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Let's GO ! ZEROPANMAN!~魚眼の侍は闇夜に笑う~

 ティファニアはマチルダから村の外の話を聞くのが好きだった。
 このアルビオンのこと、ガリアのこと、ロマリアのこと、ゲルマニアのこと、そしてトリステインのこと。
 魔法学院でのこと。

 周りに子供と姉しかいない彼女が生徒を真似て召喚の儀を行うのは、もしかしたら当然の流れだったのかもしれない。

「ここはどこでござろうか?」

 少し面長な端整な顔つきをした男が、木製の屋根付き荷車を引いたまま唖然とした表情でたっていた。


 ぺこぺこ頭を下げる眼前の少女に男は戸惑いを隠せなかった。
 自分がこの見覚えの無い場所にいる理由はわかっている。
 いきなり眼前に現れた鏡に歩みを止められずに突っ込んだのが原因だ。
 別の場所にワープするくらいそう珍しい経験でもない彼にとって、彼女が謝るのは不可解だった。

 もしかしてあの鏡を作ったのはこの少女なのか?

 後ろを振り返るとさっきの鏡はない。
 なるほど一方通行か、だから彼女は謝っているのか、と納得し彼は向き直った。
 とりあえず彼女を落ち着けよう。

「頭を上げてくださらんか? そこまで女性に頭を下げられると拙者困ってしまうでござるよ」


「接吻を! 女性からそういうことをするのはいかんでござる!」
「耳? 確かに長いでござるがそれが何か?」

 わーわーわめく男の様子に苦笑をこぼしながらテファは彼を町へいざなった。
 ルーンは左手に刻まれた。


 男は変わった味のパスタを作る職人だった。
 茶色いスープに浸された同じく茶色いパスタという妙なものだったが、すばらしくよだれを誘う香りにつられてそれをすする。
 うまかった。
 何故か魚の香りのするスープを一滴残さずすすり、子供たちは元気に、テファは恥ずかしそうにお代わりを要求する。
 男はうれしそうに空の器を受け取った。


 ある日男は村のはずれでなにやら菜園のようなものを作っていた。
 聞くとあの茶色いパスタの原料らしい。

「この辺の商店には置いてなかったでござるよ」
「……いつの間に村の外へ?」

 またある日男はお金を稼いで帰ってきた。
 あの茶色いパスタを大通りで売りさばいてきたらしい。
 その報酬で買ったとかで大きな魚と釣具一式があの荷車に積まれていた。

「土産に菓子を買ってきたでござるよ。いやあ、あの通りはいろいろあってにぎやかでござった。ええと、なんといったか、そうそう、“ぶるどんね”とかいう町でござる」
「……ブルドンネはトリステインの王都トリスタニアの町のひとつ、外国じゃなかったかしら?」

「目に付いた武器屋で変な剣を手に入れたでござるよ。100エキューとか言っておったが20ドニエに勉強してもらったでござる」
「お店の人泣いてるんじゃ……」
「まあまあ気にすんねい娘っこっておい、エルフじゃねえか。久しぶりに見たねぇ」

 またまたある日、男は魚を煙でいぶしていた。
 何でもあの茶色いスープの原料らしい。

「さて、出前に行ってくるでござるよ」
「え、いつの間にそんなに手広く?」
「トリステインの魔法学院まで言ってくるでござる」
「どうやってそこまで、ってえ、竜? いつの間にそんなのと……」
「いやあ、襲われたので撃退して以来の仲でござる」
「ゴルルルッ」

 ハルケギニア中にソバという名前のパスタがだんだん広まりつつあります。
 婚期を逃してピンチなマチルダ姉さんが彼にモーションかけたりしてますけど、今日も私は元気です。


『Let's GO ! ZEROPANMAN!~魚眼の侍は闇夜に笑う~』








 草木も眠る丑三つ時、子供たちの寝静まった夜、それは化け物たちの時間。

「こ、こら! 向こうへ行くでござる! 拙者猫はダメなんでござるよ……」
「相棒も変なものが苦手だねぇ」
「しょうがないでござろう。これはもう本能でござるからな」
「ははは、そりゃ難儀なっと来たぜ!」
「承知!」

 白装束に身をまとい、白い頭巾をかぶった彼が、その一団に相対する。

「なんだてめえは!」
「夜盗の類とお見受けする。この先の村に用がありや?」
「はあ? うぜえからどっか行けよ! 俺たちゃこれから噂のエルフを拝みに行くんだからよ!」
「いい女だって聞いてるしな!」
「高く売れるぜ!」

 下卑た笑いに眉をしかめ、彼は盗賊たちに一歩足を進める。
「旦那、こういうやからにまともに話しかけたって意味ねえって」
「……人を戯れに殺める外道とわかってはいるがあえて聞こう、ここで引き下がる気は無いか?」
「馬鹿いってんじゃねえよ!」
「……左様か」

 男はあごの布を上げ口を覆い、頭巾の紐を締めなおす。

「しからばその命、この夜までと心得よ!」
「……てめえさっきからふざけんじゃねえぞ?」

 たかが剣士ごときが、そうつぶやくとメイジだったのか先頭の男が杖を抜いた。

「吹き飛べや! フレイ「御免!」」

 ひゅっと、何かがそのメイジの体を突き抜けた。
 いつの間に近づいたのか数歩前で白装束がデルフを鞘に収める。

「てめえ!今何を!」

 かちん、とつばの音。
 ずるりと湿った擬音を上げて、そのメイジは斜めに滑り落ちて死んだ。

「最後だ。引かぬか?」
「態度は紳士でも中身は化け物だぜ?」

 返事は恐怖に満ち満ちた叫び声だけだった。

「しからば“かつぶし一刀流”かつぶしまん、推して参る!」
「雁首そろえてあの世へ行けや!」

 左手のルーンが輝いた。


 人の血肉が転がる中、彼はしみ一つ無い白装束姿でたっていた。
 その右手には抜き放たれたデルフ。
 眼前で最後の盗賊が左右に分かれて絶命する。
 ぐしゃりという生理的嫌悪感をもたらす音を立てて、その二つになった盗賊は崩れ落ちた。

「……何度切っても慣れぬものよ、人の血肉のにおいは。もう無為な命は切らぬと誓ったでござるが」
「迷いなんて無かったろうがよ。大体無為な命じゃねえだろ。テファの嬢ちゃんやガキ共死なすよりゃましさあね」
「無論。外道を切るには外道の剣、テファ殿たちの手を汚すことはあってはならん」

 陰惨な笑みを浮かべ、かつぶしまんはデルフを鞘へ戻す。

「夜は化生の時間、化生を切るには化生の剣こそふさわしかろう」
「俺も旦那もあいつらも、ってか」
「さて帰るとするか」
「おうよ、かつぶしの旦那」

 侍はかつての世界で、化生を切り捌き人々の腹を満たしながら旅をしていた。
 “彼と彼の友人たち”がいなくなってから壊れ始めた世界。
 海は荒れ、山は枯れ、空は曇り、大地は穢れ、少しずつ壊れ行く世界。
 自己満足に過ぎない救済の日々、彼は目の前に現れた鏡に感応することすらできないほど疲れきっていた。
 元いた場所に戻ることはできないだろう、そんな予感は消えてはくれない。
 何日か前に切り捨てた、“もとの世界で見たことのある化け物”を思い出しながら、ふと侍は一人つぶやく。

「アンパンマン殿、貴殿もこの世界におられるのか?」


 夜の暗闇に化生が二つ、月を見上げて笑ってる。



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