あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

HELLOUISE-3

ミス・ヴァリエールが召喚したもの――
それは棺桶だった。
夜の闇よりも黒く染められたそれは、異様な存在感を放つ、棺桶だった。
かつて特殊部隊の長として名を馳せたコルベールは確信する。
それは決定的に、絶対的に絶望的に人に仇なす『何か』を封じているのだと。
これを開けてはいけない。この黒い箱は、希望など一片たりと残さない。
そのおぞましさに最早呼吸すらままならぬ状況で、彼は教え子に改めて離れよと命じ――
ようとして、それが手遅れだと知った。


自身の爆発が生み出した土煙の中、半ば無意識に歩を進めながら、ルイズは思う。

――逃げなければ。

何処へ?

――何処へでも、地の果てまでも。

どうやって?

――手段など、問わず。

それでどうなるの?

――否。ああ、否なのだ。きっとどうにもならない。無意味だ。何者も抗えはしない。

じゃあ、どうするの?

――けれど、アレを喚んでしまったのは私。ならば、私は――

彼女は貴族だった。
魔法は使えなくとも、貴族だった。
そう、貴族とは――敵に背を向けないものを言うのだった。

恐怖を体現したような、禍々しい存在感。

その圧力に気おされながら、しかし、彼女は殆ど無意識のうちに闘争を決定した。
水面下の、言語化すらしていない思考で、彼女はそれを選択した。
敵わずとも、抗えずとも、立ち向かい、闘う。闘わねばならぬ。滅さねばならぬ。

それは、幼い頃からラ・ヴァリエールとして――貴族として形成されていった覚悟。
皮肉にも、魔法が使えなかった彼女は、それ以外の部分では誰よりも貴族たらんとしてきた。
そうして生きようとして、けれど現実は過酷で、いつしか彼女はそれを見失っていた。
魔法学院で暮らすうちに、幼き日の覚悟は傲慢と自嘲の海に埋没した。
が、しかし。
自分の全存在が試されるこの瞬間においては、虚飾は瓦解し、真実だけが残る。
圧倒的な恐怖に心が剥がされ、崩され、砕かれ。
膿を除き、垢を落とし、そうして残った唯一ツ。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールを支える、最後の一柱。
それはやはり、自分は貴族として在ろうという覚悟だった。
貴族とは君臨する者である。何故なら闘い、そして守る者だからだ。
ならば、自分は貴族であるために闘わねばならぬ。
守るべき者を守るために、このバケモノを打倒せねばならぬ。
それを、ルイズは無自覚に自覚した。

そうして生まれた、一ツの奇跡。

人生最大の危機において、その土壇場で、彼女は諦めを踏破する人間になった。

棺に触れようと手を伸ばし、そして引っ込める。
危険だ、と自身の何処かが告げていた。
いや、しかし開けぬことにはどうしようもない。
棺ごと吹き飛ばすのも無しではないが、ソレは何か取り返しのつかないことになりそうな気がする。
どうしたものか、と思案すること数瞬。
突然、勢い良く棺が開いた。
しまった、と舌打ちし、杖を向ける。やはり逡巡するべきではなかった。
とりあえず攻撃を、と、ファイアーボールの詠唱を始め――

ようとして、彼女は思わず絶句した。
ヅバーーーン、と訳の分からぬ擬音と共に蓋が飛び、中から現れたるは一人の少女、いや、幼女。
挙句メイド服。
へいみん?と呆然と呟き、しかしひしひしと感じる恐怖にそれを自己否定する。
もういろいろと混乱した中で、とりあえず搾り出すように呟いた一言は、
「あ、あんた何も「「あ゛ーーーーーーッ」」」
ようやく晴れた土煙の外、顎が抜けんばかりに叫んだ二人
――セラス・ヴィクトリアとウォルター・C・ドルネーズ――
にかき消された。


話を聞けば、セラス・ヴィクトリアを吸血鬼にした本人(本鬼?)であり、
死神と呼ばれたウォルター・C・ドルネーズの終生のライバルが目の前の幼女だという。
幼女なのに?とか、メイドなの?とかいろいろと聞いてみたが、全て
「いや余興だ」
の一言で済まされてしまった。
何でも服を含め(ダジャレではない。念のため)姿形は自由自在らしい。
便利だ。
新しい服を買う必要もないし、それにプロポーションも性別もずっと変えていられるとは。
下手すると新たな趣味に目覚めそう。(余談、後日風邪っぴきのマルコメが目覚めた)
ともあれ、話が通じるならばそれなりにやりようはある。
これからどうするのかと問うてみた。
こちらとしては、呼び出した責任もあるし、悪く扱うつもりはないこと。
断るにしても、ある程度の協力、最低でも利敵行為の禁止は約束させてもらうこと。
敵対するつもりならば、今ここで私の全身全霊をかけて滅ぼすこと。
ここまで説明した時点で、彼女(彼?)は嗤った。
「私に勝つつもりかの?」と。
答えは決まっている。
「勝てる勝てないは問題ではないわ。私は貴族なの。そうする義務があるわ」
言い放つと、この幼女、もう堪え切れないといった表情で腹を抱えて笑い出した。
こちとら大真面目に言ったのに。失礼な。
「くははははっ……いや、やはり素晴らしいのう、人間というのは!」
こいつは何を言ってるんだろう?と僅かに疑問を持つが、次の発言にそんな意識はぶっ飛ぶ。
「よかろう、手を出せ小娘」
何がいいのか、何をするつもりなのか、混乱しながら手を出す。
っていうか私より外見年下なのに小娘呼ばわりかコノヤロウ。
「何、かりそめとて主として認めるには確認が必要じゃろう?」
「じゃあ…!?」
はやる私を押さえ、指に鋭い爪を押し付けた。
「それを今から決めるのだ。少々傷を付けるが我慢せい」
「つっ……!」
指先に僅かな傷を付けられる。指先から血が流れた。
顔を青くしてミスタ・コルベールが杖を構え、セラス・ヴィクトリアに押しとどめられた。
つ、と舌を出し、幼女が私の指先を――正確に言えば、私の血を――舐める。
ぞくり、と、私の背筋に何かが奔った。私、そんな趣味ないのに。
「ふむ、……流石は貴族。血が濃いのう。それに何より――」
「な、なによ?」
嫌な予感がした。何かとんでもないことを暴露されそうな。

「処女「わああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」」

な、な、な、な、何てことを!
ああ、ツェルプストーがすッごいニヤついてるッ!やめて!私の心を覗かないで!!
「ま、まぁまぁ。まだ十代前半でしょ?経験してる子の方が少ないんじゃ…」
ぐさっ。
……セラス・ヴィクトリア。初めて見たときからあんたは敵だと思ってたわ。
「私は16よこの乳魔神!悪かったわね幼児体型で!!」
「うぇえええっ!?」
ええい、それもこれも全部そこの幼女のせいよ!
っていけない。忘れるところだったわ。
「で、どうなのよ!?あんたは敵!?味方!?」
答えた幼女は、さもユカイそうに。
「御命令を 我が主(マイマスター)」

私はこの瞬間、最強のバケモノを使役する重責を負った。


「そういえばあんた、名前は?」
「『Arucard』。主はそう呼んでおる」
「じゃあアーカード、これからよろしくね。……噛むんじゃないわよ」
コントラクト・サーヴァントの呪文を唱え、口付ける。
手袋に現れたルーンは、元々刻まれていた法印に隠れ、判別不能になっていた。




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