「えっ?!」
ルイズはその声に驚いて唇を離し辺りを見回す。
だが自分の目に映るのは相変わらずざわめき続ける同級生達と、満足げな表情をしているミスタ・コルベールのみ。
そもそもそんな声を出すくらいの子供も、自分の名前を訊くような者も此処にはいない。
という事はもしや……
だが自分の目に映るのは相変わらずざわめき続ける同級生達と、満足げな表情をしているミスタ・コルベールのみ。
そもそもそんな声を出すくらいの子供も、自分の名前を訊くような者も此処にはいない。
という事はもしや……
「うむ、『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが『コントラクト・サーヴァント』はきちんと出来た様だね。」
ルイズが狐に摘まれた様な表情しているにも拘らずコルベールが嬉しそうに言う。
その段になって彼女の使い魔は目を覚ました。
目を何回も瞬かせ、頭を擡げてこちらを見つめる仕草は愛くるしいものだった。
使い魔が持つ大きく黄色のくりっとした目がそれを十分に引き立てている。
その時、またも先程聞こえてきたものと同じ声が聞こえてくる。
が、その声は今にも泣き出しそうな声をしていた。
その段になって彼女の使い魔は目を覚ました。
目を何回も瞬かせ、頭を擡げてこちらを見つめる仕草は愛くるしいものだった。
使い魔が持つ大きく黄色のくりっとした目がそれを十分に引き立てている。
その時、またも先程聞こえてきたものと同じ声が聞こえてくる。
が、その声は今にも泣き出しそうな声をしていた。
「あついよ……てが、あつい……あついよう……たす……けて」
手、そして熱いという単語にルイズは使い魔のルーンが刻まれているのだと反射的に気づく。
そこまでいって更に彼女は事の奇妙さにはっとした。
目の前にいる竜ともしれぬ生き物はさっき見せていた優しそうな表情とは逆に苦悶の表情を浮かべていたからだ。
だとすれば本当にこの目の前の竜が喋っているというのだろうか?
流石にその事を不気味に思ったルイズは後ろにいるミスタ・コルベールに早口でその事を伝える。
そこまでいって更に彼女は事の奇妙さにはっとした。
目の前にいる竜ともしれぬ生き物はさっき見せていた優しそうな表情とは逆に苦悶の表情を浮かべていたからだ。
だとすれば本当にこの目の前の竜が喋っているというのだろうか?
流石にその事を不気味に思ったルイズは後ろにいるミスタ・コルベールに早口でその事を伝える。
「せっ、先生っ!!この使い魔喋ってます!!」
「何、喋ってるだって?どれどれ……?」
「何、喋ってるだって?どれどれ……?」
コルベールはルイズの側まで来てから地面に立膝を突き、使い魔の口元に出来るだけ耳を寄せる。
しかし、何も聞こえてはこない。
それどころか口を動かす気配さえない。
しかし、何も聞こえてはこない。
それどころか口を動かす気配さえない。
「うーん、済まないがミス・ヴァリエール、私には聞こえないみたいだ。」
済まなさそうにコルベールは後頭部を掻きながら答える。
その間にもルイズの頭にはさっきから苦しげな声が聞こえてくる。
その間にもルイズの頭にはさっきから苦しげな声が聞こえてくる。
「いたいよ……やめてよ……なんなの、これぇ……」
そのあまりの苦しげな表情に、ルイズは声の問題はさておいて使い魔をそっと抱き締める。
「ごめんなさい……我慢してね。使い魔のルーンが刻まれるまでの間だから……」
そう言って縫いぐるみの様に柔らかい毛を持った体をそっと何回も撫でていく。
これから一生を共にする存在であり、やっと自身の魔法が成功した証。
見栄えも申し分ないこの使い魔を邪険にすれば、始祖ブリミルから何をされても文句は言えない。
というかそんな事をした時点でメイジではない気がする。
コルベールはというと表情を研究者のそれにし、感慨深げな声を出す。
これから一生を共にする存在であり、やっと自身の魔法が成功した証。
見栄えも申し分ないこの使い魔を邪険にすれば、始祖ブリミルから何をされても文句は言えない。
というかそんな事をした時点でメイジではない気がする。
コルベールはというと表情を研究者のそれにし、感慨深げな声を出す。
「うん。どうやらルーンは此処に刻まれたようだね。」
そう言って彼が撫ぜたのは翼の下辺りにある赤い楕円状の突起部分だった。
それを見てルイズは益々訳が分からなくなってくる。
使い魔が喋ったであろう言葉が正しければそこは手に当たる部分だ。
だがそこにはただ突起があるだけで指はおろか腕すらない。
どういうことだろうか?
そんなルイズを余所にコルベールは熱心にルーンを観察し、それを携帯していたスケッチブックに書き写す。
それを見てルイズは益々訳が分からなくなってくる。
使い魔が喋ったであろう言葉が正しければそこは手に当たる部分だ。
だがそこにはただ突起があるだけで指はおろか腕すらない。
どういうことだろうか?
そんなルイズを余所にコルベールは熱心にルーンを観察し、それを携帯していたスケッチブックに書き写す。
「ふむ。珍しいルーンだな。さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ。」
「待って先生!私は本当に……」
「待って先生!私は本当に……」
聞こえたんですと言おうとしたが、見事な巻き髪と雀斑を持った女の子の茶々によって邪魔された。
「爆発魔法ばっかりやってるから疲れて空耳でも聞いたんじゃないの?」
「な!先生っ!『洪水』のモンモランシーが私を侮辱しました!」
「ちょっと!誰が『洪水』ですって?!私は『香水』のモンモランシーよ!」
「あんた小さい頃洪水みたいなおねしょしてたって話じゃない。『洪水』の方がお似合いよっ!」
「よっくも言ってくれたわねっ!ゼロのルイズ!ゼロの癖になによ!!」
「こらこら。貴族はお互いを尊重しあうものだ。さあ、早く戻ろう。」
「な!先生っ!『洪水』のモンモランシーが私を侮辱しました!」
「ちょっと!誰が『洪水』ですって?!私は『香水』のモンモランシーよ!」
「あんた小さい頃洪水みたいなおねしょしてたって話じゃない。『洪水』の方がお似合いよっ!」
「よっくも言ってくれたわねっ!ゼロのルイズ!ゼロの癖になによ!!」
「こらこら。貴族はお互いを尊重しあうものだ。さあ、早く戻ろう。」
二人を宥めたコルベールが踵を返してすうっと宙に浮く。
それに伴い他の生徒達も空中に浮き石造りの校舎に向かって飛んで行く。
それに伴い他の生徒達も空中に浮き石造りの校舎に向かって飛んで行く。
「なあルイズの使い魔って飛べるのかなあ?」
金髪で少々ぽっちゃりとした少年―マリコルヌがさりげなく出した質問に他の生徒はふと考えさせられる。
確かに翼―此処の常識に照らし合わせてあれが翼と無理にいうのなら―は持っていた。
確かに翼―此処の常識に照らし合わせてあれが翼と無理にいうのなら―は持っていた。
「使い魔自体は飛べるだろうけど、ルイズを乗せてじゃ……」
比べてみれば体格的に乗るルイズの方が大きい。
それにバランスも悪く見えてしまう。
何よりあの使い魔の翼にそんな踏ん張りの利く力があるとはどう贔屓目に見ても見れない。
その事に関して燃える様な赤い髪の少女―キュルケが「無理ね」と断じ切る。
それから誰からともなく小さな笑い声が上がり、やがてそれは大きな笑い声となる。
それにバランスも悪く見えてしまう。
何よりあの使い魔の翼にそんな踏ん張りの利く力があるとはどう贔屓目に見ても見れない。
その事に関して燃える様な赤い髪の少女―キュルケが「無理ね」と断じ切る。
それから誰からともなく小さな笑い声が上がり、やがてそれは大きな笑い声となる。
「なあんだ。結局ルイズは歩いて城まで、か!相変わらずじゃあないか!」
「竜っぽい外見だったから最初はびっくりしちゃったけど、ゼロのルイズにぴったりかも!」
「見かけ倒しもあそこまでいくと質が悪いな!だが良い余興にはなったよ。なあ、皆?」
「竜っぽい外見だったから最初はびっくりしちゃったけど、ゼロのルイズにぴったりかも!」
「見かけ倒しもあそこまでいくと質が悪いな!だが良い余興にはなったよ。なあ、皆?」
金髪の気障そうな少年―ギーシュのその言葉に皆は各々のタイミングでうんうんと頷く。
そして再び一頻りの笑いが起きた。
だがそれに交わる事も無く無表情を貫き通している少女がいた。
小柄で幼い外見をした青髪の少女―タバサはほんの極僅かだが何かを感じ取っていたからだ。
ルイズの使い魔が自分の召喚した6メイルはありそうな巨躯を持つ風竜の幼生と、どこと無く何かが似通っている事を。
そして再び一頻りの笑いが起きた。
だがそれに交わる事も無く無表情を貫き通している少女がいた。
小柄で幼い外見をした青髪の少女―タバサはほんの極僅かだが何かを感じ取っていたからだ。
ルイズの使い魔が自分の召喚した6メイルはありそうな巨躯を持つ風竜の幼生と、どこと無く何かが似通っている事を。
草原に一人取り残されたルイズは使い魔の方へ向き直り、優しい口調で問いかける。
「あんな奴等の言う事なんて聞いちゃダメよ?それよりあなた大丈夫?もう痛くはないと思うけど。」
そう言ってルーンの刻まれた赤い突起に目をやる。
が、次の瞬間彼女はその場から軽く仰け反ってしまった。
赤い突起が急に迫り出したかと思うとそれが前にすっと伸びて、突起から折り畳まれていたであろう先の尖った指が三つ出てきたのだ。
いや、体から伸びているか細い腕も、赤い手もその指も収納できるものだと考えていいだろう。
使い魔は不安げにルーンの刻まれた手の甲を見ていた。
それからややあって再び例の声が聞こえて来た。
が、次の瞬間彼女はその場から軽く仰け反ってしまった。
赤い突起が急に迫り出したかと思うとそれが前にすっと伸びて、突起から折り畳まれていたであろう先の尖った指が三つ出てきたのだ。
いや、体から伸びているか細い腕も、赤い手もその指も収納できるものだと考えていいだろう。
使い魔は不安げにルーンの刻まれた手の甲を見ていた。
それからややあって再び例の声が聞こえて来た。
「あなた……だあれ?」
それに対しては質問の趣旨を無視して『どうやって話しているの?』と聞きたかったが、そんな事をするのは流石に野暮だと思って正直に答えた。
「私の名前はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。今日からあなたのご主人様よ。」
「ル、イ……ズ。ルイズ!ルイズ!」
「嘘っ、ルイズだけだけど、もう覚えたの?!凄いじゃない!でも、ルイズじゃなくて『ご主人様』って呼ぶのよ。いいわね?」
「ル、ル、ルイズはご主人様!ルイズはご主人様!」
「ル、イ……ズ。ルイズ!ルイズ!」
「嘘っ、ルイズだけだけど、もう覚えたの?!凄いじゃない!でも、ルイズじゃなくて『ご主人様』って呼ぶのよ。いいわね?」
「ル、ル、ルイズはご主人様!ルイズはご主人様!」
使い魔は名前の定義を壮大に勘違いしているらしく、がくっとしたルイズは冷静に突っ込む。
「ええと、違うわ。『ご主人様』、それだけで良いの。それと私と話す時は……敬語を使ってね。……敬語ってこの子分かるのかしら?」
「わかった!えーとぉ……ご主人様!」
「そうよ!やるじゃない!それにこれってよくよく考えたら凄い事よね。人語を解して、話し方に上下関係の区別までつけながらどんな形だろうと話す事が出来るんだから。しかも使い魔で。」
「?ご主人様、どしたんですか?」
「わかった!えーとぉ……ご主人様!」
「そうよ!やるじゃない!それにこれってよくよく考えたら凄い事よね。人語を解して、話し方に上下関係の区別までつけながらどんな形だろうと話す事が出来るんだから。しかも使い魔で。」
「?ご主人様、どしたんですか?」
顎に手を置きながらぶつぶつ何かを喋っているルイズに使い魔は質問した。
「何でもないわ!何でもないの。……ところであなたの名前は?」
「わたしのなまえは……ラティアス」
「そう。ラティアスっていうんだ。変な名前だけどわたしは素敵な名前だと思うわ。」
「……うれしいです、ご主人様。」
「わたしのなまえは……ラティアス」
「そう。ラティアスっていうんだ。変な名前だけどわたしは素敵な名前だと思うわ。」
「……うれしいです、ご主人様。」
言うとラティアスは両頬を薄紅色に染める。
照れた使い魔を微笑ましげに見つめ、ルイズは学院の方向を向く。
照れた使い魔を微笑ましげに見つめ、ルイズは学院の方向を向く。
「さてと、学院に戻りましょうか。あっ、あなたは初めて行くのよね。」
再びラティアスの方を向くとラティアスはもう地面に横になってはいなかった。
ルイズの頭がある所とほぼ同じ位置で滞空していたのである。
やっぱり竜の一種なのかしらと思ったルイズはまたしても奇妙な事に気づく。
ふわふわとその場で5サント程上下しているにも拘らず翼が微動だにしていないのだ。
通常竜は滞空する為にを翼を動かすものだが、ラティアスにはそれが全く見られない。
風を掴んでいるのだろうかという考えは、辺りが極めて無風に近いという事で無しになった。
では、一体どうやって浮いているというのだろうか?
ルイズの頭がある所とほぼ同じ位置で滞空していたのである。
やっぱり竜の一種なのかしらと思ったルイズはまたしても奇妙な事に気づく。
ふわふわとその場で5サント程上下しているにも拘らず翼が微動だにしていないのだ。
通常竜は滞空する為にを翼を動かすものだが、ラティアスにはそれが全く見られない。
風を掴んでいるのだろうかという考えは、辺りが極めて無風に近いという事で無しになった。
では、一体どうやって浮いているというのだろうか?
「ご主人様!どこへ行きたいんですか?」
「えっとね、あっちの方にあるトリステイン魔法学院っていう所。」
「じゃあ、わたしの背中に乗ってください!」
「いいわよ……って、あんた今なんて言った?」
「えっとね、あっちの方にあるトリステイン魔法学院っていう所。」
「じゃあ、わたしの背中に乗ってください!」
「いいわよ……って、あんた今なんて言った?」