あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ナイトメイジ-02


うっすらと開けたまぶたの隙間から光が目に飛び込んで来る。
ルイズは光に刺されて少し痛みを感じる目を擦りながら体を起こした。
石造りの部屋の中を窓から差し込む光が照らしている。
太陽の角度から考えて、今は朝のはずだ。
だから、ベッドに寝ているのは問題ない。
問題はその前だ。
ルイズには昨夜、ベッドに入って寝た記憶がなかった。
目頭を押さえ昨日のことを思い出す。
「確か昨日は、使い魔召喚の儀式をしたはずよね。で、私もサモン・サーヴァントを唱えて……それから」
どうもそこら辺から記憶が曖昧だ。
召喚が成功したのはおぼろげに覚えている。
だが、
「何を召喚したんだっけ」
それがどうしても思い出せない。
何かこう、嫌なことを思い出そうとしているような、そんな予感がする。
とりあえずベッドから出ようと、ルイズは片手をついた。
そこには不自然に柔らかい物があった。
いや、ベッドは柔らかいから、柔らかいのは当たり前だ。
おかしいのは、その柔らかい何かがこー、ぷにぷにした明らかにシーツやベッドとは違う質感をしているって事だ。
ルイズがシーツの端を持っておそるおそるめくってみると、その下には両目をぱっちり開いた少女がいて、ルイズを見てこう言った。
「おはよう」
ベッドから降りる、と言うより落ちたルイズは猫から逃げるネズミのような動きで机まで転がり、その上に置いてある杖を取ると、ぶるぶる震える手でその先を少女に向けた。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あなた誰よっ!」
少女はゆっくりまばたきをした後、今のルイズよりはよっぽど貴族らしい仕草でベッドから降りた。
「だれって、昨日あなたに召喚された使い魔よ」
「私が?あなたを?」
「ええ、そうよ。忘れた?」
だんだん思い出してくる。
そして、さっきから感じてたいやな予感の原因がわかってきた。
この少女だ。
「ベール・ゼファー?」
「覚えてるじゃない」
そう、間違いない。
大公、そして魔王を自称する嘘つき女。
ベール・ゼファーだ。
「何でここにいるのよ!」
「なんでって、あなたをわざわざここに運んできてあげたのよ」
「そ、そう……そう言う当然ことじゃなくて、私はあなたが私のベッドの上で何をしてるのかって聞いてるの!」
「ああ。そう言うこと。聞きたいことがあったんだけどあなたが全然起きないから、ちょっと寝てたのよ」
「使い魔が主人のベッドで寝るなんて、どういう身の程知らずなのよ!」
「使い魔はベッドで寝たらいけないの?」
「そうよ!」
「そうよって、あなた……まあ、いいわ」
ため息をついてベール・ゼファーはすとんと音を立ててベッドの上に座る。
次にひょいと上げて足を組み、日の光を受けて輝く金色の瞳を昨日と同じようにルイズにむけた。
「あなた……」
「ルイズよ!私はルイズ。使い魔風情があなた呼ばわりはやめて」
「はいはい、ルイズ……」
「様!」
「いいじゃない。呼び捨てで。それに私は大公よ。あなたがどの程度の貴族かわからないけど、そのくらい良いでしょ」
「じゃあ、私はベルって呼ぶわよ。それでも良いの?」
「いいわよ」
「ぐっ」
大公を自称するのであれば、名前の呼び方にはこだわると思って言ったことだがあっさり受け入れられた。
こうなってしまってはもう呼び捨てを許さざるを得ない。
「で、まずはルイズ。その杖を下ろして、少し落ち着いたら?私はあなたの使い魔なんだし、そんなに緊張することもないでしょう」
言われてみればその通りだ。
使い魔相手にここまで緊張するというのはひどくばかげている。
とりあえず深呼吸をして気を落ち着かせたルイズは、机に杖を置き直して椅子に座った。
自分の視線を方向を確認する。
ベッドより椅子の方が少し高いので、少しだが見下ろすようになっている。
「よし」
やっぱり、使い魔とメイジはこういう位置関係でないといけない。
使い魔なんかに見くびられてはいけないのだ。
「じゃあ、落ち着いたところで聞きたいことがあるんだけど良いかしら?」
少し考えてルイズは答える。
「いいわよ」
人間が使い魔として召喚されたのだ。
たぶん、突然の事だったのだろう。
それなら、いろいろ聞きたいこともあるのは当然だ。
「まず、ルイズはなんのために私を呼び出したの?」
「使い魔にするためよ」
「だから、なんのために使い魔として呼び出したのかって聞いてるの」
「使い魔いったら使い魔よ。それ以外に何があるって言うの?」
ルイズはベルの答えを待つ。
そのベルはと言うと、額を人差し指で押さえて考え込んでいる。
どうやら質問の仕方を考え直しているのだろう。
「だったら、質問を変えるわ。ルイズが言う使い魔って一体なのをするの?」
ルイズは心の中で快哉を叫ぶ。
ここでこの無知な少女に使い魔とは何かを教えて、立場をわからせてやろうという寸法だ。
「いいわ。教えてあげるわ。使い魔の仕事は3つ。主人の目となり耳となること、主人の望む物を見つけてくること、それから主人を守ること。ま、人間のあなたにはどれも期待してないけどね」
どうだ、恐れ入ったかとばかりにベルを見下ろしたがベルは全然恐れ入ってなかった。
というか、むしろあきれ顔である。
「ルイズ。そんなことのためにこの私を呼んだの?」
「いやなの?」
「いやよ。どれも私がする事じゃないわ」
あまりにはっきり拒絶されたルイズは声を大きくする。
それはあなたに言われたくない。
「私だって、人間の使い魔なんて嫌よ。あなたが見てる物を見ることはできないし、秘薬の材料もって来てって言っても無理そうだし、その細腕で私を守ることなんでできそうにないし。でも、ベルが出てきたのならしかたないわ。掃除、洗濯、雑用。それをやってもらうわ」
そしてルイズはため息をついた。
「あーあ、どうせならドラゴンやグリフォンがよかったのに」
「それなら、そうすればよかったじゃないの。だいたい召喚って言うのは、自分の目的にあわせて呼ぶ物でしょうに。それって、どういう召喚よ」
「どういう召喚って、ベルこそどういう召喚のこと言ってるのよ。メイジにふさわしい者が召喚されるのよ。召喚される者を選ぶ事なんて誰にもできないわ」
「そーなの?」
「そーよ」
二人の間に沈黙が訪れる。
ベルは再び何事かを考え出し、そして何事かを思いつき顔を上げる。
「術者の魔力を消費し続けない長時間召喚をしたと思ったらそう言うわけだったのね。いいわ、あなたにちょうどいいのを紹介してあげるわ」
「は?」
ベルは聞いたことの意味がわからないと言ったルイズの見ている前で、どこからともなく長方形の箱のような物を出す。
ちょうつがいで折りたたまれたその箱を開いたベルは、それを耳と口に当ててしゃべり出した。

「あ、エイミー?うん。私。ベール・ゼファー。うん……うん。それで、お願いがあるだけど、こっちに来てくれない?そう、使い魔になってあげて欲しいの。え?今のご主人様を気に入っているからダメ?今度一緒に遊びに行く?ちょっと、そんなの今すぐ破棄してこっちに……」
ぶつっ。つーつーつーつー

「あいつ……切ったわね」
ベルは怒りで手をふるわせている。
右の唇の端がひくひくしてるし、顔の上半分がなにやら暗い。
「ねえ、どうしたのよ」
「知り合いの雑用が得意な魔王に連絡を取ったの」
「私にちょうどいい使い魔って、雑用の方?それに、雑用が得意な魔王って何よそれ」
「でも、今は別のところでやってるからダメだって。無理矢理連れてくるのも面倒だし、どうしようかしら」
「どうするのよ。雑用、やってもらうわよ」
ベルはふう、とため息をつき開いた箱をたたみ直してどこかにしまう。
箱をどこから出したかよくわからなかったルイズは、どこにしまうのかをじっくり確認しようと目を凝らせたがやっぱりわからなかった。
「やらないわよ。それ、私の担当じゃないから」
「だったら!」
「だから、雑用が得意な人間を現地調達するわ。私が人間を使ってやらせる分には問題ないでしょ?私がやるのと同じだから」
「そりゃ、良いけどできるの?」
ベルは金色の瞳を持つ目をゆがめる。
今にも悪戯を始めそうな目だ。
「まあ、見てなさい」
そんな目なのに、ルイズはそれに圧倒されるように気分になっていた。


そろそろ部屋を出ないと朝食の時間に遅れてしまう。
雑用はできないと頑として譲らないベルをベッドに座らせて、ルイズは着替えをしていた。
上着に袖を通し、スカートを止めるとルイズにはベルに聞きたいことが浮かんできた。
「ベル。あなた、雑用はしないって言ったけどだったら何が得意なの?」
「そうね。人の自尊心に訴えて犯罪を教唆するとか、敵を滅ぼし、軍を打ち砕くとか。そんな感じかしら」
かなり物騒でしかも後になると大きな話になっている。
ルイズは、前のような大ボラに違いないと思うことにした。
「いいけど、そう言う冗談は他ではやめておいてね」
「はい。マスター」
ベルが微笑んだ。
何となく、信用ならない微笑みだった。


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