あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと聖石-23


店が開いてからの魅惑の妖精亭は修羅場だ。
客にサービスしながらオーダーを取り、場合によっては自分で調理。
隙を見て皿洗いやその他雑用。
店を出るお客様のお会計にお見送り。

忙しい、ああ忙しい、忙しい。

今日も今日とてがんばって働いてます。
と言いたかった所だが―――

「この店の女だってのは分かってるんだ、出て来い!!」

外から響く、無粋な声。
ここはお酒を楽しむところであって、貴族が杖を抜く場所ではない。
ジェシカと目が合い、頷きを持って返す。

―――万が一の場合はお願い。
―――了解。





下準備は整ったので、ホールを抜けて店の前に出る。
目の前に居るのは昨日の貴族に、雇われの傭兵達。
その数、しめて十人。

………あー、人間できることと出来ないことの二種類あるんだよね。
数の差をひっくり返すのは難しい部類に入るわけだ。
一人でこの人数は無理、つーかリンチ?

剣を抜き、構える。
絶望的な戦いに身を投じようとしている。
でも、逃げ出すことは出来ない。
記憶のない私に対して、やさしくしてくれた。
食事や仕事もくれた。

そんな人たちに迷惑をかけるわけにはいかない。
自分の問題は、自分でケリをつける!

襲い掛かってくる剣士が剣を振りかぶった瞬間に二回切りつけて沈黙させる。
シエスタが教えてくれた、ハメドるという技術だ。
少なくとも、近接戦はこの技術で問題はない。
だが問題となるのは、近接戦をしてこないメイジや弓を持った奴等だ。

今はまだ避けられているが、いつか破綻が来る。
飛んできた矢を剣で叩き落す。
迫ってくる魔法をバックステップで避け、目の前の斧使いを切り捨てる。
肩に矢がかすめ、一瞬バランスを崩しながらも剣士の剣を受け止める。
そして、剣士を巻き込むように襲い掛かるフレイムボール。
剣士を盾にしのぐが、襲い掛かる熱波に一瞬目を閉じる。
同時に足から鋭い痛み。弓使いが放った矢が刺さっていた。
襲い掛かる火球に対して、剣で受け止めるような形で直撃。
全身が熱と火に包まれ、地面を転がるようにして鎮火する。
転がっているうちに傭兵の一人が私を蹴り飛ばす。
そしてそれに追従するかのごとく全員が私を蹴り飛ばした。
既に、全身が痛みに支配され、意識が闇に落ちそうになる。

「さて、この娘は後回しにして―――店を破壊したまえ」

その言葉に、精神が目覚める。
そうだ、コイツは言っていたじゃないか。
『親族縁者もろとも台無しにしてくれる』と。
コイツから見て、ここが私の家だと認識したらしい。

「させるもんですか―――!」

剣を杖に立ち上がる。
口の中に溜まった血を吐き出し、立ち上がる。

―――空の下なる我が手に、祝福の風の恵みあらん。

心の内側からわきあがる言葉。
それを呟き、敵を見据える。

「ケアルガ!」

瞬間、緑色の風が周囲を逆巻いて包む。
火傷が、蹴られてボロボロになった身体が癒されてゆく。
完全に思い出せないが、私が魔法を使えたことを思い出す。

「ゴーレム!」

人には聞き取れないほどの詠唱を紡ぐ。
瞬間、地面から這い出る三メイルほどのゴーレム。
私を守護するように立ち上がる。

メイジや剣士がゴーレムを壊そうと必死に戦っている。
その防壁が崩れる前に、次の詠唱を終了させる。

「天と地の精霊達の怒りの全てを今そこに刻め! サンダジャ!」

ゴーレムが崩された瞬間に降り注ぐ膨大な雷。
傭兵もろとも貴族まで吹き飛ばす。
―――ついでにお店の一部も。

…ヤバイ。
あまりにも派手な魔法使ってしまった。
メイジでもこんな規模の魔法なんてお目にかかれないって。

「ごめん、私逃げるわ。ほとぼりが冷めたら戻ってくるわ!!」

窓から外の様子を覗いていたジェシカに宣言をし、私はテレポで逃げ出した。
後に残ったのは、雷で黒焦げになった傭兵集団だった。

―――行っちゃったか。

集団リンチされていた時はヒヤヒヤしたが、何とかなった。
店の一部を雷で破壊しながらも。

絶対、後で弁償させてやろう。
そう思いつつ、私は裏口から外に出て、屋根までジャンプ。
目を凝らしてあたりを見渡すと、目的の人物をあっさりと発見する。

フライの魔法で飛びながら逃げる貴族。
先ほどまでルイズと戦っていたヤツだ。
それを見据え、私は駆け出す。
フライよりも速い、全力を持って。

「クソ、クソ、クソ!! あの女、絶対に殺してやる!! 貴族に逆らったことを後悔させてやる!」
「残念ね。貴方ごときでは絶対に無理よ」

声をかけた瞬間にはもう既に至近距離。
絶対に外さず、逃れることの出来ない必殺の間合い。

「熱いベーゼは私の性に合わないから、苦しませないで殺してあげる」

瞬間的に相手の身体を殴る。
身体を吹き飛ばすほどのものでもない、ただちょっと押す程度の力。
それが仕手という技術の一つ、息根止。

「ガッ―――!! グェアアア!!」

たったそれだけの行動で、貴族だった物体は地に落ち行く。

「悪いわね、私もまともな人間をやっていないの」

屋根に立ち、空を眺めながら、私はルイズのことを思った。
無論、店の修理費の計算をしながら。






テレポでシルキスの小屋まで行き、シルキスに跨る。

「さ、行きましょうか。目指すはラクドリアン湖よ」

シルキスが景気良く鳴き、ゆっくりと歩き出す。
ミメットがその後ろに付き、歩を進める。
二匹の足並みは徐々に早くなっていき、草原を駆け抜けていった。

一人と二匹が目指すのはラクドリアン湖。
シエスタの待つ、誓約の水精霊の住処へ。
月の光に、一瞬だけ聖石がきらめきを放った。


新着情報

取得中です。