あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第四部 第3話 『北花壇騎士、再び 上』



 ~対アルビオン戦六日前~
 トリステイン魔法学院寮塔、ルイズの部屋。そこには、非常に重苦しい空気が満ちてい
た。別に戦争前の緊張感ではない。当人達にとっては、戦争なんかどうでもいいくらい大
変な事態だ。

 ルイズと使い魔達の前に、タバサが立っている。

「教えて」

 いつものように無表情だが、この場から動こうとしない。

「あなた達は、なに?」

 北花壇騎士として『トリステイン~アルビオン戦争が始まる前に、ヴァリエール家三女
ルイズの使い魔達をヴェルサルテイル宮殿へ連行せよ。殺してはならない』という命令を
受けたタバサだが、もはやそれすら、頭から消し飛んでいる。

「その鞄、どこから持ってきたの?」

 ジュン達が鏡から出てきた姿を目撃したタバサは、即座に『アンロック』で窓を開け、
そのまま部屋に突っ込んできた。必至に誤魔化そうと愛想笑いするルイズ達へ、しつこく
問いただしてくる。
 ジュンが持ってきたバッグは、ナイロンとビニールで出来た、チャックで閉めるボスト
ンバッグ。ついでにいえば、タバサが見た事もない文字「Samsanite」が表面にプリント
してある。
 誰がどうみても、それはハルケギニアではあり得ない製品だった。

「え、え~っと…その、ねぇ?ジュン?」
 ジュンに向けられるルイズの笑顔は、引きつっていた。
「こ、これは、その…ゼロ戦、そう!ゼロ戦の中にあった物なんだよ!そうだよな!?真
紅?翠星石?」
「そそそ、そうですぅ!そうなんですよぉ!!」
「そうよね翠星石?おほほほほ…」

「そんなの、ひこおきの中になかった」
 タバサは冷たくツッこんだ
 ジュンは、哀しくなるくらいオタオタ。
「あ?あれぇ~?き、記憶違いだったかな??えと、そう!これは、遺品だったよ!佐々
木さんの!」
「そんな大きな鞄、持って帰らなかった」
 タバサのつっこみは、余りにも冷たかった。
「ジュンよぉ…もう、諦めな」
 デルフリンガーは、もう諦めている。

「きゅいいいいいいっっ!!誤魔化したってだめなのねえーーー!!!」
 シルフィードが、窓枠に前足を引っかけて、窓から頭を突っ込んで叫びだした。大きな
口から大量のツバを飛ばしてくる。
「あたし!あたし達!見たのね見たのねー!鏡から出てきたのねーーっ!!そんな魔法!
この世にあるわけが」
  ぼこっ! 
 タバサの杖が、シルフィードの眉間にめり込んでいた。
「りゅ、りゅ、竜がしゃべったああーーーっ!!」
 絶叫したのはルイズだった。

  ドンドンッ!
  ちょっとールイズー!何朝から騒いでるのよぉっ!目が覚めちゃったじゃないのぉ
 キュルケが文句を言いに来た瞬間、タバサを除いた全員が、5サントくらい驚いて飛び
上がったように見えた。慌てて各自、自分の口を塞ぐ。

 ルイズが首を、ギ・ギ・ギィ~と音を立ててドアに向ける。
「ご、ゴメンなさい、キュルケ。ち、ちょっと、使い魔達が、騒いじゃっ、て」

  …んもぉ~、勘弁してよねぇ~。静かにしてちょうだい

 キュルケの部屋のドアが閉められた音がした。
 とたんに、全員が安堵して息を吐く。ルイズがシルフィードをマジマジと見つめる。翠
星石がルイズの後ろに隠れてる。
「…シルフィードは、韻竜だったのね」
「きゅいい~、ばれちゃったのね」
  ぽかっ
 またタバサに杖で叩かれた。
「森で待ってて」
 シルフィードは、きゅいぃ…と寂しそうに鳴いて飛び去った。

「シルフィードの事、黙ってて」
 タバサはルイズに頭を下げる。
「いいわ。ただし、さっき見た事を黙っててくれるなら」
「分かった。でも、あなた達の事、教えて欲しい」

 教えて欲しいと言われ、ルイズと使い魔達は困った顔を見合わせてしまう。真紅が小さ
な口を開く。
「ねぇ、タバサさん。
 あなたがあの竜の事を詮索されたくないように、私達も詮索されたくないの」
 ジュンも、おずおずとタバサの前に出る。
「お互い、首を突っ込むと危険なのは同じじゃないかな?知らない振りをし合うのが、い
いと思う」
 ルイズも胸を張ってハッキリ言った。
「あんただって韻竜だとばれて、狙われるのがイヤだから隠していたんでしょう?こっち
も同じよ。この前、アルビオンの連中に狙われたばかりなのよ。もうこれ以上は、ゴメン
だわ」

 ルイズ達の真剣な説得にも、タバサは首を横に振った。
「一つだけ、教えて欲しい」

 ひとつだけ、という言葉に皆は困惑を深める。意を決してルイズが頷いた。
「何を、知りたいの?」
「ジュンの国の技」
「技?」
「壊れた心を治す技、ある?」
 ルイズの後ろに隠れた翠星石が、あっと声を上げた。


 皆、椅子やベッドに腰掛けて、隠し続けてきた事実の一端を語った。
「…というわけですぅ。あたしの如雨露だけじゃ、心を治すまでは無理ですぅ」
「ソウセイセキ…ローザ・ミスティカがあれば…」
「ええ、私達ローゼンメイデンの魂とも言えるローザ・ミスティカ。それを見つけて、蒼
星石の体に戻す事が出来れば、あなたの言う『壊れた心』は治せるかもしれないわね。絶
対とは言えないのだけれど」
「僕らは召喚されてからずっと、あっちこっち探したんだ。でも、今のところローザ・ミ
スティカは手がかり無しさ」

 ジュン達は、人の精神に潜り心を育てる力を持つ『夢の庭師』、双子のローゼンメイデ
ン、翠星石と蒼星石の力を語っていた。
 タバサは、ジュン達の話へ真剣に耳を傾けていた。無表情ながら、鬼気迫る真剣さだっ
た。
 ルイズもデルフリンガーも、黙って彼等の話を聞いていた。

 ふと、ジュンが持ち込んだボストンバッグを見る。
「家から、持ってきた?」
 ジュンの額を幾筋もの汗が流れる。
「家、て?」
 必至に平静を装っても、顔は引きつってる。

 ジュンとタバサは、しばし睨み合う。ルイズと人形達は不安げに二人を見つめている。

「次は、私が話す番」
 先に口を開いたのは、タバサ。
「訳あって、あなた達を調べてた」
 タバサは語った。彼女の調査結果を。

  ルーンによる洗脳を無効化している
  いつでも故郷に帰れるが、あえて使い魔を演じている
  目的は魔法の勉強

 ジュンも真紅も翠星石も青息吐息。ルイズも文字通りの、お手上げ。
「おでれーたなぁ、ジュンよぉ…バレバレだなぁ」
「言うなよ…」

 タバサがジュンにぐいっと詰め寄る。
「いつでも自由に帰れる?」
「う…」
「鏡を通って?」
「ぐぐぐ…」
 助けを求めるように真紅や翠星石に視線を送るが、二人とも諦めたようにため息をつく
ばかりだ。
 答えを聞く前に、タバサはさらに言葉を続けた。
「協力する」

 いきなりの言葉に、ルイズ達は「?」とキョトンとした。

「心を治してくれるなら、協力する」
「あ、あのですねぇタバサさん。それは、蒼星石が生き返ったらの話ですしぃ」
「構わない」

 翠星石を初め、ルイズ達は動揺を隠せない。この無口な青髪の少女を信用していいのか
どうか、計りかねている。何故ジュン達を調べていたのか、誰を治すのかすらも話さない
のだから。

 突然、真紅が口に人差し指をあて、静かにするようジェスチャーした。
 皆が一瞬口を閉ざすと、真紅は宙に浮き、ゆっくりと音もなく扉の取っ手に取り付き、
一気に開け放つ。
 とたんに、褐色の女性が室内に転がり込んできた。ドアに耳を押しつけていた下着姿の
キュルケだ。

「きゅ、キュルケぇ~…あんた、全部、聞いてたわよ…ね?」
 ルイズがピクピクと引きつった笑顔で、宿敵を見下ろしている。
「え~っとぉ、そのぉ~、ほら、もう朝ご飯だしぃ、オールド・オスマンのお話もあるか
らさぁ…ねぇ?」

 キュルケは、可愛くウィンクしながら微笑んだ。でも、ルイズの部屋の面々には、全く
効果がなかった。
「呼びに…来たって、言うわけ?」
「そーよぉ!そうなのよぉルイズ!」
「で、ツェルプストーのトコじゃ、人を呼ぶ前に扉に張り付く習慣があるの?下着で」
「そうなのぉ!これはあたしのお祖父様の代からの風習でねえ」
「んなワケ、ないでしょーがあっ!!」
「んわー!やめ!ルイズさん!やめぇー!」
 絶叫して杖を振ろうとするルイズを、ジュンが羽交い締めにして必至に押しとどめる。

 突然、翠星石がすっくと立ち上がる。扉へトコトコと歩み寄り、静かに扉を閉めた。
 そして、タバサとキュルケへ振り返り。如雨露を構える!
「こうなったら、おめーら殺っちゃうですうーーーーー!!!」
「やっ!やめて翠星石ぃ!止めなさいっ!!落ち着いてえ!!!」
 今度は真紅が翠星石を羽交い締めにする。

  ドタドタドタドタ!バタンッ!
「ミス・ヴァリエール!どうされましたか!?何の騒ぎですか!!!」
 シエスタまでが飛び込んできた。

「いえいえ、な、なんでもありませんことよ?おほほほほ…」

 ルイズが引きつった笑顔で立っていた。
 キュルケも、ジュンも、真紅も、翠星石も引きつった笑顔で、何故かほこりっぽい部屋
の中に立っていた。タバサだけは無表情なままだが。
「?…え~っと、何かよく分かりませんが」
「べ!別に何もないのよ!気にしないで!!」
「はぁ…?実は、早く食堂に来るようにと、教員の方々が」
「あー!分かった!分かったから!すぐ行くから!!戻ってて、そう伝えて!!」
「?…はぁ」

 シエスタは、腑に落ちない顔で去っていった。
 去っていったのをしっかり自分の目で確認したルイズは、ぶふあぁ~と大きな息をつい
た。皆、疲れた顔で大きな息を吐く。

「ねえ皆さん、とにかく今は食堂へ行きましょう。話はその後で」
 真紅が皆に語りかける。
「はぁ…そーだなぁ…」「じゃぁ、それまで休戦よぉ」「わかったわよぉ…」「おめーら、
覚悟しとけですぅ!」「話し合いたい」
 身支度を調えた後、全員ぞろぞろと、ジュンは真紅・ルイズは翠星石を抱いて、重い足
取りで食堂に向かった。



 一行が食堂に着いた時、とっくにオスマンのお話は終わっていた。ついでに朝食も。
 キュルケは空腹に耐えながら、教室へ行こうとするギーシュを捕まえた。
「ねーねー。結局、オスマンはなんて言ってたのぉ?」
「なんだね!?君たちは、まったく…今朝は遅刻して良いハズがないだろう?しょうがな
いねぇ。ともかく、よく聞きくのだよ!」
 教室に向かいながら、オスマンの話を語り始める。


  レコン・キスタからの宣戦布告及びウェールズ王子身柄返還要求
  トリステインは身柄引き渡し拒否、戦争は不可避
  開戦は神聖アルビオン共和国樹立・皇帝即位式典直後、六日後の公算大
  戦力はアルビオンの空軍力がトリステインを圧倒し、空での勝算は乏しい
  だがアルビオンからの亡命貴族達が参戦、脱出した戦艦『イーグル』号も空軍へ編入
  王軍へ志願する男子生徒は、募兵官が学院へ来られるので、申し込みされたし
  女子生徒は学院にて学業継続。だが戦況によっては予備士官として逐一投入予定
  学院に残る学生への教練のため、武官が派遣される予定。
  今より学院は、戦時体制へ移行する。身分の貴賤問わず、戦に備えよ。
  これらを語るオスマンは、見ていられないほど沈痛な姿だった…

「恐らくこの戦争、トリステインの存亡を賭けた戦いになる。トリスタニアが炎に包まれ
るのは、覚悟せねば・・・」
 話を聞いた一行は、余りにも複雑な想いを抱いていた。
 彼等はアルビオン潜入とウェールズ亡命、というより誘拐を行った本人だ。即ち、この
戦争を引き起こした当事者の一人。特に王子へ亡命を勧めたルイズと、『誘拐実行犯』で
あるワルドを見逃した使い魔達は、今さらながら罪の意識を感じている。

「もし、王子を連れて帰らなかったら、戦争は起きなかったのかしら…」
 俯いてつぶやくルイズ。キュルケが彼女の肩を叩いた。
「今さら言ってもしょうがないわよぉ。それに、どうせあいつらトリステインへ必ず攻め
込んだでしょうし。あんた達のせいじゃないわ」
 ギーシュもウンウン頷く。
「それに、王子が亡命したおかげで、王子を慕ってアルビオンの王党派貴族達が大勢亡命
してきたんだよ。空軍力は確かに劣るが、なあに!地上に引きずり降ろして戦うとする
さ!」


 教室に着いた一行だったが、そこは授業をする雰囲気ではなかった。特に男子生徒達は
そこかしこで集まっている。威勢良くかけ声を上げたり、作戦会議をしたり、互いの健闘
と武功を誓い合ったりしている。
 既に男子生徒の数が減っている。諸侯が編成する国軍に、農民から募った兵を率いるた
め帰郷した跡取り達などだろう。
 女子生徒達は暗い顔で、これからどうなるのかと囁き合ってたり、何かお祈りや呪いを
してたり。血気盛んに軍へ参加しようと杖を上げる者もいる。

 そんな教室にルイズ達が入るや、全員の視線が一斉に集まった。特に、ジュンと、二人
が手に抱える人形達へ。ひそひそと囁き合い、顔を見合わせる。おいお前聞けよ、やーよ
あんたこそ、とか聞こえてくる。
 フクロウを連れたふとっちょの少年、『風上』のマリコルヌが、ビクビクしながら立ち
上がった。
「な、なぁ…ルイズ。その使い魔達が、学院を襲いに来た戦艦撃ち落としたって、ホントか?」
「ええ、ホントよ」
 ルイズはサラリと答える。とたんに教室内にどよめきが広がる。
「な、なら!お前等がアルビオンに潜入して、王子を救出したってのもか!?」
「ちょっと違うけど、まぁ大体当たり」

 極秘任務の一件だったが、『ウェールズ亡命』はハルケギニア中に広まっているので、
もう隠す理由は無かった。

 教室内は、もう大騒ぎだ。皆がルイズ達を取り囲む。
「すげぇよ!お前等がいれば、トリステイン勝てるんじゃねーか!?」「当然あんたも志
願するんでしょ!?」「もう、ゼロなんかじゃないわね!見直したわ」「あの『ひこおき』
とか言うヤツ使えば、アルビオンの竜騎兵とだって戦えるんだろ?」
 口々に、まるでルイズが使い魔達と共に軍へ志願するのを当然のように言う。詰め寄ら
れるルイズ達は、もうタジタジだ。

 蚊帳の外なギーシュとキュルケは、なによぉあたし達だってフーケと戦ったのにぃ、全
くだ!我々とて命がけで頑張ったというのに…と、ご機嫌斜めだ。タバサはやっぱり無表
情。
「ちょっ!ちょっと待ってよ、みんな、まだ私何も決めてないのよ!」
「な!?どういう事よっ!そんだけ強力な使い魔持ってて、この一戦に参加しないって言
うの!??」
「い、いや、そうじゃなくて、まずお父様とか相談して、とか…色々とあって…」

 ルイズの声がだんだん小さくなり、もにょもにょと聞こえなくなる。そしてチラチラと
使い魔達を見る。

 そこへガラリと教室の扉が開き、ギトーが入ってきた。皆、しぶしぶ席につく。
 ギトーは、皆に戦時の心構えを語ったり、戦場における風魔法の有効性を講義した。授
業の全てが、戦争関連で終わった。その後の授業も同じようなものだ。
 ついでに言うと、今朝の騒ぎで朝食を食べ損ねた者達は、空腹で授業なんか頭に入って
なかった。



 昼食時。
 テーブルに並んでいるのは、確かに昼食。しかしいつもの食事とは違う。
 テーブルに花はない。山と積まれるフルーツもない。いつもの豪華な食事ではなく、普
通の、平民の食事をちょっと豪華にしたという程度。戦時体制に入ったため、食料を節約
しているのだ。
 貴族の子弟達は不満げではあった。だが、『身分の貴賤問わず、戦に備えよ』という学
院長からのお達しだ。大きな声で文句を言うものはいなかった。

 腹ペコだったルイズ達とタバサ・キュルケは、もの凄い勢いで平らげた。そして大急ぎ
で再びルイズの部屋へ集合。



「さて、ですねぇ…いったい、どうしたもんかコンチクショーですぅ」
 翠星石は腕組みしてウロウロ歩き回ってる。ルイズとジュンと真紅はベッドに腰掛け、
キュルケとタバサは椅子と鏡台に座ってる。
 ルイズが、キュルケとタバサの前に仁王立ちする
「ともかく、二人とも…この子達の事は、黙っててちょうだい!」
 タバサは「心を治してくれるなら」と頷く。
 優越感たっぷりに「やーねぇ。宝物庫の件といい、貸しが増えてくばっかりだわぁ」と
笑うキュルケ。

 ジュンが、デルフリンガーを手にし、切っ先をキュルケへ向ける。

「キュルケさん。もし人に話せば・・・やりたくはない、けど・・・」
 翠星石も如雨露を構える。
「えーいまどろっこしいですぅ!ここで殺っちゃえばいいです!」
「ま、待ってよ!ねぇ、あたしだって、あなた達とやり合う気はないのよぉ!?」
 迫られるキュルケは、冷や汗を流し顔が引きつる。

「ちょっと!落ち着きなさい二人とも!まだ結論を急ぐ事はないわよ」
 慌てて二人の前に出た真紅が、声を荒げる二人をなだめる。
「ともかく、まずはタバサさん。あなたは交渉の余地がありそうね。いったい誰を治して
欲しいのかしら?」
 真紅は、いやあたしだって話し合う気があるんだけどぉ~、とつぶやくキュルケは無視
していた。

「会って欲しい」
 タバサはすっくと立ち上がり、窓へ寄る。
「会うってぇ、今ですかぁ?」
 翠星石に聞かれたタバサは頷く。窓の外には、シルフィードが飛んでくるのが見えた。

 一行は韻竜の背に乗り、雲海の中を南東へ向けて飛ぶ。
「この方向は、確かガリアって国の方かな?」
「そなのね!ジュンちゃん、って言ったかな?お姉さまのおうちに行くのね!」
「お姉さま?…あ、僕は桜田ジュンっていいます。改めて、初めまして、シルフィードさ
ん。何度もお世話になりました」
「こっちこそ初めましてなのね!それでそれで!きゅいきゅい!噂のつよーいお人形さん
達なのね!」
「改めて自己紹介させていただくわ。私は真紅、誇り高いローゼンメ・・・」
「あたしは翠星石ですぅ。ルイズさんにはスイって呼・・・」
「デルフリンガーってんだ!よろしくな!にしても韻竜なんて久・・・」
 そんな感じで、改めて名乗り合う使い魔達。

「ふぅ~ん、あなたって、ガリアからの留学生だったんだぁ」
 キュルケの言葉に、タバサは何も語らない。黙って雲の向こうを、ガリアを見つめ続け
ている。鞄に入れている本を開こうともしない。
「で…なんであんたまでついてくるのよ。関係ないじゃないっ!」
 ルイズは今朝からずっとご機嫌斜め。おまけに宿敵ツェルプストーが何故か同行してい
るのに、納得いってない。
「もうここまで首突っ込んじゃったんだから、しょうがないでしょお?成り行きって事で
納得してよねぇ。話もまだ終わってないんだしぃ」
「むぅっきーっ!腹立つわねー」
 相変わらずキュルケにからかわれっぱなしのルイズ。


 トリステインはアルビオンとの戦時体制。ゆえに国境警備もアルビオン側に大きく割か
れている。ましてや航空戦力で圧倒されるアルビオンと戦うのだから、上空の監視が出来
る使い魔や竜騎兵などは、全て王都やアルビオン側に集結させてある。そして、ガリア側
も上空への監視はまともに行っていなかった。彼等は地上を歩いてくるトリステインから
の避難民へ対応するのに手一杯だ。
 だから彼等は上空3000メイルとはいえ真っ昼間にもかかわらず、全く問題なく、国
境を飛び越えた。



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