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ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 第八話(後編)


 「ふう、なんとか侵入できた……施術の弱い部分があって助かったわ」

 ゴーレムが開けた穴から宝物庫に侵入したフーケは、ぶつぶつとつぶやきながら目当ての『破壊の杖』を探して様々な杖が飾られている一角に近づく。

 「……ふふふ、見つけたよ」

 フーケはニヤリと笑うと、『破壊の杖、持ち出し不可』というプレートが貼られた棚に置かれた全長1メイルぐらいの金属で出来た棍棒のような杖を手に取った。

 「くっ、結構重いね」

 意外とずっしりとした質感の『破壊の杖』を小脇に抱えると、フーケは急いでゴーレムの肩に乗った。
 離れ際に杖を振り、壁に文字を刻み込む。

 『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』


 その様子を呆然と見ていたルイズとキュルケは、ゴーレムの肩に乗った怪しい人影が出てきたのが、宝物庫のあたりだと気づいて我に返った。

 「キュルケ、大変だわ! あれは盗賊よ!」
 「ええ、土ゴーレムを使ってるってことは、武器屋で聞いた『土くれのフーケ』に違いないわ」

 そう言うとキュルケは、胸の谷間から杖を取り出して魔法を唱える体制に入る。

 「ちょっと、何する気?」
 「何って、盗人を魔法で叩きのめすに決まってるでしょ! あんたも何でもいいから魔法を撃つのよ!」
 「何でもいいからって……いいけど、どうなっても知らないわよ!」

 ルイズはキュルケの言葉にムッとしながらも、共に並んで魔法の詠唱を始めた。
 その間にも人影を肩に乗せたゴーレムは、二人の行動などまるで意に介さずに本塔から離れ、ゆっくりと学園からの逃走行動に移る。

 「いくわよ、ルイズ!」
 「わかってるわよ!」

 詠唱が終わると同時にキュルケとルイズは魔法を放った。キュルケの炎球とやや遅れてルイズの魔法失敗の爆発がゴーレムに炸裂し、周囲がまばゆい閃光と爆風に包まれる。

 「きゃあ!」
 「……くっ!」

 キュルケは爆風に悲鳴を上げてしゃがみ込んだルイズを地面に押し倒すと、かばうように覆いかぶさった。

 「ルイズ様、キュルケさん、無事どすか!」

 閃光と爆風が収まった後、騒ぎに気づいて中庭におっとり刀で駆けつけた静留が二人に声をかける。

 「いたたた、大丈夫よ……キュルケ、盗賊は?」
 「残念、逃げられたみたい」

 ルイズの問いにキュルケは覆いかぶさったままの姿勢で、ゴーレムがいた場所を指差して答える。
 そこには人の姿はなく、土の小山になったゴーレムの残骸だけが残されていた。


 翌朝……。
 トリステイン魔法学院では、昨夜から秘宝『破壊の杖』が盗まれたということで蜂の巣をつついた騒ぎになっていた。
 宝物庫に集まった学院中の教師は壁に空いた大穴を見て、口をあんぐり開けていたが、壁に刻まれた『土くれ』のフーケの犯行声明を見た途端、口々に好き勝手なことを喚き出した。

 「おのれ土くれのフーケめ! 貴族達の財宝を荒らすだけでは飽き足らず、魔法学院にまで手を出してきたか!」
 「衛兵はいったい何をしてたんだ!」
 「衛兵など所詮は平民だぞ、役に立つものか! それより当直の貴族は一体誰だったんだね!」
 「ミセス・シュヴルーズ! 確か昨晩はあなたの担当でしたな? この責任どうされるおつもりか! 免職どころではすみませんぞ!」

 その教師の発言をきっかけに、当直担当であったミス・シュヴルーズに非難が集中し始める。

 「ああ、一体どうすれば……」

 皆の非難を受け、よよよとシュヴルーズが崩れ落ちたところで、ようやくオスマンがやって来た。

 「これこれ、彼女を責めるでない。当直なんぞ随分前から形骸化して久しいのじゃからな。責められるべきは、賊への対応を疎かにした我々自身の慢心じゃろう……で、賊を目撃した生徒は誰だね?」
 「この二人です」

 オスマンの問いに、コルベールが一歩前に進み出て、自分の後ろに控えていた二人を指差した。
 そこにいたのはルイズとキュルケ、そして、何故かそれぞれの付き添いと称してついてきた静留とタバサの四人だった。

 「ふむ、君達だったか……詳しく説明したまえ」

 ルイズが進み出て、自分が見ままを述べる。

 「大きな音がして中庭に飛び出したら、大きなゴーレムがここの壁を破壊していました。そして宝物庫から何か……たぶん『破壊の杖』――を抱えた黒いローブ姿の怪しい人影が現れて、ゴーレムの肩に乗って逃走しようとしました。それを阻止すべく魔法を放ったのですが、命中と同時に閃光が起きて……ゴーレムの残骸だけが残っていました」
 「なるほど……後を追おうにも手がかりなしということか……」

 オスマンは髭を撫でながら顔をしかめると、ふと思い出したようにコルベールに尋ねた。

 「ときにミス・ロングビルの姿が見えんようだが……この非常時に一体どこへいったのじゃ?」
 「さ、さあ? どこへいったのかは分かりませんが……あ、ミス・ロングビル」

 ロングビルの所在をオスマンに問われたコルベールが答えに窮していると、そこに当の本人が姿をあらわした。

 「ミス・ロングビル! どこへいっていたのですか! 他の教師達はとっくに集まっているというのに!」

 興奮したコルベールがまくし立てるが、ロングビルはそれを無視してオスマンに告げる。

 「申し訳ありません。朝一番にここへきてフーケのサインを見つけ、直ぐに情報収集に出ておりましたもので」
 「ほう、仕事がはやいのう、ミス・ロングビル。して、その成果は?」
 「はい。フーケのアジトと思われる場所を特定しました」
 「なんですと!」

 コルベールが素っ頓狂な声をあげる。

 「誰から聞いたのじゃね?」
 「近在の農民に聞き込みを行ったところ、学院近くの森の廃屋に黒ずくめのローブをまとった人物が出入りしているの見たそうです。おそらくそれがフーケのアジトかと」

 ロングビルの言葉にオスマンの目つきが鋭いものに変わった。

 「なるほど、目撃した生徒の証言とも合致するの。そこは近いのかね?」
 「徒歩で半日、馬で四時間という所でしょうか」
 「では、すぐに王室に報告して衛士隊の出動要請を!」

 そうコルベールが叫ぶと、オスマンは目を向いて怒鳴りつけた。

 「馬鹿者! 王室なんぞに知らせる内にフーケは逃げてしまうわ! 身に振りかかる火の粉を払えないようでは何が貴族じゃ! この学院で起きた事件なら当然、我らで解決せんでどうする!」

 そう一気に言い切り、オスマンはごほごほと咳込んだ後、有志を募った

 「では、捜索隊を編成する。我こそはと思う者は杖を掲げよ」

 教師達は皆困ったように顔を見合わせるだけで、杖を上げたのは生徒であるルイズとキュルケ、タバサだった。

 「はあ、勇気だけは生徒の方があるということか……すまんが、この件は君らにまかせようと思う。諸君らの努力と貴族の義務に期待する」

 オスマンは教師達の不甲斐なさに渋い顔をした後、すまなそうに静留を含めたルイズ達四人に頭を下げる。

 「杖にかけて!!」

 ルイズ、キュルケ、タバサは共に高らかに唱和すると、スカートをつまんで恭しく礼をした。

 「では、馬車の用意を! 魔法を温存するために、それで目的地に向かうのじゃ。ミス・ロングビル、彼女達を手伝ってくれたまえ」
 「もとよりそのつもりですわ」

 そう答えるロングビルの瞳には嘲笑の色が浮かんでいたが、それに気づくものは誰もいなかった。



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