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KNIGHT-ZERO ep10


          少しだけ話して  あなたの声がいい
          そんな一言さえも 永遠のかけら 

                          遊佐未森 「still room」より     



タルブでの冒険行が終わり、ルイズとKITTは約束通り夕食の時間にトリスティン学院に戻った

不本意ながら革ジャンもシエスタに返したが、KITTを見るなり抱きつき、涙を流し喜んだシエスタが
ルイズの姿を見た第一声は「あら生きてる」……ルイズはいつか必ずこの革ジャンを奪い取ると決意した

その戦場でのルイズとKITTの行動は、彼女らの安全を考えたアンリエッタの判断により秘匿され
勲章に替わり学院内においてルイズが得た物はといえば丸一日の授業サボリというありがたい称号だった
戦争によってアンリエッタの結婚がお流れになり、ルイズは祝詞を起稿する義務から開放されたが
結局その日の授業を受け持っていたシュヴルーズ先生に反省文をたっぷりと書かされる羽目となった


それから何日かの時が流れ、KITTはといえば、学院の他の生徒達との間にも少しづつ馴染んでいった
ギーシュとの決闘と、噂として伝わるルイズとKITTの様々な行動は他の生徒の興味を惹きつけた


キュルケは時々授業を抜け出してはKITTの所にふらりとやってきて「ちょっと遊んでよぉ」と言うと
ルイズにも無断でKITTの操縦桿を握り、炎のメイジに相応しい激しいドライヴィングを楽しんでいる
その動力性能に惚れこみ、KITTの感情を宿す制御システムにさほど興味を持たぬ彼女の明快さに
KITTは好感を持ち「私の誇るべき父祖の二つ名は『ファイア・バード』と言うのです」と自慢した


ギーシュは幸運にもモンモランシーとのデートの約束を取り付けると、KITTを借り出しに来る
どうやら彼はKITTから聞いた「カーセックス」という物を一度でいいからしてみたいらしい
モンモランシーもKITTが奏でてくれるカーペンターズやダイアナ・キングが目当てで誘いに乗り
ギーシュが夕暮れの川辺でホテル・カリフォルニアを流した時などは今にも落ちそうな瞳をしたのだが
そのたびにKITTが暴露するギーシュのだらしない女関係に関する話で、思いは遂げられぬまま
KITTは「不純な行為でシートを汚されるのを防止するのは私の義務ですから」と澄まし声で言った



モンモランシーはKITTからカレン・カーペンターの不幸な死を聞き、「やっぱりね・・・」とだけ呟く
ギーシュは彼女の髪を撫でながら「人は土の暖かさと、水の清らかさを忘れてはいけないのだ」と漏らした



ルイズの使い魔であるKITTに乗りたがる学院の生徒は続々と現れ、彼女は特にそれを拒まなくなった

操縦桿を預ける条件はただひとつ、KITTを操るルイズの横に同乗して最後まで降参しないという事

300km超で平原をブっ飛ばし、瞬間的に8G近い衝撃を乗り手に叩きつける強烈なブレーキをかける
KITTとルイズの「お散歩」を経験して、もう一度KITTに乗りたがる命知らずは殆ど居なかった
結局、KITTの操縦桿を握るのはルイズとキュルケ、ギーシュ、タバサ、そしてシエスタだけになった



トリスティン魔法学院の新二年生達が進級の儀式として自らの使い魔を召喚した日から2ヶ月ほど経った

学院の生徒にとっては長く、ルイズにとってはあっという間だった時が流れ、学院の恒例行事が催された

使い魔品評会

進級後のオリエンテーションと、種別によっては時間のかかる使い魔との初期的な関係構築が終わる頃
召喚した使い魔を学院の生徒や職員、外部から招いた賓客の前で披露し、最優秀の使い魔を決める行事

学院が長らく伝統としていた催事で、二年生に進級した生徒と、その使い魔の参加が義務づけられていた

ルイズは全員参加が建前の行事が進級に必要な単位には計上されないと聞き、早々にサボリを決めこんだ

無為な時間を過ごすよりKITTと遊んでるほうが面白いし、今のルイズは幾ら走っても走り足りなかった



二年生のメイジ達が緊張の朝を迎える使い魔品評会の朝、ルイズはいつも通りKITTのシートで目覚める
爽やかな朝を迎えるために毎晩KITTに頼む目覚めの音楽、今日はKISSが大音響で車室を震わせた

鼻歌をうたいながらブラウスとスカートを身に付け、紐タイを結んで五芒星のメダルで留めたルイズは
あのタルブを救った参戦以来、シエスタが機嫌のいい時に限り貸してくれるようになった革ジャンを着る

当然、制服に関する規則が定められた学院で、その奇抜な上着で学業に参加する事は許されていなかった
ギーシュの悪趣味なシャツや、ギムリが杖を即座に抜くために短く切ったマントが黙認されているように
その被服規則は厳格な物ではなかったが、異世界製とはいえ軍服が持つ禍々しさは許容されそうになかった



ルイズは午前の授業にも午後の品評会にも参加する気などなかった、KITTは一応の義務として嗜める

「ルイズ、学院の課業には出席したほうがよろしいのでは?私は見世物になる事への抵抗などありませんが」



それまで『何をしなくちゃいけないか』しか見えなかったルイズはKITTとの出会いと、その後の経験で
『何をすべきか』を意識するようになった、今のルイズに大切なのは、KITTと共に過ごす時間だった
KITTを自分の手足のように感じ、KITTと一緒に走る、それによって広がる可能性が見えつつあった

KITTの能力と虚無の魔法で不殺を貫いたと思っていたタルブ、確かにあの戦闘での死者は無かったが
地球の中世と同様にこの世界では、戦線を維持するために不可避な病死者が戦闘による死者を上回っていた
ルイズの参加した戦闘の前後にも人は死に、重傷を負い魔法を使えなくなった者や不具になった者も居た

わたしがKITTをもっとうまく扱えていれば救えた命もあったかもしれない、もっと速く、もっと正確に


ルイズは鏡の前に立って紐タイを少し緩め、黒い革と意外な調和を見せる五芒星のメダルに顔を綻ばせる


「……KITT、朝からKISSは少し耳が痛くなるわ……明日はメタリカにしてちょうだい……」



何をすべきかは、見えている



女子寮塔の廊下

清澄な空気の中、女子生徒達の賑やかな声が宗教画が描かれたアーチ状の天井に、小鳥の囀りと共に響く朝

分厚い石敷きの上、ルイズはKITTをゆっくりと進めていた、重厚な管楽器の様な音が他の音に混じる
ボディ形状や質量を任意変化させる『C』ボタンで、KITTは屋根の無いコンバーチブルになっていた
公共の場である事を考慮してKITTのサウンドシステムはE・クラプトンをごく微かな音量で流している


前をサラマンダーのフレイムを連れたキュルケが歩いてた、肩にフクロウを止まらせたマリコルヌも居る
タバサが巨大なドラゴンと共に歩くこともある女子寮の広い廊下にルイズの黒い使い魔は溶け込んでいた
男子禁制のはずの女子寮塔に図々しく入ってきては女生徒のご機嫌を取るマリコルヌのほうが浮いている

キュルケが背後から聞こえる重低音に振り返りKITTに笑いかける、ルイズへの挨拶はその次だった

「あらルイズ、おはよう、今日はあの下らない使い魔ショーでKITTクンに何をさせる積もり?」

以前KITTに乗せた所、たった320km出しただけで頭を抱え止めてくれと哀願したマリコルヌが囃す

「ゼロのルイズ、その馬車で藁束でも運んで見せてくれるのかい?、平民はきっと喜んでくれるだろうな」

少し前だったらムキになって反論していたルイズは、ただ微笑んで二人の同級生を、その進む先を見た
薄暗い廊下の向こうにある、明るい光の差す寮塔の出口、ルイズはそこから広がる無限の空間を見ていた


「そうねぇ…KITTがわたしのためにしてくれる事は…ここから連れ出してくれる王子様の役…かしら」

「そりゃ確かにすっごい芸ね!あのクソ真面目だったルイズがサボりなんて!やるわねKITTクン」

高らかに笑うキュルケに付き従っていたフレイムが、異形の使い魔にエールを送るように炎を吹き上げる

「ルイズ、それはないですよ!私はさっきから学院の行事には欠席せず、キチンと参加すべきだと……」

ルイズはKITTの言い訳に耳を貸すよりも、サンシェイド裏の鏡を見つめ、指で髪をいじるのに忙しい

女子寮を出て学院本塔とは反対方向の門に向けてKITTを転がす、あの夜タルブに向かう時にも通った門

門の前で待っていたシエスタが手を振った、籐のランチボックスとワインが数本入った籠を抱えている

ドアを開けず、その上を飛び越えて助手席に滑りこんだシエスタとルイズは顔を見合わせてくすくすと笑う

シエスタも今日は仕事をサボった、タルブ村の実家が戦闘で蒙った被害について色々と悩んでいたシエスタ
マルトー親父の「たまには仕事を放り出して思いっきり遊んで来い」という言葉に従ったものだったが


「さぁブっ飛ばすわよシエスタ!まずはラグドリアン湖、今日は90分以内で着いてみせるわ!」


ルイズはシエスタの実家が『我が村の救世主に』と1箱送ってくれたタルブ産発泡ワインの栓をポンと抜き
ラッパ飲みしながらアクセルを踏んだ、V8の轟音とともに学院がバックミラーの中で小さくなっていく

「ルイズ・・・・・・現在あなたは私がかつて居た世界の法規を1ダースほど踏みにじっておりますが」
「このトリスティンでもね、御者が馬車を操る時に飲酒するのはご法度よ・・・・・・それがどうかした?」

法と秩序の守護者として生み出されたナイト2000は、異世界の少女によって少しづつ変わりつつあった
魔法劣等生の公爵令嬢として学院生活を送っていたルイズは、異世界の機械に触れて自分の世界を広げた


                だって、風はこんなに気持ちいい


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