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罪深い使い魔-11

何よ、この使い魔。
最近はいい子にしてたから、ご褒美に剣買ってあげたのに。
私の偉大さを見せつけてやったのに。
剣持った途端にこの有様?
平民のくせにゴーレムに立ち向かう?
バカじゃないの?
バカよバカ。
バカバカバカ。
本当にバカ。


剣なんか、渡すんじゃなかった。



翌日、トリステイン魔法学院は上を下への大騒ぎとなっていた。
賊の侵入。鉄壁だったはずの宝物庫の破壊。厳重に守られていた秘宝の強奪。
さらにそれらをやってのけたのは、巷を賑わすメイジの盗賊『土くれ』のフーケ。
まさに学院創設以来、屈指の大事件であり、同時に、過去に例を見ない大失態でもあった。

「土くれのフーケ! 貴族たちの財宝を荒らし回っているという盗賊か!」
魔法学院にまで手を出しおって! 随分とナメられたもんじゃないか!」
「衛兵は一体何をしていたんだね?」

今は学院の全教師が学院長室に集まり、緊急の会議を行っている。
事件を未然に防げなかった原因を究明し、責任の所在を明らかにしようと言うのである。
ただしこの場に部屋の主、オールド・オスマンはいない。到着が遅れている。

「衛兵など当てにならん! 所詮は平民ではないか! それより当直の貴族は誰だったんだね!」

集まった教師の一人、シュヴルーズ女史の体が震える。
昨晩――フーケ襲撃時の当直は彼女だった。
しかし彼女は昨晩当直の任に就いていない。率直に言えばサボっていた。
事件が起こっていた時もぐっすりと眠り、すべてを知ったのは翌朝になってからだった。

「ミセス・シュヴルーズ! 当直は貴方なのではありませんか!」
「も、申し訳ありません……」
「泣いたって、お宝は戻ってはこないのですぞ! それとも貴方、『風車の鎧』を弁償できるのですかな!」
「わたくし、家を建てたばかりで……」

オスマンを欠いた中で、教師達の意見は固まろうとしていた。
泣き崩れるシュヴルーズを人身御供にして、この事件を収めようというものだ。
すべての責任がシュヴルーズにあるというわけではないが、今のところもっとも罪が重く、そして弱いのは彼女なのだ。

「これこれ。女性を苛めるものではない」

しかし、ここでシュヴルーズにとっての幸運が舞い込む。遅れてきたオスマンである。
教師達はシュヴルーズを庇うオスマンに噛みついたが、オスマンはこれをにべもなく散らした。
そして全員に問う。

「この中でまともに当直をしたことのある教師は何人おられるのかな?」

これには誰も言葉を発しない。それが現実だった。
なんのことはない、先の会議は結局、皆が責任逃れをしたくてやっていたことなのだ。
原因の究明など本当はどうでもいい。ただ、自分に累が及ばないように事件を収拾したいだけだった。
大人らしい保身的な対応だが、この場においてそれは憚るべき非建設的な議論で、かつ無駄な争いである。

オスマンはこの事件の責任が全員――オスマンも含めて――にあると断言し、
その上で事件を解決するべきだと結論づける。
常の飄々とした態度からは想像もつかない采配ぶりに、内心で舌を巻いている者も多かった。

「……で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」

オスマンの問いに、教師コルベールが一歩進み出て説明する。

「使い魔を通して見ていた生徒が数名。ですが夜目の利く使い魔ではなかったらしく、
詳しい情報は得られませんでした。そのため、フーケを直接目撃した者は……」

コルベールは後ろを見る。

「彼女達だけです」

その視線の先にいるのは学院の生徒達。
先の教師達のやり取りを、白けた目で見つめていたキュルケ・フォン・ツェルプストーに、相変わらず無表情のタバサ。
そして――目を充血させ、目元には泣きはらした痕を残しているルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの三人だった。



……ここはどこだ?

達哉は見知らぬ街で一人、呆然と立ちつくしていた。
なぜ自分がこんな場所にいるのか。それを思い出そうとしても思考に靄がかかってしまい、判然としない。
達哉はどうしていいかわからず、とりあえず適当に街を歩き回った。

寂しい街だった。あちらこちらに破壊の跡が見られ、人はおろか犬猫や小鳥すらいない。
通りに並ぶ店は半分以上がシャッターを下ろし、残りは荒らされたのか、店内の商品が散乱している。
電車は線路の途中で停車し、車道には乗り捨てられた車が列をなしている。
街の惨状は、昔映画で見たゴーストタウンそのものだった。
そんな街を、達哉は黙々と歩き続ける。

誰かいないのか。
ここはどこなんだ。
なぜ俺はこんな場所に……

――戯言はよせ。今さら忘れたなどとは言わせんぞ。

突如、声が聞こえた。それは遠くから反響しているようでもあり、耳元で囁かれているようでもある。
どこかで聞いた声。しかし、どこで聞いたのかが思い出せない。

「……誰だ?」
――私がわからんか? まあいい。それよりもお前、そこで何をしている?

別に何も。ただ歩いていただけだ。そう答えようとしたその時、視界が暗転する。
そして気がついてみると、達哉はトリステイン魔法学院の中庭にいた。そこはルイズに召喚された場所。
驚く達哉に、声は呆れたような口調で答えた。

――そこがお前の帰るべき場所か?

言われて、達哉ははっとする。頭の中の靄が消えて、思考がクリアになる。
……そうだった。俺には帰る場所がある。なにがなんでも、帰らなければいけないんだ。
ついさっきまで歩いていた場所――『向こう側』に。

――わかっているならば、なぜそんな場所で油を売っている。帰りたくはないのか?
「……そんなことは、ない」

一瞬の迷いを、声は聞き逃さなかった。
声は嘲笑した。

――私に隠し事は無意味だ。お前は『向こう側』に帰りたくない。帰って、独りになるのが怖いのだ。

達哉は息を呑んだ。

――帰る方法を探すフリをして、その世界に留まる理由を探していたな?
「違う……」
――主人の言うことに従うのも、寝食の見返りではない。誰かに自分を認めて欲しかったのだろう?
「違う」
――人前で『力』を隠してきたのも、面倒を避けるためではない。『平民』として、その世界に受け入れて欲しかったからだ。
「違う!」

声を必死で否定する。しかし、その一方で達哉は疑念を拭えない。
本当に違うのか? 俺は心のどこかで、この世界に甘えているんじゃないのか?
『向こう側』の景色を忘れていたのが、その何よりの証拠ではないのか!?
達哉の葛藤を他所に、声は怒りの感情を滲ませる。

――あくまで自分の非を認めないつもりか、卑しい人間め。私に隠し事は無意味だと言ったはずだぞ!

またしても視界が切り替わる。
しかし、今度はどこの風景も出てこない。一面の闇が、達哉を飲み込んだ。

――罪を認めろ! 罰を受けろ! 自分が『罪深い存在』だということを忘れるな!!
「うるさい……」
――その世界に留まり続ける限り、お前は生きているだけで罪なのだ!
「やめろ……」
――恥を知れ愚か者!!
「……ッ!」

「黙れッ!!」
「きゃあ!?」

耐えきれなくなった達哉が叫んだのと同時に、女性の悲鳴が上がった。
……なんだ今のは?
困惑しながらも達哉は、その声に妙な既視感を感じる。
なんだか、前にもこんなことがあったような……

「タツヤさん!」
「……シエスタ?」

先ほどの悲鳴の正体は彼女だったらしい。シエスタがこちらを見ていた。
なぜか目元に涙が滲ませ、ほっとした表情で。

「よかった……目が覚めたんですね」
「……ああ」

わけがわからず、曖昧に返事をする達哉。
しかし一部の疑問はすぐに氷解した。見回すとそこは学院の医務室。
達哉は、医務室のベッドで横になっていたのだ。

俺は寝ていたのか。
すると、今のは夢――夢?
俺はどんな夢を見ていた?

寝ていた体を起こし、額に手を当てる。記憶を辿ってみても、すでに断片すら思い出せない。
いい夢ではなかった気がするが、覚えていないというのも、それはそれで後味が悪い。

「大丈夫ですか?」

顔を曇らせる達哉に、シエスタは気遣うように声をかける。

「あんなことがあったばかりですもの。気を落ち着けるために、もう少し休んでいた方がいいですよ」
「あんなこと……?」
「ゴーレムに襲われるなんて、本当に災難だとしか……。
怪我はメイジの方々が治療をしてくださいましたけど、恐怖心はそう簡単に薄れるものではありませんから」

ゴーレム……!
シエスタの言葉を皮切りに、達哉の記憶が急速に蘇っていく。

「シエスタ!」
「はい?」
「あれから何があったのか、教えてくれ!」

達哉はシエスタから、ゴーレムが現れてから今に至るまでの、大まかな経緯を聞いた。

ゴーレムが学院を襲ったのは昨夜。今は翌日の昼前で、事件からすでに半日近くが経過している。
達哉を倒したゴーレム使いのメイジは『土くれ』のフーケ。最近城下町で話題になっている盗賊だった。
フーケは学院の宝を盗んだ後学院の外に出、現在まで行方をくらましている。

「……ッ!」

それらの情報を耳に入れ、達哉は歯噛みした。
半日もあればいくらでも逃げられる。もうこの近くにいない可能性は高い。
フーケには、聞き出さなければならないことがあるというのに……

「あの……それで……」

おずおずと、シエスタは言葉を続ける。

「タツヤさんのご主人様――ヴァリエール嬢が」
「……ルイズがどうした?」
「先ほどまでここでタツヤさんを看病していたのですが、今しがたここを出て行かれました。
フーケの目撃者ということで、学院の方々が話を聞きたいと――タツヤさん?」

達哉は呆気にとられた顔でシエスタを見つめた。
ルイズが看病?
それに……目撃?



「ふうむ……」

オスマンは神妙な顔つきで自分の髭を撫でる。
残念なことに、三人の証言からもフーケの正体に関わるような有力な情報は得られなかった。
彼女らが見たのは黒ずくめのローブに身を包んだ謎の人物のみ。相変わらず年齢も性別も不明なまま。
わかったことと言えば、逃走したフーケをタバサの使い魔が追跡した結果、
ゴーレムは学院の城壁を乗り越えた後すぐに崩れてしまい、フーケもそこで見失ったということくらいだった。
これではまったく足取りがつかめない。

「後を追おうにも、手がかりナシというわけか……」

さて、どう出るか。オスマンが思案を始めたその時、部屋の扉が勢いよく開かれた。

「遅れて申し訳ありません」

やってきたのはオスマンの秘書、ミス・ロングビルだった。
本来ならこのような場合、常にオスマンの側についていなければならない彼女はどういうわけか、
朝から行方をくらませていた。皆は早速そのことを問い詰めようとするが、ロングビルは
平然とした顔であっさりと言葉を返す。

「重ねてお詫びいたします。実は朝から、調査をしておりまして」
「調査?」
「そうですわ。今朝方、起きたら大騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はあの有様。
おまけに、壁にはフーケを名乗る者のメッセージ! すぐにこれが、国中の貴族を震え上がらせている
噂の大怪盗の仕業と知り、私は今の今までフーケに関する情報を集めておりました」

一気にまくし立てるロングビルに、場がどよめく。教師達が責任のなすりつけ合いをしている間、
一介の秘書に過ぎないロングビルが、早々に学院のために奔走していたと言うのだから無理もない。
オスマンもこれには驚きを隠せなかった。

「仕事が早いの。ミス・ロングビル」
「それで、結果は!?」

興奮したコルベールが後に続く。

「はい。フーケの居所がわかりました」

これには部屋の中にいたほぼ全員が仰天した。例外はロングビル自身と、タバサのみである。

「近在の農民に聞き込んだところ、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。
おそらく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと」

黒ずくめのローブ、という単語にルイズはピクリと反応する。血走った目にさらに熱がこもる。
一方で、オスマンの目も鋭くなった。

「そこは近いのかね?」
「はい。徒歩で半日。馬で四時間といったところでしょうか」
「すぐに王室に報告しましょう! 王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」

コルベールが叫ぶ。他の教師達もこれに同意しかけたが、それよりもオスマンが怒号を発するのが早かった。

「馬鹿者! 王室なんぞに知らせている間にフーケは逃げてしまうわ!
大体、身にかかる火の粉を己で払えぬようで、何が貴族じゃ! 魔法学院の宝が盗まれた!
これは魔法学院の間題じゃ! 当然我らで解決する!」

重要なのは宝ではない。盗まれた秘宝『風車の鎧』は、所詮はオスマンの私物。
なくなって懐が痛むのはオスマン一人だけである。しかし『こと』はそれだけでは収まらない。
学院を守る屈強な衛兵、優秀なメイジを謳う教師陣、そんな教師達の下で日々腕を磨く、若く有望な貴族の子弟。
今回の事件は、彼らすべての信用を完全に失墜させる。
最早プライドだけの問題ではない。このまま事件を放置すれば学院は軽視され、
入学を希望する貴族の減少を招きかねない。卒業した貴族の信用にも関わるだろう。
押し寄せる問題はそれこそ山のようだった。

フーケは秘宝と共に、学院の『名誉』を奪って行った。
それだけは、なんとしても学院の手で取り返さなければならない。
この期に及んで外部に頼ってしまえば、『名誉』は永遠に戻ってはこないのだ。

「フーケの捜索隊を編成する。我と思う者は、杖を掲げよ」

厳粛な響きで以て、オスマンはその場にいた全員に声をかける。
しかし、誰も杖を掲げない。教師達は皆尻込みをしていた。
これにはオスマンも呆れる。

「おらんのか? おや? どうした! フーケを捕まえて、名をあげようと思う貴族はおらんのか!」

それでも、誰も動かない。彼らは皆トライアングル以上の優秀なメイジだが、
優秀なメイジ=優秀な戦士というわけではない。
ここで杖を掲げるような気骨があれば、昨夜の内にゴーレムに戦いを挑んでいる。
つまりはそれが答え。平民には決して見せない、彼らの実態だった。

軽い失望を覚えたオスマンがさらに声をかけようとしたその時、さっと一本の杖が掲げられる。
と言っても、それは教師達の中からではない。シュヴルーズはその人物を見て驚きの声を上げた。

「ミス・ヴァリエール!」

杖を掲げたのはルイズだった。
ルイズは睨みつけるような目で杖と、その場にいた全員を見据えている。

「何をしているのです! あなたは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて……」
「誰も掲げないじゃないですか!!」

ルイズの体が震える。恐怖からではない。彼女にとっては非常に馴染みの深い感情、怒りによってだ。
ただし、その密度はこれまで誰も見たことがないほどに煮詰まっている。
憤怒に彩られた表情は、元の顔の造形が秀逸であるだけに余計に恐ろしいものとなっていた。

「私はフーケに……使い魔を傷つけられました」

ルイズは内面の激情を押し殺し、形のいい唇から淡々と言葉を紡いだ。

「使い魔の負った傷は私の傷も同然です。私は、私を傷つけたあの盗賊を絶対に許しません。
必ずや、この手でフーケを捕らえてご覧に入れます!」
「しかしだね、ミス・ヴァリエール。君の魔法は――」

『ゼロ』を知る教師の一人が声をかける。ルイズはその教師に目を向けた。

「……ならば先生が行かれるのですか? 昨夜フーケを取り逃がした先生が?」
「いや、それは……」
「私の使い魔がゴーレムと戦っている間、先生は一体何をしていらしたんですか?
ベッドの中で震えていたのですか!?」
「な――!?」

教師の顔が引きつる。

「盗賊に怯えるなんて、それでも貴族ですか!? 先生方がフーケを捕らえていれば、今頃は……!」
「ミス・ヴァリエール!」

さらに言葉を続けようとしたルイズを、オスマンが制した。

「それ以上は言うでない。教えを請う身で教師に説教なぞ垂れてはいかんぞ」
「……はい。申し訳ありませんでした」

ルイズはうなだれる。先の発言内容は本来なら厳罰ものだったが、オスマンの後に続く者はいない。
ルイズ自身の報告から、彼女の使い魔が今どうなっているかは全員が聞いていた。

「しかし、君の言うことももっともじゃ。結果としてワシらは、本来の職務を
使い魔に肩代わりさせてしまった。そのことに関しては、後で君の使い魔に礼を述べねばならん」

オスマンはふっと笑う。

「……君はよい使い魔に巡り会えた。これは大変な幸運なんじゃぞ?」
「……お褒めに預かり、身に余る光栄と存じます」

ここでようやくルイズは笑顔を見せた。儚い笑顔だが、オスマンはそれを見て満足した。
そして厳かに告げる。

「ミス・ヴァリエール。君は生徒、つまり学院の人間であり、フーケを追う明確な理由と意志を持っておる。
よって捜索隊への参加を許可しよう。しかし貴族たる者、一度吐いた言葉は必ずや実現せねばならんぞ?」

ルイズは頷いた。

「さて、他に有志はおらんかね? まさか生徒一人に行かせるつもりではなかろうな?」

オスマンの声に、今度はすぐに杖が掲げられた。ただし、またしても予想外の方向から。

「君もかね、ミス・ツェルプストー」
「ヴァリエール一人に手柄は譲れませんわ」

仕方がない、といった調子でキュルケは掲げた杖をひらひらと振ってみせる。
そんなキュルケに呼応するように、もう一本杖が掲げられる。

「タバサ。あんたはいいのよ。関係ないんだから」
「心配」

タバサはこともなげに言う。その姿を見て、キュルケとルイズは自然と笑顔になった。
オスマンも楽しげに笑う。

「では、君達に頼むとしようかの」
「オールド・オスマン! わたしは反対です! 生徒達をそんな危険に晒すわけには!」
「では、君が行くかね? ミセス・シュヴルーズ」
「い、いえ……、わたしは体調がすぐれませんので……」

やれやれ、とオスマンは肩をすくめた。

「……彼女達は敵を見ている。その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いておるが?」

『シュヴァリエ』。それは王室から与えられる『騎士』の称号である。爵位としては最下級に位置するが、
純粋な実力や功績のみを評価されて与えられるため、下手な称号よりも敬意を払われる。
そんな称号がタバサの年齢で与えられるのは非常に稀である。異常と言ってもいい。
もちろん周囲は驚いたが、それを受けてもタバサは「だからどうした」と言わんばかりに超然としていた。
彼女は他人の評価を気にしない。

「また、ミス・ツェルプストーはゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、
彼女自身も優秀な『火』のメイジであると記憶している」

キュルケは得意げに髪をかきあげた。

「そしてミス・ヴァリエール。公爵家に名を連ねる君の気高き血筋と魂、期待しておるぞ。
遠慮はいらん。盗人風情にその意地を見せつけてやるのじゃ」
「はい!」

ルイズは力強く答えた。

「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」

オスマンの言葉にルイズ、タバサ、キュルケの三人は真顔になる。
それからさっと姿勢を正して直立すると「杖にかけて!」と同時に唱和した。
最後にスカートの裾をつまみ、恭しく礼をする。
この瞬間、生徒のみによって構成された『土くれ』のフーケ捜索隊は、正式に学院より認可された。

予想外の形で今後の方策は確定し、会議は終了した。
皆は解散し、今部屋に残っているのはオスマンとコルベールのみである。
コルベールはオスマンに疑問を投げかけた。

「本気ですか、オールド・オスマン。生徒達だけに盗賊の捕縛をまかせるなどと……」
「では君も参加するかね?」
「わ、私は……」

戸惑いを見せるコルベールにオスマンはほっほっ、と笑ってみせる。
コルベールが杖を掲げなかった理由をオスマンは知っていた。

「よい。今回は君の助けも必要なかろうて」

自信満々にオスマンは言うが、コルベールの表情は晴れない。

「しかしフーケはあの『ガンダールヴ』を下したのですぞ。それも未だに意識を取り戻さないほどに――」
「その『ガンダールヴ』というのは」

オスマンは部屋の扉を見やる。

「先ほどドアの外で聞き耳を立てていた者のことかね?」

コルベールははっとして扉を振り返る。
もちろんそこには誰もいない。少なくとも『今』は。

「心配はいらんよ、ミスタ・コルベール。シュヴァリエを含むトライアングルメイジが二人と、『ガンダールヴ』。
そして『ガンダールヴ』を召喚せしめたメイジの編成で負けはない」

オスマンは笑みを深める。

「なりは子供でも、この捜索隊は当学院の切り札(ジョーカー)じゃ。
フーケのやつには、せいぜい粟を食ってもらおうかの」

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