指を刺し勝負を挑む。
孤独な世界から救い出してくれた少女が、
自分を呼び出したことで馬鹿にされてしまっているらしい状況に我慢ができなかったらしい。
珍しく筋が通っている。
野次を飛ばしていた生徒達の中から、小太りの少年が出てきて言う、
「いいだろう平民、貴族に喧嘩を売ったこと、後悔するんじゃないぞ!
だがまず!そちらが負けた場合の条件も決めさせてもらおうか!」
「オレの命とこの女の子の命をくれてやるぜ!」
「いいだろう!決闘開始だ!」
「…え?ちょっ!?」
さっきまで呆然としていたため頭が回らず、ただ成り行きを見ていたルイズだったが、
いきなり自分の命までかけられては放って置けない、
しかも相手は貴族で彼は平民だ、負けは目に見えている。
引率のコルベールに止めてもらおうと視線を送ったが、
彼の目はリュウセイがいつの間にか手に持っていた何かに釘付けになっており役に立ちそうに無い。
すでに先ほどの合図により―自分の命を賭けられた少女の合意も無く―決闘は始まっていた。
貴族達が魔法や礼節を学ぶ名門、トリステイン魔法学校の近く、
これから長き時を共にする使い魔を呼び出す神聖な召喚の儀式が行われる草原の上で、
桃色の髪の少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは絶望に打ちひしがれていた。
呆然とした彼女の視線の先にいるのは、前髪が黄色く他は茶色いという妙な髪形で気絶している少年―リュウセイ。
魔法を使おうとすると爆発して失敗してしまう自分を馬鹿にしてきたクラスメイト達を見返すために
立派な使い魔を呼び出して周りの人間を驚かせたいと考えていた彼女にとって、
竜でも幻獣でもないただの人間を召喚してしまったという事実は余りにも強烈過ぎた。
慌てて引率であるコルベールにやり直しを要求するも、儀式は神聖なるものとして却下され、
現実が飲み込めずへたり込んだままの彼女に生徒達の心無い野次が飛んでくる。
「おい!『ゼロのルイズ』が平民を召喚したぞ!」
「オォーゥ!ルイズサーン!いくら魔ほ…マージックが使えないからって、その辺の平民をつれてきちゃだめデショー」
あまりの悔しさにとうとうこらえきれず一筋の涙が伝っていった頬を、
誰かの手が優しく撫でる。
驚いたルイズが顔を上げると、少年がいつの間にか目覚めてこちらに微笑んでいた。
次の瞬間表情は怒りに変わり、それは野次を飛ばしていた周りの生徒に向けられる。
「話は聞かせてもらった…お前ら!オレと勝負しろ!
オレが勝ったら…二度とこの女の子のことを馬鹿にするんじゃねぇ!」
ビシッ!と指を刺し勝負を挑む。
孤独な世界から救い出してくれた少女が、
自分を呼び出したことで馬鹿にされてしまっているらしい状況に我慢ができなかったらしい。
珍しく筋が通っている。
野次を飛ばしていた生徒達の中から、小太りの少年が出てきて言う、
「いいだろう平民、貴族に喧嘩を売ったこと、後悔するんじゃないぞ!
だがまず!そちらが負けた場合の条件も決めさせてもらおうか!」
「オレの命とこの女の子の命をくれてやるぜ!」
「いいだろう!決闘開始だ!」
「…え?ちょっ!?」
さっきまで呆然としていたため頭が回らず、ただ成り行きを見ていたルイズだったが、
いきなり自分の命までかけられては放って置けない、
しかも相手は貴族で彼は平民だ、負けは目に見えている。
引率のコルベールに止めてもらおうと視線を送ったが、
彼の目はリュウセイがいつの間にか手に持っていた何かに釘付けになっており役に立ちそうに無い。
すでに先ほどの合図により―自分の命を賭けられた少女の合意も無く―決闘は始まっていた。
「僕はメイジだ、だから魔法を使って戦わせてもらうよ!」
いやらしい笑みを浮かべながら呪文を詠唱する小太り―マリコルヌを気にするでもなく、
リュウセイは手に持ったそれを構え、叫んだ。
「チャージ3回!フリーエントリー!ノーオプションバトル!」
本来ならこれを叫ぶ必要は無かった。
相手が魔法を使う以上、これはボーグバトルではないし、
この世界にはボーグ魂を感じないため、ここが地球でないこともわかっていた。
本来なら意地でもカブトボーグでの対決を望む彼なのに、あっさり魔法との対決を許したのもそれ故であったが、
彼自身はどこへ行こうがボーガーであり続ける。
だから、叫ばずにはいられなかった。
「いっけえぇぇぇぇぇ!オレの!トムキャットレッドビートルゥウウウウウウウ!!」
マリコルヌの放った魔法、エアハンマーをかき消し、トムキャットレッドビートルは高速で宙を突き進む。
ビッグバンとの戦いで傷ついていた愛器ではあったが、
その装甲はもともと、不時着する飛行機を支え巨大隕石を砕き総理大臣を容赦なく叩きのめすほどのもの、
マリコルヌの放つエアハンマーなど、そよ風のようなものだ。
周りからもどよめきが起きる、魔法を使えぬはずの平民が何か得体の知れぬものを用いてそれをかき消したのだから。
ルイズ自信もリュウセイがただの平民ではないのかもしれないと感じ始める。
いける…そうリュウセイが確信したとき、無数の岩や火球、突風がトムキャットレッドビートルに襲い掛かった。
「何っ!?」
辺りを見回すと先ほどルイズに野次を飛ばしていた連中が集まり、一斉に攻撃を始めている。
「お前は僕達全員に勝負を挑んだ…違ったかい?」
マリコルヌがニヤニヤとした笑いを浮かべながら言った。
先ほど自分が言った言葉を思い出す、
―話は聞かせてもらった…お前ら!オレと勝負しろ!―
―…お前ら!―
リュウセイははっとする、言った!確かに言っていた!
愕然とするリュウセイ。
トムキャットレッドビートルにも少しづつだがダメージがたまっているようだ。
前回の戦闘の疲労も残っているため、がくりとひざを突いてしまうリュウセイ。
「おまえの負けだ平民!」
しかしその言葉にリュウセイはニヤリと笑い、声を上げる。
「オレは負けるわけには行かない…なぜなら…」
ダメージを受けてなお不敵なその様子に思わず息を呑むマリコルヌ達。
「なぜなら…?」
「なぜなら…オレには負けられない理由があるからだぁーーーーっ!
いけええええ!トムキャットレッドビートル!
レッドアウトゴールデンマキシマムバーニングウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」
トムキャットレッドビートルが加速し燃え上がる、その上に現れたのは炎の虎。
「う…うわああああああああああああああああああああああああ!!!」
限界まで加速したトムキャットレッドビートルとともに炎の虎はマリコルヌ達の中に飛び込み、
眩い光を放ちながら爆発する。
その背景にはなぜか星空が映し出され、さながら新しい星の誕生を見ているようであった。
いやらしい笑みを浮かべながら呪文を詠唱する小太り―マリコルヌを気にするでもなく、
リュウセイは手に持ったそれを構え、叫んだ。
「チャージ3回!フリーエントリー!ノーオプションバトル!」
本来ならこれを叫ぶ必要は無かった。
相手が魔法を使う以上、これはボーグバトルではないし、
この世界にはボーグ魂を感じないため、ここが地球でないこともわかっていた。
本来なら意地でもカブトボーグでの対決を望む彼なのに、あっさり魔法との対決を許したのもそれ故であったが、
彼自身はどこへ行こうがボーガーであり続ける。
だから、叫ばずにはいられなかった。
「いっけえぇぇぇぇぇ!オレの!トムキャットレッドビートルゥウウウウウウウ!!」
マリコルヌの放った魔法、エアハンマーをかき消し、トムキャットレッドビートルは高速で宙を突き進む。
ビッグバンとの戦いで傷ついていた愛器ではあったが、
その装甲はもともと、不時着する飛行機を支え巨大隕石を砕き総理大臣を容赦なく叩きのめすほどのもの、
マリコルヌの放つエアハンマーなど、そよ風のようなものだ。
周りからもどよめきが起きる、魔法を使えぬはずの平民が何か得体の知れぬものを用いてそれをかき消したのだから。
ルイズ自信もリュウセイがただの平民ではないのかもしれないと感じ始める。
いける…そうリュウセイが確信したとき、無数の岩や火球、突風がトムキャットレッドビートルに襲い掛かった。
「何っ!?」
辺りを見回すと先ほどルイズに野次を飛ばしていた連中が集まり、一斉に攻撃を始めている。
「お前は僕達全員に勝負を挑んだ…違ったかい?」
マリコルヌがニヤニヤとした笑いを浮かべながら言った。
先ほど自分が言った言葉を思い出す、
―話は聞かせてもらった…お前ら!オレと勝負しろ!―
―…お前ら!―
リュウセイははっとする、言った!確かに言っていた!
愕然とするリュウセイ。
トムキャットレッドビートルにも少しづつだがダメージがたまっているようだ。
前回の戦闘の疲労も残っているため、がくりとひざを突いてしまうリュウセイ。
「おまえの負けだ平民!」
しかしその言葉にリュウセイはニヤリと笑い、声を上げる。
「オレは負けるわけには行かない…なぜなら…」
ダメージを受けてなお不敵なその様子に思わず息を呑むマリコルヌ達。
「なぜなら…?」
「なぜなら…オレには負けられない理由があるからだぁーーーーっ!
いけええええ!トムキャットレッドビートル!
レッドアウトゴールデンマキシマムバーニングウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」
トムキャットレッドビートルが加速し燃え上がる、その上に現れたのは炎の虎。
「う…うわああああああああああああああああああああああああ!!!」
限界まで加速したトムキャットレッドビートルとともに炎の虎はマリコルヌ達の中に飛び込み、
眩い光を放ちながら爆発する。
その背景にはなぜか星空が映し出され、さながら新しい星の誕生を見ているようであった。
「…綺麗…。」
思わずルイズはつぶやく、あんなに嫌いだった爆発というものが、こんなにも美しく見えるとは。
それに、彼は私のために命を賭けて戦ってくれたのだ。
「ゼロ」と呼ばれ蔑まれた、この私のために。
気づくと彼女は、リュウセイに向かって歩き始めていた。
「これは…ビッグバン…いや、親父…」
ぼろ雑巾のようになったマリコルヌたちのところから
手のひらに戻ってきたトムキャットレッドビートルを眺めながら、リュウセイは考えていた。
自分の必殺技、レッドアウトゴールデンマキシマムバーニングに、こんな爆発は無かったはず…
そして思い出していたのだ、宇宙の始まり―始祖の爆発―ビッグバンの名を持った、父の事を。
しかし考えは突然中断された。
桃色の髪の少女によって唇が塞がれたのだ。
考え事なんて軽く吹っ飛んでしまった。
顔が熱い、きっと真っ赤になっているのだろう。
目の前ではにかんでいる彼女のように。
彼女は照れくさそうに一言「…ありがと。」と呟くとそっぽを向いて、
「ほら、さっさと行くわよ!」
強引に手を引っ張られる。繋いだ手が焼けるように熱かったが、気にしていられる程余裕は無かった。
無邪気にはしゃぐような口調でルイズは叫んぶ、
「アンタのこと、もっと私に教えなさい!これからもっともっと活躍してもらわなきゃいけないんだから!」
その顔は希望に満ちている、
鬱々とした気分は彼とあの爆発が吹き飛ばしてくれた。
これからはきっとうまくいく。そんな確信に包まれて、
わくわくする気持ちを抑えきれず、ルイズはいつの間にか駆け出していた。
思わずルイズはつぶやく、あんなに嫌いだった爆発というものが、こんなにも美しく見えるとは。
それに、彼は私のために命を賭けて戦ってくれたのだ。
「ゼロ」と呼ばれ蔑まれた、この私のために。
気づくと彼女は、リュウセイに向かって歩き始めていた。
「これは…ビッグバン…いや、親父…」
ぼろ雑巾のようになったマリコルヌたちのところから
手のひらに戻ってきたトムキャットレッドビートルを眺めながら、リュウセイは考えていた。
自分の必殺技、レッドアウトゴールデンマキシマムバーニングに、こんな爆発は無かったはず…
そして思い出していたのだ、宇宙の始まり―始祖の爆発―ビッグバンの名を持った、父の事を。
しかし考えは突然中断された。
桃色の髪の少女によって唇が塞がれたのだ。
考え事なんて軽く吹っ飛んでしまった。
顔が熱い、きっと真っ赤になっているのだろう。
目の前ではにかんでいる彼女のように。
彼女は照れくさそうに一言「…ありがと。」と呟くとそっぽを向いて、
「ほら、さっさと行くわよ!」
強引に手を引っ張られる。繋いだ手が焼けるように熱かったが、気にしていられる程余裕は無かった。
無邪気にはしゃぐような口調でルイズは叫んぶ、
「アンタのこと、もっと私に教えなさい!これからもっともっと活躍してもらわなきゃいけないんだから!」
その顔は希望に満ちている、
鬱々とした気分は彼とあの爆発が吹き飛ばしてくれた。
これからはきっとうまくいく。そんな確信に包まれて、
わくわくする気持ちを抑えきれず、ルイズはいつの間にか駆け出していた。
完
次回予告
滅んだかと思われた地球だったが実は滅んでいなかったっぽい!
しかし帰る方法は無いと言われて落ち込むオレ、
そんなとき親切にしてもらったメイドさんがピンチに!
かくして、恩を仇で返す男とオレの決戦の火蓋が落とされる。
次回ゼロのボーガー「決闘!ボトル・フォール・バトル」
熱き闘志にチャージ・イン!
滅んだかと思われた地球だったが実は滅んでいなかったっぽい!
しかし帰る方法は無いと言われて落ち込むオレ、
そんなとき親切にしてもらったメイドさんがピンチに!
かくして、恩を仇で返す男とオレの決戦の火蓋が落とされる。
次回ゼロのボーガー「決闘!ボトル・フォール・バトル」
熱き闘志にチャージ・イン!