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おかあさんのうた

トリステイン有数の貴族、ラ・ヴァリエール公爵家の次女、
カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ 。

それぞれ彼女の姉と妹に当たる、長女と三女が母親譲りの少々高飛車気味な性格であるのに対し、
カトレアは、非常におっとりとした優しい性格の持ち主で、
しょっちゅう怪我した野生動物を保護し、甲斐甲斐しく世話してやる程である。
少々病に罹りやすい体ではあるが、誰にでも心を暖める笑顔を振舞、
高級食材を味わうだけの淡々としがちな貴族の食事に、歓談と笑顔を齎す存在でもあった。

そんなカトレアが、迂闊に外にさえ出られぬ程の虚弱体質に陥ったのは、
数年前彼女が、後に人々から‘悪魔の申し子’と称される使い魔を召喚して間も無くの事だった。

手弱女な彼女の使い魔が、悪魔の申し子などと呼ばれる由縁は、その恐ろしい姿を見れば明らかである。


常に空中を浮遊し、明らかに既存の生物とは遠くかけ離れた奇妙な体躯。
マンティコアやグリフォン等の幻獣のソレとも違う、見る者を不快にさせる容姿。
この世の者とは思えず、まるで生気の感じられない、青白くて冷たい体色。
指すら無く骨格の存在も悟れない、触手の様にうねうねと揺らす長い手足。
それらを繋ぐ、足よりも細く短い胴体は、長い尻尾も備え付けている。
そして、胴体の天辺には、頭と見受けられる小さな球体が細い首で支えられており、
そこには光が灯っていない2つの眼球があり、その目に沿って2本の角が生えている。
口が無いため、意思の疎通は使い主であるカトレアとのみ、所謂テレパシーで行う。


何かの間違いでハルケギニアに訪れた、魔界からの使者であると言っても過言では無い外見である。
しかし、それが召喚された当初は、不気味がられはしたものの、まだ悪魔の称号は与えられはしなかった。

先程も記したように、この使い魔を召喚して以来、元々病弱だったカトレアの体はさらに重い病に蝕まれた。
完治の見込みの無いその病の原因が、あの禍々しい使い魔に関係あると判断されたのは、極めて当然な話である。
さらにその使い魔は非常に気が荒く、魔法とも覚束無い不思議な能力で、連日様々な物を壊し、暴れ狂った。

その度に、使い主であるカトレアは命がけで、破壊の限りを尽す自身の使い魔を宥めた。
それがほぼ毎日繰り返され、医師の水魔法の医療をもってしても、
回復が追いつかない程に、彼女の疲労困憊の時は耐える事が無かった。

あの悪魔の申し子がカトレアの生命力を奪ってる、と長女のエレオノールが訴えたのは、ある日の事。
肉親であるラ・ヴァリエール公爵と公爵夫人も、エレオノールの言葉に賛同した。
ヴァリエール家の親族のみならず、カトレアを慕う友人達や、ヴァリエール家と親交のある王家の貴族達が、
事の状況を揃って深刻に捉え、ついに彼等は1つに集結した。

誰もが、彼女の使い魔を心から怨み、報復を誓った。

誰もが、そんな醜い使い魔を召喚してしまったカトレアを不憫に思い、悲しみに暮れ、嘆いた。

そして誰もが、彼女と使い魔とを決別させようと目論み、果ては実力行使を決断した。

全ては、心優しきカトレアのために。

例え、彼女自身がそれを断固拒んだとしても。

使い主の意思に反し、故意に使い魔を葬る事が、始祖への冒涜と繋がるかは明白では無いが、検証の猶予は無い。

手遅れになる前に、カトレアには内密に、彼等は行動に出た。悪魔の申し子を処刑する為に。

系統魔法使いとしては最強クラスであるスクウェアの能力を持つヴァリエール公爵夫人・カリーヌが、 自ら封印していた『烈風カリン』の名を再び掲げた起因はそこにあった。

金で一時的にメイジを雇い、トリステイン王家とのコネで複数の兵士を集めた。何れ劣らぬ歴戦の戦士達である。
多少、いやかなり強引で莫大な金を投資した方法ではあるが、 公爵達からしてみれば、娘の為を思うと、ゲルマニアやガリアの協力も得たいほどであった。

悪魔の申し子は、カトレアにいつもぴったりとくっ付いて行動し、 無理に引き離そうとするとそれこそ暴れる為、両者を予め隔離してからの処刑は困難且つ危険である。

そこで、天候は晴天、穏やかな風が心地良い日あたりに、
気分転換だと勧めて、カトレアを馬車駕籠に乗せ敷地内を一回りする計画を立てた。
当然、悪魔の申し子もそれに同行するであろう。それが公爵達の狙いである。
処刑の決行場所は、ヴァリエール公爵家の領地内にある広大な草原に決定した。

そして、その日。
大きなワゴンタイプの馬車駕籠に、カトレアと彼女の飼う動物達、それにルイズと召使、付き添いの医師達が乗り、 悪魔の申し子はその駕籠の外で、草原に向かう馬車駕籠の後を浮遊飛行で追った。

発車して数十分、森を抜け、農村を越えた先に、広々とした草原が目の前に広がる。
草原の手前で馬車が停車した刹那、強烈な突風が、駕籠の外にいた悪魔の申し子を草原に吹き飛ばした。
自らが処刑の執行人として、鉄の鎧を身に纏い待機していたカリーヌが放った風魔法である。

草原に吹き飛ばされ転がった悪魔の申し子を、そこで待ち構えていた兵や雇メイジ達が取り囲んだ。
起き上がった悪魔の申し子が宙に浮くと、兵達は散開、陣を立て、
そこにカリーヌや、別の馬車に乗っていた公爵やエレオノールも合流する。

事の状況に、当然ながら駕籠の中のカトレアは外に出ようとしたが、ルイズ達が説得し、無理やり抑えた。

悪魔の申し子の逃亡を図らせないように、八方を雇メイジ達が堅く塞ぐ。
緊迫した空気の中、先手を取ったのは悪魔の申し子。メイジ達は焦る事無く防御体制に入り、
それがどのような攻撃を仕掛けて来るか見極めようとしたのだが―――

悪魔からの攻撃の正体が掴めなかった。

あくまからの こうげきのしょうたいが つかめなかった

雇メイジ達は全員、悪魔の申し子の攻撃により戦闘不能となってしまう。
一瞬、何が起こったのかすら判らなかったが、メイジ達が絶命はして無い処を察するに、
決して防げない攻撃でも無い。そう判断したカリーヌ達は、状況に怯まず連係を組んだ。

カリーヌが先鋒に躍り出、悪魔の申し子と対峙する。
公爵やエレオノール、兵士達が協力し合い魔法の結界をカリーヌの周囲に張らせ、
カリーヌは悪魔の申し子からの猛撃に耐えながら、攻撃魔法のスペルを詠唱、風魔法を放った。

その痩躯の身体の腹部にカリーヌのカッター・トルネードの一撃を受けた悪魔の申し子は、
直接なダメージこそ喰らわなかったものの、対峙するカリーヌが、
娘を苦しめた事への怨みと復讐の精神を魔法力に変換し、遠目から見る者にすらトラウマを植付ける程の、
巨大で且つ破壊力のある、最大出力のカッター・トルネードを発生させるのには十分な隙を与えた。

晴天だった天候を揺るがすまでに巨大となった風の渦は、迷う事無く、悪魔の申し子に襲い掛かった。
最早、竜巻を止めれる者は、誰もいない。
カリーヌ自身ですら、自らが生み出した竜巻のあまりにもの激しい轟々に、思わず舌を巻いたほどである。
だが、それを阻止する者が、1人。

――カトレアだった。

召使達の制止を振り切り駕籠から飛び出、杖を地面に振り、巨大な土ゴーレムを通常では考えられない早さで造形、
カッター・トルネードからの防御盾として、悪魔の申し子の前に仁王立ちさせたのだ。

スクウェアクラスが、それも最大級の怒りを籠めて放った魔法の竜巻を、土の体全体で受け止め、
ゴーレムは竜巻を道連れに、土くれすら残さずに大気中に消えうせた。

竜巻が空気を激しく切り裂く音と、ゴーレムの断末魔にも聞こえる最後の唸りが重なり合った結果、
両方の巨大な影が消滅した直後も、衝撃音がその場にいた者達の鼓膜を刺激した。

ようやく場に沈黙が取り戻された頃、カトレアとカリーヌはお互い全ての力を出し切った故か、
力なく膝を地面に付き、激しい息切れを起こした。

間髪を容れず、ヴァリエール公爵と召使達が、カリーヌの元に駆け寄り、
ルイズと医師達が、カトレアを介抱し、早急に容態確認及び治療にあたる。

怒りの形相のエレオノールと兵達が、平然と事の成り行きを傍観していた悪魔の申し子に、一斉に杖や銃を構えた。
それを見たカトレアは、焦った顔でルイズに肩を借りて力無く立ち上がり、
医師達の水魔法による応急治療を受けながら、エレオノール達に涙乍に訴えた。

「エレオノールお姉さま! 杖を…杖をどうか! 彼に向けないで!」
「まだ寝惚けているのね、カトレア! 奴があなたの体をどれだけ蝕んだか解ってないの!?」
「私の病は元々よ! 彼の責任では無いわ!」
「仮にそうだとしても、少なくとも奴の力をこれ以上のさばらせる訳にはいかないわ! 
 誰かを犠牲にしてからでは遅いのよ!?」

不意に、カトレアはルイズ達から離れ、エレオノールに抱き付いた。
病弱な妹の想定外の行動に、エレオノールは思わず杖を落とす。

「彼には、お母さんが必要なの。心を寄せれる存在が」

涙の混じった声で、カトレアがゆっくり言葉を漏らす。
エレオノールや回りにいた兵士達は、カトレアの言っている意味が全く理解出来なかった。

「お母さんに甘えられないから、彼は暴れているの。だから――」

ルイズは、カトレアのその言葉を反芻し、姉の気持ちを悟った。

「私が、彼のお母さんになるわ。たとえ今は無理でも、きっとなってみせる」

公爵とカリーヌは、悪魔の申し子を身を呈してまで庇い、挙句母親になると狂乱の言葉まで放ったカトレアに、
涙を頬に伝たらせ、大切な娘がついに悪魔に魂を奪われたと嘆き、
死別れてこそいないが、愛別離苦の如く喚いた。


――結局、処刑は有耶無耶となり、それから1年と数ヶ月の歳月が経過した。

幸いにもその後、カトレアの思いが通じたかは定かではないが、悪魔の申し子が暴れ狂う事は無くなった。
だが、あの一件以来、ヴァリエール家の合間には大きな心の壁が聳え立ち、
カトレアは肩身が狭くなり、日常でも必要最低限の会話しか交わせないようになっていた。
唯一、現在もカトレアの事を心から心配し、慕ってくれているルイズも、今はトリステイン魔法学院の生徒として、
学院内で生活しており、ここには時折、彼女の使い魔と共に訪れるだけであった。

毎夜の晩餐は、それを見る給仕達にとっても非常に冷たい雰囲気が漂っている。
嘗ての、いつも会話や笑いの絶えなかったあの夕餉は、今はもうその名残も見せてはいない。
今宵の晩餐も、明日にはエレオノールがアカデミーに出向くのだが、そんな話題も交わされる事も無く、
ただ匙やフォークが食器と接触する微かな音だけが、広い食堂内に冷たく響くのみ。
デザートのフルーツを胃袋に収め、食後のワインで締めると、皆無言で一斉に席を立ち、各々自室へと戻った。

廊下を歩み、2人の武装した兵士が厳重に立ち番をしている扉の前に立つカトレア。
彼女は兵に労いの言葉を送り、今日の職務を終えるようにと告げると、その部屋へ入った。

寝心地の良いベッドが置かれ、動物達が忙しなく動き回り、そして、悪魔の申し子が潜む、彼女の自室に。

ベッドに腰を降ろしたカトレアの下に、犬や猫、狐やら亀がわらわらと群がる。
兎が軽快に跳ねてカトレアに軽く体当たりして戯れ、九官鳥が肩に止まり、「ウタッテ」と嘴を動かす。
カトレアは慈悲に満ちた優しい微笑みを九官鳥に送った後、天井に向け顔を上げた。

彼女の視線の先には、部屋の天井擦れ擦れで、青白くて細い怪物が浮遊定置している姿がある。
悪魔の申し子だ。2本の角を持つその小さな頭が、無表情でカトレアを見下ろしている。
カトレアは、視線を再び床に屯する動物達に戻し、深呼吸すると、ゆっくり目を閉じた。
そして、穏やかな音程のハミングを口遊む。

3つの旋律で構成されたその歌は、カトレアが物心付いた頃から、
誰に教わったのか、何かで聞いて記憶に残したのかは判らないが、自然と口ずさんでいたものだった。
貴族同士の会合などの余興として、よく歌うようにせがまれたのも、今や過去の話。
今は専ら使い魔と動物達に聞かせているだけである。
とても1つの曲とは言えないほど短い歌ながらも、それは人々の心に、暖かい何かを込上げさせ、
動物達には眠気を誘う癒しを与え、そして悪魔の申し子には、カトレアへの信頼を生じさせていた。

本当に、それは短い歌だった。
歌の前奏にあたるハミングの方が、よっぽど長く感じられるほどである。

茶色い子犬が、もう終わりなの? と問うかの様にカトレアの足元に鼻をこすりつけ、歌の続きを催促する。
彼女は頭を横に振り、今日保護したばかりのその子犬を抱っこし膝の上に座らせ、頭を撫でながら優しく言った。

「ごめんね。これだけなの。あと5つの旋律が揃えば、この歌は完成するらしいんだけど…」

カトレアの3つの旋律で構成された短い歌に、加えてあと5つの旋律が存在する事を教えたのは、
他ならぬ悪魔の申し子である。それがどのような歌であったかまでは、記憶から喪失されているらしいが。

つまり、本来ならその歌は8つの旋律で構成されているのだ。
会合の時も、幼いルイズとアンリエッタに聞かせてやった時も、いつも半分も歌っていなかった事になる。

残る5つの旋律の行方だが、ハルケギニアの何処かに散ばっているのでは無いか、とカトレアは考えた。
8つ旋律の内の3つが、幼い頃の自分の脳内で、偶然作曲されたモノだとは到底思えないからだ。
悪魔の申し子も、その説に同意した。だが、彼女達にそれを探す術は無い。
病弱なカトレアは言うまでも無く、この部屋にほぼ監禁状態にされている悪魔の申し子が、
外に出てハルケギニアを旅するなど以ての外である。
だが、カトレアはこの歌をどうしても完成させなければならないと暗示していた。
理由は勿論、使い魔や動物達に聞かせてやるためでもあるが、もっと重要な何かがあるような気がするのだ。

彼女の妹だけが、話を聞き協力を約束し、今では使い魔として召喚した平民の少年と共に、
残る5つの旋律を、魔法学院の授業の合間や休日を利用して探索しているらしい。
その事実を、カトレアは動物達と悪魔の申し子に告げた。

「妹のルイズがね、頑張って探してくれてるの。残りの旋律を。あのリュカって使い魔の男の子達と一緒に」

――その後、夜も更け、カトレアは持病用の薬を飲み、消灯前の読書も程々に、ベッドの中で床に就いた。
あの茶色い子犬も、カトレアの胸元に潜り込み、彼女の体温を直に感じながら、深い眠りに旅立った。
ベッドにやって来たのは子犬だけでなく、狸や子豚、さらには大蛇や小熊までもが、
主人の眠るベッドを囲んで寄り添い、それぞれ寝床を確保し揃って眠りに就く。

ただ1体、あの悪魔の申し子だけが、
先程と変わらず天井付近で浮遊したまま、カトレアの安らかな寝顔を見詰めていた。

そして、悪魔の申し子は、思いに暮れた。

うたは きらいだ

うたはいつも わたしをくるしめる

おかあさんのうた いがいのうたなんか ただのそうおんでしかない

にんげんなんか もっとだいきらいだ

ネスも ポーキーも みんなわたしをくるしめ りようすることしか あたまになかった

おかあさんのうたを きかせようとも してくれなかった

8つにわかれた おかあさんのうたを さがそうとも してくれなかった

わたしはもはや おおくをもとめない

ほんのすこしでもいい おかあさんにだかれていたときの あのきおくを とりもどしたいだけなのに

みんな わたしを くるしめる

みんな わたしを あくまとよび いみきらう

みんな わたしが にんげんなど いっそうにできるちからを ひめていることをしったとしても

みんな わたしを くるしめる たたかう はむかう

みんな わたしを みんな くるしめる わたしを みなごろし わたしが みんな みなごろし

みんな わたしが みなごろし はむかう たたかう みんな はむかう みなごろし くるしめる

にんげんは おかあさんじゃない ころしても だれも かなしまない わたしは なかない

なぜなら にんげんは わたしのおかあさんじゃない おかあさんじゃないから しんでも かまわない 


――――――――――――だけど 

このにんげんだけは ちがう ちがうのかもしれない

マザーシップと ちえのリンゴをうしない

くらやみに たったひとりで あてもなく さまよっていたわたしを よびだした このにんげん

このカトレアというにんげんは もしかすると わたしのおかあさん なのかもしれない

だって ほんのすこし ほんのすこしだけど 

おかあさんのうたを うたってくれるのだから


――――――――――――わたしのなは ギーグ

わたしは カトレアにであい にんげんのみなごろしを すこしだけ まつことをきめた

だから わたしは まつ

おかあさんのうたが あのうたが 8つのメロディーが わたしにとどく そのひまで

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