あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

腐った女の子アンリエッタ


アンリエッタ姫が魔法学院に到着したのはそれから2時間ほど経ってからだった。
生徒が歓声をあげて出迎える中、悟空は馬車から降り立った姫を護衛する一行の中に、他の者とは一味違う強い気を感じた。
羽帽子を被り、長い金髪に、それと同じ色の長い口ひげを携えたメイジだ。
黒いマントの胸には、彼が跨っている動物、グリフォンの刺繍が施されている。
ルイズが息を飲んだのを感じ、悟空は自分の主人を見やった。彼女もまた、悟空と同じ人物を見つめていた。

「知り合いか?」
「え?」
「あのヒゲのおっちゃん」
「おっちゃんじゃないわ。ワルド様よ」

以前ルイズの記憶を読んだ時に、悟空はルイズのプライベートな部分までは見なかったので、彼がルイズの古い許婚である事は知らなかった。

「やっぱ知ってんのか」
「まあ…ね」

ルイズの頬に紅が差した。
悟空は再びワルドを見た。彼の視線に気付いたのか、ワルドの視線もまた、悟空を捉えた。
ほんのわずかな間だが、ワルドに緊張が走る。悟空はそれを気の揺らぎで感じた。

「あいつ、強えな」
「そりゃそうよ。グリフォン隊の隊長ですもの」

グリフォン隊。トリステインに存在する3つの魔法衛士隊の1つである。
隊の名を冠する幻獣に騎乗し、強力な魔法を操る彼らは、国民の畏怖と憧れの象徴でもあった。
そうルイズから聞いた悟空は、機会があったら一度あのワルドとかいう男と戦ってみたい、と思った。
一方、悟空の視線を受け止めたワルドは微かに震えていた。恐れではない。
あの女の話を聞いた時点では内心高をくくっていたが、それが自分の傲慢である事を思い知らされた。
強い。見ただけでは判らないが、あの平民は自身の実力を隠している。
ワルドの震えは歓喜からくるものだった。
確かにあれを味方につければ心強い。だが、その前に1人の男として彼と手合わせ願いたい。そう思った。
近いうちに、実戦で彼の実力を試す時が来るだろう。
馬車の前から敷き詰められた緋毛氈の絨毯の上をアンリエッタ姫と一同がしずしずと歩き、出迎えるオスマン氏の前に立った。

「急な我侭で申し訳ありませんでした、ミスタ・オスマン」
「滅相もございません。生徒共々お待ち申しておりました」
「今年だけは、是非ともこの目で見たかったもので」
「ほう、それは?」

興味を引かれ、オスマン氏は顔を上げた。
品評会は毎年行われるものではあるが、一国の王女がわざわざ見学に来るような目新しいものでもない。
一応、社交事例として毎年招待状は送っているものの、外交上さほど重要ではないとして、これまで毎年のように黙殺され続けてきたのである。
訝しむオスマン氏の視線に、アンリエッタは見るもの全てを虜にする微笑で応えた。

「個人的な事ですわ」



昼食時、悟空は厨房に居る筈の人物の姿が無い事に気付いた。

「あれ、シエスタは?」

厨房をいくら見回しても、あの特徴的なメイド服の少女は何処にも見当たらなかった。
賄いを食べる時はいつも傍にいて給仕してくれていたので、それがいつしか当たり前になっていた悟空は尚の事違和感を感じた。

「あの姫様ってのが来たから、何か別の仕事でもしてんのかな」
「……お前、シエスタから聞いてねえのか?」
「へ?」

マルトーが言うには、朝食の後、モット伯という貴族に仕える為に急遽、学院での仕事を辞めることになったのだそうだ。
結局、平民は貴族の言いなりになるしかない。
己の無力を嘆くやり場の無い怒りを隠そうともせず、マルトーはそう吐き捨てた。
自らもまた、自分の意思とは関係なく、エリートの都合によって余所の星へと送り込まれた下級戦士であった悟空は、シエスタの立場を自分と重ね合わせて考え、そして結論を出した。

「心配ねえって。シエスタならきっと、うまくやれるさ」
「いや、そういう問題じゃねえんだけどな……」

的の外れた慰めをする悟空を、マルトーは微妙な表情で見つめるしかなかった。



「モット伯爵は王宮の勅使で時々学院に来るわ。いつも偉ぶっててわたしは好きじゃないわね」

夕刻。
歓迎会の準備のために、悟空の手を借りてめかし込んでいるルイズは、彼からシエスタが奉公に出た事を聞かされた。
嫌な顔一つ見せず、自分と自分の使い魔の世話を引き受けてくれた彼女が居なくなってしまったのは正直寂しいが、それがここでの理なのだ。
自分がとやかく言う筋合いはない。

「あ、でも」

彼女が居なくなってしまったら、誰に下着を洗わせればいいのだろう?
悟空は…多分無理だ。ただでさえ常日頃からパワーを持て余している事を知った今、下着なんてデリケートなものをちまちまと洗わせるのは正直危険だ。というか勿体無い。
主人である自分を守る、という点においては充分過ぎる技量を持っているのだから、それで満足するべきだろう。

「何だ?」
「わたしの服を洗う人が居なくなっちゃったわね」
「他のヤツに頼めばいいんじゃねえのか?」
「それがね、シエスタってああ見えてビックリするほど洗濯が上手いのよ。何ていうか手馴れてる感じ」
「じゃあ、どうすんだ? 連れて帰るのか」
「そうもいかないわよ」
「ん?」

悟空は、生徒のものではない気がルイズの部屋に近づいてくるのを感じた。
この気には覚えがある。確か、今日学院に来たアンリなんとかという姫様の気だ。

「ルイズ、おめえ、今日来た姫様と知り合いか?」
「え? ええ。姫様の御幼少のみぎり、恐れ多くもお遊び相手を務めさせて頂いてたのよ。何で?」

悟空はその問いには答えず、代わりにルイズの部屋の扉を開けた。
まさに今、ドアをノックしようとしていた人影が、ドアを叩く筈だった右手を振り出した勢いを殺しきれず、部屋の中に入ってくる。
よほど慌てたのか、2、3歩よろけたところで足をもつれさせて前のめりにスッ転び、「はぎゅ」と情けない声を立てた。
転んだ衝撃で目深に被っていたフードが脱げ、その下から現れた顔を見たルイズは仰天した。

「姫殿下!」

床で醜態を晒しているその人物は、誰あろうアンリエッタ王女その人であった。
ルイズの声に、呻き声をあげていたアンリエッタは我に返り、急いでマントの隙間から杖を取り出し、部屋中に光りの粉を捲き散らした。
悟空とルイズはそれがディテクト・マジックだと気付いた。
部屋の何処にも聞き耳を立てる魔法の耳や、何処かに通じる覗き穴がない事を確かめ、最後に自分の入ってきたドアが開けっ放しになっている事に気付いて慌てて閉めると、アンリエッタは改めてルイズに向き直った。

「お、お久し振りね、ルイズ・フランソワーズ」

何ともしまりのない再会であった。
自分がぼけっと突っ立っていたことに気づいたルイズは慌てて膝をついた。

「姫殿下、申し訳ありません、こんな下賎な場所へお越しになられただけでなく、その御身を地に這いつくばらせてしまうなど…!」
「いいのですよ、とっさの事に対処できなかったわたくしが悪いのですから。だからその顔を上げて頂戴」

かしこまった声で謝罪するルイズに、アンリエッタは優しく彼女を抱きしめた。

「それに、そんな堅苦しい行儀も止めて頂戴。あなたとわたくしはおともだち。おともだちじゃないの!」
「勿体無いお言葉です、姫殿下」
「止めて! ここには枢機卿も、母上も、あの友達面をして寄って来る欲の皮の突っ張った宮廷貴族たちもいないのですよ!
 ああ、もう、わたくしには心を許せるおともだちはいないのかしら。昔馴染みの懐かしいルイズ・フランソワーズ、あなたにまでそんな余所余所しい態度を取られたら、わたくし死んでしまうわ!」
「姫殿下……」ルイズはようやく顔を持ち上げた。
「幼い頃、いっしょになって宮廷の中庭で蝶を追いかけたじゃないの! 泥だらけになって!」

アンリエッタの心底嬉しそうな顔に、はにかんだ顔でルイズが応えた。

「……ええ、お召し物を汚してしまって、侍従のラ・ボルトさまに叱られました」
「そうよ! そうよルイズ! 彼とのカップリング論争で、掴み合いになったこともあるわ! あなた彼は受けだって言って引かなかったわね」

ルイズのはにかんだ笑顔が一変し、「ピキ」と、空気の固まる音が聞こえた。
薄く化粧を施したルイズの顔に、どっと冷や汗が噴き出してくる。固く封印していた筈の過去の汚点を暴露され、ルイズは頭を抱えた。

「ああやめて黒歴史黒歴史」
「わたくしがボル×ワル本を書いたらあなた、『ワルド様は攻め以外絶対認めない!』なんて言って、それからやっきになってワル×ボル本を書いて、
 挙句の果てにはその本をお姉様方に見られて丸2日屋敷に帰って来なかったこともあったわねえ」
「ビッケモンバック! ビッケモンバーック!!」

ルイズはベッドに突っ伏すと、顔を枕に埋め、いやいやをするように手足をバタバタとのた打ち回らせた。
悟空は意味不明の単語の応酬に理解が追いつかず、呆然と立ち尽くしている。

「懐かしいわ、あの本まだ本棚に仕舞ってあるかしら」
「捨ててー! お願いですから捨てて下さい後生だからー!!」

心を抉られる痛みに耐え切れなくなったルイズは絶叫した。
主人の恥ずかしい過去の古傷を笑顔でほじくり返すアンリエッタ姫を、悟空はただただ呆れ顔で見つめていた。
おしとやかに見えて、意外とお転婆娘のようである。
この場合における「お転婆」という表現が適切かどうかは定かではないが。

「ああいやだ、懐かしくて、わたくし、涙が出てしまうわ」
「わたしは恥ずかしくて涙が出てまつ…。でも感激です、姫さまが、そんな昔の事を覚えて下さってるなんて……。
 とっくにお忘れになったかと思いました。……ていうか、忘れて下さいお願いします」

王女は深い溜息をつくと、ベッドに腰かけた。

「忘れるわけないじゃない。あの頃は、毎日が楽しかったわ。何にも悩みなんかなくって」

深い、憂いを含んだ声であった。

「姫さま?」
「あなたが羨ましいわ。自由って素敵ね、ルイズ・フランソワーズ」
「今日からそうでもねえんだよな」蚊帳の外に置かれていた悟空が、ここでやっと口を開いた。
「というと?」
「ゴ、ゴクウ! 余計な事は言わなくていいから!!」
「良いのですよ。私にできる事があったら、何でも相談して頂戴」
「いえ、いいんです! たかがメイドが1人奉公に出たくらいで…」
「へえ?」

アンリエッタの宝石のような目が、その輝きをいっそう増した。

「その話、詳しく訊かせてもらえないかしら?」

困った顔で視線を反らすルイズ。すがるような目で悟空を見上げるが、この状況で使い魔を頼っても何も出来そうにない。
逡巡するルイズに、アンリエッタはダメ押しの一撃を放った。

「お願い☆」

ウインクまで出され、ルイズは陥落した。



「モット伯ですか……。確かにあの方ならやりそうな事ですわね」

真剣な顔で話を聞き終えたアンリエッタは深くため息をついた。
魔法学院に勤めていた侍女の1人が奉公に出てしまい、世話をしてもらっていたルイズは不便を強いられている。
アンリエッタにはそう伝えた。内容的にはあまり正しくはないが、かといって真っ赤な嘘でもない。
ルイズが口にした貴族の名前はアンリエッタにも覚えがあった。
平民の若く美しい娘に目をつけては自分の屋敷に買い入れ、夜の相手をさせていると聞く。
以前謁見をした事があったが、その時にも、仮にも王女である自分を好色そうな目で見ていた。どちらかというと、悪い印象しかない。
貴族としての業績に欠点らしい欠点は無いが、それでも1人の女として、彼の横暴は許されざるものがあった。

「ここだけの話ですが、私個人としても、彼のような人物は好ましくないと思っています。あなたがその平民の帰還を望むのなら、わたくしは助力を惜しまないつもりですわ」
「でも、ほんとうにいいのですか?」
「幼い頃に約束したではありませんか。『ルイズの助けになる』って。わたくしは今でも忘れておりませんわ」
「もったいないお言葉、光栄至極に存じます」
「もし、何か騒ぎになるような事があったら、その時はわたくしに相談して頂戴。可能な限り、裏で手を回しますわ」
「わかりました。他ならぬ姫さまのご好意、厚く御礼申し上げます」
「さあ! そろそろ歓迎会が始まりますわ。わたくし、もうお暇しませんと」

アンリエッタが立ち上がり、来た時と同じように再びフードを被った。
ルイズが部屋の扉の前まで送り出すと、アンリエッタはルイズを優しく抱きしめた。

「ここ数年で、1番楽しい一時でした…。ありがとう、ルイズ・フランソワーズ」
「わたしもですわ…姫さま」

アンリエッタはルイズから身を離すと、次に悟空に目をやった。

「ルイズの恋人さんも」
「へ?」
「オラ?」
「明日、頑張って下さいね」

ルイズは思いきり首をぶんぶんと振って、アンリエッタの言葉を否定した。

「ち、違います! ここ、こいつは恋人じゃありません! わたしの使い魔です!!」
「使い魔?」アンリエッタはきょとんとした面持ちで悟空を見つめた。「人にしか見えませんが……。頭に変なのくっついてますけど」
「人ですわ。姫さま。頭に変なのくっついてますけど」
「そうよね。はあ、ルイズ・フランソワーズ。あなたって昔からどこか変わっていたけど、相変わらずね」
「こう見えてもこの使い魔、力は相当ですわ」
「まあ。それじゃ益々、明日が楽しみね。おやすみなさい、ルイズ」



とはいえ、どうやってモット伯に説明すればいいのだろう。
豪勢な歓迎会が終わった後も、ルイズの頭の中はその事で一杯だった。
まさか正面から堂々と乗り込んで「やっぱ必要だからシエスタ返して」と言うわけにも行かない。
何か交換条件を持ち出すのが得策だろう。問題はそれをどうするかだ。
考え込んでしまったルイズに、悟空が口を開いた。

「こっそり連れて帰ってきちまえばいいんじゃねえのか?」
「それができれば苦労は無いわよ。できたとして、それをどうやって穏便に済ますかも問題だし……」
「オラが瞬間移動で連れてくりゃ、すぐだろ」
「あ、そういえばそうね。…ん? でもそれだと……」
「よし、ちょっくら行ってくる」
「え? 待ってゴク――」

ピシュン。
悟空の姿が消えた。

「……ウ」

ルイズは悟空のいた空間を見つめ、しばし固まった。
あの馬鹿、シエスタが他の誰かと一緒だったらどうやって連れて帰ってくるつもりよ?
もしそれがモット伯だったら弁解のしようも無いじゃないの、などとルイズがボンヤリ考えていると、再び悟空が戻って来た。

「ただいまー」

傍らにはシエスタが立っている。その身にタオルを捲き付けただけの、裸同然の姿だ。

「何でいきなり連れて帰ってきちゃったのよ!? てか、他の誰かに見られたらどーするつもりよ!!」
「それなら心配ねえ。オラが行った時、いたのはシエスタだけだったからな」

実際、悟空が提案したのは、今ならシエスタの周囲に誰の気も感じなかったからだった。
瞬間移動で目的地に移動する際、移動先は固定されているが、出現先は対象の気から数メートルの範囲内であればある程度の融通が利く。
相手の眼前に移動することも、そこから少し離れた場所に移動することも自由自在だ。
もし、シエスタの近くに誰かがいたとしても、その人物の死角になる場所に実体化すればよいと悟空は考えていた。
シエスタは何が起こったのか判らず混乱し、「な…なんなんですか? ここ、どこですか? 何で私、連れてこられたんですか?」などと呟いている。
身を縮こませ、時おり小刻みに震えているのは寒さのせいだけではないだろう。

「えーと、シエスタ?」
「へ? あ、ミス・ヴァリエール」
「とりあえず落ち着きなさい。あのね、ここはわたしの部屋。そして貴女はゴクウに連れてこられたの。おわかり?」
「は…はい。でも何で……」
「貴女がモット伯爵の元に奉公に出たのは聞いたわ。でもそれじゃ私やゴクウがちょっと不便するから、帰ってきてもらう事にしたのよ」
「で、でも、そんな事をしたら、モット伯が……」
「心配要らないわ。伯爵がこの件に対して何か言ってきても大丈夫なの。一応そういうことになってるから」
「はあ…?」
「ところであんた、何でそんな格好なの?」
「あ、私湯浴みをするところだったんです」
「湯浴み……?」
「はい。…その、モット伯が、用があるから湯浴みをしたら寝室に来るように…って」

シエスタが顔を赤くして俯いた。
その表情が意味するものを悟ったルイズは呆れ顔で頭を掻いた。やっぱりあのエロジジイは、と怒りが沸々とこみ上げてきた。
やっぱり使い魔のやった事は正しい。むしろ褒めてつかわす。いろんな意味でギリギリのタイミングみたいだったし。
判決。被告、ソンゴクウ。無罪。被告、モット伯。有罪。以上、これにて閉廷。
呆れ顔から怒り顔を経て今度は1人悦に浸るルイズに、震える声でシエスタが訴える。

「…あの、ところで私の服と荷物、どうすれば……」
「あ」

結局、悟空は再び瞬間移動をさせられた。
シエスタの衣服に残った僅かな気を頼りに移動するという、極めて難しい作業ではあったが、南の銀河にサイヤ人の気を探って行った経験が意外なところで活かされた。
もっと時間が経ってしまってからでは遅かったかもしれない。ブロリーの時と違い、シエスタの服に残った気は時間とともにどんどん小さくなっていた。
服を着替え、無事に戻ってきたシエスタを見たマルトーはたいそう喜び、「なんだかんだ言ってシエスタの事気にかけてたんじゃねえか、ええ? 我らの拳よぉ!」と、付き添いで来た悟空の背中をバシバシと叩いた。



悟空が無事服と荷物を持ち帰ってこれたのにはもう一つの理由がある。
この時、湯浴みをさせていた筈のメイドが忽然と姿を消したモット伯の屋敷では当然の事ながら騒ぎになり、「逃げ出した」だの「何処ぞのメイジに連れ去られた」だのと憶測が憶測を呼んでいた。
出入り口を除いては密室であったはずの場所でメイドと何者かが会話をしていたのを聞いた、などと言い出す者まで現れ、事態は混乱の極みに達した。
一時は「モット伯の屋敷で夕刻に湯浴みをすると、謎のメイジに攫われる」といった、ある意味根も葉もある噂まで立つ始末である。
その混乱の中、慎重に気を探りながら、また自身も極力気を消して探索に当たっていた悟空は、幸運にも誰にも出くわすことなく、また潜入任務の定番、空き箱に隠れる必要も無く任務を遂行できた。
結局、事態を重く見たモット伯により箝口令が敷かれ、この事件はうやむやのうちに決着を迎えることとなったのだが……。
その日以降、夕方から夜にかけてモット伯の屋敷で入浴をしようとする人間は一人もいなくなってしまったことをここに付け加えておく。
後に「モット伯家の七不思議」の一つとなった事件である。


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