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ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 第八話(前編)


 虚無の曜日の深夜。
 二つの月の光に照らされ、学院の本塔5階にある宝物庫の壁に垂直に立つ人影が浮かび上がる。

 「あのハゲ中年、何が物理衝撃が弱点よ。こんなに分厚い壁、ちょっとやそっとの魔法じゃどうにもならないじゃないの……さすがに魔法学園の本塔の壁、一筋縄じゃいかないってことか」

 人影の主――『土くれのフーケ』は、黒いフードとマントを纏い、青く長い髪をなびかせながら呟く。

 「施術されているのは『固定化』だけみたいだけど……この厚さだと私のゴーレムでも壊せるかどうかは五分五分……とはいえ、ここまできて『破壊の杖』を諦めるってのはしゃくだし」

 フーケは腕組みして考え込むが、真下にある中庭に人の気配を感じて飛び降りる。途中で小さく『レビテーション』を唱え、塔の影になっている回廊の屋根に音もなく着地すると、その場に身を隠した。


 フーケが中庭に感じた気配はルイズのものだった。深夜というのに寝巻き姿のままベンチに腰かけ、何やら考え込んでいる。

 「余計なこと聞いちゃったかなあ……」

 どうして深夜にルイズがこんな場所にいるのか。話は就寝前まで遡る。

 「ルイズ様はほんま綺麗な髪したはりますなぁ」
 「そ、そうかしら? シズルの髪だって充分綺麗だと思うけど……」

 買い物から帰って夕食の後、ベッドの真ん中でに座って静留に髪をといてもらっていたルイズは、その褒め言葉にどぎまぎしながら前々から疑問に思っていたことを口に出した。

 「そういえば、シズルって私のことをよく可愛いと言ったり、ハグしたりとか色々するけど……別にそういう趣味じゃなくて、単に私をからかってるだけよね? 元の世界じゃ好きな人がいたとか言ってたし」
 「……はい?」

 ルイズの問いに静留は間抜けな声で目をぱちくりさせた後、右手で口を押さえてくすくすと笑いながら答える。

 「あら、うちルイズ様に言うてへんやろか。うちが好きだった人――なつきは、おなごなんよ」
 「ふ~ん、そうなんだ……ええ~~~~~~~っ!」

 静留の言葉に思わず驚いて立ち上がったルイズは、バランスを崩してベッドから転がり落ちた。

 「ルイズ様、大丈夫どすか?」
 「いたたたた、大丈夫よ――それより相手が女ってどういうことよ!」

 落ちた拍子にぶつけた頭をさすりながらルイズは起き上がると、慌てて寄ってきた静留に説明を求める。

 「どういうって……そやねえ、少し話はなごうなりますけど、聞きはります?」
 「ええ、聞かせてもらうわ」

 ルイズがうなずくと静留はなつきとの出会いを話し始めた。

 「うちがなつきと知りおうたんは、うちが15であの子が13の時。花に八つ当たりしようとしたあの子をうちが止めたんがきっかけどした。そん時のあの子の綺麗に澄んだ、それでいて世の中を拗ねてはるような強い光を放つ瞳、見咎められたんを恥じるように薄く染まった頬、風に舞う長い黒髪――うちは一目で、恋に落ちてしもたんどす」

 (自分で聞くって言ったんだし、真剣に聞かなきゃ失礼よね)

 なつきとの出会いを懐かしそうに語る静留を見て、軽い気持ちで話を聞いていたルイズは居住まいを正して静留と向き合う。

 「でも、なつきがうちの想いを受け入れられるような子やないって分かっとったから、うちはええ友達、ええ先輩でいようとしとしました。ほんまは拒まれるんが怖かっただけかもしれまへんけど、あの頃のうちは、なつきが傍に居てくれさえすれば、それで幸せやと思うてました……うちがなつきと同じHiMEの能力に目覚めて、『星詠みの舞』が始まるまでは」

 そこまで言うと静留は一瞬、目を閉じて酷く辛そうな表情を浮かべたが、そのまま話を続ける。

 「それから色々――ほんまに色々なことがあって……後はこないだ話した通りどす。気がついた時には、ここに召喚されとりました」
 「……ねえ、静留は元の世界に帰りたくないの?」

 静留の話が終わった後、しばらく何もいえずにいたルイズは、辛うじてそう静留に尋ねた。

 「そやね、向こうに想い残したこともないし……それに戻っても、うちの居場所はないはずやから」

ルイズの問いに静留は笑顔で答えたが、ルイズにはその笑顔がどこか虚ろに見えた。


 「――で、それが気になって、こんな時間に考え込んでたって訳?」
「そうよ、悪い?」

 一人で考え込んでいるところを偶然(?)通りがかったキュルケに見つかって事情を説明するはめになったルイズは、隣に座ったキュルケの言葉に不機嫌そうに答える。

 「別に悪くないけど……あたしにはあんたがスネてるようにしか見えないのよねえ」
 「それ、どーいう意味よ?」
 「あんたは聞いた話の内容より、途中でシズルに話をはぐらかされたことに腹を立てている……違う?」
 「うっ……言われてみたら、そうかも」

 思い当たる節があるので、ルイズはキュルケの指摘に力なくうなずく。

 「それで、あんたはどうしたいの?」
「どうって……それが分かれば悩まないわよ」

 キュルケはルイズの答えにやれやれと肩をすくめ、立ち上がって話を続ける。

 「いいこと、ルイズ。はぐらかすってことはシズルにとって話せないか、話したくないことだってことよ。興味本位とか主人としての沽券に拘わるからなんてことなら首をつっこむのはやめておきなさい。もっとも、あんたにそれを受け止める覚悟があるっていうなら別だけど」

 いつになく真面目な顔をしたキュルケの言葉を聞いてしばらく考え込んだ後、ルイズは口を開いた。

 「とりあえず、気にしないことにしたわ。誰にだって言えないことの一つや二つぐらいあるだろうし……それにシズルなら、いつか話してくれるような気がするから」
 「ふ~ん、悩んでた割には随分あっさりしてんのね。まあ、こっちもウジウジしてるあんたをからかってもつまんないし、その方がありがたいけど」
 「なんか私がいつも能天気みたいな言い草ね。でも、おかげさまでスッキリしたわ。ありがとう、キュルケ」

 キュルケはルイズの礼に目を丸くするが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。

 「礼を言うって事は貸しって事でいいのかしら、ヴァリエール? この貸しは高くつくわよ?」
 「ええ、かまわなくてよ、ツェルプストー。いずれ山ほど利子つけて返して上げるから、覚えときなさい」

 ルイズは立ち上がってそう言うと、キュルケに向かって彼女と同じ不敵な笑みを返した。月明かりの下でしばし沈黙した後、キュルケが口を開く。

 「さて、あたしは戻るけど、あんたはどうすんの?」
 「戻るわよ、すっきりしたら眠くなってきたし」
 「それがいいわ。睡眠不足は美容に悪いしね」

 欠伸混じりのキュルケの言葉にルイズは苦笑すると、共に連れ立って寄宿舎の中へと戻った。だが、中に入った瞬間、巨大な衝撃音が数度学院に鳴り響き、ルイズとキュルケは外に飛び出した。

 「な、なに!」
 「あれは――ゴーレム!」

 外に出た二人が見たのは、拳を打ち込んで本塔の壁に大穴を空けた高さ30メイルもある巨大な土ゴーレムの姿だった。 



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