あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのMASTER-05

ようやく薔薇の少年に追いつく。どうやら気付いていないようだから、後ろから声をかけた。
「すみません、これ。落としましたよ」
しかし、なぜか少年は苦い顔をした上、意外な言葉を返してきた。
これは僕のものじゃない、と。どういうことだろう?確かにこの香水は彼が落としたものなのだが。
すると、彼の周りにいた子供達が突然騒ぎ始めた。

「おい、その香水はモンモランシーのじゃないか?」
「本当だ!その紫色の奴はモンモランシーが自分のためだけに調合している香水だぞ!」
「そいつがギーシュのポケットから落ちたってことは、さてはお前、あいつと付き合って…」
どうやらこの派手な少年はギーシュという名らしい。しかも、私は実に不味いタイミングで渡してしまったようだ。
子供達の冷やかしを受けて、ギーシュ少年が慌て始める。
「違う。いいかい?彼女の名誉のために言っておくが、僕は…」
そのとき、私の隣に座っていた少女がいきなり立ち上がった。
少女は悲しそうな顔をすると、ギーシュの前に歩いていって
「ギーシュさま、やはりあなたはミス・モンモランシーと…」
「ケティ、誤解だよ。僕の心の中に住んでいるのは…」
言い訳をしようとしたが、いささか遅かったようだ。庭園に痛そうな音が響く。
ケティはギーシュに向けて怒りの言葉を叫ぶと泣きながら走って行ってしまった。
さらに不味いことに、この騒ぎを聞きつけたのか、モンモランシーもやって来た。
彼女も彼女でギーシュ少年にキツイ言葉を浴びせると、テーブルに置いてあったワインを彼にひっかけて去ってしまった。
…気の毒なことをしたのかな。僕は。

「あのレディ達は薔薇の存在の意味を理解していないようだ」
ギーシュは顔をハンカチで拭いながら言う。
自業自得だろうとか、二股かけてたお前が悪いとか、そういった声が聞こえるが気にはしない。
そして、喧騒に紛れてこっそりと去ろうとしていた一人の男性を呼び止める。

「待ちたまえ。確か君はゼロのルイズが呼び出した平民君だったな。
君の軽率な行動のおかげで二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
「ギーシュ君。二股は良くないよ…」
キートンが気の毒そうに言うと、周りの子供達もどっと笑い出す。
これがカンにさわったのか、ますますギーシュの機嫌が悪くなった。
「どうやら君は貴族に対する礼を知らないようだな…。よかろう、君に礼儀を教えてやろう」
そういうと、大げさに身体を翻して
「ヴェストリの広場で待っている。準備が出来たら来たまえ」
怒りのオーラを身にまといながら、さっさと歩いていってしまった。
あとに残されたキートンは頭を掻きながら呟く。

「まいったなァ…」

「ありゃ?おい、ここにあったモンモランシーの香水は?」
「あれ、なくなってる・・・」


「あんた、なにやってんの!!」
庭園にルイズの怒声が響く。キートンの帰りが遅いから見に来てみればこれだ。
それも、相手がギーシュときている。貴族と平民が争えばどうなるか―――ルイズは知っていた。
「やあ、ルイズ。どうも困ったことに」
「謝ってきなさい、ギーシュに。いますぐに!それともまさか、あんた決闘を受けるとか言わないでしょうね?」
キートンの声を遮り、ルイズが怒鳴る。ここでもし決闘を受けると言えば一大事だ。良くて怪我だろう。
「まさか、子供相手に喧嘩なんて出来ないよ。それに、僕は暴力が嫌いなんだから」
「じゃあ謝ってきなさい」
「わかっているよ。それに、彼が嫌な目に遭ったのも、僕にも原因があるしね」
キートンはそう言うと、さっさと広場の方へ向かおうとした。と、途中なにかに気付いたのか戻ってくる。

「これ、お茶とクックベリーパイ。待たせて悪かったね」
ルイズにお盆を渡すと、キートンはさっさと走っていってしまった。


「どうやら逃げずに来たようだな」
ギーシュは花をいじりながら気障っぽく言う。決闘の話を聞いたのか、他の生徒達が集まってきた。
さながら闘技場の観客のように、キートンとギーシュの周りをぐるりと囲んでいる。
キートンはキートンで、何を考えているのか、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま立っている。
「それで決闘を受ける気になったのかい?」
「ああ、ちょっと、そのことでね・・・」
キートンはズボンから手を出すと、指を口に突っ込んだ。
生徒達は何を考えているのか、といった表情でキートンを見る。
口から指を出すと、キートンは高く手を上げる。数十秒間、そのままの体勢でいたが、不意に手を下ろした。

「ギーシュ君。私の不注意で君に不快な思いをさせたことを謝るよ。すまない」
「フン…。では、決闘する気はないのかい?」
キートンは黙る。そして遠くにあるテーブルを指差した。
「いや、ちょっと面白いゲームをしたいんだ。あそこにテーブルがあるだろう。
今から私がテーブルの上に置かれている花瓶、あの花瓶の花を打ち落とす。成功したら、この件は許してほしい」

これには生徒も目を丸くした。テーブルの位置はかなり遠い。その上、花瓶ではなく、花を打ち落とすというのだから。
ギーシュも何を言うのか、というふうに
「あんな遠くの花を打ち落とすだって?魔法も持たない君がか?面白い!
やってみたまえ。ただし、花瓶に少しでも傷を付けたら・・・」
「わかってる。その時は、君になんでもするよ。約束する」

二人がこの遣り取りをしているとき、ルイズが走ってきた。

「あ、あんた!何を勝手な…」
「ルイズ」

ルイズははっとして黙る。この雰囲気、いままでのぼうっとしていたキートンとは違う。
ちょうど、午前中の授業のとき、自分を助けてくれたときのような力強い声でキートンは言葉を続ける。
「大丈夫、僕は失敗はしない。僕は君の『使い魔』なんだからね」
そう言うと、急にキートンはにこにこして、ルイズの頭をぽんぽんと撫でた。
ルイズは―――黙って見送るしかなかった。なぜかそれ以上、止めようという気が起きなかったからだ。

「準備はできたかい?」
「ああ、もういいよ」
キートンは位置に立つ。テーブルは遠い。ここからだと、花瓶の花はまるで豆粒のようだ。
それでも物怖じせず立つこの男を生徒達は不思議そうな目で見ていた。
今日は風が強い日だった。

瞬間、キートンが振りかぶって何かを投げる。それはまるで弾丸のように飛んでいって―――
軽い音がした。花瓶は倒れていない。観客の一人、マリコルヌが慌てて見に行き、花瓶を手にとって見ている。
「すごいぞ!本当に花だけ打ち落としている!花瓶には傷一つ付いてないぞ!」
「馬鹿な…」
ギーシュは呻いた。いくらなんでも、あんな小さな的を打ち落とすなんて!一体何者なんだ。
飄々としていて、たいした実力など持っていそうにないのに。
「もういいかな?」
キートンがまたにこにこしながら、ギーシュに話しかける。
「う、うぬ…!き、貴族に二言は無い。さっさと行きたまえ!」
「どうも」
ギーシュに向けて片手をあげると、キートンはさっさと歩いていってしまった。
あとに残されたのは、騒ぐ生徒達とギーシュ、ルイズ。
「ルイズ、彼は…あの男は何者なんだ?」
ギーシュはルイズに話しかける。ルイズはふるふると首を振った。
「知らないわよ!でも…」
「でも?」

「昨日召喚されたあいつと、さっきのあいつ。雰囲気がまるで別人みたいだった」
キートンは遠くで何かを拾うと、口をもぐもぐしながら消えていった。

この一部始終を見ていた者達がいた。
トリステイン魔法学院のトップに立つ老人、オールド・オスマン。
中年の男性コルベールの二人だった。

『遠見の鏡』で広場の喧騒を見ていたオールド・オスマンは重々しく口を開く。

「見たかね、ミスタ・コルベール。あの男…」
コルベールは頷く。心境は複雑だった。"ゼロ"のルイズと嘲られる少女が召喚した男。
外見はまったく冴えないのに、今しがた見せた技には驚くしかなかった。
それに、ミセス・シュヴルーズを助けたとき―――
彼女曰く、気絶する前に見た感想は「疾風のようだった」とのことだ。

どうも、彼は我々とは明らかに違う何かがある。そして、コルベールが知ったもう一つのこと。
「オールド・オスマン。あの平民は只者ではありません。それに、あの男の左手のルーン!
この『始祖ブリミルの使い魔たち』に出てくるガンダールヴのルーンと…」
「まったく同じだと?」
コルベールは興奮したように再度頷いた。
「はい。それに先ほど、彼が物体を投げる瞬間・・・明らかにルーンが光っております!
これは世紀の大発見ですよ、オールド・オスマン!ただちに上へ報告を…」
興奮するコルベールをオスマンは制止した。
強大な力を持つ者が現れた場合、たいていは喜ばしいことではあるが、同時に面倒なことも多い。
「ミスタ・コルベール。この件は私と君だけの秘密じゃ。
ボンクラ貴族どもがこのことを知ったら、面倒になるからのう。彼については、もう少し様子を見よう」
コルベールは少し残念そうな顔をしたが、すぐに同意した。

その様子を見ている影が一つ。


「まったく、大事にならなかったから良かったけど!勝手な真似をしないでよね!」
ルイズの自室に戻ったキートンは、彼女にこってりと絞られていた。
「すまない、すまない。今度から勝手なことはしないから」
キートンはキートンで彼女に謝っている。ルイズは一つ気にかかることがあった。
さきほど広場で見せたキートンの技…。

「ねえ」
「なんだい?」
「どうしてあんなに綺麗に飛んで、綺麗に花に当たったの?」

キートンはしばらく天井を見ていたが、やがて口を開いた。
「風、だよ」
「風?」
頷くと静かに話し始める。
「ああ。ギーシュ君との決闘の前に、風の向きを調べたんだ。
僕は指を掲げて風の向き、強さを調べた。その結果、最適だったのがあのテーブルの方向だったってわけさ」
「で、でもいくら風が強くても、あんな遠くに…」
「風を舐めちゃいけない。原始武器や投擲でも驚くほど飛距離や威力が上がることがあるからね」

ルイズはキートンの話を興味深そうに聴いていた。
でも、今回は予想より飛び過ぎたような気もするな…。キートンは少し気になった。

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