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新約・使い魔くん千年王国 第五章 女王の愛

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『アンドバリの指輪』で甦らされたと思しきウェールズ皇太子、そして悪魔とともにいたのは、アンリエッタ女王。
決まりだ。クロムウェルが謀略戦を仕掛けてきている。いかにあの女王でも、搦め手から攻めれば捕まる。
後は人質として枢機卿たちに降伏を迫るもよし、洗脳して操るもよし。『指輪』があれば操るのは容易だ。
そして、この悪魔。バックベアードが言っていた、ベリアルの部下といったところか。

「ルイズ! キュルケ! タバサ! そのウェールズは、もはや死人だ!
 無傷で捕らえればそれなりに利用はできるが、我々は女王を奪還せねばならない!」
「分かっている。悪魔も撃退する」
「ちょっと、いきなり悪魔ですって!? 本物なの!?」

湖面が激しく波打ち、水柱が立つ。体長5メイルはある、人魚の姿をした悪魔が現れた。
銀に縁取られたエメラルド色の鱗を持ち、波打つ髪は海草に覆われている。口は耳まで裂け、耳の後ろに鰓がある。
「あんたが『東方の神童』マツシタかい!? なあんだ、まだちいちゃな餓鬼じゃあないか!
 腹の足しにもなりゃあしない! そおれ、霧でも喰らえ!!」
びゅうーっと悪魔が口から濃霧を噴き、松下たちを攻撃する。タバサは風を放って霧を吹き散らす。

「あの姿、この能力。貴様はソロモン王の召喚した、72柱の魔神の一である『ヴェパール』だな!
 海洋を支配する地獄の大公爵であり、29の悪魔軍団を指揮するという……」
敵の『正体と名前』を知っている事は、魔術戦闘における大きなイニシアティヴだ。
だが、百年前のオールド・オスマンを苦しめたアンドラスは『不和の侯爵』。
その上位にある『公爵』が、ホームグラウンドたる水の中にいるのだ。生半な事では倒せない。
『ソロモンの笛』があれば、従わせて使い魔にしてやるのだが。

「いかにも、私は『海洋の公爵』ヴェパールさ! 海でないのが残念だけど、水さえあれば私は無敵!
 今度は、私の『邪眼』を受けてみな! グズグズの膿まみれにしてやるよ!」

悪魔の邪眼により、キュルケとタバサの体には無数の傷が生じた。
その傷はすぐにグズグズと腐り、膿と蛆が湧き始める。
「この呪傷を治すには、ヴェパールを倒して解呪させる他方法がない! 手遅れにならないうちに、総攻撃をかけるぞ!」
松下はそう叫ぶと、モンモランシーの使い魔・蛙のロビンを思い切り遠くへ投げ、湖の中へ放り込む。
上手く湖底まで逃げ延びれば、『水の精霊』を呼んで来てくれるだろう。


松下、キュルケ、タバサが力を併せ、悪魔ヴェパールに挑む。だが敵は1体ではない。
「おお公爵、敵は懐かしい、あのヴァリエール嬢とその仲間たちか!
 僕も加勢しよう! 喰らえ『ウインド・ブレイク』!」
ウェールズが杖を振るい、側面から魔法攻撃を仕掛けてきた。馬群もこちらに駆け寄り、魔法を放つ。
多勢に無勢、大ピンチだ。ルイズは大して役に立たないし。……いや、待てよ。

「ルイズ! あの『祈祷書』と『水のルビーの指輪』は、肌身離さず持っているか!?」
「え、ええ! 始祖ブリミルより伝わる、二つとない秘宝だもの! 姫様のお墨付きと一緒に、ここにあるわ!」
ルイズが薄い胸に手を当てる。ああ、何か入っている気がしたが、そこか。

「よし、この間のタルブでの戦闘を思い出せ! その指輪を嵌めて祈祷書を読めば、新たな『虚無の呪文』が見えるだろう!
 それでこの場をどうにかするんだ! 防御と時間稼ぎは、ぼくたちがやる!」
「分かったわ! ええと、ええと、これね!」
松下はルイズに命令を下すと、さらなる呪文を唱え、森の木々から根や枝を伸ばさせて追っ手を縛ろうとする。
さらに葉っぱは刃となって降り注ぎ、敵を切り裂く。だが、仮初の生命でしかない死人は、頚を裂いても斃れない。
空中に指で『精霊の五芒星』を描き、手裏剣のように投げつけて、死人の手首を落とし、悪鬼の頭を割ってゆく。


業を煮やしたヴェパールの姿が変容し、赤い甲羅のような鎧に包まれる。
「私の別名は『真紅の公爵』ゼパール! 女性を他人の愛の虜にし、劣情と恥ずべき情欲を燃え上がらせる!
 さらに女を不妊にすることもできるのさ。そこの赤い髪の売女(ビッチ)、私の手下にならないかい?」
強力な『魅了』の魔法がキュルケを襲い、陶然とした表情でタバサに杖を向けた。
やむなくタバサは雪風を放ち、彼女の手から杖を弾き飛ばす。これで戦力が減った。

「ははははは、行け、我が29の軍団の精鋭たちよ!」
悪鬼たちはぐにゅぐにゅと分裂を開始し、松下たちに襲い掛かる。霧の中から幻影と嵐も湧き起こる。


《愛は寛容であり、愛は親切である。また人を妬まない。愛は高ぶらず、誇らない。
 礼儀に反することをせず、自分の利益を求めず、怒らず、人のした悪を思わず、不正を喜ばずに真理を喜ぶ。
 すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてを耐える。愛はいつまでも絶えることがない》
  (『愛の讃歌』:新約聖書『コリント人への手紙1』第十三章より)


猛攻を加える悪魔たちを相手に、松下とタバサは、それでも頑張っていた。
松下は、タバサにしなだれかかるキュルケを転倒させ、魅了解除の秘薬を飲ませて戦線復帰させる。
タバサは周囲に風の結界を作り、ルイズが呪文を完成させるまでの時間稼ぎとする。
「ルイズ! まだかっ!」
「……Eloim Essaim frugativi et appelavi(炎の神よ、我は求め、訴えたり)……」
ルイズは呪文を発見し、トランス状態に入っていた。もうすぐだ。


「ええい、まだるっこしい! ウェールズ! 愛しいアンリエッタと協力して、さっさと邪魔者を殺すんだよ!」

愛を操るヴェパール=ゼパールの呪文が飛び、正気を失ったアンリエッタはふらふらと立ち上がる。
そして二人は、風と水のトライアングル・メイジは、力を併せて呪文を唱える。現れるのは六芒星。
「始祖ブリミルの正統なる後裔、王族の近親者同士にのみ許された、ヘクサゴン・スペルの威力を見よ!」
猛烈な嵐に水の刃が混じり、タバサの結界に穴を空ける。おそらくスクウェア級以上の威力だ。

「サノバビッチ(売女の子)! ああ、王族にこんな事言っちゃダメよね、ブリミル(畜生)!」
キュルケが憎まれ口を叩きながら新たな結界を張るが、防御しきれない。松下も魔法結界を構築する。
「キュルケ! タバサと協力して、ヘクサゴン・スペルとやらは撃てないのか!?」
「さっき二人が言ったように、よっぽど条件が揃った相手同士じゃなきゃ無理よ!
 それに皇太子はともかく、女王陛下は一応生身なのよ!」

愛か! 愛とはなんと、人間の理性を、正しい判断力を失わせることか!
アガペー(隣人愛・人類愛)ではなく、フィリア(友情・好意)やストルゲー(家族愛)でも過ぎればそうだが、
ただのエロス、情欲、愛欲、恋愛という奴は!

「あああはははははは、愛の力を甘く見たかい? 二人は永遠に結ばれるのさ! 地獄でね!
 情欲のために国を滅ぼした罪で、邪淫地獄で嵐の中、互いにぶつかり合って苦しみなぁ!!」

「おお、ウェールズ皇太子……愛しています。いいえ、『愛していました』」

突如、アンリエッタの氷結魔法が、隣のウェールズを襲った。意表を点かれ、彼は首まで氷に包まれる。
「なっ!? あああああああ!! アンリエッ、タ!?」
「けれど、今は立場がございます。貴方の飲ませた眠りの秘薬は、右奥歯に仕込んだ解毒剤で。
 魅了の魔法は、同じく左奥歯に仕込んだ強力な気付け薬で、解除しました。
 この頃激務続きでしたもの、こんなものまで仕込んでいて、助かりましたわ。ふふふふふ」
アンリエッタは不敵に笑う。眼の下に隈が出来ていた。皆、正直驚愕する。だが、トランス中のルイズは別だ。

「……ヘカス・ヘカス・エステべべロイ!
 忌まわしき太古の術法よ、主なる神の御名において、この者たちより退き、彼らを解放せよ! 『解呪』!!」
霊的結界が周囲を包み、『虚無』の力が解放される。
ルイズの放った虚無の呪文『解呪』によって、ウェールズたちの仮初の生命は失われた。
さらにキュルケとタバサにかけられた『呪傷』も、解除される。


「くっ、愛のない女だねぇ、女王陛下ぁ! 鉄の処女王にでもなるおつもりかい!? って、うわあぁああ!?」
たじろぐヴェパールの背後から、同じ姿を取った『水の精霊』が襲い掛かる。
悪魔を羽交い絞めにし、手下の悪鬼どもも飲み込んで、精霊は彼らを湖の底へと引きずり込んだ。
ちゃぽん、と蛙のロビンが水面に顔を出す。どうやら間に合ったようだ。

「……曲りなりにも、地獄の公爵だ。いかに『水の精霊』でも、封印するのに数年はかかるだろう。
 ここは湖全体に封鎖結界を敷き、しばらく悪魔と精霊を封じ込めた方がいいかも知れん。ガリア側からは無理かな」
「そうですね。彼の弔いが終われば、付近の諸侯をここに集め、儀式を行いましょう。
 ガリア側にも増水被害が出ていましたから、それを食い止める目的と宣伝すれば、国境紛争にはなりますまい。
 ……さようなら、ウェールズ。私は『水の精霊』に誓いましょう。必ずやクロムウェルとワルドを討ち、
 貴方の仇をとることを。そして、アルビオン王国の復興を……」

ウェールズ皇太子は、すでに物言わぬ遺体に戻っていた。女王は深く一礼すると、彼に固定化魔法をかけた。
……『証拠物件』だ。女王がスキャンダルに巻き込まれても、これなら多少の言い訳は立つ。
敵は卑劣にも皇太子のご遺体を操り、女王を無理矢理誘拐したのだ、と。
「いずれアルビオンを解放した暁には、ご遺体は霊廟にお納めしましょう。それまでは、我が王城にお眠りを……」


「女王陛下ァ! ラグドリアン湖を封鎖するなんて、本当ですか!?
 我々ヴォジャノーイ族は、どこへ行けばいいんです!? 数千年ここで生きてきたんですよ!」
「わしら周辺住民も、湖の漁業で生計の半分を立ててきたんですぞ!
 今更住み慣れたこの土地を、数年とは言え離れろって仰るんですかい!?」

翌日から、女王は住民や諸侯との折衝に入る。王都での外交と内政は枢機卿に任せた。
「では、ひとまずぼくの治めるタルブへ移住させよう。戦争の準備中だから、仕事の口は充分にあるぞ。
 税金は国内のどこよりも安い。身の安全は、国家とぼくが保証する。なんなら条例で保険加入料も無料にしよう」
「おいおい、湖や川はあるのかい? ヴォジャノーイは陸上じゃあ暮らせないぜ。海辺でもいいが」
「地下水脈はそれなりにあるようだが……。陛下、どこかいい場所はありませんか」

女王は少し考え、返答する。
「では、海辺の『ダングルテール(アングル地方)』に彼らを移します。もともとアルビオンからの移民が多い土地、
 亜人でもどうにか暮らせるでしょう。何か問題を起こせば、トリステイン国民と同等に処分します」
ガリア側諸侯や住民との交渉は枢機卿にも任せる事とし、女王はトリスタニアへと還御された。

かくして、ラグドリアン湖畔での一件は落着した。
モンモランシーとギーシュも人間に戻り、ルイズも一安心したという。

(つづく)

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