あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

“微熱”の使い魔-02


 部屋に差し込む朝日を受けて、エリーはゆっくりと意識を覚醒させる。
 今日は、コンテストの発表があったっけ。
 飛翔亭には新しい依頼が入っているだろうか。
 近くの森に行こうかな?
 そうだ、ミルカッセさんを誘おうか。
 半分寝ぼけた頭で考えながら身を起こそうとすると、いきなり胸に何かを押しつけられた。

 ――ええ? なに!?

 ぼよんとした柔らかい感触。それに、何かいいにおいがする。
 エリーはベッドの中、褐色の肌をした美女に抱きしめられていた。
 その胸に顔がうずまっている。

 「わひゃあああ!!?」

 思わず悲鳴を上げて、エリーはベッドから転がり落ちた。
 腰を打つ。かなり痛い。ついでに、ショックのせいか腰も抜けてしまったようだ。

 「何よ、朝っぱら……」

 美女は身を起こしながら、ふわあ、とあくびをする。

 「エリー、そんなところ何してるの?」

 「いえ、あはははは……」

 美女、いや、キュルケに声をかけられて、エリーは自分の状況を思い出した。
 遠い異国にやってきてしまったという事実を。


 身支度をして部屋を出ると、となりの部屋から、桃色の髪をした女の子が出てきた。
 いろんな意味でキュルケとは対照的な少女だ。
 特に胸とか。

 エリーとて体つきは華奢であり、お世辞にも色っぽいとは言えないが、ルイズに比べればまだ女らしい体つきと言えた。
 後ろには黒髪をした少年がいる。
 二人とも何かぶすっとした表情をしていた。

 「おはよう、ルイズ」

 「おはよう、キュルケ」

 キュルケが挨拶をすると、ルイズと呼ばれた少女はぶすっとした顔のまま、挨拶をする。
 男の子は、キュルケに、というよりキュルケの胸に見蕩れているようだった。
 無理もないが、傍目から見てかっこいいものではない。

 「あなたの使い魔って、それ?」

 キュルケは少年を見て、ニヤリと挑発するように笑う。

 「ふん! 悪かったわね! でも、あんたの使い魔だって人間じゃないの!」

 ルイズはエリーを睨んで、ふんとそっぽを向いた。

 「そりゃあね? でも、これはこれでいいんじゃないかしら。火竜山脈のサラマンダーとか召喚できれば、それはそれで素敵だけど……こんな可愛い女の子を召喚できたっていうのも素敵だと思わない?」

 そう言って、キュルケはぐいとエリーを抱き寄せた。

 「あ、あんた、男好きかと思ってたけど…………そういう趣味だったの!?」

キュルケの発言にルイズは後ずさり、黒髪の少年も仰天した様子だ。
 エリーも目を白黒させて、

 「あの、気持ちは嬉しいけど、私、そういう趣味はちょっと……」

 「あははは。あたしだってないわよ。それはそうと、せっかく同じ人間を召喚しちゃったんだから、使い魔同士で親交を深める……ってのはどう?」

 キュルケは笑って、軽くエリーの肩を押した。
 エリーは少しとまどいながらも、黒髪の少年を見る。
 黒い髪をした人間というのは何人か知っているが、その顔立ちはエリーの知るどの人種とも似てはいなかった。
 強いて言うなら、王室騎士隊隊長であり、剣聖といわれた男、エンデルクが近いかもしれない。
 だが、目の前の男の子は、何と言うかいかにも普通の少年で、英雄と謳われたエンデルクとはまるで違う。
 しかし、その普通さがかえってエリーの緊張をほどいた。

 「私、エルフィール・トラウム。エリーでいいよ」

 ゆっくりと微笑み、握手のために手を差し出す。

 「あ、俺は平賀才人」

 少年も手を差し出し、二人は握手を交わした。
 その途端に、ルイズは目を怒らせて、強引に二人の手を引き剥がした。

 「ちょっと! ツェルプストーの使い魔なんかと握手するんじゃないの!!」

 「何すんだよ!?」

 ヒラガ・サイトなる少年は抗議するが、ルイズはそれを聞こうともしない。

 「家名も一緒に名乗ってたけど……その子、貴族なの?」

 「違うわ。エリーの生まれたシグザールでは、平民にも家名があるのよ」

 「――何よ、そっちも平民じゃない。それにシグザール? どこの田舎だか知らないけど、聞いたこともないわね」

 ルイズはちょっと安心したような顔で、ふふんと笑った。

 「そんな田舎者の小娘、何か役に立つってのいうの? せいぜいメイドの代わりさせるくらいじゃない!」

 ――こ、小娘って……。

 ルイズの言い草に、エリーは嫌な汗をかく。
 確かに小娘には違いない。しかし、目の前の自分と同年齢、下手すれば下かもしれない相手には言われたくない。
 エリーは気を落ちつけながら、サイトに話しかける。

 「ええと……。私、シグザールって国からきたんだけど。君は?」

 「俺は、日本の東京から……」

 「ニッポンノトウキョウ?」

 「やっぱり、知らないよな……」

 「うん、ごめん」

 「いや、ここじゃ知ってるほうがおかしいんだろ。何てたって、ファンタジーだもん」

 自嘲的な笑いをあげる才人に、エリーは首をかしげるばかりだった。

「このバカ犬! ツェルプストーの使い魔なんかと仲良くするなって言ってるでしょう!? ああ~~!! 朝から気分悪い!!!」

 「いで、いでえ!! 何すんだ、離せよ!? ちぎれ、耳がちぎれる!!」

 ルイズはキッとエリーと才人を睨みつけ、その耳を引っ張って歩き出した。
 そして、もう一度キュルケを振り返って、ふん!とそっぽをむくと、才人の耳を引っ張ったままいってしまった。

 「……なんか、すごい人だなあ(いろんな意味で)」

 エリーはまるで嵐でも見送るような目で、ぼそりとつぶやいていた。

 「だから楽しいんだけどねえ」

 びっくりしているエリーとは対照的に、キュルケは本当に楽しそうに、ころころと笑う。
 その様子は、何だか、ちっちゃな子供を、妹をからかっている喜んでいる姉のようだった。

 ――本当は、仲良いのかな?

 「あの桃色へアーはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。二つ名は、ゼロのルイズよ」

 ここハルケギニア大陸のメイジたちが、あだ名のような“二つ名”を持つことは昨夜聞かされている。
 キュルケは火の属性、そして恋多きその気質からのものなのだろう。

 「ええと、お友達ですよね?」

 「? あたしとルイズが? ……あっはっはっはは! そうね、そんなようなものかしら。いえ、そうね。確かに友達よ。心の友とも書いて心友ってとこね」

 エリーが問うと、キュルケは何かつぼをつかれたように大笑いを始める。
 そんなようなもの? 何か曖昧な表現だった。
 どうも言葉通りの関係というわけでもないらしい。

 ――ライバルって、ところかな?

 エリーは、自分の師であるイングリドと、友人、いや親友とも言えるアイゼルの師ヘルミーナのことを思い出した。
 自分とアイゼルもライバルといえば、ライバルだ。
 しかし、それを言うならノルディスも、他の生徒たちもみんなライバルである。
 イングリドとヘルミーナの場合は、もっと激しく、凄まじい関係だ。
 それこそ、宿敵同士とも言えるような関係ではないだろうか。
 さらに言うなら、両者の立場は互角の関係、互角の実力だった。
 でも、キュルケとルイズの関係は、今見た感じでは、どうにもキュルケのほうが一枚も二枚も上をいっているように見えた。
 多分、精神的な余裕はもちろん、魔法の実力においてもそうなのだろう。

 「さてと、それじゃ朝のお食事にいきましょうか。ついてきて」

 キュルケは見る者を魅了するような優雅な動作で振り返り、エリーに言った。


 「あの、本当にここで?」

 アルヴィーズの食堂を見まわしながら、エリーはどぎまぎとした顔で言った。
 その様子を見て、キュルケは苦笑する。
 いかにも田舎からやってきました、と言わんばかりの態度である。
 エリーとて、シグザールの王都であるザールブルグで一年暮らしているが、それでもこんな豪奢な場所など縁がなかった。
 アカデミーの他の生徒たちと違い、参考書や調合器具、それに生活費は自分で工面しなければならないエリーにとって、豪華な場所で豪華な食事など夢にさえ出てこない代物だった。
 もっとも、アカデミーの生徒がほとんどが中流家庭の子供なので、大抵エリーと同じくこんな場所に縁はなかったが。

 「あの、私やっぱり違うところで……。場違いだし……」

 すっかり萎縮してしまったエリーはすがるような目でキュルケに言った。

しかし、キュルケはチッチッチッと指を振った。

 「誰にだって、初めてはあるわ。こういう場所で色々見聞きするのも、勉強ってやつじゃないかしら? 将来役に立つかもしれないでしょ?」

 「でも、私は貴族じゃないし……」

 「あら? もしかしたら、なるかもしれないじゃない」

 少しうつむくエリーに、キュルケはにこりとしてその肩を叩く。

 「あなたの国では、平民でもお金を持ってれば、貴族になれるんでしょう?」

 「そうですけど……」

 確かに、シグザールでは財を成して貴族の身分を得た人間はそれなりにいる。
 アカデミーの卒業生でも、錬金術を用いて財産を築き、貴族となった者もいると聞いていた。
 ただし、アカデミーではそういった姿勢をあまりよく思ってはいないようだ。
 錬金術の根本は真理の探究にあり、宝石や薬を生み出すのはあくまでもその過程にしかすぎないのだから。
 といっても、そういった卒業生による援助もかなりのものであるらしく、あまり表立って否定はできないらしい。

 「でも、別に私は貴族になる気は……」

 「はいはい、いいからいいから」

 キュルケはちょっと強引にエリーを席につかせた。

 ――まいったなあ……。

 エリーはため息をついた。
 周囲からチラチラと視線を感じる。
 エリー自身はそれほど目立つような少女ではないが、その服装は別だった。
 アカデミーにおいては特に変わっているわけでもないオレンジの服だが、この魔法学院においてはものすごく目立つ。
 あれは誰だ? どこのメイジだ? 何でキュルケと一緒にいるんだ?
 そんな声がかすかに聞こえてくる。
 エリーがそんな居心地の悪さを覚えている時だった。

 「おはよう、タバサ」

 キュルケの明るい声に顔を上げると、眼鏡をかけた小柄な少女がそばに立っていた。

 ――あ、この子は……。

 確か昨日青いドラゴンを召喚していた少女だ。
 青い髪と、召喚した使い魔のインパクトのおかげかよく覚えている。

 「おはよう」

 タバサは一見無愛想とさえ感じる返事をキュルケに返すと、じっとエリーを見つめてきた。

 「あ、あの……?」

 「この子はタバサ。あたしの友達よ」

 タバサの視線にひるむエリーに、キュルケはくすっと笑って紹介をする。

 「あ、はじめまして……。私はエルフィール・トラウムです」

 何だか、不思議な感じの子だな。そう思いながら、エリーは自己紹介をした。

「タバサ。よろしく」

 タバサは実に簡潔な自己紹介をした後、ずいとエリーに近づいた。

 「あ、あの……?」

 「あなた、昨日本をたくさん持っていた」

 「う、うん……」

 本。召喚する時に一緒に持ってきてしまった参考書のことだろう。

 「良かったら、読ませてほしい」

 「え、いいけど……」

 「でもタバサ、あの本あたしたちは読めないわよ? 遠い遠い外国の言葉で書かれてるもの」

 キュルケがそう言うと、タバサは少しの間黙りこんだ。
 やがて、ごそごそと一冊の本を取り出して、エリーに手渡す。

 「読んでみて」

 エリーは言われるままに本を開いてみたが、まるで読めなかった。文字の構造や形は似通ったものがないではなかったが、基本としてシグザールのそれとは異なる文字である。

 「……読めない」

 「言葉はわかるのに、文字が読めないっても変よねえ……。言葉がわかるのは多分サモン・サーヴァントの影響なんだろうけど。どうせなら文字も読めるようになってればよかったのにね」

 そう言って、キュルケは肩をすくめた。

 「じゃあ、教え合う」

 タバサが言った。

 「ええ?」

 「あなたはあの本の、あなたの国の言葉をわたしに教える。わたしはハルケギニアの言葉をあなたに教える」

 「うん、いいよ。でも……あの本、錬金術の参考書だから、あまり面白くないかも」

 「この世に面白くない本などない」

 「そ、そうかな……」

 きっぱりと言い切るタバサに、エリーは苦笑するしかなかった。
 そして改めてテーブルに並べられた料理を見て、笑みは引きつったものになる。

 ――こんなに食べられないよ……。でも、残したらもったないし……。

 エリーは決して小食ではない。むしろ健啖家といえるほうだ。
 ただし、それはあくまでも一般人レベル、ハルケギニア風に言えば平民レベルの食事での話。
 鳥のローストや魚の形のパイといった無駄に豪華は食事は、見ているだけでも胃がびっくりしそうだった。
 だからキュルケやタバサが食事を始めてからも、すぐに料理に手をつけられなかった。

 ――どうしよう……。……んん? あれは……。

 途方に暮れていると、少しばかり離れた、ある場所へ目がとまった。
 そこではあのヒラガ・サイトとかいう少年が床に座り込んでパンをかじっているのが見えた。

「ああ、美味い! 本当に美味い! 泣けそうだ!!」

 がしがしと硬いパンをかじりながら、才人はやけくそでつぶやいていた。
 いきなりわけのわからん世界にやってきたかと思ったら、使い魔だか奴隷だかで問答無用に服従をせまられる。
 主とやらが可愛い女の子なんでこれはこれでラッキー♪かと思ったら、そいつがとんでもねーツンツン娘で。
 豪華な食事の並ぶ食堂にきて喜んだかと思ったら、他の連中がご馳走をぱくついている横で、自分は残飯みたいなものを食わされている。
 やけにならなければ、本当にやっていられない。

 ――何が使い魔は外、だよ。そりゃ動物なら、仕方ないだろうけど。俺は人間だっつーの!!

 心の中で叫ぶ中、才人はあのエルフィールという少女を思い出した。
 キュルケとかいうおっぱい星人の使い魔だとかいう少女。
 あの子も、こんな扱いを受けてるんだろうか? そんなことを思いながら、ふと視線を上げると、

 ――あれ?

 離れた席から、自分を見ている者がいる。
 オレンジ色の、ここの生徒たちとは明らかに違う系統の服を着た女の子。
 その横には、あのおっぱい星人、もといキュルケが。

 ――ええと。

 使い魔は外じゃなかったのか? それがルイズ様の“特別なはからい”とやらで、床なんじゃなかったのか?
 でも、あっちの使い魔さんは何か普通に、一緒の食事してるみたいなんですけれども? このへんどーなんですか、ルイズ様?

 才人が内心でルイズにツッコミを入れていると、エリーはそっと才人にむかって手招きをしてきた。
 ちらりとルイズの様子をうかがってから、才人は気づかれないようそーっとエリーのほうへと移動していく。

 「あの、良かったら一緒に食べない?」

 エリーは少し緊張したように才人に言った。
 マジですか!? 願ってもない提案に、才人は歓喜で身を震わせた。

 「もちろんOK!! っちゅうか……いいの? マジで?」

 「うん。私、こんなにたくさん食べられないし、残したらコックさんにも悪いし……」

 「だよな!? 出された料理は作ってくれたコックさんに感謝して、残さず美味しく、だよな!」

 才人は壊れたような笑顔を浮かべながら、すすめられるままエリーの隣に座る。
 捨てる神あれば拾う神あり。
 才人は料理とともに、そんな言葉を噛み締めていた。
 さっきまではとんでもねー状況だなあと半ば悲嘆しつつあったが、救いの手は意外なところから差し伸べられた。
 救われた! まさに才人はそんな気分だった。

 「本当にお腹すいてたんだねえ……」

 目に涙を浮かべながら料理を口に運ぶ才人を見て、エリーは同情するようにつぶやく。
 そんな様子を、キュルケは楽しげに見ていた。
 エリーのルイズの使い魔も一緒に食事をしていいかと聞かれ、最初は驚いた。
 だが、エリーが異国の人間であり、かつ平民の少女であることを思い出すと、それも消えた。
 別にいけないという理由は思いつかず、この後のルイズの反応を予想すると非常に面白かったので、むしろ喜んでOKした。
 ルイズのほうを見ると、このことに気づいたらしいルイズはものすごい形相でこちらを睨んでいる。
 まったく面白すぎる反応だ。
 軽く手を振ってやると、ルイズは今にも爆発しそうな顔で、顔を真っ赤にさせていた。
 エリーはそれに気づくこともなく、同じ平民が一緒にいるのが心強いのか、安心して料理を食べ始めていた。
 タバサは終始我関せずという態度である。これはいつものことだが。
 やっぱり、この子がきてくれて良かった。
 キュルケは改めてそう思いながら、ワインを口にした。




新着情報

取得中です。