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魔法少女リリカルルイズ30


ある夜、トリステイン王国とその近郊で4つの事件が起きた。
平民から搾取をするメイジ、あるいはドラゴンなどの幻獣が突如気を失ったという事件である。
だが、この4つの事件を結びつける者は誰もいなかった。
それも当然で4つの事件が起こった場所はあまりにも離れていたし被害者にも共通点がなく、その上誰にも知られることなく終わったものもあったからである。
これは、その4つの事件の中の1つのあらましである。


深夜のヴァリエール公爵の屋敷。
そこに屋敷の庭に作られた花の迷路を駆ける土くれのフーケの姿があった。
なぜ彼女がヴァリエール領にいるか。
それは盗賊としての仕事のためである。
トリステイン魔法学院での盗みに訳もわからぬうちに失敗したフーケは学院に帰るに帰れなくなり、かねてから次の目標と定めていたヴァリエール公爵所有の宝物を頂戴すべくこの地を訪れた。
では、なぜ今その土くれのフーケがヴァリエール公爵の屋敷に作られた花の迷路を髪を振り乱し、服を汗で体に貼り付けながら息を切らせて走っているのか。
それは彼女が盗みに失敗したからである。
学院の時とは違い夜陰に乗じて邸宅に侵入した──ケチがついた学院の時と同じ方法を使う気にはなれなかった──フーケはあらかじめ調査しておいた通りに宝物のある部屋に足音を忍ばせて急いだ。
目当ての部屋まであと少し。
そこで少女が一人、フーケの前に立ちはだかった。
「お前、泥棒か?」
赤毛の、まだ子供と言っていい歳のメイドの少女が気の強そうなつり目を向け、フーケの前に立っていた。
立っていた、と言う言い方は正確ではないかもしれない。
立ちはだかっていた、と言う言い方が適切だろう。
「おとなしく捕まるんなら何もしねえよ。そうでないんなら、ちょっと痛い目にあってもらわねえとな」
「はっ」
フーケは鼻で笑う。
たかが子供に、たかがメイドになにができるのか。
「それは私の台詞だよ。お嬢ちゃん。平民がメイジに何ができるって言うんだい?」
そう、少女は杖を持っていない。マントも着ていない。
フーケのような貴族崩れですらない。たかが平民なのだ。
たった一人の平民の子供がメイジのフーケに何ができるわけがない。
「おとなしくしてるなら何もしないであげるよ。でも、そうでないんなら痛い目にあってもらわないとねえ」
フーケは少女の言葉を真似て嘲り、そして杖を構える。
少女との距離は離れている。
人間の脚力ではどうやっても一気に飛び込める物ではない。
つまり剣や素手の間合いではないのだ。
それなら魔法で少女をどうとでもできる。殺すも生かすも思いのままだ。
故に、これで大抵の平民は黙ってしまう。
「なら、しかたねえな」
だが少女は怯みもしなければ怯えもしなかった。
つり目を離さずに、やや半身に構える。
「少し痛い目にあってもらうぜ!」
地面を蹴る少女は低くフーケに跳ぶ。
「は、バカだねえ」
フーケは落ち着いて杖を振り、ルーンを唱える。少女は確かに速いが、杖の一振りで魔法を使えるメイジ相手には不十分だ。
木の床は練金で瞬時に泥沼に変わり、天井は土となる。
──終わりだよ
素手の少女がフーケに手を出すには、泥となった床を踏まなければならない。
そして泥を踏めば足を取られ、土となった天井が少女を生き埋めにする。
勢いのついた少女は今更止まれないはずだ。
フーケは三日月のように唇をゆがめ、嘲笑を少女にくれてやる。
「たあああああああああああああああああああっ」
泥に埋まる少女が叫び声をあげる。
それは、やむことなくフーケに迫り、彼女の嘲笑をわずかなものとした後に驚愕へと変えた。
少女は床に足をつきはしなかったのだ。
「なっ」
空を飛び、いつの間にか握っていた槌のような杖でフーケに横一閃。
間一髪、床に転げたフーケの頭上を槌が通過する。
少女の細い腕でふるわれたとは思えない威力を持つ槌が屋敷の壁を粉々に粉砕した。
「冗談じゃないよこんなの!」
フーケはその穴から転がり出る。
壁が砕け散ったときに出た音が屋敷の隅々まで響いている。
この盗みは失敗だ。
フーケは、あらかじめ予定していた経路に向かい走った。


そして今、フーケは屋敷の庭に作られた花の迷路を走っていた。
庭木で作られた迷路の壁は高く、また密集しているためフーケを見つけるのは非常に困難になっている。
しかもフーケは脱出のための経路をあらかじめ調べている上にいざとなったら土の魔法で庭木の壁に穴を開け、またふさぐこともできるのだ。
だれも追いつけるはずがない。ここまで来ればもう脱出したも同然だった。
「まちやがれ!」
はっきりと声が聞こえた。
──見つかった?
振り返っても誰もいない。
声の大きさから考えて遠くにいるわけではない。ならどこに?
声が聞こえた方向をもう一度思い出す。
声は……
──上?
追っ手は上にいた。
先ほどの壁を粉砕したメイドの少女が槌のような杖を持ち、そしてなぜか赤い服──それはどこか戦装束を思い起こさせた。両脇に不気味な怪物の顔がつけられた帽子など、他の何に使うというのか──を着て空を飛び、フーケめがけて急降下してくる。
「さっきは驚いたけど馬鹿なことをしてるもんだよ」
フーケはルーンを唱え、魔力を通した足で地面を蹴る。
学院の時と同じだ。地面はあっという間に盛り上がり、巨大な人型を作った。
「ここまでフライを使って精神力を使い果たして何しようってんだよ」
土のかたまりはゴーレムとなり赤い少女を握りつぶさんと手を伸ばす。
赤い少女は止まらない。さらに速度を上げ、そして一言叫んだ。
「アイゼン!」
火薬の爆ぜる音、そして金属がぶつかり合う音がした。
少女は槌を振り上げ、ゴーレムに振り下ろす。
人間が振り回せるような槌で30メイルものゴーレムがどうにかなる物ではない。
だが少女の槌はゴーレムの腕を粉砕し、二撃目でゴーレムの全てを吹き飛ばした。
その後ろにいたフーケもろとも。
「きゃああああああああああああああ」
吹き飛ばされたフーケは迷路の壁を作る庭木に抱き留められた。
枝が頬や腕にひっかき傷を作ったが、それは優しい方だったかもしれない。
少なくとも目の前にいる赤い少女よりは。
「カトレアに知れたら事だからな。人間相手にはあんまりつかわねえんだが泥棒なら別だ」
少女は手を掲げる。
睨むフーケの目の前で不思議なことが起こった。
フーケの胸元から光る玉が浮かび上がっていくのだ。
何が起こっているのかはわからない。だが、その原因が赤い少女にあることは確実だ。
「な……何をする気……」
「蒐集」
フーケの腕から力が抜ける。
視界は闇に閉ざされ、意識は沈んでいった。


ルイズが勲章を賜ってから数日後のことである。
その日はルイズにとっては久しぶりの授業だった。
あの後ルイズは、水のメイジの秘薬を使っても回復がかんばしくなく、寝込んでいた。
ルイズはその間、ずっとおかんむりだった。
特にフリッグの舞踏会当日は
「私も出るー」
と、ふらつく体を引きずって無理矢理起き出してユーノを困らせたほどだった。
これはこの数日でユーノが2番目に困ったことだった。
ちなみに1番困ったのはルイズの毎日の着替えである。
体が疲弊して、ろくに体が動かないルイズの着替えをユーノが手伝ったわけで……。
いやまあ、ほとんどはシエスタが手伝ってはいたんだけど。
何はともあれ久しぶりの教室は前に比べて少し騒がしく、女生徒たちが固まってお喋りをしている。
ルイズは、その集団をちょっと見ただけで席に着いたのだが、向こうからルイズに近寄ってきた。
「ねえねえ。ルイズ、ちょっと教えて欲しいんだけど」
どうやら、この集団のリーダーはモンモランシーらしい。
「何を?」
「そりゃあ、今評判の女騎士様の事よ」
「女騎士?なんでそんなの私に聞くのよ」
「ああ、そうか。ルイズはずっと寝てたから知らないのよね。わかったわ。教えてあげる」
そしてモンモランシーは蕩々と語り始めた。
「ちょっと前にね。土くれのフーケが捕まったのよ。どこで捕まったと思う?なんと、ヴァリエール領。そう、あなたの故郷のヴァリエール領よ。土くれのフーケはあなたのとこのお屋敷に泥棒に入ったんだけど、見つかって逃げたんですって。それを追跡して、死闘の果てに捕まえたのがヴァリエール公爵の次女、カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ様とその騎士団ってわけよ」
「……はぁ?」
モンモランシーの説明には最後の部分にとても聞き捨てならないところがあった。
「ちょっと待って。誰と誰の騎士団?」
「だから、カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ様とその騎士団よ。黄金の杖を持って、白銀の鎧に身を包み、桃色がかったブロンドをなびかせ白馬に乗った女騎士。カトレア様。あぁ、きっと、とても素敵な方なんでしょうね」
「え?あ?その……どこのカトレアでどこのヴァリエール領よ」
「あなたのところに決まってるじゃない。だから、あなたに聞きに来たのよ。カトレア様がどんな方か」
「いやいやいやいや。それ、絶対ないから」
いや、もうあるわけがない。
ルイズはまず自分の姉であるところのカトレアが白銀の鎧を着たところを想像する。
間違いなくつぶれる。
次にカトレアが黄金の杖を持って土くれのフーケと闘うところを想像する。
間違いなく倒れる。
ここでちょっと考え方を変える。
土くれのフーケが得意な魔法はゴーレムだ。
カトレアも優秀な土の系統のメイジで、ゴーレムを作る魔法もかなり上手い。
なら、これでゴーレム大決戦をやったら……どう考えても似合わない。
このことからルイズは一つ結論を出した。
──何が起こったかはわからないけど尾ひれがつきまくってるみたいね。
「絵姿も出ているのよ。見る?」
「見せて」
モンモランシーが丁寧に折りたたまれた絵姿を取り出す。
それを見たとき、ルイズの目は点になった。
「これ、姉様じゃないわよ」
「は?」
「じゃあ、誰のよ!」
「知らないわよ。でも、とにかく、これは姉様じゃないわ。だまされたんじゃないの?」
「きーーーーーーーっ」
激しく悔しがるモンモランシーとこの前できたばかりのカトレアファンクラブ一同。
だが、実のところルイズは嘘をついていた。
その絵姿には見覚えがあった。
おそらく何十年も前に書かれた物を模写して、少しだけ加筆修正した物だろう。
絵姿の人物がヴァリエール領にいるのは間違いない。
そして、その人物ならばフーケを地の果てまで追いかけて捕まえるくらいできるであろう事もわかっていた。
その人物は烈風の2つ名を持つあの人なのだから。
その人が捕まえたのならば、カトレア姉様が捕まえたというのよりはずっと信憑性がある。
だが……しかし……
──あの人と死闘を演じるなんて……フーケって、どういうメイジなのよ。
話半分に聞いても無茶を通り越して、フーケの事がとても心配になる。
ルイズは悲鳴を上げるファンクラブを尻目に、しばらく頭を抱えていた。


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