あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの機神 ギガンティック・ゼロ-07

疑念を胸に秘めながら、オニクスは急降下する。それに追随するようにワルキューレ達が追尾してくる。この近距離、振り切るのは難しいだろう。
不意に正面に生成されたワルキューレに蹴りをかまし、二騎のワルキューレの剣を、ソードで受け止める。
ヨロケから復帰したワルキューレが、背後へと向かってくる。オニクスは正面二騎のワルキューレを弾き飛ばし、回転切りで3騎を巻き込んで胴から両断した。
「しつこいっ!!」
上昇。追いすがるワルキューレの一体をナーブケーブルで捕縛し、迫り来るワルキューレに対して投げつける。
ワルキューレの動きをまとめて止めたオニクスは、地上のギーシュを見据える。彼は笑っていた。
もう、手加減はすまい。
ためらいなくオニクスはソードをギーシュに投げつける。そして命中を確認もせず急加速、地表すれすれにギーシュへと迫る。一方のギーシュは護衛のうちの一騎を盾にしてソードを防いでいた。
ギーシュの護衛は三騎に増えている。この奇襲も、読まれていたということか。後方から迫る五騎を尻目に、左腕にライトニングソードを召還する。距離がつまる。
剣が刺さったワルキューレは灰と化し、その代わりにまた新たなワルキューレがオニクスの正面に召還される。落ちる剣。さらに詰まる距離。オニクスはライトニングソードで、複数のワルキューレの足首をまとめて切断した。
そのままギーシュの脇を通り過ぎ、地面に触れかけたムラクモソードを掴み、急反転する。彼は、二刀流になっていた。足首を斬られたワルキューレが、一斉に崩れ落ちる。
「終わりだ」
ライトニングソードをギーシュに向けると、雷光がほとばしり、ギーシュに向かって一条の光が飛ぶ。辛うじて起き上がったワルキューレがギーシュをかばい、雷光を数発受けて爆散した。
「まだっ!!」
ライトニングソードからはさらに雷が乱射される。近づくこともままならず、さらに追いすがってきた五騎がギーシュの盾になり砕け散った。そして、最後の一撃が、ギーシュを狙う。
ギーシュは正面に壁を生成するとこれを防御した。ワルキューレ以外の点に関しても、やはり腕前が上がっているようだ。
「っ!」
跳躍。空中で壁の裏を見据えると、既に壁の裏にギーシュはいない。壁の脇から駆け出すギーシュはさらにワルキューレを召還して、オニクスにしむけた。正面から来る敵数、四騎。
さらにオニクスは後方に気配を感じて振り向く。そこにも三騎のワルキューレがいた。挟み撃ち。オニクスは一瞬の判断を下す。正面のワルキューレ達に向けて突撃。
飛び蹴りで一騎のワルキューレを弾き飛ばし、それに追随して正面突破する。向かう先にはギーシュ一人、防御はない。
だが、ギーシュも馬鹿ではなかった。ギーシュが杖を振り、短い詠唱を行う。途端に、足先のワルキューレが液状に溶けた。
「な」
液状になったそれはオニクスを包むようにまとわりつき、再び固形となりオニクスを捕縛した。堕ちるオニクス。後方にはワルキューレ、前方にはギーシュ。堕ちたオニクスに、鴉のようにワルキューレが群がる。
「このっ…!!」
剣の切っ先が、群を組んで迫る。
「終わりだ、ゴーレムっ!!」
「こんなところでっ!!」
瞬間、オニクスは左腕を渾身の力で解放する。そして剣の切っ先を、天に向けた。
「ライトニングソード!!!」
叫びは天に届く。

雷鳴が轟いた。
天から、雷が降ってくる。雷はオニクスを直撃し、その周囲のワルキューレを吹き飛ばした。これはギーシュも想定外だったのか、あっけにとられた顔をしている。
雷鳴の着弾による煙が晴れると、そこには黒く焼けこげたオニクスがいた。彼を拘束していた鉄の塊は既に存在しない。
「…さぁ、どうするか」
「ふふふ…ハハハハハハハッ!!」
「何がおかしい、小僧!」
「どうするかもこうするかもない!僕にはまだワルキューレを出せる余裕がたっぷりとあるんだ。君はそんな大技を駆使して、魔力の方は大丈夫なのかい?根負けしてしまわないのかい??」
ギーシュは嫌な笑いを浮かべている。
(この口調、どこかで)
「…貴様こそ、その余裕、命取りになるぞ」

一方観衆の輪の中では、先ほどギーシュの決闘の要因を作った1人・モンモランシーが戦いを見つめていた。彼女の顔は不安に満ちている。やはり自分の「元」愛していた男だ、不安にもなるだろう。
(あれは、いつものギーシュじゃない)
思えば、あの時から変だったのかもしれない。召還の儀式の二日前に会った時から彼の様子に違和感を感じていた。そのかすかな違和感をその時は気にも留めなかったが、今になってその違和感は、顕在化していた。
確かに彼はナルシスト気味ではある。だが、あそこまで人を見下した物言いをする男ではなかった。
少なくとも、彼女はギーシュを「わきまえている男」だと思っていた。
(彼はあんな高笑いはしない)
ギーシュはワルキューレを呼び寄せ、あのゼロのルイズの使い魔・オニクスはそれを片っ端から斬り捨てている。あんなことも、召還の儀式の二日前までは出来なかった。
とても自分と同じ年の魔術師とは思えない。あんな技、上級でも難しい。
「おかしいわ…ギーシュ」
その日のことを思い起こすモンモランシー。変わったことが、何かあったか。確か、石を拾ったとか、言っていたか……
「それ、どういうことだか、聞かせてもらえる?」
思わず声に出してしまっていたのか、不意に後ろから、モンモランシーに声をかけるものがいた。それは同学年のキュルケと、その親しき友人タバサである。彼女らもまた、この異様な事態に好奇心を動かされて観戦に来たらしい。
「やっぱり…気になる?」
「……調子に乗ってる」
タバサが冷静に感想を述べる。
「あれは確かにおかしいわね。態度も、力量も」
「そうよね」
「ということだから」
「…聞かせて」
「…うん、わかった」
彼女は全てを、2人に話した。

召還の儀の二日前のこと。
石のこと。
そしてその石を、右ポケットに入れたこと。

「じゃぁ、その石がギーシュをおかしくしたのかもしれないってこと?」
「うん、確証はないけど」
「…気になる」

話を終えた三人は、再び戦闘を見つめる。
二刀を駆るオニクスはワルキューレを叩き伏せていくが、次々召還されるそれに悪戦苦闘している。
一方のギーシュはワルキューレの操作に集中し、本体をがら空きにする余裕まで見せている。今の彼は無防備だ。
ふと、タバサがおかしな点に気付いた。
「…ふたりとも」
「どうしたの?」
「…右ポケット」
タバサに言われるがままにキュルケとモンモランシーは彼の右ポケットあたりを見つめる。
かすかに右ポケットが紫色に光っていた。

「…アレは確定ね」
「石だわ」
「…石」
三人の意見は合致した。

一方のルイズもその試合を眺めていた。オニクスは確かに強いが、数に押されている。それはルイズの素人目でもわかることだった。
ワルキューレをいくら切り裂いても相手の魔力の底は見えず、本体を叩こうにも鉄壁の防御がそうはさせてくれない。オニクスの不利は眼に見えていた。
(…負けちゃう)
ルイズは心配でならなかった。大口を叩いておきながら、あそこまで押されている自分の使い魔が、心配でならなかった。だが、自分ではオニクスを助けてやれないし、何よりこれは「決闘」だ。ルイズの手出しは許されない。
(…死んじゃう!)
いつしかルイズは本気で彼を心配していた。そのルイズの前に、スッ、と大きな人影が割り込み、視界を遮る。思わずルイズは叫んだ。
「ちょっと!見えないわよ」
「あら、そんな所にいたのおちびちゃん」
キュルケだった。しかも友人を2人連れている。ルイズはさらに大きな声で言った。
「今あんたとだべってる暇は無いのよ!」
「ギーシュの異変の正体、知りたくない?」
一転して、ルイズの表情が変わる。
「…どういうこと」
「今のギーシュは一時的に強化された状態なの。マジックアイテムだか何だか知らないけど、とにかくなんか拾ったらしいのよ。その代償かしら、あんなに性格が変わってるのは」
「それじゃ」
「その強化してるのを叩けばギーシュはジ・エンド。そしてありがたいことに、それは自分から位置を教えてくれてるわ」
ルイズの目が輝き、曇っていた心が晴れる。ルイズは詰め寄るようにキュルケに聞いた。
「どこ、どこにあるのっ!?」
「焦んないの。右ポケットよ、見える?」
ルイズがキュルケの前に出て、ギーシュの右ポケットを確認する。ルイズにもそれはわずかだが見えた。
「道理で気付けないはずよ、ワルキューレに注視してる今の彼にはね」
キュルケはルイズに話しかけたつもりだったが、そのとき既にルイズはキュルケの前から消えていた。キュルケはタバサに尋ねる。
「ルイズは?」
「あそこ」
ルイズは人垣を割って輪の中に入り、両手をメガホンの形にして叫ぶ直前だった。

「オニクスーーっ!!」
ふと声が聞こえたと思ったら、自分の主人だった。
「あいにく返事出来る暇はないっ!!」
「右ポケット!!」
「ハッ!?」
「ギーシュの 右 ポ ケ ッ ト !!」
意味が分からないが、オニクスはとにかく今自分を囲んでいるワルキューレを排除しなければ、ギーシュの右ポケットは拝めない。オニクスは飛んだ。そして空中でライトニングソードを再構成し、杖へと変える。
したでは攻撃をし損ねたワルキューレ達が、今まさに飛び立とうと身構えている所だ。オニクスは迷わず杖を向けた。杖の先端が展開する。
「烈炎の鉄槌(ボルカノ・ハンマー)」
火炎の弾丸は、密集していたワルキューレを一気に焼いた。倒せなくていい、今の彼には時間さえ稼げればそれで良かった。そして空中からギーシュの右ポケットを拝む。
そこには、光る何かがあった。ルイズの言いたかったことを、数秒後にオニクスは理解する。そして自分の予感が正しかったことも、理解する。オニクスはギーシュに呼びかけた。
「小僧っ!!」
「なんだい」
「その右のポケット、どんなもんが入っていやがるっ!」
心当たりのないギーシュ(忘れている)は、右ポケットをまさぐる。
「ちり紙だけだ…あれ?」
ギーシュは手に触れた小石をつまみ上げた。それは光を放ち、ただの石でないことは一目で分かる。そしてギーシュもまた、それの正体を理解した。
「これがどうしたっ!!」
「そいつを寄越せっ!!」
「決闘の最中に何を言うかと思えば…くれてやるさ、どうせ死んだら意味がないしな!」
オニクスが叫び、何も知らないギーシュがそれを投げ渡そうとした、瞬間だった。
『小僧、やめろ!!』
ギーシュの体が固まった。その声はオニクスだけに聞こえた。
「…まさか、やっぱり」
「ぐっ…体がッ!!」
「潰すなら今しかないっ!!」
オニクスはギーシュにボルカノハンマーを放った。一方のギーシュはそれに向かい、腕を構える。

『遅かったなぁ!!』
「え、え、うわあっ!!」
ギーシュの腕に盾が生成され、盾はエフェクトを展開してそれを防いだ。ギーシュは既に訳が分からない。
「小僧っ!」
『予定より早いが仕方があるまい』
石の声は既に、周囲にも聞こえている。声の主であろう石はナーブケーブルを展開し、ケーブルはギーシュの腕に吸い込まれる。
「え、あ、何が、起こってっ……ああああああ゛あ゛あ゛あ゛!?」
悲鳴と共にギーシュの体は雷に打たれたかのように痙攣を始めた。まるでモンモランシーの時のようだ。悲鳴を上げるギーシュを、オニクスは見つめることしか出来ない。
「お前はッ」
そしてギーシュは、地に倒れ伏した。彼の背中から何本ものナーブケーブルが伸び、人の形を成していく。金色のナーブケーブルが成すのは、機神の肉体。
そしてナーブケーブルが一通り形を成した時、一瞬の閃光と共に、それは実体化した。

「…ヘルメス…『玄武神三号』ッ!!」
「やぁやぁ偽者君。お初にお目にかかる」
紫色の鎧を纏い、四枚の羽を持つそれは、かつて中央国が従えていたギガンティック。アルカイックスマイルを浮かべるそれは、聖獣の名を冠す。
玄武神三号。
アレスによって倒された、羊飼いの守り神。
「ウルカヌスの敵、討ちに参った」
「もっともらしい理由だな」
「フッ。別の理由が必要かい?」
「いらんさ」
ギーシュの召還していたワルキューレが次々と倒れ、灰となって舞い上がる。舞い上がる灰の中で変わらぬ笑みをたたえる玄武神。
「何故小僧を利用した」
「君みたいに上手く現界できなかったのさ。だからちょっと、彼の体で慣らしていた」
「お前もウルカヌスと同じ奴から送られてきたのか」
「ああ、あの偉大なお方から使わされた『死の先触れ』さ」
「あのお方ってのは誰だ」
「それを答える程僕も馬鹿じゃない」
「なら、意地でも吐かせるまで」
「君も戦うのが好きだねぇ。僕はこの子をいつでも殺せるんだよ」
「…そうだったか」
そう言って、オニクスは両手の武器を手から離した。確かに、今足下にいるギーシュを、玄武神が葬ることは簡単だろう。落ちた武器が音を立て、次の瞬間粒子化して消え去る。

「要求は?」
オニクスが尋ねる。
「死んで欲しいな。君のような劣化複製は邪魔だと、我らの偉大な主はおっしゃった。だから主も、このようにギガンティックを送りつけているわけさ」
「…その『主』とやらが、俺を?」
「君は事故さ。エラーパーツのひとつに過ぎない。だが君が生きているだけでも、主にとっては許しがたいことらしい。
それに、反乱分子のギガンティックもいるらしいしね。主の命に従わない愚かな人がねぇ」
玄武神がおどけた様子を見せる。その様子には余裕すら感じられ、まるでオニクスを相手にしていないようだ。
「さ、早いとこ逝ってくれ」
玄武神は左腕に杖を召還する。ウルカヌスと戦った際にオニクスが召還した蛇槌と同一のモノ…否、オリジナル。その銃口をオニクスに向け、玄武神は勝ち誇ったかのように笑った。
「やっぱり、人質はいい。そして、抵抗も出来ずに死んでいく敵の姿を見るのもね」
「そうかい」
「手を出せば、このギーシュってガキは死んじゃうもんねぇ、そりゃ攻撃出来ないよねぇ」
「そうだな」
そしてオニクスもまたおどけたように両手を腕に上げる。武装解除のポーズだ。
「…」
そして玄武神が、蛇槌を放った。量子ビームは最大加速で、オニクスの胸に吸い込まれる-------
「でもそんなの関係ねぇッ!!」
否。オニクスは動いていた。右手の甲に、新たな武器が召還される。それは手甲にナイフを合体させたような、複合型の武装。
剣盾(メエーチ・シート)。
そして身をひねりつつ量子ビームを切っ先で弾き返し、その勢いで一回転。さらに剣盾を射出し、勢いで加速した剣盾は弾く間も与えず玄武神に命中し爆発した。
オニクスは跳躍。空中で構えを取り、玄武神へと向かって蹴りを叩き込んだ。よろけた所に飛んできた一撃で、倒れ込む玄武神。
オニクスは足下の失神したギーシュの腕を掴み、遠心力に任せて観衆の方に適当に投げ込んだ。これで人質はおらず、対等の勝負が可能となる。
「なめるなよ、だから言ったはずだ。『その余裕、命取りになるぞ』と」
「ふっ、これは一本取られたよ。防御と攻撃を間断なく行うことによって、攻撃した瞬間のスキを捉えるとは」
立ち上がった玄武神の表情は笑みのまま。彼は頭像なのだから、表情など変えられようはずもない。だがその笑みは、きのせいか先ほどより曇っているように見えた。
相対する二機。殺気は濃くなり、人も使い魔も、危険を感じてその場を後にする。先ほどまで広場を埋め尽くしていた観衆はほとんどいなくなり、その光景は、さながら映画における、西武の決闘を連想させた。
「…再演だ」
「W.W.W.の」
「演者はちがえど」
「役は同じ」

瞬間、
戦いが
幕を開けた。





次 回 予 告

知略に長ける紫の戦士は
黒の機神を翻弄する
最強の盾を持つそれは
笑みを崩すことはない。

次回「捕縛」 神は、少女を見放さない。

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