あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

魔法少女リリカルルイズ29


始めに見たのは暗闇だった。
──もう、夜?
と思ったが、まぶたを閉じているだけだとすぐに気づいた。
目をつぶったまま寝る前のことを思い出す。
品評会で暴走したジュエルシードの力を受けたゴーレムが出てきて、それからそのゴーレムとキュルケやタバサと協力して闘って、それからスターライトブレイカーを使って……
「あっ!」
思い出して目を開ける。
自分のベッドの天蓋が、それから窓の外には青い空が見えた。
「ジュエルシード!」
まだ、それが残っていたはず。
スターライトブレイカーでジュエルシードを掴んだところまでは覚えているが、その後どうなったか思い出せない。
ルイズは体を起こそうとした。
でも体が動かない。
ふわふわのベッドに手と足が沈むが、どうしても体が持ち上がらない。
おまけに体のあちこちが痛む。
動こうとするたびに関節がギシギシ痛んで、体が動かない。
不安で痛みが増して、痛みが不安を増していた。
「ルイズ。起きたの?」
首を少し傾ける。
ユーノがベッド脇の机の上にいつものようにフェレットの姿で立っていた。
「ユーノ。ジュエルシードは?」
「ちゃんと封印できてるよ」
「そう。よかった」
最後に聞いたレイジングハートのメッセージは聞き間違いや幻聴ではなかった。
ルイズは少しほっとする。
「それから……」
「その前に。ルイズ!」
「は、はい」
ユーノの声が低くなっている。
いつもと違うユーノの様子に、ルイズはかしこまってしまった。
「あの魔法は何?」
「あの魔法ってジュエルシードを封印するときに使った魔法?」
「そう、それ」
「あれね。スターライトブレイカーって言うの。すごいでしょ」
あの魔法はすごかった。
きっとユーノもびっくりしているんだろう。なんてルイズは考えている。
「すごいじゃないよ!」
「そうよね。すごいなんて物じゃないわよね。周りにある魔力を集めて自分の魔法にするんだもの。えーと、なんて言うんだったかしら」
「集束魔法」
「そう、集束魔法よ。集束魔法。よくできたでしょ?」
「よくできたじゃないよ!」
突然、声を荒げるユーノ。
ルイズは後ずさろうとするが体はそんなに動かない。
かわりに芋虫のように毛布の中に潜り込む。
「ルイズは集束魔法がどういう魔法だかわかってるの?」
「だから……周りにある魔力を集めて自分の魔法にする……でしょ?」
「それだけじゃないよ。とても負担のかかる魔法なんだ!スターライトブレイカーを使った後そうなっちゃったんだよ。ルイズにはまだ早いんだ。だから、教えていなかったのに。いつの間にあんな魔法をプログラムにしたの?」
「それ、ね……先に作ってたんじゃないの」
「え?」
「あのときにね。そのー、使えるような気がして、やったら使えたの。あんなふうに」
「じゃあ、あの場で?」
「うん」
「即興で?」
「う、うん」
フェレットの目がまん丸になって、あごが落ちてしまっている。
開いた口がふさがっていない。
「あー、もー。感覚だけであんな魔法を……」
「うう」
「お願いだから、そんな危険なことはもうしないでよ」
ユーノは頭を抱えて体をよじっている。
次の言葉が続きそうにない。
普段は全然怒らないユーノがすごく怒っていた。
「少しは褒めてくれてもいいじゃない」
ルイズは毛布で顔を隠してつぶやいた。


静かに扉が開けられる。
水差しを持ってルイズの部屋に入ったシエスタはもぞもぞ動くルイズを見ると、廊下に顔を出した。
「みなさん。ミス・ヴァリエールが起きられましたよ」
遠慮なくぱたぱたと足音を立て、キュルケが駆け込んでくる。
その後でタバサが静かに入ってきた。
「あらルイズ。ようやく起きたのね。待ちくたびれたわ」
キュルケの背後でタバサがうなずく。
ルイズは頭までかぶった毛布から顔を出した。
「外でずっと待ってたみたいだったけど」
「そりゃそうよ。あなたが起きたら、ここで待ってなさいってアンリエッタ王女が言ってるんだもの。ご褒美もらえるみたいだし。ねえ、タバサ」
タバサは前半にはうなずくが、後半にはうなずかない。
「ひ、姫さまが?こんなみっともないところ見せられない!」
あわてて立とうとしても立てないルイズの両肩をキュルケとタバサが押さえつけける。
「何するのよ」
「その姫さまからのご命令。ルイズはベッドから起こさないように。無理はさせないように。ですって。だから、おとなしく寝て待ってなさい」
「そんな、こんな格好で!」
「あ、もう来たみたいよ」
「え?ちょっと待って!」
だが、誰も待たない。
ドアの向こうからの新たな足音がベッドのすぐ側まで駆け寄ってくる。
目に涙を溜めたアンリエッタ王女は、その立場も忘れて寝ているルイズにすがりついた。
「ああ。ルイズ。ルイズ。よかったわ。もう大丈夫?痛いところは?」
「あ、あの。姫さま、他の人も見てますから」
アンリエッタ王女は我に返る。
周りを見てキュルケとタバサ、それに扉の前で控えているシエスタを確認すると顔を赤らめて咳払いで取り繕おうとした。
あまり成功しているとは言い難かったが。
「伝えたいことがあります。ミス・ヴァリエールはそのままで聞いてください」
よく通る声。背筋を伸ばした美しい姿勢。
それは王女として見事な物であった。
が、さっきの取り乱し方を見ては台無しだ。
キュルケは笑いを口の中にため溜めて、膝をついて礼をとる。
タバサもキュルケに続いた。
「このたびの皆の働きは、すばらしい物でした。学院を襲った土くれのフーケの物と思われるゴーレムの撃退。盗まれた宝物の奪還。そして、私の身を守り通したこともありましたね。被害は出た物の、いずれも賞賛するにふさわしいことです」
「被害が……あったのですか」
「ええ。学院の宝物庫の破損。少数の負傷者。それから……学院長秘書のミス・ロングビルが行方不明になっています」
ロングビルとはあまり会話を交わさなかったが、ルイズ、それにキュルケも少し沈んでしまう。
アンリエッタ王女はその空気を振り払うように声を上げた。
「この働きに対し、私は皆に精霊勲章を与えようと思います」
「本当ですか?」
ルイズは寝たまま驚きの声を上げる。
まさか、こんな話になってるなんて思ってなかった。
「不満……ですか?そうかもしれません。ですが、シュバリエは従軍が条件となったのです」
「いえ、そんなことありません。不満だなんて」
「では皆さん。受けてくれますね」
ルイズは首をかくかく振る。
もう、嬉しいし、びっくりするし。
声が喉で詰まってしまう。
キュルケだって顔が崩れているくらいだ。
タバサはいつもと変わらないけど。
「それでは」
シエスタが扉を再び開ける。
すぐ外に控えていた騎士が4つの勲章をのせた赤いヴェロア張りの台を捧げ持ち、アンリエッタ王女の足下に歩み寄る。
アンリエッタ王女は勲章を一つずつ手に取りタバサ、キュルケ、そして立てないルイズの胸につけていく。
「ルイズ、本当によくやってくれましたね。でも驚いたわ。あなたがあんなゴーレムを倒してしまうような魔法を使えるようになってたなんて」
「あ、あの……それは」
どう言おうかルイズはうろたえる。
ここで言っていい物かどうか決心がつかない。
それよりもキュルケがいるのが一番の問題だ。
このヴァリエールの宿敵を前に言っていいことではない。
だが助けは予想はできたが、期待はしていなかったところから来た。
「あれはルイズじゃない」
さっきから表情一つ変えていないタバサだ。
「あれはリリカルイズ。ルイズじゃない」
「えぇ?」
今度はアンリエッタ王女が驚きの声を漏らす。
しばらくタバサを見つめ、それからキュルケを見る。
「ええ……まあ、そういうことみたいなんです」
続いてルイズを見る。
「はい……そうなんです」
ついでにフェレットのユーノを見る。ユーノは首を縦に何回もコクコク振る。
「わかりました。私の勘違いのようです。ですがルイズ。あなたが学院から盗まれた宝物を守ってくれたことにはかわりありません。それは、勲章に十分値します」
「そうなんですか?」
「そうよ。ルイズ。あなた、宝物の上で倒れたのよ。覚えてないの?」
ルイズには心当たりはない。
が、じっと見るタバサの視線を受けているうちにこの話に乗った方がいいように思えてきた。
「あ、はい。そうです」
アンリエッタ王女がルイズを見ていた。
胸が少し痛む。
──ごめんなさい。いずれ……
アンリエッタ王女は最後の勲章を手に取り、部屋にいる皆に順番に見せていく。
「この勲章は、私を守った少年のメイジに与えるつもりのものでした。しかし彼はどこにもいません。見つけることはできなかったのです。ですから皆さん。もし、その少年、あるいはリリカルイズを見つけたら王宮まで来るように伝えてください」
アンリエッタ王女は最後の勲章を台の上に置き直した。
こうして略式ではあるが勲章の授与は終わった。
アンリエッタ王女はかなり無理して滞在を延ばしていたらしい。
ルイズに「くれぐれも体を大切にね」と言って部屋を辞した後、学校からアンリエッタ王女と王宮から来た騎士やメイド達はあっという間にいなくなってしまった。


さて、その夜に起きた事件を少し記そう。
まずはルイズの部屋。
「さー、勲章とご褒美をもらったお祝いよー」
盛り上がったキュルケがかなり高級なワインをまた一つ開けた。
グラスについだ後はぐびぐび水のように飲んでいる。
「あんたねー。病人の部屋で宴会はよしなさいよ」
「いいの。いいの。あなたも一緒なんだから。ねー、タバサ」
顔をキュルケの髪の色みたいに赤くしたタバサはひたすらシエスタが持ってきたつまみを食べている。
そのシエスタはと言うと扉の方ににじり寄り脱出のチャンスをうかがっていた。
「で、では私は次を持ってきますね」
「そうはいかないわよ」
逃げられない。キュルケに捕まってしまう。
「あなたも飲みなさい」
「わ、私平民ですから」
「いいの。いいの。関係ない。ほらほらほら」
「え?きゃ?うわー」
その後どうなったかルイズは覚えていない。
ユーノに聞いてみたが、顔を赤くして口をつぐむだけだったという。


もう一つ事件がある。
その夜、行方不明になったミス・ロングビルの捜索が行われていた。
ミス・シェヴルーズも捜索に加わっていた一人で、彼女は学院近くのゴーレムに焼き払われずに無事だった森が担当だった。
森はあまり大きな物ではないが、それでも捜索を終えるのには時間がかかる。
「ここにはいないようですね」
彼女が捜索を終える頃にはもうすっかり暗くなっていた。
なら、もうここにいても意味はない。学院に帰ろうとした頃である。
彼女の耳に声が響いてきた。
「痛いー……痛いー……」
「え?」
誰もいなかったはずだ。だが確かに声が聞こえてきた。
ミス・シェヴルーズがその声をたどっていくと、一軒の小屋があった。
この小屋はすでに捜索したはずである。そのときは学院の生徒の使い魔の竜がいるだけで誰もいなかった。
「痛いー……痛いー」
また聞こえる。
「誰かいるのですか」
小屋の中をのぞいてみたが、やはり人間は誰もいない。他からもしれないと小屋から離れた。すると
「痛いー……痛いー」
聞こえる。声が。
でも、このあたりには誰もいない。小屋の中にもだ。
「ま、まさか!」
ミス・シェヴルーズはある可能性に気づく。
──まさか、あの声は!
ミス・シェヴルーズはその可能性の意味するところに恐怖する。
「きゃああああああああああああああ」
そして彼女は走った。走って、走って、走った。
恐ろしい物から逃げるために走った。


さて、次の日のことである。
教室ではある噂が立っていた。
「ねえ、ねえ。タバサ。聞いた?」
タバサは首をかしげる。
教室に着いたばかりのタバサはまだなにも聞いていない。
「ミス・シェヴルーズがね。見たんだって」
「なにを?」
「幽霊よ。ミス・ロングビルの幽霊!」
タバサは微動だにせず、じっとキュルケを見る。
「興味あるみたいね。昨日の夜にミス・シェヴルーズが森の中に入ったら聞こえてきたんですって。痛い、痛いって。きっとミス・ロングビルがあの事件で……」
タバサは動かない。山のごとしである。まばたきすらしない。
「ミス・シェヴルーズも呪いで寝込んでいるって言うし。ちょっと怖いわね。あれ、タバサどうしたの?」
キュルケは手を伸ばし、タバサの肩をぽんと叩く。
するとタバサはそのまま倒れてしまった。立ったまま、わずかも動かずに。
「きゃーー。タバサ?タバサ?この子、目を開けたまま気絶してるわ?どうしたのよーーっ」
この後、ミス・ロングビルの幽霊は呪いをかける幽霊として末永く学院に語り継がれることになる。


そうそう、一つ忘れていた。
話は前後するが、ミス・シェヴルーズが森から逃げ出した後のことである。
森の小屋の中では、風韻竜がこんなことを言っていた。
「きゅぅううーーん。きゅぅうううーーん。痛いのー、痛いのー。お尻が痛いのー。とっても痛いのー。お姉様のばかーー」


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