あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-03



 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはどっと疲れていた。
夜中に使い魔であるアーカードに起こされ一悶着。
その後は歴史や文化、貴族や支配体系、国の情勢など多様な事を聞かれ、そして一つ一つ答えた。
おかげで二度目の就寝につけたのは、ほぼ夜が明けてからとなったのである。
ルイズはそのまま泥のように眠ってしまい、起床したら授業が始まるギリギリの時間。
昨日の夕食は失神していた所為で食べてなく、その上朝食まで寝過ごして食べられずルイズは心底げんなりしていた。

 ルイズが起きた時、アーカードは眠っているようであった。
アーカードは棺桶を寝床にしている。さすがに開けて見る勇気は自分にはなかった。
なんでも日光が大嫌いだそうで、陽が出ている内に起こしてしまったら、それを理由に何をされるかわからない。
触らぬ神に祟りなし。棺桶には一切触らないよう、なるべく音を立てないよう、且つ急いで身なりを整え授業の準備をした。


 ルイズの予想とは違い、アーカードは眠らずに学院を徘徊していた。
一度はルイズがベッドに入ると同時に、棺桶に入って寝ようと思ったものの。
諸々聞いた歴史や文化を考え、自分なりに調べようと散策していたのだった。

「やあ、ごきげんよう。ミスタ・コルベール」
アーカードは学院内を一通り観察し終え、コルベール教師のもとへと訪れていた。
コルベールは突然の訪問者に絶句した。扉を開けた音はしなかったし、気配すら感じられなかった。
故にいきなり声をかけられるのもおかしいし、振り返ると少女がそこにいるのもおかしかった。

 とりあえずコルベールは脈打つ鼓動を抑え込み平静を装った。
「・・・・・・どうやってここに?」
アーカードは臆面もなく答えた。

「んむ、ミス・ロングビルという教師がいたので聞いたのだ」
コルベールが欲しかった答えとはズレた答えが返ってきた。困惑しながらも質問をし直す。
「いや、そういうことじゃなくてどうやって入っ――――――」
少女は手の平を突き出し、コルベールの言葉を遮り制止させた。

「待て、貴様の質問に答えた。さらに言えば先に質問をさせてやった。次は私の番だ」
意図した答えとは違うのだが、確かにアーカードは一応質問には答えたし、なによりも妙な威圧の所為でコルベールは諦め押し黙った。
「私は異世界からきた。主からある程度話を聞いたしほぼ間違いないと言える。普通はそのような事はありえぬらしいが・・・・・・一応確認だ、そうなのか?」

 実際に異世界に来ている以上、召喚されるのは間違いない。
だが何故なのか、その原因や統計を単純に知りたかった。

 コルベールは考え込む。
『異世界』からきた、俄かには信じられないが嘘を言ってるようには見えない。
そもそもそのような嘘をついても意味があるとも思えない。
そして何より異世界という存在が、コルベールの好奇心と探究心を刺激した。
「異世界ですか?私も聞いたことはありません。そもそも人間が召喚される自体、本来はおかしい事で・・・・・・」

 本当は人間ではなく吸血鬼なのだが、それを公言することは主人であるルイズに口止めされていた。
ハルケギニアの吸血鬼とは根源的に違うのだが、それでも無用なトラブルを避ける為。
アーカード自身も主人に迷惑をかけることは本意ではなかった。
「ふむ・・・・・・」
アーカードは左手を顎にそえて考える。やはり主と自分の関係は過去に例がなく、極めておかしなものようだ。
何か意味があるのか、それともただの偶然の産物なのか、考えるもののわかる筈もない。


「・・・・・・ッ!?」
コルベールはいきなり近付いてくると、アーカード顎に当てていた左手を覗き込んだ。
「こ・・・・・・これは!?ちょっとよく見せてもらえませんか?」
コルベールが何をそんなに驚いているのか、アーカードには謎であった。
しかしこちらの質問に向こうは答えた、従って次は相手の番であるので大人しくする。

「何かおかしいのか?」
コルベールは一旦離れたかと思うと、いきなり紙とペンを取り出してきて何かを書き始める。

(なんだこやつ・・・・・・手フェチか?だとすれば、なかなかに危ない性癖ではないか)
なんというかこう――――――レオナルド・ダ・ビンチの『モナリザ』がヒザのところで組んでいる『手』。
それを初めて見たときに下品に勃起し、『手』のとこだけ切り抜いて部屋にかざるような――――――。
そんなようなおかしな変態であったなら、主に近づけるわけには・・・・・・いや、それはそれで面白いかもしれない。

 コルベールは一心不乱に何かスケッチを続けている、アーカードは気になって覗き込んだ。
描かれていたのは何かの紋様。よくよく見ればアーカードの左手の甲に刻み込まれた紋様であった。
ひとしきり描き終え、コルベールは間違いがないか何度か見比べる。
「一体何なんだ?」
コルベールはハっと我に返る。
「い・・・・・・いえ、見たことのない紋様でしたので・・・・・・大変失礼しました」
コルベールはアーカードの様子を窺う。己の様子を多少なりと訝しんでるものの、正直どうでもいいといった感じだった。

 コルベールにはアーカードの左手の甲に刻み込まれたルーンに見覚えがあった。
確かルーンの名は『ガンダールヴ』。現在は失伝した『虚無』の魔法、それを使ったとされる始祖ブリミル。
そしてブリミルに付き従い、伝説を残した四人の使い魔達。その内の一人が宿していたルーンこそ『ガンダールヴ』である。

「ふむ、とりあえずそろそろ失礼するとしよう。ちょっと確認しにきただけだしの」
コルベールがスケッチをしていた所為で時間を喰ってしまった。
アーカードはさっさと背を向け扉へと歩いていく。そろそろ授業の時間であった。

「ちょっと待――――――」
「そうそう」
少女の言葉でコルベールの言葉は遮られる。そして少女は言葉を紡いだ。

「貴様は私に畏怖を抱き、その行動を疑っているようだが」
「なっ・・・・・・!?」
コルベールは身震いした。疑っている事がバレている。考えている事が見透かされていた。
いや、初見の印象からすれば疑われても当然なのだが、それをわざわざ言うことはある種の警告だ。

「安心しろ、私はルイズと契約した。お前が危惧するような面倒を起こすつもりは毛頭ない」

 心の中で思ったことに釘を刺される、その異様な感覚は言葉には形容できなかった。
少女の真意。つまり余計な事をするつもりはない、故に貴様も余計な事はするな、ということか。


「わかりました、とりあえずその言葉を信じましょう」
背中を向けているが、アーカードは笑ったような気がした。
「尤も、主に危険が迫るか或いは・・・・・・主が私に命令すれば別だがな」

「・・・・・・大丈夫です、学院にいる以上その限りではありません。我々教師は生徒を守り導くのが仕事です。
 そしてミス・ヴァリエールはとても良い子です、あの子があなたにそのような命令を下すとは思えません」

「そうか」
コルベールの言葉に満足し、納得したような呟きだった。そして少女アーカードは扉を開けて去っていく。
結局どうやって入ってきたのかは分からずじまいで終わる。

 コルベールは先程書き写したルーンを確認する為に本棚へと向かった。


 朝食には間に合わなかったが、講義が始まるまでには間に合った。先生が来るのが少しばかり遅かったのも幸いした。
周囲を見渡せば、各々の生徒が昨日召喚した使い魔を連れている。
さすがに大きい生物は教室に入れない為、外で待機させてあるようであったが。

 扉から一人の人間が入ってくる。
「遅れてしまってごめんなさいね、それでは今から授業を始めます」
ふくよかで人当たりの良さそうなおばさんであった。
「では私の自己紹介から。私は『赤土』のシュヴルーズ、土系統の魔法をこれから一年間皆さんに講義します」
シュヴルーズは大きく教室を見渡した。これから教える生徒達とそれに付き従う生物達を見ているのだった。

「私はこうやって新学期に、様々な使い魔達を見るのがとても楽しみなのですよ」
ルイズは嘆息をつく。空腹からくる脱力感と使い魔達と楽しそうにしている者達、仄かな嫉妬心から。
アーカードを召喚し契約したことに後悔はないし、むしろ感謝している。
しかし周りの連中のように戯れたりすることは絶対にないんだろうな、などと。
否、戯れたりすることがあってもそれは一方的な・・・・・・。

「あとの使い魔は外にいるのでしょうね」
シュヴルーズは窓の外に向けていた目を教室へと戻す・・・・・・と、途中で止まり一点を見据えていた。
「あら、あなたはどうしたのですか?」
ミセス・シュヴルーズの視線は生徒達のさらに後方にあるようだった、自然と皆の視線も後方へと集中する。

「げっ・・・・・・」
ルイズは思わず呻いた。視線の先には少女が一人立っていた。
まるで我が子の授業参観を見守る母親のように、腕を組み微かな笑みを浮かべてこちらに目を向けている。
ルイズは咄嗟に顔を背け俯いた。目が合ったのがなんとなく気恥ずかしかった。
(なんでいるの!?というかいつの間に?どうして見にきてるわけ!?)


「おいあれ、『ゼロ』のルイズが召喚した使い魔じゃないか?」
生徒の内の一人が叫ぶ。召喚の儀にいた生徒全員が目にしているのだから、当然の反応とも言える。

(『ゼロ』のルイズ・・・・・・確か昨日の罵倒の中にもその単語があったな。二つ名のようだが・・・・・・)
アーカードは講義が終わったら、その由来でも聞いておこうなどと考える。

「ああ、平民の使い魔か!!」
嘲笑が伝播する。あっという間に教室中に広がる。ルイズは俯いたままわなわなと肩を震わせていた。
主人のその様子を見て、思わずアーカードは眉をひそめ冷ややかな顔になる。

「皆さん静かになさい、講義中ですよ!」
ミセス・シュヴルーズが一喝する。

「彼女はミス・ヴァリエールの使い魔ですか、気にすることはないのですよ。貴方は大変な努力家だと聞いています。
 努力はいずれ必ず実るものです、ですからこれからも頑張るのですよ」

 平民の使い魔という言葉から、何となく状況を察したシュヴルーズのフォロー。
本当に平民であったなら、そのフォローは逆に追い討ちをかけるような言葉にしかならない。

「・・・・・・はい、ありがとうございます。ミセス・シュヴルーズ」
ルイズは顔をあげて答えた、少しばかり無理してるような感じが見て取れる。
多少は静かになるものの、未だガヤガヤとうるさい。しかし強引にシュヴルーズは授業を始めた。

 周囲の言ってる事など気にするな、アーカードは吸血鬼だ。それも昨夜言っていたことが本当なら恐ろしく強い。
何より自分の良き理解者だ、何を怒ることがあるのか。笑いたい奴には笑わせておけばいい、今までだってそうだった。
アーカードまで嘲笑の対象になるのは心苦しいが、多分本人としてはそんなに気にするタイプじゃないだろうと思う。
私はいつも通り平静を保てばいい。この程度のことなど、慣れっこだ。

 ルイズはゆっくりと深呼吸し、昂ぶる心を落ち着ける。
(ふむ・・・・・・杞憂だったか、やはり心根は強いようだな)
やはり自分の慧眼に狂いはなかったと、契約するだけの価値はあったと、アーカードは一度だけ頷いた。
ルイズの様子に満足したアーカードは、シュヴルーズの講義内容へと耳を傾けた。

 『錬金』。五行の内の一つ土系統の魔法の基本。
物質を変性させる、まさに魔法と言える魔法。
つくづく自分がいた世界とは異なる事を実感させられた。
(なんともまぁ・・・・・・便利なものだ)


「では誰かにやってもらいましょうか・・・・・・ミス・ヴァリエール、お願いできますか?」
その悪魔の囁きのような言葉に、ルイズとシュヴルーズを除く"人間"は揃って驚愕に打ち震えた。
シュヴルーズとしては、たとえ噂に聞くルイズでも基本くらいは出来るだろうと踏んだのであった。
それゆえに「先程揶揄していた生徒達に見せてやりなさい」、といった軽い親切心から指名したのだった。

「待って下さいミセス・シュヴルーズ!ルイズにやらせるのは危険です!!!」
声を上げたのは褐色の肌に、燃えるような赤い髪を伸ばした女であった。
嫌でも目に付くくらいの豊満な胸を見せ付けるように、胸元を開けて服を着ている。

「それはあなたが決めることではありませんよ、ミス・・・・・・」
「キュルケ・フォン・ツェルプストーです」
「ミス・ツェルプストー、何事もやってみないとわかりませんよ」
問答を無視してルイズは勢いよく立ち上がる。
「ミセス・シュヴルーズ、私やります。やらせてくださいっ!!」
その言葉にシュヴルーズはうんうんと頷き、感心しているようだった。

「お願いだから・・・・・・やめて、ルイズ」
教師にこれ以上抗議しても無駄だと感じたキュルケは、ルイズへと抗議の矛先を変える。
「そうさルイズ、やめたまえ」
薔薇を持った金髪の少年もそれに続いた。

「黙りなさいキュルケ、ギーシュ。私がやるといったらやるの!」
そう言って、意固地になったルイズは教卓前へと進み出た。
最早どうにもならないと感じた生徒達は、それぞれ机の下に隠れたり教卓近くから避難していた。
使い魔も主人達に付き従い避難している。


 その光景を傍から観ていたアーカードは訝しむ。
大きな杖を持った青髪の小柄な少女なんて、つい今自分の横をすり抜けて教室の外にまで出て行ってしまった。
(・・・・・・異様だ、一体何が起きるというのだ)

 ルイズは一息つけると、ゆったりと呪文を詠唱し・・・・・・そして杖を振った。

 耳を劈く轟音と、目が眩むほどの閃光が教室を支配した。視界にあるものが爆ぜ、爆風が巻き起こる。
使い魔の生物達はそれぞれがギャーギャーと悲鳴らしき声を上げ、シュヴルーズ教師は大きく吹き飛ばされ目を回していた。
生徒達は予め退避していたので被害は極めて軽微だった、爆心地であるルイズは体中を煤だらけにして呟いた。
「ちょっと失敗したみたいね」

 その言葉を皮切りに罵声が飛ぶ。
「どこがちょっとだよ・・・・・・」
「今まで成功確率"0"じゃないか!」
「だからやめてって言ったのよ!」
「何一つ系統が使えない"ゼロ"のルイズ!」

(『ゼロ』のルイズか・・・・・・なるほど喃)
ミセス・シュヴルーズが気絶してしまったので、当然講義は中止となった。
先ほどの青髪の少女は、ここまで見越した上で出て行ったのだ。
つまりルイズが魔法を使った場合、それが基本であってもこの惨状が茶飯事であるのだ。
アーカードは主人の二つ名の意味を知り、ついでに爆破痕の片付けを手伝う。

 午前の授業はそれだけで終わりを迎えることとなった。



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