あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無界行-7

第6章 鬼神蹂躙

激昂しながらもこの場で仕掛けてこなかったのは、食堂を戦場をするのは流石に気が咎めたのか。
ギーシュは先にヴェストリの広場に向かい、友人たちがわくわくした表情でそれに続く。
周囲で事の推移を見ていたほかの生徒たちもである。
ギーシュの友人の内1人は残った。南雲が逃げ出さないように監視するためであろう。

南雲はその目を気にすることも無く「さてどうするか」と、冷静に思考していた。
先ほどの感情の高ぶりはすでに消え失せ、波一つ立たぬ水面のような精神へと戻っている。

戦いを避ける理由は特に思いつかない。

決闘という古めかしい申し入れをされるとは思わなかったがそもそも、
激昂した相手が攻撃を仕掛けてくるだろうと最初に予想した上で手を出したのだ。
(というより、アレで起こらなかったらそれはそれで情緒面に問題があるだろう)
そして―――――

「良い機会、か」

メイジとの戦闘を経験する良い機会、という事である。
どこへ居ようが、戦いから逃れる事など出来そうに無い。これまでの道行きがそれを証明している。
このハルケギニアという異世界でも、だ。
そして南雲は、戦うことを悲観も否定もしていない。ならば話は簡単だ。

戦えばいい―――――己が力の全てを血潮へと注ぎ込み、その最後の一滴が流れ出す瞬間まで。
そこまで考え、決定した瞬間。

「な・・・・何やってるのよアンタはぁーーーっ!?」
大声で叫びながら南雲に近づく少女が居た。無論ルイズである。
昼食の後、用足しに食堂を離れており、ついさっき戻ってきて生徒の一人から事情を聞いた所であった。

「何を勝手に決闘なんて約束してるのよっ!」
「お前の許可が必要な事では無い」
返す言葉はにべもない。正確には南雲は受けたとも断るとも言っていないのだが、
戦う事は自分でも既に決めているので、まぁ大同小異だ。
「うっ・・あ、アンタねぇ・・・とにかくっ!謝ってきなさい!
 いい?メイジに平民は絶対に勝てないの!怪我で済めば運が良いのよ?」
それはこのハルケギニアにおける常識であり、魔法が使えないルイズにとってもそうである。
(もっともあの『失敗魔法』は、単純な破壊力だけで見れば相当なものだが)

「そ、そうですっ!」
新たな声が飛んできた。シエスタである。驚愕の事態に硬直しきっていたのが、ようやく動けるようになったらしい。
「あ…秋人さん…殺されちゃいますっ―――――逃げてください、早くっ・・・・」
言葉にも顔にも、紛う事なき心配の色があった。
先ほどのルイズの言葉にもそれは混じっている…それのみでは、無いのだが。
さて―――――2人の真摯な言葉を受けて南雲秋人はどうしたか?

ヴェストリの広場の方へと歩み始めたのである。
聞こえていないわけは無い―――――では、聞く気が無いのだろう。

その南雲の前に新たな人影が立った。
長身と、炎のような髪の色の少女…キュルケである。

「―――――今回ばかりはヴァリエールの言う通りね。
 ギーシュ、怒ってるなんてもんじゃないわよ?下手したら本当に殺されちゃうわ。
 見張りは今居なくなったから…逃げたら?」

「つ、ツェルプストー・・・!?」
思わぬ人間の登場に、ルイズは目を見開く。

見れば確かに、見張りとして残った生徒が居ない。
キュルケが「自分が見ておく」とその生徒に言い、去らせたのである。

「勘違いしないでヴァリエール。あなたのためじゃなくて彼のためよ。

 ―――――ねぇ、怒った気持ちは分からなくもないけど、死んじゃったら何にもならないわよ?」

3人目。ルイズもシエスタもその効果を内心で期待し…そして少女たちの顔は、南雲の次の一言で引き攣った。

「殺しもありか、決闘は。

 ―――――ならば、ちょうど良い」

本気でメイジと戦い―――――殺すつもりだというのか、この男は!?

「だ・・・駄目よっ!止めなさい!」
ルイズは南雲に向かって駆けた。論理的思考によっての行動ではない。
直感が「行かせるな」と叫んだのである。

ルイズの手は、南雲の腰の辺りを掴みかけ―――――空を切った。
そして、気づけば逆にルイズの首筋へと南雲の手が伸びているではないか!

少女達は己の目を疑った。
3人とも南雲から目を離していないにもかかわらず、彼が今
どのように体を動かしたのかが、全く分からなかったのである。
「メイジに平民は絶対に勝てないと言ったな。

 ―――――お前にも、か?」
「「「っ―――――!」」」

言葉には、殺気が添えられていた。まだ『ゆるい』方だとはいえ、超人の気である。
同様の気を受けるのはルイズは3度目。キュルケは2度目。シエスタは初めてである。
回数の差こそあれ、少女たちの心を満たしたのは同様の思いであった。

『目の前の男が―――――南雲秋人が―――――恐ろしい』

―――――勝てないから止めろと言うルイズとキュルケの声に、己の言葉への疑念が滲んでいたのは何故だ?

感じ取っていたのではないか?
この男を戦わせたら・・・単にメイジが平民を痛めつけることよりも、もっと『取り返しのつかない事』が起こると。

「他人に命令するなら体を張る覚悟を持て。ものを言うだけで何かをしてくれるのは神だけだ。

 ―――――俺は『神』は嫌いだがな」
言い置いて、南雲はルイズから手を離す。

もう、この場においてそれ以上南雲を留めようとするものは居なかった。

歩き出す前、南雲は最後に一度シエスタの方を見た。
目が合った瞬間、体を震わせて後ずさるシエスタ。
顔にははっきりと恐怖の表情が浮かんでいる。怯えきらせてしまったのだろう。

彼女は何も言わない。南雲も、何も言わなかった。
決闘の結果がどうなろうと、もう以前と同じように接しては来まい。

それで良いと思った。
自身の歩む道に深く踏み込んで来た者達は、大半がその生を全うする事も出来なかった。敵味方関わらずに。
―――――だから、それで良い。

ヴェストリの広場へと向かう南雲の顔から、人間らしさは既に遠く消え去っていた。

体調に問題は無い。超人としての力は全て健在だ。
更に南雲は、全身の細胞がふつふつと活性化しているのを感じ取った。
未知なる戦いに備えてのDNAの超変貌であった。

やはり、戦いこそが活力の源なのであろうか―――――『ソルジャー』の名を冠する男には。

魔法の基礎を知り、実演も目にしたとはいえ、メイジと本格的な戦闘を行うのはこれが初めてである。
バイオニック・ソルジャーの力は果たして、メイジに対し通用するや否や―――――?

「これも、実験か」
呟いたその言葉は、誰の耳へも入ること無く風に溶けて消えた。

中央の建物と、それを取り囲むように配置された4つの塔で構成されるトリステイン学院。
ヴェストリの広場は『風』と『火』の塔に挟まれた位置にある中庭である。

南雲が到着した時には既に噂を聞きつけた生徒たちで溢れかえっていた。
確かに今回の決闘の経緯は特異であろう。
周囲の生徒たちからも、負の感情―――――憎悪、敵意、侮蔑など―――――が混ざり合った視線が、
幾つも南雲に向かって飛んでくる。
どぶ泥のような凶念と言って良い。南雲にとってはたっぷりと慣れ親しんできた類のものであった。
隠そうともせぬその思念は、貴族も結局は『人間』である事の証明に他ならなかった。
『人間』とは『鬼』の別の呼び名であった。…この世界で鬼と言って通用するかどうかは分からないが。

そして、南雲は人垣の中央でギーシュと対峙した。

「諸君! 決闘だ!」
ギーシュがバラの造花を掲げると、周囲から歓声が津波のように巻き起こる。
殆ど全ての生徒が集まっているのではないか、という数であった。
ひとしきり手を振って答えたギーシュは、南雲に向き直る。
「逃げずに来たことは、勇敢だと褒めておこう」
紳士的といえる調子の言葉・・・だが、内心の憤怒を押し隠していることが南雲には良く分かった。

「戦いの場で、無理をして上品ぶることもあるまい。
 それに、お前が今感じているような、下卑た類の欲望は
 隠そうとしても隠しきれるものじゃない・・・無駄な努力はよせ。

 さっさと来い」
嘲笑も痛罵も無い、むしろ穏やかとさえ言える南雲の返答。
だがその言葉は、周囲のほぼ全ての人間に火をつけるのに十分な効果を発揮した。

その感情を表現するには一つの単語で事足りる・・・『やってしまえ』である。

ギーシュのこめかみにも、派手に血管が浮かぶ。
「―――――どこまでも、ふざけた平民だっ・・・!」

もはや闘志と殺意を隠そうとはせず、薔薇の造花を振るった。
そこから花びらが一枚落ち・・・・たちまちの内に、人間サイズの人形が出現する!
甲冑を着た金属製の、女戦士の人形である。

「我が名はギーシュ!『青銅』のギーシュ!
 そしてこれが我が青銅のゴーレム『ワルキューレ』!
 貴様には、この一体で十分だ!」

南雲秋人―――――超人は、この敵をどう迎え撃つ!?

「行けっ!ワルキュー『ガァンッ!』―――――え?」

金属同士が噛み合う、何とも言えぬ響音。
直後、ワルキューレは仰向けに倒れ・・・地面に激突し、重い音を立てた。
そしてその頭部が・・・まるでハンマーで強打したかの如く、ひしゃげて無残な様子を晒していた。
限界を超えたダメージだったのか、起き上がることも出来ぬまま、ワルキューレはゆっくりと崩れ去っていく。
「!!???―――――な、何っ!?何だ、何だこれは・・・・!?」
ギーシュは一瞬でパニックへと陥った。それはそうであろう。自慢のゴーレムを、出して攻撃させようと思ったら
『一瞬で』『何がなにやら分からぬまま』撃破されたのである。
ギャラリー達からも驚愕のざわめきが広がる。

否、これは本当にあの平民がやったのか?奴はあの位置から一歩も動いていないではないか!?

周囲の生徒たちも含め、この現象を理解できた者は誰も居なかった。
―――――いや、僅かに一人居た。

前列で観戦していた、眼鏡をかけた小柄な青い髪の少女である。彼女は誰にも聞こえぬ声で呟いた。
「何か、投げた・・・・?」と。

疑問系なのは、投擲のモーションも、また投げた物も判別できなかったからである。
先ほどは懐に入っていた南雲の手が、今は抜き払われていた。
正しく瞬きの間に変化したその動きから、推理したというだけである。


この場の全員が絶句したであろう―――――南雲が、何の変哲も無い『釘』を投擲し、ワルキューレを撃破したと知ったなら。

「わ・・・・ワルキューレッ!」
ギーシュは再度造花を不利、新たなゴーレムを作り出す。数は6。全部で7体のゴーレムがギーシュの武器である。
パニックになりながらも、次の対応のために最大戦力を投入したその考えは間違ってはいない。

南雲は相変わらずの無表情。
繭一筋動かすことなく、戦闘マシンと化した頭脳が戦力の分析にかかる。
数は6…青銅製、強度もそれに準ずる…内部は空洞…スピードは並。

問題は無い―――――破壊できる。

南雲は懐のコンバットナイフに手を伸ばす。
―――――その精神に刹那、先ほどの食堂での光景が浮かび上がった。
シエスタと。ギーシュと。周りの貴族達と。
力ある者が、無い者を理不尽な事で傷つける姿と。
それを止める事もなく見世物のように見物する周りの連中と―――――

それに続いてフラッシュバックしたものがある。南雲にとっては、永遠にも等しい過去の光景。

荒れ狂う水。大鰐の牙。噛み裂かれる肉体。苦痛に歪んだ顔。
―――――ロス市警の死体安置所。立ち尽くす南雲の眼前には・・・・・。

一瞬、南雲の胸中を感情が駆け抜けた。間違っても、哀しみではない。

憎しみ―――――紛れも無い、憎悪であった。

かつて、超人兵士南雲を誕生させたマクルーア博士と軍当局が、
最終的に彼の軍からの引退を認めた理由はこれであった。

情動制御(パッション・コントロール)―――――不完全。
機械レベル達成―――――75パーセント=最低値。
機械になりきれぬバイオニック・ソルジャー。

―――――だが、この時。
『感情の揺らぎ』が、南雲自身も予想だにせぬ効果を生むことになる。

ヴ・・・・ンッ・・・・!

ナイフに触れた瞬間、左手のルーンが微かに輝き始めた。
鮮血の赤と、夜の闇を思わせる黒とが混じりあい、溶けている―――――そんな光だった。

新着情報

取得中です。