あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのMASTER-04

シュヴルーズ先生の授業が始まった。もっとも、授業を受けるのは私ではなく、ルイズはじめ子供達なのだが。
それにしても…。
私は周りを見渡す。まるで子供の頃に入ったお化け屋敷みたいだな。
先ほどの彼女―――キュルケという少女の大トカゲはまだいい。しっぽに火が付いているが。
羽の付いた巨大な目玉、タコのような足が生えた謎の生き物、そのほかにも何とも言えない奇妙な生物が主人である子供達の隣にいる。
父さんが見たら感動しそうだな、これは…。

「ちょっと、あまりキョロキョロしないでよ」
ルイズに突かれる。いけない、いけない。つい夢中になってしまった。
シュヴルーズ先生も気付いたのか、こちらを少しきつめの表情で見る。
すると、少し太った少年がこちらを指差して騒ぎ始めた。
「ミセス・シュヴルーズ!ゼロのルイズがうるさくて授業に集中出来ません」
「わたしはゼロじゃないわ!」
ルイズが顔を真っ赤にして立ち上がる。ああ、またか…。と、いっても今度は私のせいなんだろうけど。
「うそつけ!そこの使い魔だって、そこらを歩いていた平民を適当に連れてきたんだろ!」
「違うわ!こいつが勝手に召喚されただけよ!」
「二人とも、静かにしなさい」
シュヴルーズ先生がぴしゃりと言う。二人は渋々席についた。
「ですが、ミセス・シュヴルーズ。風邪っぴきのマリコルヌがわたしを侮辱しました!」
「俺は風邪っぴきじゃない、風上だ!風上のマリコルヌだぞ!ミセス・シュヴルーズ、ルイズが侮辱を…」
二人はまだ言いたそうだったが、シュヴルーズ先生からさらに睨まれたことに萎縮したのか、何も言わなくなった。

授業が進む。シュヴルーズ先生が不意に杖を振ると、机の上に石が何個か現れた。
手品でもなんでもなく、自然に出すんだからなあ。まったく驚かされる。
彼女曰く、魔法には四大系統というものがあるらしい。すなわち、「火」、「水」、「風」、「土」の四つの系統。
失われた系統である「虚無」というのもあるとか。…まいったな、ますますファンタジーだ。
どうやら魔法というものは、現代世界での科学技術に相当するものらしい。
とはいえ、ブルドーザーやトラクターといったものまであるわけではないし、どのみち労働者は大変だろうな。

先生は手にもった小振りの杖を振った。すると、どうだろうか。机に置かれていた石が、あっという間に光る金属に変わった。
キュルケ君が目の色を変えて質問していたが、先生によると本物の金ではなく、ただの真鍮らしい。

…こういった講義の内容をいちいちメモしてしまうのも、癖の一つなんだろうな。
私がメモ帳に書き込んでいると、ルイズが不思議そうに見ていた。

「ミス・ヴァリエール!余所見をする暇があるのでしたら、あなたも実際にやってみなさい」

シュヴルーズ先生がルイズを指差した。おお、どうやら実力を発揮するチャンスが来たみたいだな。
「がんばれ、ルイズ。他の子達を見返す良い機会だよ」
「『ご主人様』でしょ!言われなくったってわかってるわよ」
ルイズが立ち上がったとき、キュルケが手を上げる。どうしたのだろうか?
「先生、ルイズは止めといたほうがいいと思いますけど」
「どうしてですか?」
「危険です」
…見ると、キュルケ君の顔は蒼白になっている。
ギィ、という音がしたので後ろを振り向くと、青髪で小柄な少女が教室から出て行くのが見えた。
ガタガタという音と共に、他の生徒達が机の下に隠れていく。
これは…ひょっとして…かなり、まずい、のか?
「あ、ああ。ルイズ。僕も止めとくべき」
「黙ってなさい」
ルイズはぴしゃりと言うと教壇の前に歩いていく。まずい、やる気だ。本気のようだ。
先生は先生で彼女に頑張るように言っている。キュルケ君は「やめて」と言ってるんだが。

目をつむり、ルイズが呪文を唱え始めた。幻想的だな・・・。と、思った瞬間、空気が震え始める。
いけない、これは―――
咄嗟に、私はシュヴルーズ先生とルイズに向けて走っていた。

やってしまった―――。
机の石に向けてルーンを唱え、杖を振り下ろしたまでは良かった。
だが、続けてまばゆい閃光と爆発音が走った瞬間、失敗したと後悔する。
ああ、わたしはいつもいつも―――
黒板に叩きつけられる!! そのとき、前から突進してきた何かがわたしを床に押さえつけた。
むぎゅ……………。

………大丈夫かい?ルイズ、ルイズ!
誰かの声が聞こえた。暗くてよく見えないけど、頼りになりそうなその声―――
誰だろう?そう思い、うっすらと目を開ける。そこには・・・

「大丈夫かい?」
私はルイズに声をかける。すすだらけ、埃だらけになってしまったが、外傷は無いようだ。
なんとかルイズとシュヴルーズ先生の両方を助けることが出来た。先生の方は気絶してしまっているようだが…。
「傷は無いようだね。とりあえず、無事でよかった」
ルイズの手を取って立ち上がらせる。
二人を助けるときにスーツの上着を被せたのでボロボロになってしまったけど…まあ、仕方が無いな。
騒がしいので後ろを振り向くと、生徒達の使い魔が暴れだしている。
ショックで泣いている子もいるし、こりゃあ説教だけですみそうに無いかな…。

「やあ、よかったね。この程度ですんで」
私はルイズと一緒に破壊された教室の後片付けをしていた。
本来なら厳重注意…というところだろうが、私が二人を助けたことが例のコルベール氏、
そしてこの学院の長であるオールド・オスマン氏(私はまだ見たことがないが)に知れたらしく、
教室の後片付け程度で済ませてくれたらしい。
気がついたシュヴルーズ先生も私に礼を言っていたな。たぶん、彼女が上に報告してくれたおかげもあるのだろう。
二人で作業をこなす。ルイズは…私が話しかけても黙っている。やっぱり怒っているのだろうか?


―わたしはキートンと一緒に教室の掃除をしている。
あのとき、目にも止まらない速さで突っ込んできたのはキートンだった。
私と先生を地面に伏せさせて、自らの身体で庇ったのもキートンだった。
ひょっとしたら、大怪我をしていたかもしれないのに、なぜそこまでしてくれたのだろうか?
主人と使い魔だから、の一言ですませられるものなのだろうか?

「ちょっと」
「なんだい?」
「ぁ、ぁ、り………」
「蟻?」
私は彼女に顔を近づける。ルイズはいきなりばっと顔を上げると、大声で叫んだ。
「だから!ありがとうって言ってるでしょ!でも勘違いしないように。わたしはあんたのご主人様なんだからね!」
私はびっくりして腰を抜かす。いやはや、驚かせるなぁ。
「礼なんていいよ。あー、その、それでもしよかったらでいいんだけど、お願いしたいことがあるんだ」
私は重大なことに気が付いたからだ。これは日常生活の上で非常に大切なことだからな。

「助かったよ。さすがにあの御飯はちょっとねえ。それに昨日から風呂も入ってなかったし」
「あんまり調子に乗らないこと。使い魔なんだから」
そう言いながら二人で庭園を歩く。今日は二年生の授業は午後から休みらしい。
なんでも、使い魔とコミュニケーションを深めるため、だそうだ。
私は私でルイズに食事の件で頼み込んだところ、案外あっさりと許可してもらえた。
彼女曰く、「使い魔としては、『そこそこ』役に立っているから特別で」だとか。これで少しは待遇が良くなるといいが…。
風呂は平民用のサウナ風呂を使え、ということらしい。
学院に貴族用の風呂はあるものの、平民がそれを使うことは禁じられているとか。
…うーん、風呂は自分で作った方がいいかもな。

「やれやれっと…」
椅子に座る。今日はいい日和だなあ。今頃、皆は何をしているだろうか…。
「ちょっと。ボサッとしてないで、お茶ぐらい持ってきなさいよ。気が利かないんだから」
「おっと、ごめんごめん。それじゃ、行ってくるよ。デザートは何がいい?」
私はルイズに尋ねる。クックベリーパイ持ってきて、とのことだった。…そんなデザート、あったかな?

「クックベリーパイ、クックベリーパイ…。あのォ、すみませーん」
私は一人のメイドに声をかける。おっと、この子は確か…。
「ああ、ヒラガさん。こんにちは」
シエスタ君だった。生徒達の注文で忙しいのだろう。彼女も大変だな…。
「キートンでいいですよ。ちょっと、クックベリーパイというデザートを探してるんですけど…。御存知ですか?」
「クックベリーパイなら厨房です。コック長のマルトーさんに頼んでくださいね。ついでにお茶も頂けますから」
「どうも、ありがとうございます」
私は彼女に礼を言うと、厨房に向かった。早くしないと、またルイズに怒られてしまうからな。
「すみませーん、マルトーさんはいらっしゃいますか?」
「マルトーなら俺だぜ」
間髪を入れずに恰幅の良い中年の男性が出てきた。アテネのレストランにでもいそうな人だな。
「ああ、クックベリーパイとお茶を持ってくるようにといわれておりまして」
「そこにあるぞ。勝手に持っていきな」
マルトー氏はふん、と鼻をならすと黙々と料理やお菓子を作っている。
かなりの手練れらしく、あっという間に見事なケーキが出来上がった。
他のコック達もマルトー氏と同じ様に次々と仕上げていく。

「なんだい、ボサッとして。さっさと持っていきな」
「あ、ああ。どうも、ありがとうございます」
私がパイとお茶をお盆の上に乗せて持っていこうとすると、マルトー氏に呼び止められた。
「待ちな。…お前さん、召喚されたって平民だろ。シエスタが言ってたからな」
ばれてるようだ。…それ以前に、午前中の授業で服が傷んだからな。見ればわかるか。
「貴族連中の機嫌を損ねんように気を付けるんだな。平民が貴族に逆らったら、ただではすまんからな」
「…どうも」
私は彼に一礼すると、厨房を出た。少し気が荒そうだけど、根は親切そうな人だな。
ポケットの茹で卵をさすりながら、私はルイズのところへ向かった。

「まったく、変わった奴だな…。ん?おい、ペタン!ここにあった茹で卵をどうした!さてはお前、食ったな!?」

「君、気をつけたまえ」
戻る途中、一人の少年にぶつかった。なんというか、派手な子だな…。薔薇なんか服に挿している。
「おっと、すみません。余所見をしてまして」
少年は私に構わず、とっとと歩いていってしまった。ことん、という音と共に何かを落としたまま。

「ん?これは…」
鼻を近付け、嗅いでみる。どうやら香水のようだ。しかも、かなりきつめの。たぶん、高級なやつなのだろう。
あの子が落としていったんだな…。仕方ない、追いかけて届けてやろう。
ルイズにはすまないが、彼を見失ってはいけないしな。
私はお茶とパイを乗せたお盆を持ったまま、薔薇の少年を追いかけることにした。

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